第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

 

11 75歳の女性。交通事故により受傷。救急搬送時のエックス線写真を下図に示す。
 遠位骨片を短縮転位させる主な筋はどれか。


1. 中殿筋
2. 小殿筋
3. 腸腰筋
4. 上双子筋
5. 大腿直筋

解答5

解説

本症例のポイント

・75歳の女性(交通事故により受傷)
・エックス線写真より大腿骨骨幹部骨折が疑われる。
→筋の収縮により、遠位骨片を短縮転位(遠位骨片が近位に転位すること)させるものを選択する。遠位骨片とは、骨折線(2つに分かれた骨)を境に、遠位(四肢側)にあるものをいう。つまり、筋の【起始】【停止】が骨折線をまたいでいるものを選択する。

1.× 中殿筋の【起始】腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜、【停止】大転子の外側面である。
2.× 小殿筋の【起始】腸骨翼の外面で前および下殿筋線の間、【停止】大転子の前面である。
3.× 腸腰筋は、腸骨筋と大腰筋の2筋からなる。腸骨筋の【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子である。大腰筋の【起始】第12腰椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子である。
4.× 上双子筋の【起始】坐骨棘、【停止】内閉鎖筋の腱、転子窩である。
5.〇 正しい。大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面である。遠位骨片を短縮転位(遠位骨片が近位に転位すること)させる。他にも、大内転筋も考えられるが選択肢にはない。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】下肢筋の起始・停止・作用・神経を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

12 50歳の女性。アキレス腱断裂に対する縫合術後4週目において、軟部組織の伸張性増大の目的で行う超音波療法の実施内容で適切でないのはどれか。

1. 時間照射率:10〜20%
2. 強度:1.5W/cm2
3. 治療面積:有効照射面積の2倍以内
4. 移動速度:1cm/秒(ビーム不均等率5以下)
5. 治療時間:3 〜5 分

解答1

解説

本症例のポイント

・50歳の女性(アキレス腱断裂)
・縫合術後4週目(炎症鎮静している可能性が高い
・目的:軟部組織の伸張性増大
→したがって、温熱効果が期待できる設定が良い。ちなみに、超音波療法の禁忌として、①眼への照射(眼に超音波を照射すると組織の空洞化を起こす)、②成長時の骨端、③心臓、生殖器官、内分泌器官、④良性または悪性腫瘍、麻痺部、⑤ペースメーカーの入っている部位(ペースメーカーを損傷する可能性)、⑥脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)があげられる。

1.× 時間照射率は、10〜20%ではなく、【温熱効果】連続(100%)で、【非温熱効果(パルス波)】20~50%で行う。ちなみに、非温熱効果は、①微細振動による細胞膜の透過性や活性度を改善させ、炎症の治癒を高める (マイクロマッサージ効果)、②細胞間隙の組織液の運動を活発にして浮腫を軽減させる (キャビテーション効果)である。
2.〇 正しい。強度は、1.5W/cm2(臨床的には0.5~2.5W/cm2)で使用される。
3.〇 正しい。治療面積は、有効照射面積の2倍以内で使用される。
4.〇 正しい。移動速度は、1cm/秒(ビーム不均等率5以下)で使用される。ビーム不均等率6以上であれば4cm/秒で使用される。
5.〇 正しい。アキレス腱断裂に対する縫合部位に対する治療時間は、3 〜5分で使用される。治療時間は、【温熱効果】1分/cm2で、【非温熱効果(パルス波)】最高で15分程度とする。アキレス腱断裂に対する縫合部位が3~5cm2程度である。

 

 

 

 

 

13 5歳の男児。脳性麻痺で痙直型四肢麻痺である。粗大運動機能は側臥位までの寝返りが可能。背臥位と背臥位から引き起こしたときの状態を図に示す。
 臨床症状として可能性が低いのはどれか。


1. 足クローヌス陽性
2. 下肢の伸筋共同運動
3. 緊張性迷路反射の残存
4. パラシュート反応陽性
5. 股関節外転の可動域制限

解答4

解説

本症例のポイント

上図:頭部の左回旋に伴い、非対称性緊張性頚反射(ATNR)の影響を受けている。背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から、生後4~6ヵ月まで。

下図:緊張性迷路反射(TLR)の影響(引き起こした際の頭部の過伸展により、伸筋優位になっている状態)を受けている。背臥位では伸展緊張が促通され、腹臥位では屈曲緊張が促通される。胎児期後期から、5~6ヵ月まで。

痙直型四肢麻痺の特徴:筋緊張亢進深部腱反射亢進病的反射出現クローヌス出現折りたたみナイフ現象がみられる。痙直型四肢麻痺は大脳の広範囲の障害によって主動筋と拮抗筋が同時に作用し続ける。主動筋、拮抗筋の相反性抑制が起き、筋の機能不全がみられる。下肢に関しては両麻痺と同様の変形(両側股関節内転・内旋、尖足)をきたすことが多い。臨床では、緊張性迷路反射の影響を除いて上肢機能改善をはかるためには、頚部・体幹を垂直(抗重力位)かやや前傾を保持する。

