第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46 うつ病の急性期における対応で正しいのはどれか。

1. 未解決の重要事項の処理を勧める。
2. うつ病の診断であることを説明する。
3. 自殺のリスクがあるので自殺を話題にしない。
4. 修正型電気けいれん療法(m-ECT)は禁忌である。
5. 器質的疾患が原因の場合には抗うつ薬による治療を行わない。

解答2

解説

うつ病患者に積極的に説明するべき事項

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

1.× 未解決の重要事項の処理を勧めるのは不適切である。なぜなら、うつ病の急性期では判断力が低下しているため。したがって、重要事項の処理は病状が良くなるまで先延ばしにする。
2.〇 正しい。うつ病の診断であることを説明する。なぜなら、調子が悪いのは病気のせいと自覚できるため。うつ病であることを理解させ、治療を行えば必ず良くなることを説明する。
3.× 自殺のリスクがあるので自殺を話題にしないのは不適切である。なぜなら、うつ病患者は、現在の死にたい気持ち(自殺念慮・希死念慮)を抱いていることが多いため。したがって、希死念慮の確認は必ず行わなければならない。希死念慮を抱いている場合には、具体的な手段を考えているのかを確認し、絶対に自殺をしないことを約束させる。また、治療者は「自殺を考えるほどにつらいのですね」と共感的な態度をとるように心がけるべきである。
4.× 修正型電気けいれん療法(m-ECT)は、「禁忌」ではなく適応となる。修正型電気けいれん療法(m-ECT:Electro Convulsive Therapy)とは、頭部に通電することで難治性の精神疾患の症状軽減を目指すものである。特に①不安・焦燥が大きい場合や②自殺企図の危険性の高い場合、③強い抑止を伴う場合などは、急速な症状の改善を期待して行われることが多い。麻酔薬と筋弛緩薬を用いたうえで脳に通電する。脳波上には発作波が記録されるが、筋弛緩薬を用いるので全身けいれんは起こらない。
5.× 器質的疾患が原因の場合には、抗うつ薬による治療を、「行わない」のではなく行っていく。器質的疾患とは、臓器そのものに炎症や癌などがあり、その結果として様々な症状が出現する病気や病態のことをいう。器質性疾患が原因のうつ病でも、抗うつ薬による治療を行う。

 

 

 

 

 

 

47 作業療法導入時の注意欠如・多動性障害の患者に対する配慮として正しいのはどれか。

1. ルールや禁止事項を数多く設ける。
2. 他者と共同で行う作業を提供する。
3. 失敗体験を基にした動機づけを図る。
4. 不適応反応時の落ち着ける場所を確保する。
5. 周囲からの刺激を受けやすい環境を設定する。

解答4

解説

注意欠如・多動性障害(ADHD)は、注意欠如・多動性・衝動性という特徴があげられる。そのため、作業療法では、①気が散らない環境で、②周囲とのかかわりは最小限にする、などの配慮が必要である。

1.× ルールや禁止事項を数多く設ける必要はない。なぜなら、ADHD患者は、その多くのルールや禁止事項を遵守することができないため。むしろ、挫折体験を増やすだけなので、さらなる自己評価の低下を招く可能性が高い。したがって、成人のADHD患者では、うつ病の合併が多い。
2.× 他者と共同で行う作業を提供する必要はない。なぜなら、ADHDの特徴である衝動性により、他者と協調して作業できないため。
3.× 失敗体験を基にした動機づけを図る必要はない。なぜなら、失敗体験により、さらなる自己評価の低下を招く可能性が高いため。したがって、成人のADHD患者では、うつ病の合併が多い。
4.〇 正しい。不適応反応時の落ち着ける場所を確保する。なぜなら、ADHD患者は、注意欠如という特徴があげられるため。そのため、作業療法では、①気が散らない環境で、②周囲とのかかわりは最小限にする、などの配慮が必要である。
5.× 周囲からの刺激を受けやすい環境を設定する必要はない。なぜなら、ADHD患者は、注意欠如という特徴があげられるため。そのため、作業療法では、①気が散らない環境で、②周囲とのかかわりは最小限にする、などの配慮が必要である。音や視界に入ってくる刺激が気になり、活動に集中できなくなったりすることがあるため、周囲からの刺激を受けにくい環境を与える。

 

 

 

 

 

48 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律で、精神保健審判員(必要な学識経験を有する医師)とともに処遇を決定する職はどれか。

1. 検察官
2. 裁判官
3. 都道府県知事
4. 保護観察所長
5. 精神保健福祉士

解答2

解説

医療観察法とは?

