第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

6 87歳の女性。脳卒中による重度の右片麻痺。回復期リハビリテーション病棟に入院中。座位での基本動作は自立。認知機能は保たれている。短下肢装具と4点杖で5mまでは自力での歩行が可能。介助があればT字杖で20m程度の歩行は可能。ここ2か月は状態に大きな変化はみられない。最近、介護老人保健施設への退院が決まった。
 退院後の生活上の移動手段で実用的なのはどれか。

1. T字杖を使用した介助歩行
2. 4点杖を使用した自力歩行
3. 4点杖を使用した介助歩行
4. 手すりを利用した自力歩行
5. 車椅子

解答5

解説

本症例のポイント

・87歳の女性(脳卒中、重度の右片麻痺
・認知機能は保たれている。
・座位での基本動作:自立。
・歩行:短下肢装具と4点杖で5mまでは自力で可能。介助があればT字杖で20m程度の歩行は可能。
・ここ2か月は状態に大きな変化なし。
・予定:介護老人保健施設への退院。
→本症例は、脳卒中後遺症後の状態はプラトー(停滞)である。生活上の移動手段で実用的となると、トイレ行くにも「行き帰りの距離」となる。この患者の今後の予定は、介護老人保健施設への退院である。トイレなどの距離もあると考えられ、また介助者もいるため、必ずしも歩行に固執する必要はなく、また過度な努力をせず継続的・安全に行えるものが良い。

1/3.× T字杖/4点杖を使用した介助歩行は優先度が低い。なぜなら、介助歩行は、常時介助者が付き添う必要があり介助者の負担にもなるため。
2.× 4点杖を使用した自力歩行は優先度が低い。なぜなら、短下肢装具と4点杖で5mまでは自力での歩行なレベルであるため。4点杖のみの自力歩行はさらに距離も短く不安定であると考えられる。
4.× 手すりを利用した自力歩行は優先度が低い。なぜなら、手すりがあるところ以外は移動できないため。
5.〇 正しい。車椅子が、最もリスクが少なく歩行制限のある患者が生活を行える。

 

 

 

 

 

7 50歳の男性。Parkinson病。発症後5年を経過し、すくみ足が出現してきている。
 自宅で転倒が頻回に生じている。
 転倒予防として自宅の廊下に模様を入れる際に効果的な図柄はどれか。

解答1

解説

1.〇 正しい。すくみ足現象の改善のために、はしご状の視覚刺激が望ましい。
2.3.4.× 視覚的な、狭くなる通路狭い一本道でもすくみ足や小刻み歩行を助長させるため不適切である。
5.× 3.0mは距離が大きすぎる。一歩間隔のはしご状が望ましい。

 

 

 

 

 

8 25歳の男性。Guillain-Barré症候群。発症後3日で運動麻痺は進行しており、呼吸筋麻痺のため人工呼吸器管理中である。
 理学療法で適切でないのはどれか。

1. 体位変換
2. 筋力増強運動
3. 胸郭ストレッチ
4. 関節可動域運動
5. 30°程度のリクライニング位

解答2

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。体位変換にて、褥瘡予防・喀痰排出を行う。
2.× 筋力増強運動は行わない。Guillain-Barré症候群は、神経根や末梢神経の脱髄が主要病態のため、逆に筋力低下をきたし呼吸苦の助長を促してしまう。
3.5.〇 正しい。胸郭ストレッチ/30°程度のリクライニング位にて、呼吸をしやすくする。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。
4.〇 正しい。関節可動域運動にて、関節拘縮を予防する。

 

 

 

 

 

9 65歳の男性。4歳時に急性灰白髄炎に罹患し右下肢麻痺となった。歩行時には右膝を右手で押さえながら歩いていた。55歳ころから腰痛を自覚するようになり、最近は歩行時の疲労が増し下肢の冷感が強くなってきたため受診した。身長160cm、体重75kg(30歳時と比較して20 kg増加)。筋力はMMTで、右大腿四頭筋と右前脛骨筋は段階1である。ポリオ後症候群と診断され、理学療法を行うことになった。
 理学療法として適切なのはどれか。

