第50回(H27) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題91~95】

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91 頸椎椎間板ヘルニアについて正しいのはどれか。

1. 女性に多く発症する。
2. 60〜70代に好発する。
3. 下肢症状より上肢症状で始まることが多い。
4. C6、7間の外側型ヘルニアでは腕橈骨筋反射が亢進する。
5. 座位で両肩関節を過外転すると橈骨動脈の拍動が減弱する。

解答3

解説

1.× 「女性」ではなく、男性に多く発症する。
2.× 「60〜70代」ではなく、30~50歳代に好発する。
3.〇 正しい。下肢症状より上肢症状で始まることが多い。なぜなら、頸椎椎間板ヘルニアの好発部位は、C5/C6が最も多く、次いでC6/C7であるため。そのレベルに応じた症状(片側もしくは両側の上肢の疼痛やしびれ)が生じる。
4.× C6、7間の外側型ヘルニアでは、「腕橈骨筋反射が亢進」ではなく、上腕三頭筋反射低下する。なぜなら、下位運動ニューロンの障害であるため。また、C6/C7間の外側型ヘルニアでの障害神経は、C7神経根である。そのため、腕橈骨筋反射ではなく、上腕三頭筋反射が低下する。
5.× 座位で両肩関節を過外転すると橈骨動脈の拍動が減弱するのは、胸郭出口症候群である。ちなみに、座位で両肩関節を過外転すると橈骨動脈の拍動が減弱する方法は、Wrightテスト(ライトテスト)である。

 

 

 

 

 

92 Duchenne型筋ジストロフィーの特徴で正しいのはどれか。

1. 下肢筋力が上肢筋力より早く低下する。
2. 出生時から筋緊張低下がみられる。
3. 15〜20歳で歩行不能となる。
4. 常染色体劣性遺伝である。
5. ミオトニア現象を認める。

解答1

解説

1.〇 正しい。下肢筋力が上肢筋力より早く低下する。Duchenne型筋ジストロフィーに特徴的な徴候として、Gowers徴候(ガワーズ徴候:登攀性起立)がある。この徴候は、手で膝を押しながら大腿を除々によじ登り立ち上がる。下肢筋力が上肢筋力より早く低下するため、このような徴候がみられる。
2.× 「出生時から」ではなく3歳ごろから筋緊張低下がみられる。出生時から筋緊張低下がみられるのはダウン症である。
3.× 「15〜20歳」ではなく、10歳ごろから歩行不能となる。
4.× 原因は、「常染色体劣性遺伝」ではなくX染色体上のジストロフィン遺伝子の欠損である。
5.× ミオトニア現象は、筋強直性ジストロフィーに認める。ミオトニアとは、骨格筋を収縮させた後、刺激がなくなれば、正常な筋は即座に弛緩するが、ここで筋の収縮(筋強直)が一定時間続くことである。

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93 筋萎縮性側索硬化症にみられるのはどれか。

1. 筋固縮
2. 痛覚脱失
3. 測定異常
4. 線維束攣縮
5. 筋の仮性肥大

解答4

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× 筋固縮は、パーキンソン病でみられる。
2.× 痛覚脱失は、糖尿病性神経障害など、末梢感覚神経障害でみられる。
3.× 測定異常は、小脳障害でみられる。
4.〇 正しい。線維束攣縮がみられる。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上・下位の運動ニューロンのみが障害されるため。線維束攣縮とは、小さく、かつ局所的な、皮膚下に観察することが可能な不随意な筋肉の収縮及び弛緩運動である。
5.× 筋の仮性肥大は、Duchenne型筋ジストロフィーでみられる。

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94 急性膵炎について正しいのはどれか。

1. 膵石がみられる。
2. 60歳以上の女性に多い。
3. アルコール性が最も多い。
4. 初期から糖尿病を合併する。
5. 重症での死亡率は1%未満である。

解答3

解説

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

1.× 膵石は、慢性膵炎でみられる。
2.× 「60歳以上の女性」ではなく、50歳代の男性に多い。
3.〇 正しい。アルコール性が最も多い。次いで胆石が続く。
4.× 糖尿病を合併するのは、慢性膵炎である。これを膵性糖尿病といわれる。膵ランゲルハンス島の減少により引き起こす。
5.× 重症での死亡率は、「1%未満」ではなく、適切に治療を行った場合でも8.9%であるとする報告がある。厚生労働省研究班による急性膵炎の全国調査(2003年)では重症急性膵炎の死亡率は8.9%と予後不良な疾患であり、約20%の症例で再発すると報告されている(※引用:「集学的治療により救命し得た重症急性膵炎の一例」著:石川 剛様より)

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95 右心不全の直接的原因として正しいのはどれか。

1. 高血圧
2. 肥大型心筋症
3. 僧帽弁閉鎖不全症
4. 原発性肺高血圧症
5. 大動脈弁閉鎖不全症

解答4

解説

 心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの。
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

 

1.× 高血圧は、左心不全を引き起こす。高血圧による心臓の代償的変化として、最初は左室の求心性肥大が認められる。最終的には、左室機能は障害される。
2.× 肥大型心筋症は、心不全に至ることは少ない。肥大型心筋症とは、肥大心筋の硬化に伴う拡張機能障害(拡張期充満圧の上昇を招く)である。流出路狭窄により血圧の低下は来すが、左心室内腔は減少するので、前負荷(静脈環流量)も低下し、体循環系にうっ血は来さない。
3.× 僧帽弁閉鎖不全症は、左心不全を引き起こす。なぜなら、左房・左室に容量負荷を来すことで、左心から全身への拍出力が低下し、肺循環系にうっ血が生じるため。
4.〇 正しい。原発性肺高血圧症は、右心不全を引き起こす。なぜなら、右心から肺への拍出力が低下し、体循環系にうっ血が生じるため。原発性肺高血圧症とは、肺高血圧症のうち、原因疾患がないにもかかわらず、肺小動脈が狭窄し肺動脈圧が上昇した病態である。平均年齢40歳ぐらいの比較的若い女性に多く、進行性である。
5.× 大動脈弁閉鎖不全症は、左心不全を引き起こす。なぜなら、大動脈弁逆流により左室の容量負荷が生じ、左心から全身への拍出力が低下するため。

 

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