【PT/OT/共通】脳性麻痺についての問題「まとめ・解説」

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※問題の引用:厚生労働省より

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

MEMO

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目次 非表示

PT専門

第46回PT 午後14問

4歳の男児。脳性麻痺痙直型両麻痺。図のような理学療法を行っている。訓練目的として誤っているのはどれか。

1.上肢パラシュート反応の促通
2.股関節内転筋の緊張抑制
3.股関節伸展筋の促通
4.体幹伸展筋の促通
5.膝屈曲筋の促通

解答

解説

痙直型両麻痺に対する理学療法

亢進した筋緊張を抑制し、①病的反射の抑制、②適切な反射の促通、③運動パターンの学習を行う。

1.〇 上肢パラシュート反応(保護伸展反応)の促通を訓練目的としている。②適切な反射の促通に該当する。上肢パラシュート反応(保護伸展反応)は、防御的に四肢を伸展して頭部を保護したり、支持して姿勢を安定させようと働く反応である。抱き上げた子どもの体を支えて下方に落下させる、もしくは座位で前方・側方・後方に倒すと、両手を伸ばし、手を開いて体を支える。下方・前方への反応は、6ヵ月頃に出現し生涯続く反応である。
2.〇 股関節内転筋の緊張抑制を訓練目的としている。なぜなら、股関節内転筋は筋緊張が亢進しやすいため。設問の図から検者が股関節外転位に保っているのが読み取れる。また、痙直型両麻痺児の歩行の特徴としても、股関節は内転・内旋位をとりやすい。
3〜4.〇 股関節伸展筋/体幹伸展筋の促通を訓練目的としている。なぜなら、股関節は屈筋群の筋緊張が亢進しやすいため。亢進した筋緊張を抑制し、①病的反射の抑制、②適切な反射の促通、③運動パターンの学習を行う。
5.× 膝屈曲筋の促通を訓練目的として誤っている。なぜなら、脳性麻痺痙直型両麻痺は、膝関節屈曲筋の筋緊張が亢進しやすいため。設問の図でも膝関節伸展位に保つようにアプローチしている。

 

 

 

 

 

 

第46回PT 午後37問

重度の痙直型四肢麻痺児に起こりやすいのはどれか。2つ選べ。

1.前腕回外拘縮
2.中手指節間関節伸展拘縮
3.脊柱側弯変形
4.股関節外転拘縮
5.膝関節屈曲拘縮

解答3,5

解説

痙直型四肢麻痺は大脳の広範囲の障害によって主動筋と拮抗筋が同時に作用し続ける。主動筋、拮抗筋の相反性抑制が起き、筋の機能不全がみられる。下肢に関しては両麻痺と同様の変形(両側股関節内転・内旋、尖足)をきたすことが多い。臨床では、緊張性迷路反射の影響を除いて上肢機能改善をはかるためには、頚部・体幹を垂直(抗重力位)かやや前傾を保持する。

1.× 前腕は、回外ではなく回内拘縮となりやすい。
2.× 中手指節間関節は、伸展ではなく屈曲拘縮となりやすい。
3.〇 脊柱側弯変形は、重度の痙直型四肢麻痺児に起こりやすい。神経疾患や筋疾患に伴って生じる神怪筋性側弯症を合併する。
4.× 股関節は、外転ではなく内転拘縮となりやすい。さらに重度の場合は、脱臼も伴うこともある。
5.〇 膝関節屈曲拘縮は、重度の痙直型四肢麻痺児に起こりやすい。膝関節は屈筋・伸筋の同時収縮で緊張している。主に、膝関節屈曲拘縮になりやすいが、反張膝にもなり得る。

痙直型四肢麻痺の特徴

①筋緊張亢進
②深部腱反射亢進
③病的反射出現
④クローヌス出現
⑤折りたたみナイフ現象

 

 

 

 

 

第47回PT 午後16問

3歳の男児。痙直型右片麻痺。
 図に示す右上下肢の肢位に影響しているのはどれか。2つ選べ。

1.逃避反射
2.陽性支持反応
3.交叉性伸展反射
4.緊張性迷路反射
5.非対称性緊張性頸反射

解答2,5

解説

本症例のポイント

①頸部左回旋に伴い右肘関節屈曲位。
②立位時に右足関節伸展位(陽性支持反応)。

1.× 逃避反射(屈曲反射)は、背臥位の新生児の足底を刺激すると下肢を屈曲させて足をひっこめる反射である。
2.〇 正しい。陽性支持反応は、足底が床に触れると下肢筋の同時収縮が起こり、下肢全体が伸展パターンとなる反応である。正常であれば3〜8ヶ月で消失する。
3.× 交叉性伸展反射は、背臥位で一側の下肢を屈曲し他側を伸展させ、伸展側の下肢を他動的に屈曲すると非刺激側下肢が屈曲位から伸展する反射である。正常であれば、2ヶ月で消失する。
4.× 緊張性迷路反射は、背臥位では伸展緊張が促通され、腹臥位では屈曲緊張が促通される反射である。胎児期後期から、5~6ヵ月まで。
5.〇 正しい。非対称性緊張性頸反射(ATNR)は、背臥位にした子どもの顔を一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。

 

 

第47問PT 午前16問

4歳の女児、脳性麻痺。座位保持姿勢を図に示す。姿勢の特徴で正しいのはどれか。

1.片麻痺が疑われる。
2.重心は前方に偏位している。
3.ハムストリングスの短縮が疑われる。
4.対称性緊張性頸反射の影響がみられる。
5.頸部の立ち直り反応の低下が疑われる。

解答

解説

本症例のポイント

本症例の姿勢は、円背・骨盤後傾がみられ、両側の膝が軽度屈曲している状態である。問題文より、「骨盤後傾の修正」する筋を選択する。したがって、選択肢1.ハムストリングスが正しい。ちなみに、ハムストリングスは、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称で、股関節の伸展と膝関節の屈曲に関与する。短縮すると骨盤前傾・膝関節伸展の動きを妨げる。