1. 自転車エルゴメーターによる有酸素運動
2. 右下肢装具を装着しての歩行練習
3. 右大腿四頭筋の筋力増強運動
4. 四つ這いでの移動練習
5. 車椅子による移動

解答2

解説

本症例のポイント

・65歳の男性(ポリオ後症候群
・4歳:急性灰白髄炎(右下肢麻痺、右膝を右手で押さえながら歩行)
・55歳:腰痛自覚(身長160cm、体重75kg:30歳時と比較して20 kg増加)
・最近:歩行時の疲労・下肢の冷感が増強。
・筋力:右大腿四頭筋・右前脛骨筋MMT段階1。
→本症例は、ポリオ後症候群である。ポリオ後症候群とは、小児期にポリオ(急性灰白脊髄炎:いわゆる小児まひ)に罹患し、いったん十分に機能回復して通常の社会生活を過ごしていた成人に、40歳から50歳代に新たに現れる筋力低下、筋萎縮、疲労、筋痛を主訴とする病態である。リハビリテーションのポイントとして過用・廃用を予防しつつ、低負荷反復運動生活習慣の再構築などを実施していく。

1.× 自転車エルゴメーターによる有酸素運動は優先度が低い。なぜなら、本症例は、右大腿四頭筋と右前脛骨筋はMMT段階1(わずかに筋収縮がある状態)であるため。本症例は、「30歳時と比較して20 kg増加」しているため不適切ではないが、ハビリテーションのポイントとして過用・廃用を予防しつつ、低負荷反復運動生活習慣の再構築などを実施していく観点からすると最優先事項とはいいがたい。
2.〇 正しい。右下肢装具を装着しての歩行練習を行う。神経に負荷がかかりにくく、体重増加・廃用予防・生活習慣の再構築に対して有効といえる。また、本症例は「右大腿四頭筋・右前脛骨筋MMT段階1」で、右膝を右手で押さえながら歩行している。体幹・股関節から評価を実施し、長下肢装具の検討が必要である。
3.× 右大腿四頭筋の筋力増強運動は、過用の防止の観点から優先度は低い。
4~5.× 四つ這いでの移動練習/車椅子による移動は優先度は低い。なぜなら、現在も歩行時の疲労感が増してきている程度で、歩行可能レベルと考えられるため。

 

 

 

 

 

10 26歳の男性。仕事中の事故によって頸髄損傷を生じた。S4、5領域の運動機能と感覚機能とは完全に喪失していた。徒手筋力テストの結果を表に示す。
 到達可能と予測される動作はどれか。


1. 更衣
2. 自己導尿
3. プッシュアップ動作
4. 自助具を用いた食事動作
5. ベッドから車椅子への移乗動作

解答4

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

本症例のポイント

・26歳の男性(頸髄損傷)
・S4、5領域:運動機能と感覚機能完全喪失。
・上腕二頭筋の機能が保たれており(MMT3以上)
→本症例は、C5機能残存レベルの頚髄損傷が疑われる。主な動作筋は、三角筋、上腕二頭筋で、肩関節:屈伸・外転・内外旋、肘関節:屈曲、回外が可能となる。移動はハンドリムに工夫は必要だが、平地での車椅子駆動が可能となる。

1.× 更衣は、C6機能残存レベルで一部自立が可能である。
2.× 自己導尿は、男性の場合C6機能残存レベル、女性の場合C8機能残存レベルで可能となる。
3~5.× プッシュアップ動作/ベッドから車椅子への移乗動作は、C7機能残存レベルで可能となる。
4.〇 正しい。自助具を用いた食事動作は、C5機能残存レベル(装具やスプリングバランサーの装着、自助具の使用など)で食事動作の獲得が可能である。

 

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