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31.自律神経障害を伴う脊髄小脳変性症において発症4年目で考えられる病態はどれか。
1.タンデム歩行は可能である。
2.独歩は可能である。
3.支持なしでの立ち上がりは可能である。
4.介助歩行は可能である。
5.寝たきりの状態である。
解答4
解説
脊髄小脳変性症は、自律神経験害、小脳失調、パーキンソニズムを3主徴とし、病変部位によっていくつかの病型に分けられる。本症例の場合、「自律神経障害を伴う脊髄小脳変性症」である。自律神経症状を伴うものは、脊髄小脳変性症の中でも自律神経症状が無いか比較的軽いものに比べて予後が悪く、発症から数年で歩行不能となり、数年~10年で合併症により死亡ないし、心伝導系、血圧の異常変動などにより突然死することもある。
1.× タンデム歩行(継ぎ足歩行)は可能であるとは一概に言えない。むしろ困難であることが多い。なぜなら、脊髄小脳変性症は、小脳失調も伴うため。ちなみに、タンデム歩行(継ぎ足歩行)とは、片側のつま先に反対側の踵をつけて一直線上を歩くことである。
2~3.× 独歩/支持なしでの立ち上がりは可能であるとは一概に言えない。むしろ困難であることが多い。なぜなら、脊髄小脳変性症は、①自律神経障害による起立性低血圧、②小脳症状による歩行障害、③パーキンソン症状による姿勢反射障害などをきたすため。
4.〇 正しい。介助歩行は可能である。発症から数年で歩行不能になるため、本症例(4年目)の歩行介助量は多いが介助歩行可能と考えられる。5~10年で寝たきりになるといわれている。
5.× 寝たきりの状態である可能性は低い。なぜなら、5~10年で寝たきりになるといわれているため。本症例(4年目)は、まだ寝たきりになっている可能性は低い。
脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)
多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)
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【PT】脊髄小脳変性症についての問題「まとめ・解説」
32.注視麻痺をきたす疾患はどれか。2つ選べ。
1.中脳出血
2.小脳半球梗塞
3.慢性硬膜下血腫
4.進行性核上性麻痺
5.筋萎縮性側索硬化症
解答1.4
解説
注視麻痺とは、水平方向または垂直方向のいずれかに両眼を動かすことができない状態である。水平注視の障害が最も多く、中脳病変、水平注視中枢および第Ⅵ神経核を侵す橋病変に起因する。
1.〇 正しい。中脳出血は、垂直注視麻痺が起こる。なぜなら、垂直性注視運動中枢があるため。
2.× 小脳半球梗塞は、非麻痺側への共同偏視が起こる。共同偏視は、被殻出血(病側への共同偏視)や小脳出血(健側への共同偏視)で生じる。共同偏視は、PPRF(水平方向の眼球運動の中枢)の機能障害で起こる。
3.× 慢性硬膜下血腫とは、軽度の外傷により軽微な出血が起こり、経時的に血腫が増大し、やがて症状が現れる。症状として、認知障害、頭痛、尿失禁、歩行障害、片麻痺などである。
4.〇 正しい。進行性核上性麻痺は、下方注視麻痺が起こる。進行性核上性麻痺は、淡蒼球、視床下核、中脳、小脳にある神経細胞が脱落することに起因する疾患である。中年期以降の男性(特に50~70歳)に多く発症し、易転倒性、注視麻痺、パーキンソニズム、認知症(前頭側頭型認知症)などの特徴的な症状を有する。診断にはパーキンソン病、多系統萎縮症、末梢神経障害、大脳基底核変性症など他疾患の除外が必要である。ちなみに、核上性とは、眼球運動を直接支配する神経細胞群(脳神経核)より上位ということを意味している。
5.× 筋萎縮性側索硬化症は、脊髄前角細胞の萎縮が見られ、上位運動ニューロン障害(下肢に強い)と下位運動ニューロンの障害(上肢に強い)の両方を示す。上肢末端(母指球など)から筋萎縮が始まり緩徐に進行する。予後は極めて不良で、一般に発症から3~5年程度で呼吸筋麻痺や誤嚥性肺炎などで死亡するが、人工呼吸器を使用することで10年以上生存する例も多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)
