第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

6 65歳の男性。脳梗塞で左片麻痺となり1か月が経過した。Brunnstrom法ステージで上肢Ⅳ、手指Ⅳ、下肢Ⅳ。認知機能と感覚とに障害はない。非麻痺側上肢に機能的な問題はない。短下肢装具を用いて屋内歩行が可能。
 作業療法で適切でないのはどれか。

1. 両手を用いたループ付きタオルによる洗体
2. 立位で左手を用いたズボンの引き上げ
3. 両手で頭上の高さの棚に衣類を収納
4. 左手を用いたテーブルの雑巾がけ
5. 両手を用いたタオルたたみ

解答3

解説

MEMO

・65歳の男性(脳梗塞、左片麻痺、1か月経過)
・1か月経過:Brunnstrom法ステージで上肢Ⅳ、手指Ⅳ、下肢Ⅳ。
・認知機能、感覚障害はなし。
・非麻痺側上肢に機能的な問題はない。
・短下肢装具を用いて屋内歩行が可能。
→麻痺側がどこまで動くかを予想する。

上肢Ⅳ:腰の後ろへ手を付ける。肘を伸展させて上肢を前方水平へ挙上。肘90°屈曲位での前腕回内・回外ができる。
手指Ⅳ:横つまみ(母指は離せない)少ない範囲での半随意的手指伸展ができる。
下肢Ⅳ:座位で足を床の後方へすべらせて、膝を90°屈曲。踵を床から離さずに随意的に足関節背屈ができる。

1.〇 正しい。両手を用いたループ付きタオルによる洗体は適切である。なぜなら、非麻痺側を用い、麻痺側の自己介助運動をしながら洗体ができるため。ちなみに、ループ付きタオルとは、タオルにひも状の布を縫い付けると手に引っ掛けて洗えるものである。
2.〇 正しい。立位で左手を用いたズボンの引き上げは適切である。なぜなら、作業療法のADL訓練や転倒予防として有用であるため。本症例の家庭での生活において(症状がプラトーとなった場合)は、転倒リスクを考慮し壁などの支持は必要である。
3.× 両手で頭上の高さの棚に衣類を収納するのは困難である。なぜなら、本症例のBrunnstrom法ステージが上下肢、手指すべてステージⅣであるため。麻痺側(左側)の上肢の挙上は水平位程度であり、頭上の高さの棚に衣類を収納することは困難である。上肢の完全挙上が可能になるのはステージⅤからである。
4.〇 正しい。左手を用いたテーブルの雑巾がけは適切である。なぜなら、テーブルの雑巾がけの高さは、上肢の水平位よりも下であるため。また、座位でも雑巾がけは可能であり、雑巾がけは肩関節屈曲位での肘関節伸展を促すため、分離運動の促進につながる。
5.〇 正しい。両手を用いたタオルたたみは適切である。なぜなら、非麻痺側で動作を介助しながら麻痺側上肢の運動を促すことができるため。

 

 

 

 

 

 

7 67歳の男性。Parkinson病、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢ。室内は伝い歩きで屋外は歩行車を用いているが、最近、体幹の前屈傾向がみられ時々つまずいて転倒する。
 この患者の住環境整備で適切でないのはどれか。

1. 段差の解消
2. 手すりの設置
3. 引き戸の導入
4. ベッドの導入
5. 毛足の長いじゅうたんの設置

解答5

解説

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

1.〇 正しい。段差の解消は重要である。なぜなら、本症例は時折、つまずいて転倒しているため。つまずきやすいものは自宅から排除しておくべきである。
2.〇 正しい。手すりの設置は重要である。なぜなら、本症例は室内伝い歩きをしており、転倒防止につながるため。
3.〇 正しい。引き戸(横にスライドする戸)の導入は重要である。なぜなら、外開き戸の場合は扉に近づきすぎると後ずさりしたときに転びやすくなるため。
4.〇 正しい。ベッドの導入は重要である。なぜなら、布団だと起きて歩き出すときに、それがつまずく障害物となったり、起き上がる際にベッドの方が移動の負担が小さく転倒防止につながるため。
5.× 毛足の長いじゅうたんの設置は住環境整備で不要である。むしろ、自宅から排除するべきである。なぜなら、パーキンソン病は小刻みですり足となり、毛足の長いじゅうたんはつまずきやすいため。

 

 

 

 

 

 

8 70歳の男性。肺癌末期だが意識は清明で四肢筋力も保たれている。感覚障害や四肢の浮腫もない。最近徐々に嗄声が出現した。
 原因として最も考えられるのはどれか。

1. 反回神経麻痺
2. Raynaud現象
3. Pancoast腫瘍
4. 上大静脈症候群
5. Lambert-Eaton 症候群

解答1

解説

嗄声とは?

 嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経(反回神経)に問題がある場合がある。反回神経は迷走神経の分枝であり、気管と食道の間を上行して、喉頭に入る。左側は大動脈を迂回するので長く、また麻痺の頻度も多い。②声帯を動かす神経(反回神経)に問題がある場合の例として、肺癌、甲状腺癌、大動脈瘤などがあげられる。他にも、甲状腺、心臓、食道の手術後に術後性麻痺を伴うこともある。

1.〇 正しい。反回神経麻痺が原因として最も考えられる。なぜなら、反回神経の枝は喉頭や声帯に分布し、障害により嗄声を生じるため。反回神経は、右が鎖骨下動脈を、左が大動脈弓を前方から後方へ回り、この周囲に癌が浸潤することで嗄声が生じる。
2.× Raynaud現象(レイノー現象)は、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。膠原病(特に強皮症や混合性結合組織病)で起こりやすい。寒冷療法は禁忌である。ちなみに、強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。
3.× Pancoast腫瘍(パンコースト腫瘍)は、肺尖部の腫癌で第一肋骨、頚椎へと浸潤していくもので周囲への浸潤の結果、種々の症状を来す。症状は、上肢痛やしびれ、交感神経節への圧迫によるHorner症候群(眼険下垂、縮瞳、発汗減少)などである。
4.× 上大静脈症候群とは、上行大静脈が圧迫、閉塞されることによって、顔面、頸部のうっ血、浮腫を生じる状態である。急激な発症では上半身の静脈怒張が強く、脳浮腫が進行して眼球の突出が起こり、呼吸困難を来すこともある。肺癌の浸潤や、縦隔腫瘍、胸部大動脈瘤などによる圧迫の場合が多い。
5.× Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)は、肺小細胞癌を高頻度に合併する傍腫瘍性神経症候群で、
神経終末部のアセチルコリン(Ach)の放出障害をその病態の基盤とする神経筋接合部・自律神経疾患である。ほかの特徴として、四肢筋力の易疲労性を生じ、筋の反復運動により筋力が増強する(waxing現象)のがみられる。

 

 

 

 

 

 

 

9 在宅療養中のALS患者。筋力は頸部体幹四肢MMT1である。関節拘縮はない。ベッド、車椅子移乗にリフトを導入することとなった。
 この患者に適した吊り具はどれか。

解答2

解説

本症例のポイント

・在宅療養中のALS患者。
・筋力:頸部体幹四肢MMT1。
・関節拘縮はない。
→本症例の目的:ベッド、車椅子移乗にリフトを導入する。

本症例の身体状況:頭部、体幹、四肢MMT1。座位保持困難と考えられる。
ハイバック型の吊り具が望ましい。なぜなら、頭部も支持できるため。

1.× トイレ用吊り具は、脚分離型の臀部のおおいを小さくしたタイプで、ベルト型との中間的な吊具である。吊り上げたとき臀部が大きく空くので、下着などを着脱させることができる。身体機能によって臀部が落下した姿勢になりやすい。これを防止するために、胸ベルトがついているタイプ、吊り上げるにしたがい体重で胸を押さえるタイプなどがある。本症例は、座位保持が困難と考えられ、これの着脱は座位にて行うため使用は困難と考えられる。
2.〇 正しい。シート型吊り具(ハイバック型)は、一枚のシートで状態と殿部を包むタイプである。着脱は臥位で行える。体を包み込み、頭部の支持も可能であるため、本症例のように筋力低下がみられる場合においても使用が可能である。
3.× 脚分離型吊り具(ローバック)は、二本のベルトで吊り上げるタイプで座位で着脱ができる。頭の支持を必要としない場合に使用するため、本症例への使用は困難と考えられる。
4.× ベルト型吊り具は、二本のベルトで構成されており、着脱は容易であるが、身体のある程度の固定力が必要である。本症例は体幹・四肢の筋力低下が著しいため合わない。
5.× 椅子座面型吊り具は、入浴時の安定介助の用途に使用する。本症例の目的は、ベッド・車椅子移乗であるため合わない。

