第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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※問題の引用:第50回理学療法士国家試験、第50回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

 

 

1 はさみ状肢位(scissors position)を示す痙直型両麻痺児の股関節を他動的に外転した姿勢を図に示す。
 図1と図2のように股関節外転角度が異なるときに影響した筋はどれか。

1.薄筋
2.大内転筋
3.短内転筋
4.長内転筋
5.大腿筋膜張筋

解答1

解説

図1は、膝伸展位のまま、図2は、膝屈曲位のまま股関節外転枝、外転角に影響がある。つまり、膝関節をまたぐ二関節筋であり、膝関節屈曲位にて、緩む(可動域を拡大する)筋を選択する。

1.〇 正しい。薄筋は、【起始】恥骨結合の外側、【停止】脛骨の内側面、停止腱は鵞足に加わる、【作用】股関節内転
膝関節屈曲と内旋である。
2.× 大内転筋は、【起始】恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節、【停止】恥骨筋線、大腿骨粗線の内側唇全長、内側上顆、【作用】股関節内転、前部:屈曲、後部:伸展である。
3.× 短内転筋は、【起始】恥骨下枝の下部、【停止】恥骨筋線の下半、大腿骨粗線の内側唇上部1/3、【作用】股関節内転、屈曲である。
4.× 長内転筋は、【起始】恥骨結節の下方、【停止】大腿骨粗線内側唇の中部1/3、【作用】股関節内転、屈曲である。
5.× 大腿筋膜張筋は、【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転、膝関節伸展である。

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【暗記用】下肢筋の起始・停止・作用・神経を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

 

2 Danielsらの徒手筋力テスト(段階1と0)で、検査者が触診する位置で正しいのはどれか。2つ選べ。
 ただし、すべて検査者の右手で触診をしている。

1.僧帽筋下部
2.腕橈骨筋
3.尺側手根屈筋
4.長母指伸筋
5.前脛骨筋

解答3/5

解説
1.× 図は、「僧帽筋下部」ではなく菱形筋の検査である。僧帽筋下部線維は、腹臥位で上肢を約145°外転、母指を上に向けた状態で、肩甲棘根部とT7~12の間で触診する。
2.× 図は、「腕橈骨筋」ではなく上腕二頭筋の検査である。なぜなら、図は回外位で行っているため。前腕回外位では上腕二頭筋、中間位で腕橈骨筋、回内位で上腕筋を検査できる。
3.〇 正しい。図は、尺側手根屈筋の検査である。図同様、尺側手根屈筋は、検査者は手関節を屈曲位で支え、他方の手で手関節掌側面の尺側(第5中手骨基部)を触診する。
4.× 図は、「長母指伸筋」ではなく長母指外転筋の検査である。ちなみに、長母指伸筋は、解剖学的嗅ぎタバコ入れの尺側(長母指伸筋腱と短母指伸筋腱にかこまれた部位)を触診する。
5.〇 正しい。図は、前脛骨筋の検査である。図同様、前脛骨筋は、腫骨上部外側または足関節の前内側部で触診する。

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3 70代の女性。右利き。脳出血による重度の右片麻痺。長男の家族と同居している。発症後7か月で訪問による作業療法が開始された。初回評価のCOPMの結果を表に示す。
 適切なのはどれか。

1.介入後に遂行度と満足度とを再評価する。
2.ADLである入浴から介入を開始する。
3.麻痺側上肢での調理を実施する。
4.すべて12段階で評価する。
5.猫の世話は家族に任せる。

解答1

解説

COPM(Canadian Occupational Performance Measure:カナダ作業遂行測定)とは?

