第45回(H22) 理学療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46. Barthel indexで「椅子とベッド間の移乗」が「最小限の介助」である場合と同じ点数になるのはどれか。2つ選べ。

1.排尿コントロール自立
2.トイレ動作部分介助
3.食事自立
4.入浴自立
5.移動自立

解答1.3

解説

ポイント

「椅子とベッド間の移乗」が「最小限の介助」である場合:10点

1.〇 正しい。排尿コントロール:自立は10点である。
2.× トイレ動作:部分介助は5点である。
3.〇 正しい。食事:自立は10点である。
4.× 入浴:自立は5点である。
5.× 移動:自立は15点である。

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47.筋力増強で誤っているのはどれか。

1.筋力増強には意欲が影響する。
2.筋肥大は赤筋線維で生じやすい。
3.増強法には過負荷の原則が適用される。
4.等速運動では角速度の遅い方が増強効果は大きい。
5.初期の筋力増強は運動単位の発射頻度の増加による。

解答2

解説

1.〇 正しい。筋力増強には意欲が影響する。例として、「火事場の馬鹿力」などである。
2.× 筋肥大は、「赤筋線維」ではなく白筋線維で生じやすい。
3.〇 正しい。増強法には、過負荷の原則が適用される。筋力増強の基本条件としては、過負荷の原則が適用され、①運動の強度、②持続時間、③頻度、④期間がある。
4.〇 正しい。等速運動では、角速度の遅い方が増強効果は大きい。なぜなら、筋収縮速度と発生する張力は反比例するため(Hillの原理)。
5.〇 正しい。初期の筋力増強は、運動単位の発射頻度の増加による。筋力増強の初期は、筋肥大よりも「筋活動の質の向上」がみられる。筋活動の質の向上は、①活動する運動単位の増加、②複数の運動単位の活動の同期化、③運動単位の発射頻度の増加などのことをさす。ちなみに、筋力増強の中期以降は、筋横断面積の増加が起こる。

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48.周術期リハビリテーションの一環で患者に持久力改善のための運動療法を導入することになった。
 リスク管理の一環として栄養状態を評価するのに有用な項目はどれか。2つ選べ。

1.CK
2.γ-GTP
3.白血球数
4.血清総蛋白
5.へモグロビン

解答4.5

解説

周術期とは?

周術期は、入院・手術・回復といった患者の術中だけでなく、前後の期間を含めた一連の期間をいう。周術期リハビリテーションは、術後早期離床や呼吸器ケアを行うことで呼吸器合併症を予防し、迅速に全身状態を回復させることを目的として行われる。

1.× CK(クレアチンキナーゼ)は、骨格筋・心筋・脳などの損傷の程度を推測する指標である。筋ジストロフィーや多発性筋炎で高値となる。
2.× γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)は、肝胆道系の異常を推測する指標である。肝臓の解毒作用(タンパク質分解)に関係する酵素である。
3.× 白血球数は、炎症を推測する指標である。細菌感染症など関与する。
4.〇 正しい。血清総蛋白は、栄養状態を評価するのに有用な項目である。血清総蛋白とは、血清中に含まれているタンパク質の濃度を測定したものである。アルブミンとともに血清総蛋白は、栄養状態や全身状態、肝および腎機能の良否の判断ができる。ちなみに、血清総蛋白(正常値:6.5~ 8.2g/dl)、アルブミン値(正常値:4.1~5.1g/dl)である。
5.〇 正しい。へモグロビンは、栄養状態を評価するのに有用な項目である。ヘモグロビン(血色素)は、赤血球に含まれる成分で鉄が含まれる。赤血球数・ヘマトクリットとともに貧血の種類や程度を反映する。手術による出血、または胃切除後には鉄やビタミンB12の吸収不良により鉄欠乏性貧血や巨赤芽球性貧血を起こす事が挙げられる。したがって、周術期のリスク管理の指標としてヘモグロビンは重要である。

 

 

 

 

 

49.歩行訓練で正しいのはどれか。

1.脳性麻痺では四つ這いが可能となってから開始する。
2.関節リウマチの歩行浴は免荷のため頸下浸水とする。
3.脊髄小脳変性症の失調症では足部へ重錘を負荷する。
4.脳卒中片麻痺では症状が固定してから下肢装具を使用する。
5.二分脊椎で機能レベルがL5の場合はRGO(reciprocating gait orthosis)が適応となる。

解答3

解説
1.× 必ずしも、脳性麻痺では四つ這いが可能となってから開始するという決まりはない。歩行訓練で、発達の促進が行えるのであれば、四つ這いが可能になる前から開始する。
2.× 関節リウマチの歩行浴は免荷のためでも、「頸下浸水」ではなく剣状突起以下とする。なぜなら、関節リウマチ患者に限らず、頸下浸水は溺水のリスクが高いため。鎖骨部まで浸水することで90%の免荷が可能であるが、関節リウマチの場合、造波抵抗を頚椎に負担をかけることは避けたい。ちなみに、頸下浸水は、体表面積測定などの実験で使用することが多い。歩行浴としては深すぎたり、免荷されすぎたりと逆に歩きにくく使用することは少ない。
3.〇 正しい。脊髄小脳変性症の失調症では足部へ重錘を負荷する。これを重錘負荷法という。ほかのアプローチとして、弾性緊縛帯を装着することもある。
4.× 脳卒中片麻痺では症状が、「固定してから」ではなく「固定する前から」下肢装具を使用する。長下肢装具は、大腿から足先までの機能を補い、弛緩性麻痺患者に適応となる。麻痺側への荷重を促すことで、感覚入力や廃用予防、バランスの再獲得などにつながる。脳卒中ガイドライン2015で推奨されている。
5.× RGO(reciprocating gait orthosis:交互歩行装具)が適応となるのは二分脊椎で機能レベルが、「L5」ではなく「Th8〜L2」である。RGO(reciprocating gait orthosis:交互歩行装具)は、二分脊椎などの対麻痺の装具である。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

50.指導者が与えるKR(Knowledge of Results)の持つ作用でないのはどれか。

1.運動反応の変化を引き起こす。
2.運動感覚への注意を喚起する。
3.指導者への依存心を誘発する。
4.学習者の動機付けを高める。
5.認知的負荷を高める。

解答2

解説

1.〇 正しい。運動反応の変化を引き起こす。運動の結果に関する情報を得ることで、運動反応の変化を引き起こす。
2.× 運動感覚への注意を「喚起する」のではなく「低下」する。結果の知識(KR)は、付加的フィードバック(外在的フィードバック)と同義語としてとらえられる。『運動感覚』という定義が曖昧な言葉であるが、『感覚』は内在的フィードバックである。指導者が与えるものではない。また結果の知識(KR)を与え、学習が進むにつれて運動・感覚への注意は低下し、特に意識しなくとも運動可能になる。
3.〇 正しい。指導者への依存心を誘発する。KRが頻回に与えられると学習者はKRに依存的になり、運動反応生成のための内在的な情報処理に十分な注意を向けなくなる。
4.〇 正しい。学習者の動機付けを高める。KRには動機付けの働きがある。
5.〇 正しい。認知的負荷を高める。結果の知識を与えることによって、学習者に「考える」ことを要求し、認知的負荷は高くなる。

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