第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

16 75歳の男性。交通事故による第5頸髄レベルの脊髄損傷で四肢不全麻痺。受傷後6か月経過。端座位の保持と手すりを使用した立ち上がり動作は可能。食事は太柄のフォークで自立。トイレ動作は見守りが必要。衣服の着脱は介助があれば行える。自宅内は手すり歩行で移動し、屋外は車椅子移動。
 Frankel分類はどれか。

1. A
2. B
3. C
4. D
5. E

解答4

解説

Frankel分類

 Frankel分類とは、脊髄損傷の評価尺度の1つである。運動と知覚機能の回復の程度をA~Eの5段階で評価するものである。Aが最も重症(損傷高位以下の完全運動・知覚麻痺)で、Eが正常(反射の異常はあってもよい)である。

A:運動・知覚喪失:損傷部以下の運動・知覚機能が失われているもの。
B:運動喪失・知覚残存:損傷部以下の運動機能は完全に失われているが、仙髄域などに知覚が残存するもの。
C:運動残存(非実用的):損傷部以下にわずかな随意運動機能が残存しているが、実用的運動は不能なもの。
D:運動残存(実用的):損傷部以下にかなりの随意運動機能が残されており、下肢を動かしたり、あるいは歩行などもできるもの
E:回復:神経学的症状、すなわち運動・知覚麻痺や膀胱・直腸障害を認めないもの。

本症例は、屋内で手すり歩行が可能なため、実用的な運動機能が残存している。よって、Frankel分類は、選択肢4. Dとなる.

類似問題です↓
【PT専門のみ】Frankel分類についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

17 80歳の男性。胸部CTを下図に示す。
 この患者で予想されるのはどれか。


1. 肥満
2. 残気量の低下
3. 一秒率の低下
4. 気道抵抗の低下
5. 肺コンプライアンスの低下

解答3

解説

本症例のポイント

本症例の特徴として、肺気腫を示す隔壁構造が壊れた低吸収域(肺気腫像)が肺野に多数存在している。気腫性変化(肺野の低吸収域)が認められる。したがって、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を疑える。肺気腫は、肺気腫は肺野に左右均等に生じるわけでない。不規則な透過性亢進、肺底部優位の気腫などを観察する。

1.× 肥満ではない。肥満であれば皮下脂肪の増加がみられる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)になると、安静時でも、呼吸によって使われるエネルギー量が、普通の人よりも15~25%も高くなるため、体重低下や栄養不足になるリスクが高くなる。また、食事中に息切れしたり、疲れを感じたりすることで、食べる量が少なくなるケースもみられる。
2.× 慢性閉塞性肺疾患の場合、残気量は「低下」ではなく、増加する。なぜなら、肺が過膨張するため。
3.〇 正しい。一秒率の低下である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、閉塞性換気障害を来し一秒率が低下する。
4.× 慢性閉塞性肺疾患の場合、気道抵抗の「低下」ではなく増大する。なぜなら、末梢気道の狭窄と閉塞が起こるため。
5.× 慢性閉塞性肺疾患の場合、肺コンプライアンスは「低下」ではなく上昇する。肺コンプライアンスとは、肺の弾性を示す指標である。慢性閉塞性肺疾患では、肺弾性収縮力の低下により、過膨張となり、肺コンプライアンスが上昇する。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の検査所見

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。肺の中の気管支に炎症がおきて、咳や痰が出て、気管支が細くなることによって空気の流れが低下する。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

(※写真・・・正常な肺)

 

 

 

 

 

18 右外側肺底区の痰に対する体位排痰法体位(ドレナージ)で最も適切な体位はどれか。

解答4

解説

 体位ドレナージは、目的の肺区域が上となり痰が流れやすくなる姿勢をとることで排痰を促す手法である。

1.× 腹臥位は、上・下葉区(S6・S10)の排痰に適している。
2.× 45度前方へ傾けた腹臥位は、後上葉区(S2)の排痰に適している。
3.× 背臥位は、主に肺尖部、前上葉区、前肺低区(S1・S3・S8)の排痰に適している。
4.〇 正しい。側臥位は、右外側肺区(S9)の排痰に適している。
5.× 45度後方へ傾けた側臥位は、中葉、舌区(S4・S5)の排痰に適している。

類似問題です↓
【PT専門/OT専門】肺葉/排痰ドレナージについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

19 24歳の女性。2日前に室内での火災に巻き込まれ救急搬送された。35%の範囲の熱傷と診断され入院中。意識は清明。顔面から前頸部も受傷し煤のような色の痰がでる。肩甲帯から上腕にかけては植皮が必要な状態。骨盤と下肢とに傷害はみられない。
 この時期の理学療法として適切なのはどれか。