【痙直型の特徴】
①機敏性の低下、筋力損失および脊髄反射の亢進など。
②脊髄レベルでの相反神経作用の障害(動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収納や、痙直の強い拮抗筋からの過利な緊張性相反性抑制による動筋の機能不全)
③両麻痺は両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢、体幹の麻痺を伴うことが多い。

1.× 「片麻痺」ではなく、両麻痺が疑われる。両下肢に伸展パターンがみられ、両下肢にも麻痺があると考えられるため。
2.× 重心は、「前方」ではなく後方に偏位している。なぜなら、バランスを保とうと円背・骨盤後傾がみられ、下肢の伸展パターンが出現しているため。
3.〇 正しい。ハムストリングスの短縮が疑われる。なぜなら、両側の膝が軽度屈曲している状態であるため。大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋をあわせてハムストリングスといい、股関節の伸展と膝関節の屈曲に関与する。ハムストリングスが慢性的に短縮すると膝関節屈曲制限が生じ、膝関節伸展の動きを妨げる。ただし、本症例の図だけでは、重力により膝関節軽度屈曲している可能性も考えられる。長坐位を指示し、同様の姿勢を取っていた場合は、ハムストリングスの短縮が疑われる。(※他の選択肢との消去法で考えると、優先的に最もこれが当てはまる)
4.× 対称性緊張性頸反射の影響がみられない。対称性緊張性頸反射は、腹臥位(水平抱き)で頭部を伸展させると、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、上肢は伸展、下肢は屈曲し、頭部を屈曲させると逆に上肢は屈曲、下肢は伸展する反射のことである。ただし、非対称性緊張性頸反射は、陽性である可能性が高い。なぜなら、問題文の図で、顔が向いた方の上肢は伸展位、反対側の上肢は屈曲位になっているように見えるため。非対称性緊張性頚反射は、通常では5か月頃で消失するが、脳性麻痺では長く持続する。非対称性緊張性頸反射(ATNR)とは、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から出現し、生後4~6か月までに消失する。
5.× 頸部の立ち直り反応の低下は考えにくい。なぜなら、座位保持可能であるため。

 

 

 

 

 

 

第48回PT 午後16問

6歳の女児。脳性麻痺痙直型両麻痺。手指の巧緻動作は拙劣だが上肢・体幹の機能障害は比較的軽度で、座位バランスは良好である。両手で平行棒につかまれば椅子から立ち上がることができ、平行棒内立位は片手支持でも安定して保持できる。歩き出そうとすると支持脚股関節、膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。この患者の歩き出しの問題への対処として行う理学療法で適切なのはどれか。

1.バルーン上座位保持練習
2.バルーン上腹臥位での体幹伸展練習
3.台上座位からの立ち上がり練習
4.壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊び
5.低い台に片足を乗せるステップ動作の練習

解答

解説

本症例のポイント

・6歳の女児(脳性麻痺痙直型両麻痺
・手指の巧緻動作は拙劣だが上肢・体幹の機能障害は比較的軽度で、座位バランスは良好である。
・椅子から立ち上がり:両手で平行棒に把持して可能
・平行棒内立位保持:片手支持で安定
・歩行:歩き始めに支持脚股関節・膝関節の屈曲が生じ、尻もちをつきそうになり歩けない。
→本症例は、脳性麻痺痙直型両麻痺である。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。この患者の歩き出しの問題への対処を問われていることからも、悪い動作パターンの改善(歩行パターンの改善)をはかれるものを選択する。

1.× バルーン上座位保持練習は、優先度は低い。なぜなら、本症例の座位バランスは良好であるため。
2.× バルーン上腹臥位での体幹伸展練習は、優先度は低い。なぜなら本症例の立位は安定しており、痙直型両麻痺は下肢に麻痺が強く、下肢へのアプローチの方が優先度は高い。
3~4.× 台上座位からの立ち上がり練習/壁にお尻で寄りかかった立位での風船遊びは、優先度は低い。なぜなら、本症例の立ち上がり・立位は平行棒(手すり)把持にて安全に行えるため。壁にお尻で寄りかかった立位は、股関節・膝関節屈曲を生じさらに歩行パターンの悪化を助長する可能性が高い。
5.〇 正しい。低い台に片足を乗せるステップ動作の練習は、歩き出しの問題への対処として優先度が高い。ステップ動作の練習を行うことで、支持脚の伸展位の促通へとつながる。これにより、支持脚股関節・膝関節の屈曲で後方に重心がある悪い歩行パターンの脱却へとつながる可能性が高い。

 

 

 

 

第48回PT 午後39問

脳性麻痺痙直型両麻痺児の歩行の特徴で正しいのはどれか。

1.重心の上下動が小さい。
2.骨盤の回旋が大きい。
3.股関節の内旋が大きい。
4.歩幅が大きい。
5.歩行率が小さい。

解答

解説

1.× 重心の上下動は、小さいのではなく大きい。なぜなら、柔軟な動きが困難で尖足になりやすいため。
2.× 骨盤の回旋は、大きいのではなく小さい。なぜなら、骨盤・下肢の運動性と支持性が低下するため。
3.〇 正しい。股関節の内旋が大きい。股関節は内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。
4.× 歩幅は、大きいのではなく小さい
5.× 歩行率は、小さいのではなく大きい。歩行率は、単位時間当たりの歩数である。歩幅が小さくなり歩数は減るため、歩行率は大きくなる。

 

 

第49回PT 午前39問

9 5歳の男児。アテトーゼ型四肢麻痺。未定頸で体幹のコントロールは悪く、自力での寝返りと座位保持はできない。臥位姿勢では、下肢のはさみ肢位を伴う後弓姿勢がしばしばみられ、緊張性頸反射と緊張性迷路反射は残存している。
 この児に座位保持装置を作製する際に必要な調整で誤っているのはどれか。

1. ヘッドレストを付ける。
2. リクライニング式にする。
3. 胸ベルトを付ける。
4. 座面を水平に保つ。
5. 骨盤ベルトを付ける。

解答4

解説

本症例のポイント

・5歳の男児(アテトーゼ型四肢麻痺
→アテトーゼ型四肢麻痺では、下肢よりも上肢(頸部)の障害が強い。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。

