第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41 がん患者の緩和ケア病棟におけるリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. 病名告知を前提として理学療法を行う。
2. 肺癌の患者では呼吸介助は禁忌となる。
3. 疼痛に対して温熱療法を行うことはない。
4. リンパ浮腫に対して理学療法は行わない。
5. 患者の意思に合わせて理学療法の内容を変更する。

解答5

解説

1.× すべての患者に病名告知を前提として理学療法を行うのは不適切である。なぜなら、緩和ケアを受けるにあたって患者本人や家族の意向によって告知がなされないこともあるため。
2.× 肺癌の患者でも呼吸介助を行う。なぜなら、肺癌による呼吸困難が伴うため。
3.× 疼痛に対して温熱療法を行う。一般的にはがん患者(悪性腫瘍)には、温熱療法は禁忌とされているが、痛みやその他苦痛な症状を緩和する観点、患者のニーズに対応するという観点から行うことが多い。
4.× リンパ浮腫に対して理学療法(患肢の挙上、弾性包帯・弾性ストッキングによる圧迫、マッサージ、関節可動域訓練など)を行う。
5.〇 正しい。患者の意思に合わせて理学療法の内容を変更する。なぜなら、容態が変化するため。

緩和ケアにおける理学療法の目的

緩和ケアにおける理学療法は,回復を目的としたトレーニングとは異なる。回復が望めない中にあってその苦痛の緩和に努め,残された機能を最大限に生かし,安全な生活を支えることが必要である。また,残された機能を生かし支えることは,ひいては患者や家族の実際的ニーズや希望を支えることにもなる。さらに,その過程においてさまざまな患者の訴えに心を傾け,患者に寄り添うことは,理学療法士が提供できる大切な心のケアと考える。

①疼痛・苦痛の緩和:リハにおいてもまず取り組む課題である。(安楽肢位、リラクゼーション、物理療法、補装具の検討、電動ベッドなどの検討)
②ADL 能力維持・援助:特に排泄動作に関する要望が多い。(移動能力維持、環境設定、ADL訓練、介助法の指導)
③精神面の援助:死を受け入れていくうえでも「どのように生きるか」が重要である。
④家族への援助:家族から要望があれば介助方法や援助方法(マッサージの方法など)を伝達する。
⑤廃用性変化の予防・全身機能維持:リハが日常生活にリズムをつくる。
※(参考:「緩和ケアにおけるコメディカルの役割と人材の育成」著:下稲葉 主一(栄光病院リハビリテーション科))

 

 

 

 

 

42 全身持久力トレーニングの長期効果について誤っているのはどれか。

1. 血圧の低下
2. 心拍出量の増加
3. 最大酸素摂取量の増加
4. 骨格筋毛細血管密度の減少
5. 動静脈酸素含有量較差の増加

解答4

解説

1.〇 正しい。血圧の低下(高血圧症)に効果がある。
2.〇 正しい。心拍出量(1分間に心臓から送り出す血液量のこと)の増加に効果がある。安静時運動時それぞれの心拍出量増大を認める。
3.〇 正しい。最大酸素摂取量の増加に効果がある。肺からの酸素の取り込み、心臓などの循環機能などが影響する。
4.× 骨格筋毛細血管密度の「減少」ではなく増加する。なぜなら、骨格筋内での酸素の利用効率が高まるため。骨格筋毛細血管密度は増大し、筋線維当たりの毛細血管数が増加する。
5.〇 正しい。動静脈酸素含有量較差(脈と静脈における血中酸素量の差)の増加に効果がある。なぜなら、骨格筋の酸素の利用効率が高まるため。

 

 

 

 

43 正常歩行について正しいのはどれか。

1. 股関節は1歩行周期に伸展と屈曲とが2回生じる。
2. 膝関節は1歩行周期に伸展と屈曲とが1回生じる。
3. 足関節は1歩行周期に背屈と底屈とが2回生じる。
4. 一側下肢の立脚相と遊脚相の割合は7:3である。
5. 高齢者では歩行比が大きくなる。

解答3

解説

1.× 股関節は1歩行周期に伸展と屈曲とが、「2回」ではなく1回生じる。
2.× 膝関節は1歩行周期に伸展と屈曲とが、「1回」ではなく、2回(二重膝作用:ダズルニーアクション)生じる。
3.〇 正しい。足関節は1歩行周期に背屈と底屈とが2回生じる。
4.× 一側下肢の立脚相と遊脚相の割合は、「7:3」ではなく6:4である。
5.× 高齢者では歩行比(歩幅と単位時間当たりの歩数との比のこと。歩行比=歩幅 ÷ 歩行率で求められる。)が、「大きくなる」のではなく、やや低下する。高齢者の歩行では、「歩行速度・歩幅・歩行率」が減少する。

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44 歩行率で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 歩行比ともいう。
2. 身長で補正する。
3. 幼児では高齢者より大きい。
4. 単位時間当たりの歩数を意味する。
5. 加齢による変化は歩幅より大きい。

解答3/4

解説

 歩行率(歩調・ケイデンス)とは、単位時間内(1分間)の歩数を指す。つまり、足を振り出すペース・リズムの速さである。

 

1.× 歩行率と歩行比は別物である。歩行比とは、歩幅と単位時間当たりの歩数との比のこと。「歩行比=歩幅÷歩行率」で求められる。
2.× 歩行率は、身長で補正しない。なぜなら、歩行率(歩調・ケイデンス)とは、単位時間内(1分間)の歩数を指すため。
3.〇 正しい。歩行率は、幼児では高齢者より大きい。幼児では歩幅は小さく歩行率は高く、高齢者では歩幅・歩行率ともに減少する。
4.〇 正しい。単位時間当たりの歩数を意味する。歩行率(歩調・ケイデンス)とは、単位時間内(1分間)の歩数を指す。
5.× 加齢による変化は歩幅より大きい。歩行率および歩幅は年齢に関連しており、年齢が高くなるにつれて双方とも減少(特に歩幅の減少が大する。高齢者の場合、筋力低下が歩幅減少の要因とされる。

 

 

 

 

 

45 深部腱反射と反射中枢の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 下顎反射 — C1〜4
2. 上腕二頭筋反射 — C7、8
3. 回内筋反射 — C6〜T1
4. 下肢内転筋反射 — T12、L1
5. アキレス腱反射 — L5〜S2

解答3/5

解説

1.× 下顎反射は、「C1〜4」ではなくである。
2.× 上腕二頭筋反射は、「C7、8」ではなくC5~6である。
3.〇 正しい。回内筋反射は、C6〜T1である。
4.× 下肢内転筋反射は、「T12、L1」ではなくL3~4である。
5.〇 正しい。アキレス腱反射は、L5〜S2である。

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