1. 患部局所の浮腫に対する弾性包帯による持続圧迫
2. 下肢に対する80%MVC での筋力増強
3. 背臥位での持続的な頸部伸展位の保持
4. 尖足予防のための夜間装具の装着
5. squeezingによる排痰

解答5

解説

1.× 弾性包帯による持続圧迫を行うのは、「患部局所の浮腫」に対してではなく、「肥厚性瘢痕部(ケロイド)」に対して行う。肥厚性疲痕が顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮を来し、機能障害の原因となるため予防が必要である。本症例の場合、皮膚が落ち着いてきた時点で、拘縮予防目的にスポンジでの圧迫療法をすることがある。
2.× 下肢に対する80%MVCでの筋力増強は不適切である。なぜなら、本症例は下肢に傷害はないため。受傷後2日であることからも、そこまで高負荷の筋力増強訓練は必要ない。80%MVCでの筋力増強とは、最大筋力の80%の負荷となる。
3.× 持続的な頸部伸展位の保持をあえて「背臥位」のままである必要はない。介助下で端座位の獲得を目指し離床へと繋げていくことが大切である。
4.× 尖足予防のための夜間装具の装着は必要ない。なぜなら、下肢に傷害はなく尖足にならないため。
5.〇 正しい。squeezing(スクイージング)による排痰である。本症例は、「煤(すす)のような色の痰が排出されている」ということから気道熱傷が疑われ、気道の浮腫が起こりやすいと考えられる。また気道の炎症により分泌物も多くなっており、squeezingによる排痰を促し無気肺(肺の一部または全体に空気がなく、肺がつぶれた状態)などを予防する。

squeezing(スクイージング)

痰のある胸郭を呼気時に圧迫することにより呼気流速を高め、痰の移動を促進し、反動による吸気時の肺の拡張を促す手技のことを言う。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】熱傷についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

20 46歳の男性。健康診断で身長170cm、体重75kg、BMI 26.0、腹囲88cmであった。運動習慣に関するアンケートで以下のように回答した。
 この段階の対応として最も適切なのはどれか。


1. 仲間づくりを促し、周囲からのサポートを受けやすくする。
2. 具体的な目標を提示し、運動を継続するための動機づけを図る。
3. 達成感や楽しみが感じられることなど運動習慣の意味を認識させる。
4. 運動不足の害や生活習慣病に関する知識を与え、運動への関心を高める。
5. 実行可能で無理のない運動から開始し、成功体験を積めるように工夫する。

解答5

解説

本症例のポイント

 本症例は肥満(BMI 26.0、腹囲88cm)であり、運動を行う必要のある患者である。アンケートから、現在まだ運動は始めていないものの、「あなたは今後健康のために運動を始めるつもりはありますか?」という質問に、「はい」と答えていることから、本人に運動しようという意思はあることが読み取れる。
→したがって、行動変容のステージでいう関心期~準備期であると考えられる。

1~2.× 仲間づくりを促し、周囲からのサポートを受けやすくする/具体的な目標を提示し、運動を継続するための動機づけを図るのは実行期以降の働きかけである。ちなみに、実行期とは、望ましい行動を起こした時期であるため、行動実践の意欲強化と報酬づけ環境調整していく時期のことである。
3~4.× 達成感や楽しみが感じられることなど運動習慣の意味を認識させる/運動不足の害や生活習慣病に関する知識を与え、運動への関心を高めるのは、無関心期への働きかけである。ちなみに、無関心期とは、行動変容を考えていない時期であるため支援策として、知識・情報の提供、問題点の指摘があげられる時期のことである。
5.〇 実行可能で無理のない運動から開始し、成功体験を積めるように工夫するのは、この段階(関心期~準備期)の対応として正しい。関心期は、行動変容を考えているが実行していない時期であるため、動機づけが大切である。

変化ステージ理論とは?

変化ステージ理論(行動変容ステージモデル)とは、人の健康行動の変容や維持について示された理論である。1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであり、いろいろな健康(食事や運動、筋炎)に関する行動について幅広く研究と実践が進められた。行動変容ステージモデルでは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えられている。

無関心期:行動変容を考えていない時期であるため支援策として、知識・情報の提供、問題点の指摘があげられる。
関心期:行動変容を考えているが実行していない時期であるため、動機づけが大切である。
準備期:すぐ始める意思がある時期もしくは独自の方法でも何かしら行っている時期であるため行動案の提示・目標設定などの計画支援を行う。
実行期:望ましい行動を起こした時期であるため、行動実践の意欲強化と報酬づけ環境調整していく。
維持期:6か月以上行動を継続している時期であるため、維持のためのサポートを継続する。

(参考:「行動変容ステージモデル」厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより)

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)