【頭部のポイント】
未定頸で体幹のコントロールは悪い。
②緊張性頸反射と緊張性迷路反射は残存
→頭部保持のサポートが必要。

【下肢のポイント】
①自力での寝返りと座位保持困難
②下肢のはさみ肢位を伴う後弓姿勢
→下肢伸展筋の緊張が高いため、股関節屈曲位の姿勢を保つ。

1. 〇 正しい。ヘッドレストを付ける。なぜなら、本症例は未定頸で体幹のコントロールは悪いため。ヘッドレストは、頭部のコントロールが不安定な患者に使用され、安定させる機能を持つ。
2. 〇 正しい。リクライニング式にする。なぜなら、未定頚で自力での座位保持が困難であるため。リクライニング式にして背もたれに寄り掛かれるように調整することで安定する。
3. 〇 正しい。胸ベルトを付ける。なぜなら、体幹コントロールが悪いため。
4. × 座面を水平に保つ優先度は低い。座面は、「水平」ではなくやや後ろに傾ける。そうすることで股関節屈曲位を保て下肢伸展筋の緊張抑制に寄与する。
5. 〇 正しい。骨盤ベルトを付ける。なぜなら、骨盤の前方へのずれと、下肢のはさみ肢位の予防ため。ちなみに、体幹ベルトは体幹に巻き支えるものである。

 

 

 

 

第49回PT 午後29問

6歳までの脳性麻痺で最も多いタイプはどれか。

1.痙直型
2.失調型
3.弛緩型
4.混合型
5.アテトーゼ型

解答

解説

脳性麻痺には、①痙直型(約70%)が最も多く、次いで②低緊張型(16.5%)である。よって、選択肢1.痙直型が正しい。

(引用:脳性麻痺児の実態把握に関する疫学調査報告書

1.〇 痙直型が最も多く、四肢麻痺や、上肢の麻痺が軽微な両麻痺を呈す。
2.× 失調型は、運動失調を伴うタイプである。
3.× 弛緩型は、2~3歳頃に他タイプに移行することが多く、数は少ない。
4.× 混合型は痙直型とアテトーゼ型が合わさったタイプである。
5.× 最近は混合型が多く、純粋なアテトーゼ型は減少している。

 

 

 

 

第50回PT 午後13問

13 5歳の男児。脳性麻痺で痙直型四肢麻痺である。粗大運動機能は側臥位までの寝返りが可能。背臥位と背臥位から引き起こしたときの状態を図に示す。
 臨床症状として可能性が低いのはどれか。


1. 足クローヌス陽性
2. 下肢の伸筋共同運動
3. 緊張性迷路反射の残存
4. パラシュート反応陽性
5. 股関節外転の可動域制限

解答4

解説

本症例のポイント

上図:頭部の左回旋に伴い、非対称性緊張性頚反射(ATNR)の影響を受けている。背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から、生後4~6ヵ月まで。

下図:緊張性迷路反射(TLR)の影響(引き起こした際の頭部の過伸展により、伸筋優位になっている状態)を受けている。背臥位では伸展緊張が促通され、腹臥位では屈曲緊張が促通される。胎児期後期から、5~6ヵ月まで。

痙直型四肢麻痺の特徴:筋緊張亢進深部腱反射亢進病的反射出現クローヌス出現折りたたみナイフ現象がみられる。痙直型四肢麻痺は大脳の広範囲の障害によって主動筋と拮抗筋が同時に作用し続ける。主動筋、拮抗筋の相反性抑制が起き、筋の機能不全がみられる。下肢に関しては両麻痺と同様の変形(両側股関節内転・内旋、尖足)をきたすことが多い。臨床では、緊張性迷路反射の影響を除いて上肢機能改善をはかるためには、頚部・体幹を垂直(抗重力位)かやや前傾を保持する。

1.〇 足クローヌス陽性は、深部反射の著明な亢進により生じ、痙直型四肢麻痺に特徴的な症状である。
2.〇 下肢の伸筋共同運動がみられる。なぜなら、体重支持をさせようとすると、陽性支持反応に基づく同時収縮が起こり、下半身を中心に全身的に伸展筋緊張の亢進をもたらすため。
3.〇 緊張性迷路反射(TLR)の残存は、下図からも読み取れる。
4.× パラシュート反応陽性は、臨床症状として可能性が低い。パラシユート反応(保護伸展反応)とは、腹臥位で水平にした状態から頭部を急に下に傾けると、児は両上肢を伸ばして体を支え、墜落を防ぐような肢位をとる反射のことである。中脳レベルの反射で、通常はつかまり立ちの始まる生後9か月頃に出現し生涯持続する。本症例の下図では、引き起こした際に頭を正常な位置に保持できておらず、定頚や座位保持などの運動発達遅滞がうかがえる。現発達段階で、パラシュート反応は出現する可能性が低いと考えられる。
5.× 股関節外転の可動域制限が生じる。両下肢は、痙性のため尖足(両側股関節内転・内旋)となり、股関節外転の可動域が制限される。

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第50回PT 午後28問

28 アテトーゼ型脳性麻痺について誤っているのはどれか。

1. 痙直型より少ない。
2. 原始反射が残存しやすい。
3. 不随意運動を主症状とする。
4. 上肢より下肢の障害が重度であることが多い。
5. 成人以降の二次障害として頸椎症性脊髄症がある。

解答4

解説

1.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、痙直型より少ない。痙直型が最も多い。
2.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、原始反射が残存しやすい。特に、非対称性緊張性頸反射が残存しやすく、左右対称な姿勢がとりにくい。
3.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、不随意運動を主症状とする。アテトーゼは、不随意運動が含まれ、頚部から上肢を中心とした筋緊張をともなう粗大運動である。
4.× 上肢より下肢の障害が重度であることが多いのは、痙直型両麻痺である。アテトーゼ型は、上下肢ともに支持性が低下し、不随意運動は、頚部から上肢にみられることが多い。
5.〇 正しい。アテトーゼ型脳性麻痺は、成人以降の二次障害として頸椎症性脊髄症がある。頚椎症性脊髄症とは、頚椎の変形によって内側の脊髄が圧迫されて、巧級性の低下や手足のしびれが生じる疾患である。

