第50回(H27) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

次の文により6、7の問いに答えよ。
 74歳の女性。慢性閉塞性肺疾患。スパイログラムで1秒率は60%であった。胸部エックス線写真を下図に示す。

6 正しいのはどれか。

1.肺透過性低下
2.肺の過膨張
3.胸水貯留
4.肺水腫
5.心拡大

解答2

解説

 本症例の胸部エックス線写真から、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。したがって、慢性閉塞性肺疾患と考えられる。

1.× 肺透過性は、低下ではなく亢進している。両側肺は、本来の肺野よりも黒く見えている。
2.〇 正しい。肺の過膨張が認められる。画像上からも、肺の過膨張所見(横隔膜の平低化滴状心など)がみられる。
3.× 胸水貯留は認められない。胸水貯留は、①CPangle(肋骨横隔膜角)が、90°よりも大きい(鈍い)場合や消失していたりする所見で疑われる。
4.× 肺水腫は認められない。肺水腫は、①血管の透過性が亢進し、②肺野のレントゲン透過性は低下し(血管も広範囲で白く見えるようになり)、③蝶形陰影を呈することが多い。
5.× 心拡大ではなく、心陰影は縮小している。本症例の胸部エックス線写真からは、膨張した肺に押されているため。

 

 

 

 

 

 

次の文により6、7の問いに答えよ。
 74歳の女性。慢性閉塞性肺疾患。スパイログラムで1秒率は60%であった。胸部エックス線写真を下図に示す。

7 この患者の1回換気量は500mL、予備吸気量は1,700mL、予備呼気量は800mLであった。
 1秒量はどれか。

1.900mL
2.1,500mL
3.1,800mL
4.2,100mL
5.2,400mL

解答3

解説

1秒率(FEV<sub>1.0</sub>%)と努力肺活量の求め方

1秒率(FEV1.0%) = 1秒量(FEV1.0) ÷ 努力性肺活量(FVC)× 100で求められる。

努力性肺活量 = 予備吸気量 + 1回換気量 + 予備呼気量で求められる。

努力性肺活量 = 1,700mL + 500mL + 800mL = 3,000mL

本症例は、スパイログラムで1秒率は60%である。

ゆえに、60% = 1秒量 ÷ 3,000mL × 100

1秒量 = 0.6 × 3,000mL

=1,800mLである。

したがって、選択肢3. 1,800mLが正しい。

 

 

 

 

 

 

次の文により8、9の問いに答えよ。
 32歳の女性。交通事故による左上腕切断(上腕長30%残存)。上腕能動義手の適合検査で、肘継手を屈曲させたときに手先具が口元に届かなかった。

8 考えられる原因はどれか。2つ選べ。

1.左肩屈曲の可動域低下
2.左肩伸展の筋力低下
3.左肩甲骨下制の筋力低下
4.右肩甲骨外転の筋力低下
5.右肩甲帯挙上の可動域低下

解答1/4

解説

 上腕義手のコントロールシステムの手先具操作や肘継手屈曲の動作は、①切断側肩関節の伸展による肘継手のロックの切り替え操作と、②健側の肩甲骨外転によるハーネスからの伝達により行う。

1.〇 正しい。左肩(断端側)屈曲の可動域低下は、手先具が口元に届かなかった原因としてあげられる。切断側肩関節の屈曲不能(屈曲0°)である場合、肘関節最大屈曲位(180°)できても、口元には届かない。
2.× 左肩(断端側)伸展の筋力低下は、肘ロックの切り替え操作に関わるが、肘継手屈曲動作に直接関与しない。
3.5.× 左肩甲骨(断端側)下制の筋力低下/右肩甲帯(健側)挙上の可動域低下は、動作にほとんど関わることはない。
4.〇 正しい。右肩甲骨(健側)外転の筋力低下は、手先具が口元に届かなかった原因としてあげられる。なぜなら、右肩甲骨(健側)外転(健側の肩を前に出してすくめる)ようにして、ハーネスをコントロールするため。ケーブルの支点と力点の距離を伸ばすことに作用し手先具の開閉に関与する。

 

 

 

 

 

 

次の文により8、9の問いに答えよ。
 32歳の女性。交通事故による左上腕切断(上腕長30%残存)。上腕能動義手の適合検査で、肘継手を屈曲させたときに手先具が口元に届かなかった。

9 この患者の肘継手として適切なのはどれか。

解答5

解説

 本症例は、上腕長30%残存の上腕端断端である。

1.× 図は、能動肘ヒンジ継手である。適応は、上腕長断端義手・肘離断用義手である。
2.× 図は、多軸肘ヒンジ継手である。 適応は、前腕極短断端用義手、前腕短断端用義手である。
3.× 図は、倍動肘ヒンジ継手(リンク式である。適応は、前腕極短断端用義手・前腕短断端用義手である。
4.× 図は、能動肘ブロック継手である。適応は、上腕長断端切断・肘関節離断を除く上腕義手、肩義手、肩甲胸郭間切断用義手である。
5.〇 正しい。図は、肘継手部にプーリーユニット(滑車)を装着した継手である。プーリーの利用により、伝達効率が向上し、肩甲胸郭間切断、肩離断、上腕短断端などの高位切断でも適応できる。本症例は、短断端、肘継手最大屈曲が困難で動作効率の低下が考えられるため適応となる。

 

 

 

 

 

 

10 80代の女性。息子の家族と同居。孫の名前を忘れる、日付がわからない、居眠りする、洗濯や掃除を完了せず放置するなどのエピソードが頻繁にあり受診したところ、Alzheimer型認知症と診断され作業療法の指示が出た。
 介入で適切なのはどれか。

1.家事はできるだけ減らすよう指導する。
2.家事を複数同時に行わないよう指導する。
3.休息を今まで以上に多く取るよう指導する。
4.「今日は何月何日ですか」と家族に尋ねさせる。
5.「お孫さんの名前はなんでしたか」と毎回聞く。

解答2

解説

Alzheimer型認知症の特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.× 家事はできるだけ減らすのではなく、続けられるよう指導する。できる限り現在でもできる動作を続けられるように支援する。
2.〇 正しい。家事を複数同時に行わないよう指導する。なぜなら、Alzheimer型認知症は、記銘力低下や記憶障害が低下するため。ワーキングメモリーの障害があり、複数の物事を同時処理するのは難易度が高いため、1つずつ作業をこなしていくように指導する。
3.× 休息を今まで以上に多く取るよう指導する必要はない。なぜなら、休息をとることによる症状の改善は見込まれないため。むしろ、日中の生活を見直し、生活リズムは規則正しく保つよう指導する。
4~5.× 「今日は何月何日ですか」と家族に尋ねさせる/「お孫さんの名前はなんでしたか」と毎回聞くことは意味がない。むしろ、患者の不安を助長し、患者の自尊心を傷つける可能性がある。

 

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