第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41 患者がある方向へ運動しようとする際に、運動を行う直前に理学療法士が反対方向へ徒手的な刺激を加えることで、目的とする運動が誘導されやすくなる。
 この現象に関与しているのはどれか。

1. 相反抑制
2. 伸張反射
3. 屈曲反射
4. 遠心性模写
5. 作用・反作用の法則

解答2

解説

1.× 相反抑制とは、筋を収縮させる際に、その筋の拮抗筋が弛緩することである。例えば、肘関節屈曲する際、拮抗筋である上腕三頭筋が弛緩するといった仕組みである。
2.〇 正しい。伸張反射とは、外力により急に筋が引き伸ばされるとその筋が収縮する反射のことである。つまり、目的の筋の伸張方向=反対の方向に外力を加えることで、収縮運動が起こりやすくなっている。
3.× 屈曲反射とは、四肢の皮膚に強い刺激(痛み刺激)を加えると、その肢が屈曲する反射である。
4.× 遠心性模写(遠心性コピー)とは、脳から筋への運動指令信号の模写(コピー)である。このコピー信号により、運動によって起きる外界からの知覚が予測される。予測された知覚と実際の外界からの知覚との比較により、主体的に運動しているという感覚に関わる。
5.× 作用・反作用の法則とは、運動の第3法則である。ある物体Aがある物体Bに力を加えた際には、「AもBから逆向きに同じ大きさの力を加えられる」という法則である。

 

 

 

 

 

42 等尺性運動で誤っているのはどれか。

1. 関節運動を伴わない筋収縮である。
2. 等張性運動に比べて血圧が上昇しやすい。
3. 等運動性運動に比べて筋力の増強効果が小さい。
4. 等張性運動に比べて収縮時の筋血流は減少する。
5. 等張性運動に比べて筋持久力の増強効果が大きい。

解答5

解説

1.〇 正しい。等尺性運動は、関節運動を伴わない筋収縮である。
2.〇 正しい。等尺性運動は、等張性運動に比べて血圧が上昇しやすい。毛細血管圧迫による血流遮断が起こり血圧の上昇がしやすいのが特徴である。
3.〇 正しい。等尺性運動は、等運動性運動に比べて筋力の増強効果が小さい。等運動性運動とは、等速性運動と同義である。バイオデックスなどの特殊機器を用いた一定速度での運動である。
4.〇 正しい。等尺性運動は、等張性運動に比べて収縮時の筋血流は減少する。毛細血管圧迫による血流遮断が起こり血圧の上昇がしやすいのが特徴である。
5.× 等尺性運動は、等張性運動に比べて筋持久力の増強効果が小さい。等張性収縮は、筋の収縮と弛緩の反復によるポンプ効果で、血液循環はよくなる特徴を持つ。

 

 

 

 

43 FBS(functional balance scale)で正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 14項目からなる。
2. 得点が高いほどバランス能力は高い。
3. 1項目は4段階の評定尺度で判定する。
4. 転倒リスクのカットオフ値は52点である。
5. 外乱負荷への反応を中心とした検査である。

解答1/2

解説

1.〇 正しい。14項目からなる。
2.〇 正しい。得点が高いほどバランス能力は高い。
3.× 1項目は、「4段階」ではなく5段階の評定尺度で判定する。
4.× 転倒リスクのカットオフ値は、「52点」ではなく35点である。カットオフ値は、①46点以上(病棟内自立判定基準)、36点以上(病棟内見守り判定基準)である。45点以下では複数回の転倒発生率が高くなり、35点以下ではさらに転倒リスクが高くなる。

5.× 外乱負荷への反応の検査は含まれていない

FBS(functional balance scale)

バランス能力の低下を発見するスクリーニング検査である。

14項目について、0~4点の5段階で評価する。

つまり、56点満点である。

得点が高いほどバランス機能良好である。

一般的には、Berg Balance Scale(BBS)を指す。

 

 

 

 

 

44 6分間歩行テストで誤っているのはどれか。

1. テストは2回施行する。
2. 被検者の横に並んで歩く。
3. 自覚症状の変化を記録する。
4. 被検者に残りの時間を伝える。
5. 6分間の総歩行距離で評価する。

解答2

解説

1.〇 正しい。テストは2回施行する。前回との比較のため,2回以上の施行が必要である。
2.× 被検者の横に並んで歩く必要はない。なぜなら、検査者のペースを乱すため。転倒の可能性が高い場合は、斜め後ろについて歩く。
3.〇 正しい。自覚症状の変化を記録する。歩行距離だけでなく「血圧・心拍数・SpO2・自覚的運動強度(Borgスケール)など」も測定する。
4.〇 正しい。被検者に残りの時間を伝える。検査中、検査者は1分ごとに声かけを行う。
5.〇 正しい。6分間の総歩行距離で評価する。運動耐容能の検査である。

6分間歩行テスト

運動耐容能の検査である。標準的には、30mの直線コースを往復する。歩行距離だけでなく「血圧・心拍数・SpO2・自覚的運動強度(Borgスケールなど)」も測定する。検査中、検査者は1分ごとに声かけを行う(声のかけ方には標準的なものが示されている)。被験者は疲労や息切れを感じたら、立ち止まることも可能である。大きくふらついたり、呼吸困難が増悪したり、胸痛を訴えるなどした場合は検査を中止する。

 

 

 

 

 

45 FIMの評定で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 食事1点:咀嚼や嚥下は可能であるが、食べ物を口に全く運ばない。
2. トイレ動作1点:日中6 回修正自立で行い、夜間2回全介助で行っている。
3. 排便管理4点:坐薬を月に4回挿入してもらっている。
4. 移動4点:車椅子で50m以上自走できるが曲がるたびに介助が必要となる。
5. 記憶2点:よく出会う人を認識し、日課を思い出せるが、命令に従えるのは1段階までである。

解答1/2

解説

1.〇 正しい。咀嚼や嚥下は可能であるが、食べ物を口に全く運ばない場合、全介助と評価できるため、食事1点である。
2.〇 正しい。日中6 回修正自立で行い、夜間2回全介助で行っている場合、点数が低い方で評価されるため、トイレ動作1点(夜間全介助)である。
3.× 坐薬を月に4回挿入してもらっている場合(週に1~2回以下)、「排便管理4点」ではなく、排便管理5点である。ちなみに、排便管理4点は、「隔日または毎日」挿入介助を要する場合である(リハビリテーション基礎評価学第1版増補p298より)。また、座薬を挿入するだけの介助なら3点以下には下がらない。
4.× 車椅子で50m以上自走できるが曲がるたびに介助が必要となるのは、手で触れる以上の介助が必要(中等度介助:1/4程度の自立度)と判断でき移動3点である。3/4以上患者が行えれば4点である。
5.× よく出会う人を認識し、日課を思い出せるが、命令に従えるのは1段階までである場合、「記憶2点」ではなく、少なくとも3~4点と評価できる。記憶の評価は、①よく会う人を認識している、②日課を覚えている、③他者からの依頼を実行する、の3項目である。命令に従えるのは、③に該当する。本症例の場合、3項目中2項目については自立しているため3~4点となる。

 

2 COMMENTS

錆兎

いつも解説用・訂正用として使っていて助かっております!
問45の3)の排便管理:4点のことですが、リハビリテーション基礎評価学第1版増補p298によれば、「月に4回」ということは「週に1~2回以下」ということなので5点だと思います。隔日または毎日の頻度でしたら4点です。

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大川 純一

いつもコメントありがとうございます。

参考文献と詳細載せていただき非常に助かりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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