 COPM(Canadian Occupational Performance Measure:カナダ作業遂行測定)とは、患者が現時点で改善したいと考える活動と、それらの重要度、遂行度、満足度を10点満点で示したものである。第1段階~第4段階まである。第4段階は、再評価となり、各問題の遂行度と満足度をクライエントがもう一度評定する。総スコアを計算し、初回評価時と再評価時の変化を見る。

1.〇 正しい。介入後に遂行度と満足度とを再評価する。評価の手順は、第1段階で毎日の活動であるセルフケア、遊びや学校、レジャーにおいて本人もしくは家族がしたいと思う重要な作業を列挙する。第2段階では、第1段階で決定した活動の優先順位を「10」が最も重要として10段階で評定する。第3段階では、これから取り組む作業を5つ以内に評価者とともに決定し、遂行度と満足度を10段階で評定する。そして、第4段階では、遂行度と満足度を再評価する。
2.× 介入を開始するのは、ADLである「入浴」からではなく、COPMの重要度の高い「猫の世話」や「花の世話」のほうが優先度は高い。また、本症例の入浴動作は、COPMの遂行度・満足度ともに低いが、重度の右片麻痺があるため、この問題への介入から開始するのは困難と考えられる。
3.× 調理を実施するのは、危険を伴うため「麻痺側上肢」ではなく非麻痺側上肢のほうが良い。そのほうが、スムーズに実施でき遂行度・満足度が上昇する可能性が高い。
4.× 「すべて12段階」ではなく、1~10の10段階評価である。
5.× 猫の世話は家族に任せる必要はない。なぜなら、患者にとって重要度が最も高い作業であるため。家族に任せても、患者の満足度は上がらないと考えられ、患者が可能な方法で猫の世話をできるようにアプローチを行う。

 

 

 

 

 

 

4 70歳の女性。右利き。高血圧性脳出血。急性期の頭部CTを下図に示す。
 この患者で最も出現しにくいのはどれか。

1.片麻痺
2.失語症
3.感覚障害
4.運動維持困難
5.中枢性顔面神経麻痺

解答4

解説

 本症例は、被殻・淡蒼球に高吸収域(出血)が認められる。※わずかながら視床まで及んでいる。被殻・淡蒼球は、大脳基底核を構成している。また、内包後脚には、錐体路が通っているため、この部分に障害が及ぶと錐体路障害が起こる。

1.5.〇 片麻痺/中枢性顔面神経麻痺(対側の顔面を含む)は、被殻出血において出現しやすい
2.〇 失語症(優位半球障害時に運動性失語)は、被殻出血において出現しやすい。ちなみに、本症例は右利きであるため、優位半球は左側である。劣位半球障害時は失行・失認が出現しやすい。
3.〇 感覚障害は、被殻出血において出現しやすい。なぜなら、運動・感覚ニューロンの交叉部位より上にある内包を血腫が圧迫するため。本症例は、わずかながら視床(感覚の中継路)まで出血が及んでいるため、感覚障害は出現しやすい。
4.× 運動維持困難は、出現しにくい。なぜなら、主に劣位半球の前頭葉障害で出現しやすいため。ちなみに、運動維持困難とは、閉眼、開口、挺舌などの定常的動作を、指示に従って1つずつ、または2つ以上同時に維持できない症状である。

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5 11歳の男児。Duchenne型筋ジストロフィー。症状が進行し、独歩が困難となり車椅子を導入した。つかまり立ちは可能だが、椅子からの立ち上がりや伝い歩きはできない。床上では座位は安定しており四つ這い移動も可能である。
 厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類でのステージはどれか。

1.ステージ2
2.ステージ3
3.ステージ4
4.ステージ5
5.ステージ6

解答4

解説
1.× ステージ2は、階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とするレベルである。
2.× ステージ3は、階段昇降不能であるが、平地歩行可能、通常の高さのイスからの立ち上がり可能なレベルである。
3.× ステージ4は、歩行可能であるが、イスからの立ち上がり不能なレベルである。
4.〇 正しい。ステージ5は、歩行不能であるが、四つ這い可能なレベルである。
5.× ステージ6は、四つ這い不能だが、いざり移動可能なレベルである。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

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