 

 

 

第51回PT 午後36問

36 脳性麻痺の痙直型両麻痺で生じやすい肢位はどれか。

1. 踵足
2. 外反母趾
3. 股関節外転位
4. 股関節外旋位
5. クラウチング肢位

解答5

解説

両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺児の歩行の特徴として、股関節屈曲・内転・内旋、膝関節の屈曲しやすい。したがって、歩行中は、尖足になりやすく、足先から接地し、体幹の側方動揺が大きい。

1.× 踵足は、足の変形の一種で、足関節の背屈拘縮を呈している状態である。痙直型両麻痺は、足関節は底屈位になり尖足を呈することが多い。
2.× 外反母趾とは、母趾が小趾の方に曲がるものである。
3~4.× 股関節外転位/股関節外旋位ではなく、痙直型両麻痺は股関節は屈曲・内転・内旋位となりやすい。
5.〇 正しい。クラウチング肢位である。クラウチ(crouch:かがむ・腰を低くするなどという意味)とは、股・膝関節が屈曲位の姿勢のことをいう。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。

 

 

 

 

第52回PT 午前20問

2歳の女児。痙直型四肢麻痺。臥位では頭部コントロール良好で、背臥位から腹臥位への寝返りが可能である。背臥位と腹臥位での様子を図に示す。この時期に優先して行う理学療法で最も適切なのはどれか。

1. 下肢の筋力増強
2. 介助下での歩行練習
3. 椅子からの立ち上がり練習
4. 立位での陽性支持反射の促通
5. 座位での体幹の立ち直り反応の促通

解答:5

解説

 痙直型脳性麻痺では、錐体路障害による両下肢痙性(両股関節の内転・内旋・膝関節伸展、および尖足)となる。つまり、両下肢の分離運動が困難である。また、両下肢と比較して両上肢の麻痺は軽度である。痙性麻痺を主症状として、筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射亢進、クローヌス出現、おりたたみナイフ現象がみられる。理学療法では、亢進した筋緊張を抑制し、病的反射の抑制、適切な反射の促通、運動パターンの学習を行う。

1.✖ 下肢の筋力増強は優先度が低い。なぜなら、下肢筋力増強は、かえって下肢の筋緊張を亢進させるため。筋力増強より筋緊張の抑制を図るのが適切である。本症例は、筋緊張性迷路反射の残存(腹臥位で上下肢の屈曲位で筋緊張)がみられる。共同運動を抑制し、体幹・四肢の分離運動を行っていく。
2.3.✖ 介助下での歩行練習/椅子からの立ち上がり練習を行うのは時期尚早である。本症例は、現段階では寝返りまで可能であることから、次に目指すべきであるのは「座位の獲得」と考える。
4.✖ 立位での陽性支持反射の促通は優先度が低い。立位での陽性支持反射とは、体幹を支えながら足底をつけて立たせるようにすると、両下肢・体幹が伸展して立位を取ろうとする原始反射の1つである。通常8か月頃までに消失する。したがって、原始反射は本来消失していくものであるため、陽性支持反射を強化して利用することは原則行わない。また、陽性支持反射により、下肢全体の伸展筋の筋緊張が亢進し、股関節伸展・内転・内旋位および足部の尖足を助長させる可能性が高いため不適切である。
5.〇 正しい。 座位での体幹の立ち直り反応の促通は、選択肢の中で最も優先度の高い理学療法である。なぜなら、寝返りの次の発達段階である「座位」に移行するため。

 

 

第53回PT 午後27問

アテトーゼ型脳性麻痺で残存しやすい反射はどれか。

1.Galant反射
2.吸啜反射
3.自動歩行
4.手掌把握反射
5.探索反射

解答:1

解説

アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。また、不随運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

1.〇 正しい。Galant反射(ガラント反射)の消失が遷延している場合、アテトーゼ型脳性麻痺である可能性が高い。Galant反射(ガラント反射)とは、児を腹臥位に抱いた状態で、下部胸椎レベルで脊柱の脇を沿うようにこすり下ろすと体幹を同側に傾ける反射をいう。1~2か月頃に消失する。
2.× 吸啜反射は、正常乳幼児でも陽性となるが、成人の陽性は前頭葉障害両側大脳の広範な障害を疑う。反射は2~3か月頃に消失する。
3.× 自動歩行(自立歩行反射)は、乳児は足の裏が平面に触れると、一方の足を逆の足の前に移動させることによって歩行しようとする。2か月に消失する。
4.× 手掌把握反射は、正常乳幼児でも陽性となるが、前頭葉障害では障害の反対側が陽性となる。手掌把握反射は、手掌に指先を押し付けると握りしめる反射をいう。
5.× 探索反射は、何であれ頬や口をなでるものの方向に頭を向け、頭を移動させることによって目標を探す。4か月に消失する。

 

 

 

第57回PT 午前16問

16 12歳の男児。脳性麻痺痙直型両麻痺。GMFCSレベルⅢで、立位では図のような姿勢を示す。
 治療方針として優先されるのはどれか。

1.長下肢装具を作製する。
2.体幹筋の同時収縮を促す。
3.選択的後根切断術を検討する。
4.歩行練習での介助量を減らす。
5.上肢での支持能力を向上させる。

解答

解説

本症例のポイント

脳性麻痺痙直型両麻痺である。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。

GMFCSレベルⅢ:「歩行補助具を使用して歩くことは可能」である。本症例は、はさみ足(股関節内旋位・膝関節屈曲位)・内反尖足が認められる。痙直型両麻痺の特徴として、体重支持に際し、陽性支持反応にもとづく同時収縮が起こり、下半身を中心に漸進的に伸展緊張の亢進をもたらす(両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢・体幹の麻痺を伴うことが多い)。