1.〇 足クローヌス陽性は、深部反射の著明な亢進により生じ、痙直型四肢麻痺に特徴的な症状である。
2.〇 下肢の伸筋共同運動がみられる。なぜなら、体重支持をさせようとすると、陽性支持反応に基づく同時収縮が起こり、下半身を中心に全身的に伸展筋緊張の亢進をもたらすため。
3.〇 緊張性迷路反射(TLR)の残存は、下図からも読み取れる。
4.× パラシュート反応陽性は、臨床症状として可能性が低い。パラシユート反応(保護伸展反応)とは、腹臥位で水平にした状態から頭部を急に下に傾けると、児は両上肢を伸ばして体を支え、墜落を防ぐような肢位をとる反射のことである。中脳レベルの反射で、通常はつかまり立ちの始まる生後9か月頃に出現し生涯持続する。本症例の下図では、引き起こした際に頭を正常な位置に保持できておらず、定頚や座位保持などの運動発達遅滞がうかがえる。現発達段階で、パラシュート反応は出現する可能性が低いと考えられる。
5.× 股関節外転の可動域制限が生じる。両下肢は、痙性のため尖足(両側股関節内転・内旋)となり、股関節外転の可動域が制限される。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

理学療法士国家試験 脳性麻痺についての問題9選「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

14 70歳の男性。身長180cm、体重90kg。脳梗塞のため麻痺肢に内反尖足がみられる。10m であれば独歩可能であるが、軽度の分回し歩行となる。意識してゆっくりと歩けば分回しを軽減することは可能であるが、遊脚相の股関節屈曲は増加し立脚中期に膝過伸展がみられる。2動作前型で屋外歩行の自立を目標に理学療法を進めている。
 この患者に適切なのはどれか。

1. 装具は不要
2. 軟性足装具
3. プラスチック短下肢装具(ショートタイプ、継手なし)
4. プラスチック短下肢装具(つま先までの標準型、継手なし)
5. 金属支柱付短下肢装具

解答5

解説

本症例のポイント

・70歳の男性(身長180cm、体重90kg)
・脳梗塞、内反尖足
・歩行:独歩可能(10m)、軽度の分回し歩行。意識してゆっくりと歩けば分回しを軽減することは可能であるが、遊脚相の股関節屈曲は増加し立脚中期に膝過伸展がみられる。
・目標:2動作前型で屋外歩行の自立。
→本症例の歩行の課題は、①内反尖足(特に)、②軽度の分回し歩行、③立脚中期に膝過伸展である。2動作歩行の特徴は、杖と患側を同時に出した後に健側を出す事でバランス歩行速度が得られやすい。一方、3動作歩行の特徴は、常に2点で体重を支えバランスに優れ安定性が得られやすい。ちなみに、常時2点支持歩行(3 動作歩行)とは、健側に持った杖を出し、患側下肢を出した後、健側下肢を出すパターンの歩行である。健側下肢が前に出るときは、常に患側下肢と杖の2点で支持しており、安定性があるため、片麻痺患者の歩行様式としてしばしば用いられる。一方で、交互2点1点支持歩行(2動作歩行)があり、健側に持った杖と患側下肢を同時に出し、次に健側下肢を出すパターンの歩行である。

1.× 装具は「不要」ではなく適応である。なぜなら、本症例は、10mの独歩可能レベルで、内反尖足立脚中期に膝過伸展がみられるため。
2.× 軟性足装具は優先度は低い。なぜなら、軟性足装具の適応は、腓骨神経麻痺捻挫などの弱い固定に用いるため。
3~4.× プラスチック短下肢装具(ショートタイプ、継手なし)(つま先までの標準型、継手なし)は優先度は低い。なぜなら、プラスチック短下肢装具は、継手がないため膝過伸展に十分対応できないため。内反尖足には対応できる。
5.〇 正しい。金属支柱付短下肢装具が適応である。底屈制限背屈補助が可能で、強い内反尖足に対して矯正力がある。つまり、底屈制限することにより立脚中期の膝過伸展制御に対して効果的である。本症例の目標は、2動作前型で屋外歩行の自立である。2動作前型を獲得することにより、屋外でも実用的な歩行を獲得する分、ある程度の筋緊張は、やむを得ず装具での代償が必要になる。

 

 

 

 

 

15 肢誘導における心電図(下図)を別に示す。
 正しいのはどれか。


1. 心房細動
2. 心房粗動
3. Ⅱ度房室ブロック
4. 心室期外収縮
5. 心室頻拍

解答4

解説

心電図の見方

今回設問で提示された心電図は、第Ⅰ誘導、第Ⅱ誘導、第Ⅲ誘導、第aVR誘導、第aVL誘導、第aVF誘導である。
第Ⅰ誘導:左室の側壁を見ている。つまり、主に右室側から心臓を見る誘導である。
第Ⅱ誘導:心臓を心尖部から見ている。 つまり、右室と左室前壁側から心臓を見る誘導である。
第Ⅲ誘導:右室側面と左室下壁を見ている。つまり、心室中隔と左室前壁から心臓を見る誘導である。
第aVR誘導:右肩から心臓を見る誘導である。逆転した波形が見られる。
第aVL誘導:左肩から心臓を見る誘導である。
第aVF誘導:心臓を、ほぼ真下から見ている。

第Ⅱ誘導が四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれ、一般的によく見る心電図の波形となる。

本症例のポイント

先行P波を欠く、幅広いQRS波が通常より早期に出現している。

1.× 心房細動は、P波は見られず、f波(心房の細かなふるえが基線の揺れとして記録されたもの)が出現する。またR-R間隔は不定である。
2.× 心房粗動は、P波は見られず、F波(ノコギリ状)が出現する。
3.× Ⅱ度房室ブロックの特徴として、心房から心室への伝導が突然途絶える。そのため、P波の後のQRS波が突然脱落する(QRS波の脱落)。
4.〇 正しい。心室期外収縮は、洞結節以外の部位の興奮が司令塔となり、一連の心筋の興奮を起こす不整脈である。心室性期外収縮の心電図では、P波は認められず、幅広い変形したQRS波が見られる。
5.× 心室頻拍は、心室性期外収縮が3回以上続くものであり、QRSの幅が広くなるのが特徴である。

 

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