第49回(H26) 作業療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41 アルコール依存症の患者が、作業療法の際に「お酒の飲み方以外は何も問題はない」と主張した。
 この防衛機制はどれか。

1.昇華
2.退行
3.投射
4.否認
5.抑圧

解答4

解説

防衛機制とは?

防衛機制とは、人間の持つ心理メカニズムであり、自分にとって受け入れがたい状況や実現困難な目標に対して、自我を保つために無意識で発動する心理的な機構である。防衛機制には、短期的には精神状態を安定させる作用があるが、長期的にみればかえって精神を不安定にさせてしまうものもある。

1.× 昇華は、抑圧された願望を文化的、社会的に認められた方法(例えば勉学、スポーツ、芸術活動など)に転化させることをいう。
2.× 退行とは、より低い発達段階に逆戻りする、いわゆる「子どもがえり」のことである。依存が目立つよういなる。
3.× 投射とは、自分の欲望や感情を他者に見出すことをいう。例えば、自分がある人を嫌っているのに、逆にその人が自分を嫌っているとするものである。
4.〇 正しい。否認とは、明らかに問題となっていることをないことのように考え振る舞うことをいう。アルコール依存症には否認や過剰な頑張りなどの特有の心理がある。アルコール依存症の患者が、作業療法の際に「お酒の飲み方以外は何も問題はない」と主張しているものは否認に該当する。
5.× 抑圧とは、ある願望と関係する出来事や考えなどを抑えつけて意識しないようにすることである。

類似問題です↓
【OT/共通】防衛機制についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

42 認知症患者の作業療法中にみられやすいのはどれか。

1.過干渉
2.誇大性
3.集中性
4.立去り
5.綿密性

解答4

解説
1.× 過干渉とは、ある対象に対し、必要以上に干渉することをいう。教育場面において、母親が子供に行うことが多く、過干渉を受けた子供だけでなく母親にはしばしば双極性障害の躁状態とみられることもある。
2.× 誇大性とは、非現実的な優越感(他者よりも優れた自分立場)をさし、ナルシシストが軽蔑、劣等感、独自性を用いて他人を見る時に発生する。双極性障害の躁症状統合失調症の誇大妄想があるときにみられる。
3.× 認知症患者では、集中性は欠如することが多い。
4.〇 正しい。立去りは、認知症患者の作業療法中にみられやすい。認知症患者は、興味・関心の低下、集中力の維持困難のため、作業の場から立ち去ってしまうことがある。
5.× 綿密性(めんみつせい)とは、詳しくて、細かなこと。 注意がすみずみまでいきとどいて、手抜かりがないことをいう。認知症患者は、知的能力、集中力の低下により、綿密性はみられにくい。

 

 

 

 

 

43 統合失調症の回復期前期の患者に適切な活動はどれか。

1.仲間作り
2.生活管理
3.欲求の充足
4.役割の体験
5.身体感覚の回復

解答5

解説

1.× 仲間作り(他者との関係作り)は、維持期の課題である。なぜなら、回復期前期には負担が大きいため。維持期は、デイケア通所から就業まで、様々なレベルで社会復帰をしている患者の生活の質の維持や向上を図る時期である。初期にはまず精神状態が安定しているかどうかをチェックする。
2.× 生活管理は、維持期の課題である。生活管理とは、服装の管理(清潔を保つ)、金銭管理、服薬管理など、退院後の生活に必要な管理の能力を指す。
3.× 欲求の充足は、基本的な生活リズムが回復しつつある亜急性期の課題である。
4.× 役割の体験は、維持期の課題である。役割の体験により自尊心を高める。
5.〇 正しい。回復期前期は、消耗状態が軽減してきた時期である。ストレッチなどの軽い運動を行うことにより、活動量を少しずつ増やしたり、身体感覚の回復を図る。

”統合失調症とは?”

統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。

(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

 

 

 

 

 

 

44 認知・思考障害の強い統合失調症患者に対する認知行動療法で適切なのはどれか。

1.考えを文字にして表す。
2.一日の活動を記録して振り返る。
3.コラム法を用いて状況を吟味する。
4.問題行動を思い返して内省を深める。
5.相手の気持ちや状況の理解に焦点を当てて振り返る。

解答1

解説
1.〇 正しい。考えを文字にして表すことは、認知・思考障害の強い統合失調症患者に対する認知行動療法で適切である。なぜなら、自分の考えを明確にでき、治療者と今何を話題にしているのかがはっきりするため。
2.× 一日の活動を記録して振り返ることは困難である。特に、「振り返ること(意味づけすること)」の部分において、認知・思考障害の強い統合失調症患者には困難で不安を助長する恐れがある。
3.× コラム法とは、嫌な感情が起こった時の状況、気分、自動思考などを表(コラム)に記述し、それを改めるような思考を促すものである。認知・思考障害の強い統合失調症患者には、困難であるため不安を助長する恐れがある。
4.× 問題行動を思い返して内省することは困難である。特に、「思い返す」部分において認知・思考障害の強い統合失調症患者には困難で不安を助長する恐れがある。
5.× 相手の気持ちや状況の理解に焦点を当てて振り返ることは困難である。特に「状況の理解」の部分において、認知・思考障害の強い統合失調症患者には困難で不安を助長する恐れがある。

 

 

 

 

 

 

45 うつ病患者の作業療法の注意点について正しいのはどれか。

1.長い工程を選ぶ。
2.積極的に努力を促す。
3.なじみの活動を選ぶ。
4.自発性意欲を支援する。
5.リーダー役を割り振る。

解答4

解説

 うつ病の作業療法について、うつ病では意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。そのため、負荷が小さく、自信を回復させるような作業が適切である。病前のようには作業ができないことから自責や自信を無くしてしまうことがあるため配慮が必要である。

1.× 「長い」ではなく、短い工程を選ぶ。なぜなら、疲労感を感じやすいため。
2.× 「積極的に努力を促すもの」ではなく、安全で受け身的で非競争的なものがよい。なぜなら、努力を促すことは、焦りや無力感を引き起こすことになるため。
3.× 「なじみの活動」ではなく、未経験のもので小さな成功を積み重ねるものを選ぶ。なぜなら、なじみの活動を行うと、病前のようにうまくできないことが自覚され、かえって自身を失うことになるため。
4.〇 正しい。自発性意欲を支援する。自発性意欲が出てきたら、無理をしないように配慮しながら支援するのがよい。
5.× リーダー役を避ける。なぜなら、心理的な負担が大きく、うまくできない場合に自信を喪失につながるため。

うつ病患者に積極的に説明するべき事項

かかりやすい:几帳面で完璧主義、責任感が強い人が多い。

うつ病の特徴:意欲低下、精神運動抑制などの症状のため、自己評価が低く、疲労感が強い。

①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること。
②重要事項の判断・決定は先延ばしにする。
③自殺しないように約束してもらうことなど。

【作業基準】
①工程がはっきりしている。
②短期間で完成できる。
③安全で受身的で非競争的である。
④軽い運動(いつでも休憩できる)

【対応】
①気持ちを受け入れる。
②共感的な態度を示す。
③心理的な負担となるため、激励はしない。
④無理をしなくてよいことを伝える。
⑤必ず回復することを繰り返し伝えていく。
⑥静かな場所を提供する。

 

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