1.× 長下肢装具を作製する優先度は低い。なぜなら、GMFCSレベルⅢは、「歩行補助具を使用して歩くことは可能」であるため。本症例は、尖足を認めるため短下肢装具PCW(postural control walker)を検討する。
2.〇 正しい。体幹筋の同時収縮を促す。なぜなら、腹筋群は体幹を安定させ、殿筋群は股関節伸筋・外旋・外転に働くため。同時収縮とは、「屈筋」と、「伸筋」を同時に収縮する現象である。つまり、「体幹筋の同時収縮を促す」とは、「腹筋群と殿筋群の同時収縮の促通を行う」と同義となる。
3.× 選択的後根切断術を検討する優先度は低い。なぜなら、選択的後根切断術における10歳以上の適応は、疼痛緩和などの目的以外は限定的である可能性が示されている(脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版より引用)ため。選択的後根切断術とは、その名の通り、痙縮の原因となる反射の経路を脊髄に入る直前で遮断して痙縮を軽減する治療である。
4.× 歩行練習での介助量を減らす必要はない。なぜなら、GMFCSレベルⅢは、「歩行補助具を使用して歩くことは可能」であるため。本症例は、短下肢装具PCW(postural control walker)を検討し、積極的に下肢に正しい荷重を加えていくことが大切である。
5.× 上肢での支持能力を向上させる優先度は低い。なぜなら、本症例は両麻痺であり、上肢の麻痺は軽度であるため。また、本症例の立位姿勢での図をみても、片手支持にて立位姿勢を保持できている。つまり、上肢の支持能力は十分であると考えられる。したがって、治療方針として優先されるとはいいがたい。

 

 

 

 

第59回PT 午前16問

16 2歳3か月の女児。出生時に頭蓋内出血を合併し脳性麻痺と診断された。現在、四肢の筋緊張は低下し、姿勢や動きの中で両下肢の筋緊張が亢進する。両上肢にアテトーゼ様の動きがありADLは全介助である。両上肢で支持して座位が1分程度は可能である。発達歴は、頸定:10か月、寝返り:1歳2か月、ずり這い:1歳5か月。
 現時点で最も必要な補装具はどれか。

1.歩行器
2.靴型装具
3.電動車椅子
4.座位保持装置
5.普通型車椅子

解答

解説

本症例のポイント

・女児(2歳3か月脳性麻痺)。
・現在:四肢の筋緊張低下、姿勢や動きの中で両下肢が筋緊張亢進する。
両上肢アテトーゼ様の動きあり。
・ADL:全介助(両上肢で支持して座位1分程度可能)
・発達歴は、頸定:10か月、寝返り:1歳2か月、ずり這い:1歳5か月
→本症例は、ずり這いを1歳5か月で獲得した女児(2歳3か月、脳性麻痺)である。両上肢で支持して座位1分程度可能であることから、自力での座位保持(もしくは上肢フリーでの座位保持)が目標となるだろう。ちなみに、脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。失調型やアテトーゼ型などのタイプがある。アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

1.× 歩行器は優先度が低い。なぜなら、現時点での歩行練習は時期尚早であるため。また、本症例の両上肢にアテトーゼ様の動きがあることからも、現時点での歩行器の使用は、難易度が高すぎて困難な可能性が高い。
2.× 靴型装具は優先度が低い。なぜなら、現時点での靴型装具(起立・歩行)は時期尚早であるため。主に靴型装具は、起立・歩行を目的とし、足の変形矯正、除痛、足底接地等のために使用される。靴型装具とは、足部を覆う装具で、内反・外反扁平足などの変形の矯正や、高度の病的変形に対応し、疼痛や圧力集中の軽減を図ったり、障害が目立たぬように補正するための装具である(※参考:「補装具に関する基礎知識」厚生労働省HPより)。
3.× 電動車椅子は優先度が低い。なぜなら、本症例(2歳3か月脳性麻痺)が電動車椅子を操作するには複雑であり、両上肢にアテトーゼ様の動きがあることからも安全な使用が難しいと考えられるため。一般的に、電動車椅子とは、下肢だけでなく上肢にも障害を持つ人を対象として開発されたもので、ジョイスティックレバーなどの操縦装置を使って、小さい力で、かつ簡単な動作で操縦できるように工夫された車椅子のことである。脊髄損傷患者に適応となることが多い。
4.〇 正しい。座位保持装置が、現時点で最も必要な補装具である。なぜなら、本症例は、両上肢で支持して座位1分程度可能であることから、自力での座位保持(もしくは上肢フリーでの座位保持)が次の獲得の目標となるため。座位保持装置を使用することで、安定した座位を提供し、機能的な活動を促進することにつながる。ちなみに、座位保持装置とは『機能障害の状況により、座位に類した姿勢を保持する機能を有する装置を含むもの』とされている。つまり、座る姿勢を保持する機能がついた「椅子」である。体幹ベルトがそもそもついているものが多く、比較的安定性を得られる。
5.× 普通型車椅子は優先度が低い。なぜなら、本症例(2歳3か月脳性麻痺)が普通型車椅子を操作するには複雑であり、両上肢にアテトーゼ様の動きがあることからも安全な使用が難しいと考えられるため。また、介助による普通型車椅子の処方の場合でも、2歳3か月の女児の平均体重は、11.6㎏であり、基本的に抱っことなる。あえてこの時期に普通型車椅子を処方するより優先度が高いものがほかにある。

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脳性麻痺とは?

脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。失調型やアテトーゼ型などのタイプがある。アテトーゼとは、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうものである。身体が突っ張ったり捻じれたりするジストニア、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうアテトーゼ、踊るように身体を振ってしまう舞踏運動、上肢や下肢をいきなり大きく振り回してしまうバリズムなどがある。痙直型脳性麻痺の場合、股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。

 

 

第59回PT 午後15問

15 5歳の女児。脳性麻痺による痙直型両麻痺。屋内での主な移動は車椅子で、監視下でPCW〈postural control walker〉を用いた歩行練習をしている。
 この児に対する動作指導で最も適切なのはどれか。

1.割座保持
2.補助具なしでの歩行
3.立位保持装置での立位
4.バニーホッピングでの移動
5.膝立ち位でのキャッチボール

解答

解説

本症例のポイント

・5歳の女児。
・脳性麻痺:痙直型両麻痺
・屋内での主な移動は車椅子監視下でPCWを用いた歩行練習。
→本症例は、痙直型脳性麻痺である。痙直型脳性麻痺の場合、股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のことである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。

1.× 割座保持は、正常発達で促すものではない。なぜなら、痙直型四肢麻痺児にとって、割り座(股関節屈曲・内転・内旋をとる)は、さらなる股関節内転、内旋を助長するため。ちなみに、割り座とは、いわゆる「お姉さん座り」や「トンビ座り」である。
2.× 補助具なしでの歩行は、難易度が高い。なぜなら、本症例の屋内での主な移動は車椅子で、監視下でPCWを用いた歩行練習をしているところであるため。安全かつ効果的な歩行の獲得、過剰な筋緊張の亢進を予防するためには、何かしらの歩行補助具が必要と考えるのが一般的である。
3.× 立位保持装置での立位は、難易度が優しすぎる。なぜなら、本症例は、監視下でPCWを用いた歩行練習をしているため。とはいえ、現在の本症例の屋内での主な移動は車椅子で、立位の時間が不足していると考えられる。立位保持装置ではなく、スタビライザー(起立安定板付き長下肢装具)を用いて行うことが多い。痙直型両麻痺の子どもにとって、立位は正常に近い筋緊張を促進し、体幹の安定性を向上させるなど多くの利点がある。また、立位不能な痙直型脳性麻痺に対し、立位保持獲得の目的でスタビライザー(起立安定板付き長下肢装具)を用いることが多い。ちなみに、立位保持装置とは、立位で身体を保持することで、大腿骨や骨盤に垂直方向へ荷重をかけることや、体幹、股関 節、下肢を伸ばすことができると共に、膝、骨盤、体幹のパッドによるサポートで立位姿勢が安定し手の活動を促すことができる器具である。
4.× バニーホッピングでの移動は、正常発達で促すものではない。割り座からバニーホッピングする移行することが多い。バニーホッピングとは、上下肢の交互運動は少なく、両下肢を屈曲位のまま前進する移動方法のことである。いわゆる両手が床についている「うさぎ跳び」である。(バニーホッピングのイメージとしては、うさぎ跳びのように飛び跳ねるものではなく、交互性の少ないほふく前進である。)
5.〇 正しい。膝立ち位でのキャッチボールが、この児に対する動作指導である。キャッチボールの難易度であるが、上肢を机に支持しながら、机からボールを転がすようなキャッチボールなど、キャッチボールにも難易度調整は可能である。とはいえ、積み木動作などで遊んでもらう程度の難易度が望ましい。そうすることで、抗重力筋の促通、巧緻性向上、下肢伸展パターンの抑制に寄与できる。類似問題もあるので参考にしてほしい(参考:「第53回午後16問目」)。

 

 

 

OT専門

 

第45回OT 午後13問

13 1歳の男児。アテトーゼ型脳性麻痺。摂食機能評価では舌の軽度突出が見られる。スプーンを口腔内に入れると口唇の閉鎖とある程度の舌運動とが確認できる。母乳を哺乳瓶で与えているが飲むのに時間がかかる。
 離乳食を与えるときの姿勢確保に適切な肢位はどれか。
 ただし、食事を与える介助者は別にいるものとする。

解答

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺の介助のポイントとして、体幹は包み込むようにして安定させ、四肢をフリーにしないことで安定させるとよい。また、上肢や体幹の極端な非対称性の体位は、体幹の側屈と短縮を引き起こすため避けるようにする。

1~2,4~5.× 上肢がフリーであるため不適切である。アテトーゼ型脳性麻痺では、下肢は伸展パターンの筋緊張亢進、上肢と頭部に強いアテトーゼを見ることが多いため、体幹及び四肢を安定させアテトーゼが出現しないようにすることが必要である。
3.〇 正しい。上・下肢、体幹ともに固定・安定している。上肢は両手によりアテトーゼが起こらないように固定されており、下肢は最大屈曲により固定されている。また、背後からの支持により、男児の体幹が安定している。

 

 

 

 

第46回OT 午前29問

29 アテトーゼ型脳性麻痺児の症状と訓練課題との組合せで適切なのはどれか。

1.定頸不良:背臥位で下肢を挙上する。
2.体幹過伸展:座面の高い椅子で座位を保持する。
3.手指の過伸展:豆をつまむ。
4.目と手の協調障害:ボールプールで遊ぶ。
5.動的パランス不良:セラピーボールに乗って揺らす。

解答

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

1.× 定頸不良に対し、背臥位で下肢を挙上する訓練の優先度は低い。なぜなら、より頭部の伸展筋が緊張を助長させるため。腹臥位で頭部を挙上することで頭部の伸展筋をストレッチするとよい。アテトーゼ型脳性麻痺児は姿勢筋緊張の動揺がみられ、姿勢や運動のコントロールが不良である。 リラクセーションで過緊張を取りながら、随意的な運動や反応を引き出す方法を模索する。
2.× 体幹過伸展に対し、座面の高い椅子で座位を保持する訓練の優先度は低い。なぜなら、より体幹の過伸展を助長させるため。体幹はなるべく垂直に保った状態(股関節・膝関節90°屈曲位)で座位訓練を行う。
3.× 手指の過伸展に対し、豆をつまむ訓練の優先度は低い。なぜなら、つまみ動作は難易度が高すぎるため。ちなみに、手指の過伸展に対しては、ビンの蓋の開け閉めなどの訓練のほうが有効である。
4.× 目と手の協調障害に対し、ボールプールで遊ぶ訓練の優先度は低い。なぜなら、主にボールプールは触覚刺激として感覚統合療法であるため。ちなみに、目と手の協調障害に対しては、ペグ差しの練習のほうが有効である。
5.〇 正しい。動的パランス不良に対し、セラピーボールに乗って揺らす訓練は有効である。セラピーボールに乗せて揺らして、立ち直り反応や平衡反応の誘発できる。

 

 

