第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

 

11 65歳の男性。脳梗塞。右片麻痺。発症5日目。意識レベルはJCS(Japan coma scale)Ⅰ- 1。全身状態は安定し、麻痺の進行も24時間以上認めないため、リスク管理(リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン2006に基づく)を行いながら、ベッドアップを開始することとした。
 適切なのはどれか。

1. ベッドアップ前、動悸を訴えているが実施する。
2. ベッドアップ前、安静時SpO2が85%であったので実施する。
3. ベッドアップ後、脈拍が100回/分なので中止する。
4. ベッドアップ後、呼吸数が18回/分なので中止する。
5. ベッドアップ後、収縮期血圧が120mmHg から170mmHg に上昇したので中止する。

解答5

解説

1.× ベッドアップ前、動悸を訴えている場合、積極的なリハビリテーションを実施できない。リハビリテーション実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合は行わない。
2.× ベッドアップ前、安静時SpO290%以下であった場合、積極的なリハビリテーションを実施できない。
3.× ベッドアップ後、脈拍が100 回/分の場合、「中止する」のではなく続けてよい。
脈拍が120/分を超えた場合:いったんリハビリテーションを中止し、回復を待って再開。
脈拍が140/分を超えた場合:途中でリハビリテーションを中止する。
4.× ベッドアップ後、呼吸数が18 回/分の場合、「中止する」のではなく続けてよい。頻呼吸(30回/分以上)息切れが出現した場合は途中でリハビリテーションを中止する。
5.〇 正しい。ベッドアップ後、収縮期血圧が120mmHgから170 mmHgに上昇したので中止する。ベッドアップ後に収縮期血圧が40mmHg以上の血圧上昇が認められているので、リハビリテーションを中止する。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

4. その他の注意が必要な場合
[1] 血尿の出現
[2] 喀痰量が増加している場合
[3] 体重増加している場合
[4] 倦怠感がある場合
[5] 食欲不振時・空腹時
[6] 下肢の浮腫が増加している場合

(一部抜粋:「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン2006」)

 

 

 

 

 

 

12 65歳の女性。慢性心不全。自宅でめまいと失神発作とを認めたため来院した。来院時の心電図を下図に示す。
 この患者にみられるのはどれか。


1. 洞性頻脈
2. 心室頻拍
3. 心室期外収縮
4. Ⅰ度房室ブロック
5. Ⅲ度房室ブロック

解答5

解説

 P波の後のQRS波の関連性がなく、両者がそれぞれに独立したリズムで出現している。心房・心室リズムは各々整であるが、連携がばらばらの状態であるため、PR間隔が不規則である。よって、選択肢5.Ⅲ度房室ブロックが正しい。本症例の場合、P波は等間隔であるが、QRS波が等間隔ではない。この場合でもⅢ度房室ブロックと呼んでいいのか?もしくは筆者の心電図の読み方が違うのか分かる方、ご教授いただければ幸いです。

1.× 洞性頻脈は、洞結節の興奮頻度が上昇している状態である。洞性頻脈の特徴は、洞調律である状態は保たれており、P波に続いてQRS波・T波が見られ、かつ幅も正常である。心拍数は100/分以上となる。
2.× 心室頻拍は、心室の興奮が頻繁となっている状態である。心室頻拍の特徴は、房室結節を通らない興奮のため、幅の広いQRS波が連続して認められる。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがある。除細動の適応である。また、基礎心疾患を伴う場合は、植え込み型除細動器(ICD)の適応となる。
3.× 心室期外収縮は、洞結節以外の部位の興奮が司令塔となり、一連の心筋の興奮を起こす不整脈である。心室性期外収縮の心電図では、P波は認められず、幅広い変形したQRS波が見られる。
4.× Ⅰ度房室ブロックの特徴として、RR間隔の延長(0.28秒)がある。一般的に治療を要さないことが多い。

 

 

 

 

 

13 他の筋への影響を最小限にしてハムストリングスの伸張運動を行う場合、適切でないのはどれか。

解答1

解説

1.× 適切ではない。図のようなやり方では、足関節の背屈・膝関節伸展により二関節筋である腓腹筋が伸張される。他の筋への影響を最小限にできていないため不適切である。
2~5.〇 ハムストリングスの伸張運動である。

 

 

 

 

 

14 図のようなハンドリングを実施することで運動発達促進効果として期待されるのはどれか。


1. Galant反射の抑制
2. 下肢のキッキング促通
3. 正中位指向の促進
4. 体幹伸展筋の促通
5. 頭部回旋運動の促通

解答3

解説

本症例のポイント

図では、両手で小児の両上肢を安定させ、頚部・背部を軽度屈曲位で安定させ、下肢は大腿にのせて、軽度屈曲位で左右対称に保ちリラックスさせているように見える。

1.× Galant反射とは、脊柱近位を尖った物でこすることで体幹が刺激側に側屈する反射である。これは出生時からみられ、生後1~2か月頃に消失する。図はGalant反射の抑制は行われていない。
2.× 下肢のキッキング促通は行われていない。なぜなら、図では足底が浮いているため。下肢のキッキング促通するためには、足底に抵抗を加える(床に足底をつけるなど)必要がある。
3.〇 正しい。正中位指向の促進である。両手を体の中心にもっていき、頭頚部を正中位で保持することで正中位指向の促進を図っている。正常児の生後3か月頃の運動発達パターンは、正中位指向という言葉で表現される通り、両上肢が同時に身体の正中線に向かって運動するのが特徴である。
4.× 体幹伸展筋の「促通」ではなく、図は抑制している。なぜなら、体幹軽度屈曲位となっているため。また、体幹伸展筋は促通するものではなく、姿勢保持に必要な抗重力筋の筋緊張を獲得するため抑制を目指すことが多い。
5.× 頭部回旋運動の「促通」ではなく、図は抑制している。なぜなら、頭頚部正中位で保持されているため。

 

 

 

 

 

15 45歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。発症から1年経過している。ADLは自立しているが、主に下肢の筋力低下、バランス不良および鶏歩が認められる。
 理学療法で適切なのはどれか。

1. 車椅子操作の練習
2. 下肢の漸増抵抗運動
3. 両松葉杖での歩行練習
4. 感覚再教育によるバランス練習
5. プラスチックAFOを装着した歩行練習

解答5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× 車椅子操作の練習は時期尚早である。なぜなら、本症例はADL自立しており、歩行は可能(バランス不良および鶏歩)であるため。できる限り能力を維持できよう自力歩行を促すべきである。
2.× 下肢の漸増抵抗運動の優先度は低い。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は進行性に筋が萎縮するため。漸増抵抗運動を行っても筋力低下を補うことはできない。また、過用性筋力低下を引き起こす可能性が高い。
3.× 両松葉杖での歩行練習は不適切である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症に両松葉杖は適応になりにくい(上肢の筋力が十分にある場合に適応となる)ため。また、本症例の身体状態からも、下肢の筋力低下とバランス不良があり、松葉杖による歩行は転倒のリスクが高い。
4.× 感覚再教育によるバランス練習の優先度は低い。なぜなら、ALSの陰性徴候に感覚障害があるため。ちなみに、感覚再教育は、脳卒中後など感覚障害に対し行う。
5.〇 正しい。プラスチックAFOを装着した歩行練習が適応となる。なぜなら鶏歩に対して、プラスチックAFOを装着することで足関節背屈を補助し、つまずきを回避することができるため。

松葉杖の適応

・片方の下肢骨折
・対麻痺障害などの立位保持が困難な場合
・荷重負荷制限
・上腕の筋力が十分であること

 

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