第51回(H28) 理学療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 脳性麻痺の痙直型両麻痺で生じやすい肢位はどれか。

1. 踵足
2. 外反母趾
3. 股関節外転位
4. 股関節外旋位
5. クラウチング肢位

解答5

解説

両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺児の歩行の特徴として、股関節屈曲・内転・内旋、膝関節の屈曲しやすい。したがって、歩行中は、尖足になりやすく、足先から接地し、体幹の側方動揺が大きい。

1.× 踵足は、足の変形の一種で、足関節の背屈拘縮を呈している状態である。痙直型両麻痺は、足関節は底屈位になり尖足を呈することが多い。
2.× 外反母趾とは、母趾が小趾の方に曲がるものである。
3~4.× 股関節外転位/股関節外旋位ではなく、痙直型両麻痺は股関節は屈曲・内転・内旋位となりやすい。
5.〇 正しい。クラウチング肢位である。クラウチ(crouch:かがむ・腰を低くするなどという意味)とは、股・膝関節が屈曲位の姿勢のことをいう。痙直型両麻痺の歩行(クラウチング歩行)は、股・膝とも屈曲位で伸びきらない歩行である。さらに、股関節は内転・内旋となるため内股での歩行が特徴的である。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】脳性麻痺についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

37 切断と断端長の計測部位との組合せで正しいのはどれか。

1. 上腕切断 : 上腕骨大結節から断端末
2. 前腕切断 : 肘頭から断端末
3. 大腿切断 : 坐骨結節から断端末
4. 膝関節離断 : 大転子から断端末
5. 下腿切断 : 膝蓋骨上縁から断端末

解答3

解説

1.× 上腕切断の計測部位は、上腕骨大結節から断端末ではなく、「腋窩から断端末までの距離」である。
2.× 前腕切断の計測部位は、肘頭から断端末ではなく、「上腕骨外側上顆から断端末までの距離」である。
3.〇 正しい。大腿切断の計測部位は、坐骨結節から断端末である。
4.× 膝関節離断の計測部位は、大転子から断端末ではなく、「坐骨結節から断端末までの距離」である。
5.× 下腿切断の計測部位は、膝蓋骨上縁から断端末ではなく、「内側膝関節裂隙から断端末までの距離」である。

 

 

 

 

 

 

38 頸椎の可動性を最も制限するのはどれか。

1. SOMI装具
2. ネックカラー
3. ハローベスト
4. Milwaukee装具
5. フィラデルフィアカラー

解答3

解説

(※図引用:大阪発達総合療育センター 南大阪小児リハビリテーション病院様HPより)

1.× SOMI装具(sternal occipital mandibular immobilizer装具)は、名称通り、胸骨・後頭骨・下顎で3点固定する。頸椎の可動性が強く制限されるが、選択肢の中でより固定性が高いものがほかにある。頚部外傷後の固定や、頚椎椎間板ヘルニア術後などで用いられる。
2.× ネックカラーは、ウレタン系素材で頚部を包み、頚部の安静を図る。頚椎の前後屈および側屈を制限するが、固定力・支持力ともに弱く回旋は制限しない。環軸関節亜脱臼は、頸椎前屈姿勢の予防が効果的である。
3.〇 正しい。ハローベストは、頸椎の可動性を最も制限する。頭蓋骨に直接ピン(ネジ)で固定したハローを胸椎装具と金属支柱で連結したものである。頚椎の前後屈および側屈・回旋を強く制限する。環椎や軸椎の骨折など、手術で固定の困難な重篤な骨折で用いられる。
4.× Milwaukee装具(ミルウォーキー型装具)は、骨盤ガードルと頚部を支持するネックリングを金属支柱で連結して、側弯症に適応となり、脊柱の側弯の矯正のために胸椎パッドをつける。
5.× フィラデルフィアカラーは、下顎から頚部・肩までの固定により前後屈および側屈、回旋を制限するが、固定力は弱く、重さの支持も弱い。頚椎術後頚髄損傷などで用いられる。急性期頸髄損傷で頸椎に不安定性のある場合には、体位交換などで麻痺の悪化の可能性があるので、フィラデルフィアカラーやSOMI装具などで固定を行う。また、リハビリテーションにおいても頭部の不安定性への配慮は必要となる。頸部に近い肩関節の可動域訓練では、僧帽筋や胸鎖乳突筋、肩甲挙筋などの筋を介して頸椎を動かすと、脊髄をさらに損傷する可能性がある。

(※写真:フィラデルフィアカラー)

 

 

 

 

 

39 神経筋再教育について正しいのはどれか。

1. 随意運動を促通する。
2. 他動運動を用いることはない。
3. 骨関節障害には適用できない。
4. 意識がない状態でも適用できる。
5. 完全脱神経筋の治療として有効である。

解答1

解説

神経筋再教育とは?