第47回OT 午前13問

13 体幹の筋緊張が低い脳性麻痺の乳児の抱き方で適切でないのはどれか。

解答

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

1〜3.5.〇 正しい。本症例は、体幹の筋緊張が低いことが特徴である。体幹が伸展した場合でも対応できる。
4.× 児の体幹の支えがないため、体幹が伸展した場合、対応できず後方に転落する危険性が高い。したがって、体幹の筋緊張が低い脳性麻痺の乳児の抱き方で適切でない。

 

 

 

第48回OT 午後30問

30 姿勢保持障害の原因で痙直型脳性麻痺児の特徴はどれか。

1.注意集中困難による多動
2.身近な感覚遊びによる常同行動
3.全身の低緊張による耐久性低下
4.身体接触面から受ける触覚の異常
5.全身の不随意運動による調節困難

解答4

解説

痙直型脳性まひは、上位運動ニューロンの障害により、四肢体幹の筋緊張の亢進を特徴とする。これに対して、①両麻痺、②アテトーゼ型脳性まひ、③失調型脳性麻痺などは、新生児期には筋緊張の亢進は認められず、徐々に運動発達が遅れ、それぞれの特有の症状を示すようになる。新生児期より筋緊張が著明に低下した状態を、フロッピーインファント(floppy infant)という。scarf(スカーフ)徴候:患児の上肢が、首にぴったり巻きつく現象やfrog position(蛙様肢位):背臥位で、四肢を挙上できないのはその所見である。

1.× 注意集中困難による多動は、注意欠如・多動症(ADHD)にみられる。
2.× 身近な感覚遊びによる常同行動は、自閉症にみられる。
3.× 全身の低緊張による耐久性低下は、痙直型脳性麻痺ではなく、低緊張型脳性麻痺にみられる。ちなみに、痙直型脳性麻痺では、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こすため、筋緊張は亢進していることが多い。
4.〇 正しい。身体接触面から受ける触覚の異常は、姿勢保持障害の原因で痙直型脳性麻痺児の特徴である。触覚など皮膚感覚に異常をきたすことで、四肢の筋緊張が亢進し、姿勢保害の原因となる。
5.× 全身の不随意運動による調節困難は、痙直型脳性麻痺ではなく、アテトーゼ型脳性麻痺にみられる。

 

 

 

 

第56回OT 午前9問

9 アテトーゼ型脳性麻痺児の食事の様子を図に示す。
 スプーンを口に近づけると図のような姿勢になってしまう。
 この児に出現している原始反射はどれか。

1. 探索反射
2. Galant 反射
3. 交差伸展反射
4. 手の把握反射
5. 対称性緊張性頸反射

解答5

解説


1.× 探索反射(四方反射、口唇反射)は、新生児を背臥位にし、検者の指で口唇の上下・左右を刺激する(触れる)と刺激の方向に口を開いて、頭部を向ける。胎児期後期から、生後5~6ヵ月まで。
2.× Galant 反射(側彎反射、背反射)は、脊柱の外側に沿って上から下へこすると刺激側の背筋が収縮して側屈する。胎児期後期から、生後2ヵ月まで。
3.× 交差伸展反射は、一側の下肢を屈曲し他側を伸展させたうえで、伸展側の足底部を刺激(または屈曲)すると非刺激側は屈曲から伸展する原始反射である。
4.× 手の把握反射は、新生児を背臥位で顔を正面に向け、上肢は半屈曲位として、検者の指を小指側から手の中に入れ、掌を圧迫すると、検者の指を握り締める。胎児期後期からみられ、4~6ヵ月ごろには消失。
5.〇 正しい。対称性緊張性頸反射(STNR)は、この児に出現している原始反射である。腹臥位(水平抱き)で頭部を伸展させると、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、上肢は伸展、下肢は屈曲し、頭部を屈曲させると逆に上肢は屈曲、下肢は伸展する。4~6 ヵ月に出現、8~12ヵ月まで。

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。アテトーゼ型脳性麻痺の介助のポイントとして、体幹は包み込むようにして安定させ、四肢をフリーにしないことで安定させるとよい。また、上肢や体幹の極端な非対称性の体位は、体幹の側屈と短縮を引き起こすため避けるようにする。

 

 

第57回OT 午前4問

4 9歳の男児。痙直型四肢麻痺の脳性麻痺。頭部保持は可能で、座位保持は両手の支持が必要である。立位は介助があればわずかにできる。
 この児が机上で道具の操作を練習する際に両手を使用するための姿勢として最も難しいのはどれか。

1.車椅子で体幹ベルトを用いた座位
2.床上で両肘を机上に置いた長座位
3.床上で両肘を机上に置いた割り座
4.座位保持装置を使用した座位
5.立位台を使用した立位

解答

解説

本症例のポイント

・9歳の男児
・痙直型四肢麻痺の脳性麻痺
・頭部保持:可能、座位保持:両手の支持、立位:介助があればわずかに可。
→この児が机上で道具の操作を練習する際に両手を使用するための姿勢として最も難しいのはどれか?

支持基底面の広さが広いほど安定するが、重心の位置が支持基底面の外側に近いほど逸脱しやすくなり不安定となる。痙直型四肢麻痺は大脳の広範囲の障害によって主動筋と拮抗筋が同時に作用し続ける。主動筋、拮抗筋の相反性抑制が起き、筋の機能不全がみられる。下肢に関しては両麻痺と同様の変形(両側股関節内転・内旋、尖足)をきたすことが多い。臨床では、緊張性迷路反射の影響を除いて上肢機能改善をはかるためには、頚部・体幹を垂直(抗重力位)かやや前傾を保持する。

