第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46 転換性障害による歩行障害のある患者への対応として適切なのはどれか。

1.希死念慮に注意する。
2.感情の言語化を促す。
3.歩行障害の受容を促す。
4.歩行機能への介入は行わない。
5.葛藤と症状との関係を洞察させる。

解答2

解説
 転換性障害(=解離性障害)とは、①随意運動障害、または②感覚機能障害に先立って、心理的葛藤やストレス要因が見出され、心理的要因が関連していると判断されるものである。まずは身体的対応を行うが、言語化できるように促していくことである。したがって、選択肢2.感情の言語化を促すことが正解となる。感情の言語化を促していくことが、身体的症状への転換を減らしていくことになり、回復につながる。

1.× 希死念慮に注意する必要はない。なぜなら、希死念慮(自殺願望と同義)は、うつ病患者によくみられる症状であるため。
3.× 歩行障害の受容を促す必要はない。なぜなら、歩行障害は、「器質的・機能的なもの」ではなく、心理的葛藤が解消できれば消失するため。
4.× 歩行機能への介入を行う。なぜなら、まずは身体的対応を行う必要があるため。その後、言語化できるように促していく
5.× 葛藤と症状との関係を洞察させる必要はない。なぜなら、本症例は、治療初期(歩行障害のある患者)と考えられるため。治療初期では、葛藤と症状との関係を洞察させることで、症状への意識を強める恐れがある。ちなみに、葛藤と症状との関係を洞察させることは、治療の最終目標となる。

 

 

 

 

 

 

47 摂食障害患者の作業療法でみられる特徴はどれか。

1.周囲に対する過剰適応
2.課題の頻回な変更
3.中途での投出し
4.集中力の低下
5.意欲の低さ

解答1

解説

摂食障害患者の心性の特徴

①自己評価が低い。
②周囲からの評価を気にする。
(神経性無食欲症・神経性大食症に共通)

1.〇 正しい。周囲に対する過剰適応は、摂食障害患者の作業療法でみられる特徴である。摂食障害患者は人からの評価に敏感であることが多い。また、性格は①強情、②負けず嫌い、③執着心が強い、③極端な行動に及びやすい。周囲の期待に応えようとする傾向が強く、過剰適応のストレス反応として摂食障害が悪化する。
2~3.× 課題の頻回な変更/中途での投出しは見られない。なぜなら、完璧主義でこだわる傾向が強いため。
4.× 集中力の低下は見られない。一般でいう集中力の低下(長い授業中にボーとするなど)は、摂食障害のうち、神経性無食欲症では低栄養のため起こりうるが、作業療法でいう集中力の低下(持続性注意の低下)は、比較的保たれていることが多い。
5.× 意欲の低さは見られない。神経性無食欲症では、痩せようと過活動であることが多い。したがって、意欲は高い

摂食障害とは?

摂食障害には、①神経性無食症、②神経性大食症がある。共通して肥満恐怖、自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤の使用抑うつの症状がみられる。作業療法場面での特徴として、過活動、強迫的なこだわり、抑うつ、対人交流の希薄さ、表面的な対応がみられる。患者の性格として、細かい数値へのこだわり(①体重のグラム単位での増減、②この食べ物はあの食べ物より〇カロリー多いなど)がみられる。

【摂食障害の作業療法のポイント】
①ストレス解消、②食べ物以外へ関心を向ける、③自信の回復(自己表出、他者からの共感、自己管理)、④過度の活動をさせない、⑤身体症状、行動化に注意する。

【性格的特徴】
①強情、②負けず嫌い、③執着心が強い、③極端な行動に及びやすい。

 

 

 

 

 

48 回避性パーソナリティ障害患者の作業療法導入期の対応について適切なのはどれか。

1.共同作業を促す。
2.衝動発散を促す。
3.種目選択は患者に任せる。
4.作業の誤りを修正させる。
5.枠組みの明確な作業を提供する。

解答5

解説

回避性パーソナリティ障害とは?

