第49回(H26) 理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 Parkinson病に対するUPDRSを用いた理学療法の評価の説明で正しいのはどれか。

1. 3段階の定性尺度で評価する。
2. 安静時振戦はoff時に評価する。
3. 着衣はon時とoff時に分けて評価する。
4. 歩行中のすくみはon時のみで評価する。
5. 得点が高いほど活動性が高いことを意味する。

解答3

解説

 パーキンソン病統一スケール(Unified Parkin-son’s Disease Rating Scale:UPDRS)は、1987年にパーキンソン病の方の病態把握のための評価尺度としてFahnらにより開発された。認知・情動状態(知的機能)、ADL(歩行)、運動機能(姿勢)、薬剤の副作用の項目(ジスキネジア)を評価する。全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度である。

 

1.× 「3段階の定性尺度」ではなく、全42項目を0~4の5段階で行い、評価尺度は順序尺度評価である。
2.× 安静時振戦は、「off時」ではなく、on時に評価する。なぜなら、運動能力はon時に検査し、日常生活動作はon/off時に分けて検査するなど、症状を細かく評価することが決まっているため。
3.〇 正しい。着衣はon時とoff時に分けて評価する。日常生活動作(着衣)はon/off時に分けて検査する。
4.× 歩行中のすくみは、「on時のみ」ではなく、off時でも評価する。日常生活動作(歩行のすくみ)はon/off時に分けて検査する。
5.× 得点が高いほど活動性が、「高いこと」ではなく低いことを意味する。なぜなら、各評価項目では正常や機能障害がみられない場合を0点としているため。

 

 

 

 

 

27 再燃を繰り返している多発性硬化症患者において、ステロイドパルス療法後に介助での座位が可能となり、理学療法が開始された。
 適切なのはどれか。

1. スクワット運動を行う。
2. 座位バランスの安定化を促す。
3. 自主練習として伝い歩きを指導する。
4. 疼痛を伴うときには温熱療法を行う。
5. 重錘を用いた筋力トレーニングを行う。

解答2

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 ステロイドパルス療法とは、ステロイドを短期間で大量に用いることにより作用を強め「劇的な効果を得る」ことを目的とした治療法である。治療全体でのステロイドの用量を減少させることができ、短期間の大量投与は副作用も少ないことが知られている。本症例は、ステロイドパルス療法後であること、理学療法が開始されたことからも急性期であることが考えられる。

1.3.5.× スクワット運動を行う/自主練習として伝い歩きを指導する/重錘を用いた筋力トレーニングを行うのは、優先度が低い。なぜなら、本症例に限らず、多発性硬化症患者においての理学療法は、負荷が小さいものから取り入れ、本疾患特有の熱非耐性(Uhthoff現象)や易疲労性に留意することが必要であるため。現在、介助での座位が可能になったことからも、上記選択肢を行うのは過負荷であると考えられる。
2.〇 正しい。座位バランスの安定化を促す。本症例は、現在、介助での座位が可能である。したがって、座位自立を目指して疲労が蓄積しない程度に座位バランス安定性向上を目指した訓練を行う。
4.× 疼痛を伴うときには温熱療法を行うのは、Uhthoff現象の観点から優先度は低い。Uhthoff現象(ウートフ徴候)とは、長時間の入浴や炎天下の外出などで、あるいは感冒や運動など体温上昇が起こる状態で、視力低下や筋力低下、疲労感、しびれなどの症状が発現または増悪することである。

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28 眼振がみられる患者の体幹筋の協調運動障害に適応となるのはどれか。

1. Epley法
2. Klapp体操
3. Böhler体操
4. Frenkel体操
5. rhythmic stabilization

解答5

解説

1.× Epley法(エプリー法)は、良性発作性頭位めまい症に対する治療体操である。頭位変換によって耳石を卵形嚢に戻すことを目的としている。
2.× Klapp体操(クラップ体操)は、側弯体操のひとつで、匍匐(ほふく)運動を行うものである。
3.× Böhler体操(ベーラー体操)は、脊椎伸展運動によって背筋の筋力強化を目的とした体操である。脊椎圧迫骨折後などが対象である。
4.× Frenkel体操(フランクル体操)は、小脳性協調運動障害の治療として用いられる。しかし、視覚による代償を利用するため、眼振がある場合には適さない。
5.〇 正しい。rhythmic stabilization(PNF:固有受容性神経筋促通法)は、協調性改善を目的に、動筋と措抗筋の交互の等尺性収縮を繰り返して関節固定筋群の同時収縮を促通する。小脳性協調運動障害にも有効である。

 

 

 

 

 

29 6歳までの脳性麻痺で最も多いタイプはどれか。

1. 痙直型
2. 失調型
3. 弛緩型
4. 混合型
5. アテトーゼ型

解答1

解説

脳性麻痺には、①痙直型(約70%)が最も多く、次いで②低緊張型(16.5%)である。よって、選択肢1.痙直型が正しい。

(引用:脳性麻痺児の実態把握に関する疫学調査報告書

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30 Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類で基本的機能筋に指定されているのはどれか。2つ選べ。

1. 上腕三頭筋
2. 上腕筋
3. 円回内筋
4. 橈側手根屈筋
5. 深指屈筋

解答2/5

解説

1.× 上腕三頭筋は、C6B3の分類をする際の筋である。
2.〇 正しい。上腕筋は上腕二頭筋とともに、C5の基本的機能筋(図では、残存運動機能と分類)である。
3.× 円回内筋は、C6B3の亜型分類をする際の筋である。
4.× 橈側手根屈筋は、C6Bの亜型分類をする際の筋である。
5.〇 正しい。深指屈筋は、固有示指伸筋・長母指伸筋とともに、C8の基本的機能筋(図では、残存運動機能と分類)である。

 

2 COMMENTS

名無し

解説を見ればわかるのですが、問30の答えが2,5ではなく2,4になっています。ご確認いただければ幸いです。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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