1.× 車椅子で体幹ベルトを用いた座位より、選択肢の中で難しい姿勢がある。本症例の座位保持は、「両手支持で可能」であり、車椅子座位は股・膝関節屈曲位できる。さらに体幹ベルトを用いれば、比較的安定性を得られると考える。
2.〇 正しい。床上で両肘を机上に置いた長座位は、姿勢として最も難しい。長座位とは、上半身が起こしたまま両足を伸ばした状態(股関節屈曲位、膝関節伸展位)の座位を指す。下肢の後面と臀部を基底面にしているが、座位と比べると、重心が後方へ逸脱しやすく、上半身が不安定になりやすい。また、持続した姿勢でいると疲労しやすいのが特徴である。この姿勢を保つには、身体が後方に倒れないよう、股関節の屈曲に関わる大腿部の後側などの筋力が必要になる。つまり、そもそも長座位は、重心が後方に片寄りやすく、難易度が高い。本症例に、机上で道具の操作を練習する際に両手を使用するための姿勢に長坐位を選択することは難しいと考える。
3.× 床上で両肘を机上に置いた割り座より、選択肢の中で難しい姿勢がある。なぜなら、割り座は、膝関節屈曲位で支持基底面内の中央に重心が落ちやすく安定しやすいため。ちなみに、割り座とはいわゆる”お姉さん座り”や”トンビ座り”である。ただし、割り座は股関節内転・内旋を助長するため、痙直型両麻痺児に推奨するべき肢位ではない。
4.× 座位保持装置を使用した座位より、選択肢の中で難しい姿勢がある。厚生労働省の告知資料では、座位保持装置とは『機能障害の状況により、座位に類した姿勢を保持する機能を有する装置を含むもの』とされている。つまり、座る姿勢を保持する機能がついた「椅子」である。体幹ベルトがそもそもついているものが多く、比較的安定性を得られると考える。
5.× 立位台を使用した立位より、選択肢の中で難しい姿勢がある。立位のみであれば支持基底面が小さく不安定であるが、立位台(写真参照)を用いることで、前方に寄り掛かることができ安定(支持基底面の拡大)する。また、角度も調整することができるため、本症例の立位レベルに応じて、机上で道具の操作を練習するが行える。

 

(※画像引用:アビリティーズ・ケアネット株式会社様HPより)

 

 

 

 

共通問題

第46回共通 午後91問

91.脳性麻痺で誤っているのはどれか。

1.痙直型四肢麻痺では出生時から筋緊張が高い。
2.痙直型両麻痺では上肢よりも下肢の障害が強い。
3.アテトーゼ型では緊張性頸反射の影響を受ける。
4.精神的緊張でアテトーゼ型の不随意運動は増強する。
5.アテトーゼ型四肢麻痺では下肢よりも上肢の障害が強い。

解答1

解説

1.× 痙直型四肢麻痺の出生時は、筋緊張が高いと一概に言えず、出生時では、「やや反り返りが強いか?」といった症状がみられる程度で目立たない。生後、半年頃から徐々に症状がはっきりとしてくる。
2.〇 痙直型両麻痺では、上肢よりも下肢の障害が強い。両麻痺は、四肢麻痺というには、上肢の麻痺が下肢の麻痺に比べ格段に軽度な状態である。
3.〇 アテトーゼ型では、緊張性頸反射の影響を受ける。アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。非対称性緊張性頸反射(ATNR)の影響を受けやすく、非対称性緊張性頸反射(ATNR)とは、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する反射である。
4.〇 精神的緊張でアテトーゼ型の不随意運動は増強する。逆に、就寝時などリラックスできる環境では減少する。また、発話などでも不随意運動が増強することが多い。
5.〇 アテトーゼ型四肢麻痺では、下肢よりも上肢の障害が強い。上肢・頸部に強く表れる。アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。

 

 

 

第48回共通 午前83問

83 脳性麻痺で正しいのはどれか。

1.アテトーゼ型では下肢より上肢の支持性が良い。
2.アテトーゼ型では初期は低緊張である。
3.痙直型では出生直後から筋緊張が亢進する。
4.痙直型両麻痺では下肢より上肢の麻痺が重度である。
5.痙直型片麻痺では上肢より下肢の麻痺が重度である。

解答2

解説

1.× アテトーゼ型では、下肢・上肢ともに支持性が低下する。ちなみに、不随意運動は頚部から上肢にみられることが多い。
2.〇 正しい。アテトーゼ型の初期(生後早期)は低緊張であり、生後1~3年からアテトーゼが明らかになる。
3.× 痙直型では、出生直後は、やや反り返りが強い程度である。筋緊張が亢進する(筋緊張の亢進がはっきり分かる)のは、生後半年頃からである。
4.× 逆である。痙直型両麻痺は、上肢より下肢の麻痺が重度である。
5.× 逆である。痙直型片麻痺では、下肢より上肢の麻痺が重度である。

 

 

第49回共通 午前93問

93 脳性麻痺の周産期における危険因子として可能性が低いのはどれか。

1. 緊急帝王切開による出生
2. 脳室周囲白質軟化症
3. 低カリウム血症
4. 新生児仮死
5. 低血糖

解答3

解説

 周産期(在胎22週~生後1週未満)における危険因子は、脳室周囲白質軟化症、感染症、分娩時のトラブル、新生児仮死、代謝異常による間接的な中枢神経損傷などが挙げられる。

 

1.〇 緊急帝王切開による出生から脳性麻痺の可能性は高い。緊急帝王切開の主な適応としては、胎児機能不全、臍帯下垂・脱出、前置血管破綻、37週未満の前期破水などがあり、脳性麻痺のリスク要因である。
2.〇 脳室周囲白質軟化症から脳性麻痺の可能性は高い。痙直性両麻痺を呈することが多い。なぜなら、脳室に近い部分には下肢にいく神経線維が通っているため。
3.× 低カリウム血症から脳性麻痺の可能性は低い。脳性麻痺ではなく、周期性四肢麻痺不整脈の原因となる。
4.〇 新生児仮死(出生直後の新生児が呼吸・循環・中枢神経系の不全状態)から脳性麻痺の可能性は高い。低酸素性虚血性脳症により、不可逆性の中枢神経障害から脳性麻痺を呈する。
5.〇 低血糖から脳性麻痺の可能性は高い。なぜなら、低血糖から中枢神経細胞の栄養不足が生じ、中枢神経障害(脳性麻痺)を呈する。

4 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
午前・午後で間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
匿名

第47問 午前16問の画像ってこの画像であっていますか?
座位の画像のはずだと思うのですが。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

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