 

(図引用:公益財団法人テクノエイド協会様HP)

各吊り具の説明

リフトによって人を持ち上げる際に使用する、人との接点となるものである。身体機能により、使用場面により、また介助者の状況により、最適な形、大きさのものを使い分けることを原則とする。
【脚分離型】
 座位姿勢で着脱でき、吊り上げられたときの感覚も比較的よい。
1.ローバック型:頭の支持を必要としない場合に使用する。
2.ハイバック型:頭の支持を必要とする場合に使用する。

【シート型】
 1枚のシートでできており、身体全体をくるみ込む。座位姿勢では着脱はできず、臥位あるいは膝立ち位で行う。
1.ローバック型とハイバック型がある。
2.入浴に適しており、メッシュが多い。

【セパレート型】
 2本のベルトまたは2枚のシートで吊り上げる。
1.吊具着脱の介助がもっとも容易な吊具である。
2.身体機能によっては落下したり、痛みを感じたりする危険がある。
3.股関節、肩関節・肩甲帯の固定力を必要とし、適応は慎重に行う必要がある。

【トイレ用】
 脚分離型の臀部のおおいを小さくしたタイプで、ベルト型との中間的な吊具である。
1.吊り上げたとき臀部が大きく空くので、下着などを着脱させることができる。
2.身体機能によって臀部が落下した姿勢になりやすい。これを防止するために、胸ベルトがついているタイプ、吊り上げるにしたがい体重で胸を押さえるタイプなどがある。

 

 

 

 

 

 

次の文により10、11の問いに答えよ。
 5歳の男児。脳性麻痺。麻痺のタイプは痙直型両麻痺であり、図のように両手支持なしで座ることができる。

10 この児で予想される所見はどれか。

1. 鉛管様現象陽性
2. 膝蓋腱反射減弱
3. Galant 反射陽性
4. 足クローヌス陽性
5. 非対称性緊張性頸反射陰性

解答4

解説

痙直型の特徴

①機敏性の低下、筋力損失および脊髄反射の亢進など。
②脊髄レベルでの相反神経作用の障害(動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収納や、痙直の強い拮抗筋からの過利な緊張性相反性抑制による動筋の機能不全)
③両麻痺は両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢、体幹の麻痺を伴うことが多い。

1.× 鉛管様現象陽性は、パーキンソン病でみられる固縮によるものである。四肢の関節を他動的に動かそうとすると強い抵抗がみられるが、その後抵抗が持続するものをいう。ちなみに、抵抗が急激に弱くなるものを折りたたみナイフ現象という。
2.× 膝蓋腱反射は、「減弱」ではなく亢進する。なぜなら、上位運動ニューロンの障害のため。
3.× Galant 反射は、「陽性」ではなく陰性である。Galant反射(ガラント反射)の消失が遷延している場合、アテトーゼ型脳性麻痺である可能性が高い。Galant反射(ガラント反射)とは、児を腹臥位に抱いた状態で、下部胸椎レベルで脊柱の脇を沿うようにこすり下ろすと体幹を同側に傾ける反射をいう。1~2か月頃に消失する。
4.〇 正しい。足クローヌス陽性は、予想される所見である。足クローヌス陽性は、深部反射の著明な亢進により生じ、痙直型四肢麻痺に特徴的な症状である。上位運動ニューロンの障害による痙性麻痺を主症状(筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射出現、クローヌス出現、折りたたみナイフ現象)とする。
5.× 非対称性緊張性頸反射は、「陰性」ではなく陽性である。なぜなら、問題文の図で、顔が向いた方の上肢は伸展位、反対側の上肢は屈曲位になっているため。非対称性緊張性頚反射は、通常では5か月頃で消失するが、脳性麻痺では長く持続する。非対称性緊張性頸反射(ATNR)とは、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から出現し、生後4~6か月までに消失する。

 

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