 医療観察法とは、重大な他害行為を行った精神障害者に医療を受けさせ、犯罪の再発を防ぎ社会復帰の促進が目的である。平成15年に制定され、平成17年施行した。「重大な他害行為」とは、①殺人、②放火、③強盗、④強姦、⑤強制わいせつ、⑥傷害の6つである。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。

1.3.× 検察官/都道府県知事は、処罰の決定には関与しない
2.〇 正しい。裁判官は、処罰の決定に関与する。鑑定入院の後で、裁判官と精神保健審判員からなる合議体(裁判官と精神保健審判員からなる)が処罰の審判を下す。
4.× 保護観察所長は、処罰の決定には関与しない。保護観察所は、罪や非行を犯し家庭裁判所の決定により保護観察になった少年、刑務所や少年院から仮釈放になった者、保護観察付の刑の執行猶予となった者に対して保護観察を行う機関である。
5.× 精神保健福祉士は、処罰の決定には関与しない。精神保健福祉士は、精神保健福祉士法で位置づけられた、精神障害者に対する相談援助などの業務に携わる人のことである。

 

 

 

 

 

 

49 ACT(Assertive Community Treatment)の特徴はどれか。

1. 休日を除き毎日提供される。
2. 作業療法士が中心となり実施する。
3. 地域の福祉施設の利用時に実施する。
4. 原則的にサービス提供は無期限である。
5. 対象は比較的軽度の精神障害者である。

解答4

解説

ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは?

 ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、重い精神障害をもった人(入退院を繰り返すなど)であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を中心に提供するケアマネジメントモデルのひとつである。地域社会でうまく生活を継続することができるように多職種が365日・24時間体制で多職種によって構成されたチームにより関わる仕組みである。サービス提供は原則的に無期限である。

1.× 「休日を除き毎日」ではなく、24時間・365日提供される。
2.× 作業療法士が、「中心」ではなく、多職種チームとなり実施する。
3.× 地域の福祉施設の「利用時」ではなく、利用者の自宅や職場などの実際の生活の場を訪問し、サービスを実施する。
4.〇 正しい。原則的にサービス提供は無期限である。
5.× 対象は、「比較的軽度」ではなく、重度の精神障害者である。

 

 

 

 

 

 

50 被害妄想が持続し自宅に閉じこもることで安定している慢性期の統合失調症患者に対する訪問作業療法として適切な支援はどれか。

1. 外出の促し
2. 家事行為の指導
3. 近所づきあいの指導
4. 本人が困っていることの傾聴
5. 内服薬の種類についての話し合い

解答4

解説

 本症例は、慢性期の統合失調症であり、病状自体は安定している。問題点は、被害妄想が持続するため自宅に閉じこもっていることである。したがって、まずは傾聴して、本人が何に困っているかを知り、不安を取り除くことが必要である。

1.× 外出の促しの優先度は低い。なぜなら、現時点で被害妄想が持続しており閉じこもり状況で、外出を促しても実行できないため。
2.× 家事行為の指導の優先度は低い。なぜなら、家事行為に関して、現在困っているという記載はないため。まずは、何に困っているか傾聴するべきである。
3.× 近所づきあいの指導の優先度は低い。なぜなら、現時点で被害妄想が持続し外出できないため。したがって、近所づきあいは困難である。
4.〇 正しい。本人が困っていることの傾聴を行う。なぜなら、本人が困っていることを傾聴することで、具体的な支援につながり、本人の心理的負担も軽減できるため。
5.× 内服薬の種類についての話し合いの優先度は低い。なぜなら、現時点で本症例の症状は安定しているため。したがって、服薬管理は重要であるが、内服薬の種類について患者と話し合う必要はない。

 

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