 神経筋再教育は、脳血管疾患などによる片麻痺などで神経の伝達障害から弱化した筋に刺激を行い、一時的に損失した筋収縮力を再教育し回復を図る方法である。単なる筋力トレーニングでは回復できないような運動麻痺による弱化した筋に対して行われ、筋収縮力機能を再生するために行う手技である。PNF法(固有受容性神経筋促通法)が主にあげられる。PNF法とは、主に固有受容器を刺激することによって、神経筋機構の反応を促通する方法である。固有受容器とは「筋紡錘、腱紡錘、関節受容器、前庭器官」を指す。特殊テクニックとして、主に5つあり、①リピーテッドコントラクション、②スロー・リバーサル、③スロー・リバーサル・ホールド、④リズミック・スタビライゼーション、⑤ホールド・リラックスが挙げられる。

1.〇 正しい。随意運動を促通する。なぜなら、神経筋再教育とは、骨格筋の随意運動の発達、または回復を目的とした運動療法であるため。筋再教育とは、片麻痺の麻痺筋に対する筋の活動性を再獲得させる手技全般を筋再教育という。多数ある手技の一つとして、固有受容性神経筋促通法(PNF)がある。PNFでは、PNF運動パターンや伸長、牽引、圧縮などが固有感覚受容器を刺激し、これによって筋力増強や協調性改善、関節可動域増大などの効果が得られるとされている。
2.× 他動運動を用いることもある。なぜなら、神経筋再教育は、単なる筋力トレーニングでは回復できないような運動麻痺による弱化した筋に対して行われ、筋収縮力機能を再生するために行う手技である。運動を誘導する方法としては、他動運動・皮膚刺激・電気刺激・筋電波形によるフィードバックなどが挙げられるため。
3.× 骨関節障害にも適用となる。特に、固有受容性神経筋促通法(PNF)の適応疾患は、現在では、脊髄性の疾病だけでなく、中枢神経疾患・末梢神経疾患・スポーツ傷害(外傷・障害)なども対象となる(柳澤,2001)。骨関節障害による痛みや安静・固定による不動が原因で筋収縮ができなくなった筋に対しても有効である。
4.× 意識がない状態では適応できない。なぜなら、意識がない状態では、他動運動や各種刺激を与えても、随意的収縮を出すことが困難であるため。
5.× 完全脱神経筋の治療として有効ではない。なぜなら、完全脱神経筋は、随意収縮や回復が望めないため。ニューロトメーシス(neurotmesis:神経断裂)とは、神経の連続性がたたれており、自然回復は見込めない。

神経損傷の分類

神経損傷の分類では、次の3段階に分類している。

一過性神経伝導障害:ニューラプラキシア(neurapraxia)とは、損傷部で伝導が障害されてはいるが一過性であり、早期に自然回復する。
軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)とは、肉眼的には神経線維が連続しているが、軸索が断裂している。一部回復を見込める。
神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)とは、神経の連続性がたたれており、自然回復は見込めない。

 

 

 

 

 

 

40 極超短波治療の図を示す。
 aに対するbの強度はどれか。


1. 1/2
2. 1/4
3. 1/6
4. 1/8
5. 1/16

解答4

解説

MEMO

ランバート(Lambert)の法則:熱源を患部に照射する場合、照射角度θが垂直(cos0°)であれば最大の照射量になるが患部に平行(cos90°)に照射するとその照射量は0になる。θ:0度の場合100%、θ:30度の場合86%、θ:45度の場合70%、θ:60度の場合50%(本問題)である。

逆二乗の法則:物体が受ける照射強度は、放射源(熱源)と物体との距離の自乗に反比例するすなわち、熱源と物体との距離が2倍になれば、単位面積当たりの照射強度は1/4になり、3倍になれば1/9になる。

 ランバート(Lambert)の法則より、照射面に対して垂直に照射した場合には最大の照射量になるが、60°のとき強度が50%になる(45°のときは約70%、30°のときは約15%減少する。)。また、逆二乗の法則より、光源と治療部位の距離の2乗に反比例して強度が減少する。

つまり、ランバート(Lambert)の法則より50%(1/2)の減少。

逆二乗の法則により、図aの照射距離が10cmで、図bの照射距離が20cmと距離が2倍になっているため、75%(1/4)の減少。

 

よって、図bの照射強度は、図aの50%のさらに1/4である(1/2 × 1/4=1/8)ので、12.5%である.つまり、選択肢4. 1/8が正しい。

角度の問題の最終手段

①角度が30度の場合:とりあえず【1/2(0.5)】をかける!

②角度が45度の場合:【1/√2(0.7)】をかける!

どっちか計算してみて、雰囲気で答える!!

 

4 COMMENTS

匿名

コメントすみません。
38問のSOMI装具も頸椎の可動性を最も制限すると書いてあるのですが、答えはハローベストになるんですか??

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
匿名

夜分遅くにすみません。
いつもサイトの方、利用させていただいております。

質問なのですが、

37問で
「上腕骨内側上穎から断端末までの距離」と、解説にあるのですが参考書(必修ポイント)では「上腕骨外側上顆~」と記載されていたので、実際はどっちなのでしょうか?

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する

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