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【PT/OT/共通】運動に関する部位ついての問題「まとめ・解説」
33.Bell麻痺の理学療法で正しいのはどれか。
1.前頭筋には行わない。
2.顔面の感覚再教育を行う。
3.咬筋の筋力増強を中心に行う。
4.舌運動の非対称性を改善する。
5.Synkinesis(随伴運動)を抑制する。
解答5
解説
Bell麻痺は、特発性の末梢性顔面神経麻痺のことである。他の麻痺(中枢性、感染によるRamsay-Hunt症候群、外傷、中耳炎、腫瘍など)を除いたものをさす。顔の片側の筋肉に起こる突然の筋力低下または麻痺がおこる。ちなみに、顔面神経は顔面の筋肉を動かし、唾液腺と涙腺を刺激し、舌の前方3分2の部分で味覚を感じることを可能にし、聴覚に関わる筋肉を制御している。
1.× 前頭筋にも行う。なぜなら、末梢性顔面神経麻痺で前頭筋麻痺による眼瞼下垂、眼裂の狭小がみられるため。ちなみに、前頭筋は両側性支配であるため、中枢性顔面神経麻痺では前頭筋麻痺はおこらない。
2.× 顔面の感覚再教育は優先度が低い。なぜなら、Bell麻痺は運動神経の問題によりおこるため。
3.× 咬筋の筋力増強を中心に行う必要はない。なぜなら、咬筋(咀嚼筋)は三叉神経支配であるため。顔面神経麻痺では、麻痺するのはこれによる支配を受ける片側の表情筋のみである。
4.× 舌運動の非対称性を改善する必要はない。なぜなら、舌運動は舌下神経支配であるため。
5.〇 正しい。Synkinesis(随伴運動)を抑制する。軸索の再生が、前とは違った筋や腺の支配神経域に向かって行われるとSynkinesis(随伴運動、病的共同運動)を生じる。ワニの涙症候群もこれにあたる。
34.脊髄損傷の機能残存レベルと実用性のある筋との組合せで適切なのはどれか。2つ選べ。
1.C4:棘上筋
2.C6:橈側手根伸筋
3.C7:尺側手根屈筋
4.L2:大腿二頭筋
5.L3:大腿四頭筋
解答2.5
解説
1.× 棘上筋は、「C4」ではなくC5である。
2.〇 正しい。橈側手根伸筋はC6である。
3.× 尺側手根屈筋は、「C7」ではなくC8~T1である。
4.× 大腿二頭筋は、「L2」ではなくL5~S2である。
5.〇 正しい。大腿四頭筋はL3である。
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【PT専門のみ】ASIAについての問題「まとめ・解説」
35.脊髄損傷患者の呼吸に対する理学療法の目的でないのはどれか。
1.無気肺の予防
2.肺水腫の予防
3.横隔膜呼吸の促進
4.胸郭拘縮発生の予防
5.気道分泌物の喀出の促進
解答2
解説
脊髄損傷患者の呼吸障害として、①肋間筋麻痺、②呼吸中枢障害などが起こる。つまり、拘束性換気障害に分類される。ちなみに、C4以上の損傷であれば自力での呼吸は困難となるため、気管切開や人工呼吸器が必要となる。
1.〇 無気肺の予防を行う。なぜなら、呼吸筋筋力低下により、気道分泌物などが貯留しやすく、無気肺になりやすいため。気道分泌物の喀出を促進し、無気肺を予防する。ちなみに、無気肺とは、何らかの原因によって、肺含気量の減少および、これに基づく肺容量減少を呈した病態をいう。
2.× 肺水腫の予防は困難である。なぜなら、肺水腫の原因は、主に①左心不全、②肺炎、③低アルブミン血症などで起こるため。つまり、理学療法ではこれらの予防・改善は困難である。そもそも肺水腫とは、肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留を伴った重度の急性左室不全である。
3.〇 横隔膜呼吸の促進を行う。なぜなら、呼吸筋(肋間筋)が麻痺することで、代償的に横隔膜の強化が必要になるため。
4.〇 胸郭拘縮発生の予防を行う。なぜなら、肺や胸郭の弾性が低下するとさらに呼吸障害をきたす恐れがあるため。
5.〇 気道分泌物の喀出の促進を行う。なぜなら、呼吸筋筋力低下により、気道分泌物などが貯留しやすく、無気肺になりやすいため。気道分泌物の喀出を促進し、無気肺を予防する。