回避性パーソナリティ障害とは、①社会的状況で恥をかくことや、②相手から拒絶される可能性を常に意識している特徴を持つパーソナリティ障害である。

1.× 共同作業を促す必要はない。なぜなら、共同作業は、周りから拒絶されたり、恥をかくことに対するおそれを助長する可能性が高いため。
2.× 衝動発散を促す必要はない。なぜなら、「回避性パーソナリティ障害」ではなく、衝動性の高い障害(境界性パーソナリティ障害)に衝動発散を促す必要があるため。衝動発散は、衝動性を制御する手段として時に必要であり、行動化につながらない程度に促す場合もある。行動化とは、不適切な形で現れた防衛機制の1つで、「行為」によって対処するものである。具体例として、診察室から出ていってしまったり、診察の場で沈黙を続けたりするなどである。
3.× 種目選択は患者に任せる必要はない。なぜなら、回避性パーソナリティ障害患者は、依存的かつ自己決定が難しいため。
4.× 作業の誤りを修正させる必要はない。なぜなら、本人の主体性を阻むことになるため。危険が伴わない誤りであれば指摘せずに見守ることが望ましい。
5.〇 正しい。枠組みの明確な作業を提供する。なぜなら、自由度が低く結果が予測しやすいため初期の作業として取り組みやすいため。

 

 

 

 

 

 

49 作業療法中にみられるてんかん患者の発作症状でないのはどれか。

1.虚空を注視する。
2.強い執着性を示す。
3.眼球が共同偏向する。
4.突然に会話を停止する。
5.急に立ち上がって歩きまわる。

解答2

解説

 てんかん発作は、大脳皮質における神経細胞の異常な興奮によって痙攣などの症状が出現する。発作型を大きく大別すると①部分発作(脳の一部分が過剰興奮して始まる)と、②全般発作(両側大脳半球が同時に過剰放電する)に分けられる。作業療法の場面では、意識消失・けいえん・無目的な行動(自動症)に注意する。

1.〇 正しい。虚空(こくう:何もない空間)を注視するのは、てんかん患者(欠神発作)の発作症状である。
2.× 強い執着性を示すのは、てんかん患者の「発作症状」ではなく性格傾向である。てんかん患者の性格傾向として、執着気質が挙げられる。
3.〇 正しい。眼球が共同偏向するのは、てんかん患者(大発作:強直間代発作)の発作症状である。大発作は、眼球の共同偏向、上転の後に、強直性けいれん・間代性けいれんが起こる。共同偏向とは、両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことである。
4.〇 正しい。突然に会話を停止するのは、てんかん患者(欠神発作)の発作症状である。突然会話を停止するのは、てんかん発作が始まって意識消失を起こしていることを示す。
5.〇 正しい。急に立ち上がって歩きまわる(自動症)は、てんかん患者【複雑部分発作における精神運動発作(側頭葉てんかん)】の発作症状である。

 

 

 

 

 

 

50 就労移行支援事業について正しいのはどれか。

1.利用期間に制限がある。
2.利用者の年齢に制限はない。
3.公共職業安定所が実施主体となる。
4.障害者雇用促進法による事業である。
5.就労継続支援A型事業所への就労を目標とする。

解答1

解説

障害者総合支援法に基づく障害者の就労支援事業

①就労移行支援事業:利用期間2年
【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者
【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。

②就労継続支援A型(雇用型):利用期限制限なし
【対象者】就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な障害者。(利用開始時、65歳未満の者)
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
【サービス内容】通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援。一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能。多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能。

③就労継続支援B型(非雇用型):利用制限なし
【対象者】就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用したが、企業等又は就労継続事業(A型)の雇用に結びつかなかった者
③ ①、②に該当しない者であって、50歳に達している者、又は試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援事業や就労継続支援事業(A型)
の利用が困難と判断された者
【サービス内容】
通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労等への移行に向けて支援。平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする。事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表。

(引用:「就労移行支援について」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。利用期間に制限がある。2年(特例で3年)が限度である。
2.× 利用者の年齢には、「制限ない」のではなく、就業が可能と思われる65歳未満の障害者対して行われる。
3.× 実施主体は、「公共職業安定所」ではなく、市町村となる。
4.× 「障害者雇用促進法」ではなく、障害者総合支援法による事業である。
5.× 「就労継続支援A型事業所」ではなく、一般企業への就労を目標とする。

 

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