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11 72歳の女性。関節リウマチ。SteinbrockerのステージⅢ、クラス3。訪問リハビリテーションを行なっている。最近、新たに後頸部痛と歩きにくさを訴えている。
この患者への対応として適切でないのはどれか。
1.転倒予防の指導を行う。
2.頸部の可動域運動を行う。
3.調理の際に椅子の使用を勧める。
4.高い枕を用いないよう指導する。
5.柔らかいマットレスを避けるよう指導する。
解答2
解説
・72歳の女性(関節リウマチ)
・ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
・クラス3:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
・訪問リハビリテーションを行なっている。
・最近、新たに後頸部痛と歩きにくさを訴えている。
1.〇 正しい。転倒予防の指導を行う。本症例は「新たに後頸部痛と歩きにくさ」を訴えている。転倒により環軸椎亜脱臼を引き起こす可能性が考えられる。環軸椎亜脱臼は、頸髄圧迫症状を起こし、ときとして致命的となるため注意が必要である。
2.× 頸部の可動域運動を行う必要はない(禁忌)。なぜなら、環軸椎亜脱臼を引き起こす可能性が考えられるため。関節可動域運動の目的とは、①非活動性によっておこる拘縮の予防、及び改善。②固有受容器を刺激することによる運動覚、位置覚の再教育。③関節を動かすことによる関節機能の正常化。④肢位の変化による血流の改善。⑤筋の短縮の予防、及び改善。⑥日常生活動作能力の改善(※引用:「ROMエクササイズ」熊本労災病院中央リハビリテーション部より)
3.〇 正しい。調理の際に椅子の使用を勧める。なぜなら、立位での調理は、下を向いての作業が多く、頸部屈曲を強め環軸椎亜脱臼を引き起こす可能性が考えられるため。また、転倒や疲労、関節保護の観点からも、椅子に座っての調理が適している。
4.〇 正しい。高い枕を用いないよう指導する。なぜなら、高めの枕の使用は、頸部屈曲を強め環軸椎亜脱臼を引き起こす可能性が考えられるため。
5.〇 正しい。柔らかいマットレスを避けるよう指導する。なぜなら、柔らかいマットレスは、体幹の沈み込み、頸部だけでなくその他の関節に負担がかかるため。関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)
【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。
【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。
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12 80歳の男性。要介護2。妻と2人暮らし。上肢機能は保たれているが、下肢の支持性の低下がある。認知機能は保たれている。尿意はあり、日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。便失禁はないが、夜間の居室での排尿方法を検討している。「妻を起こさずに自分で排尿したい」との希望がある。排泄用具の写真(下図)を示す。
選択する排泄用具として適切なのはどれか。
解答4
解説
・80歳の男性(要介護2、妻と2人暮らし)
・上肢機能は保たれているが、下肢の支持性の低下。
・認知機能は保たれている。
・尿意あり、日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。
・便失禁はないが、夜間の居室での排尿方法を検討している。
・希望:「妻を起こさずに自分で排尿したい」
1.× 間欠的バルーンカテーテルは、尿意がない場合などに用いる。本症例は、「尿意はあり」日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。
2.× 差し込み式便器は、腰上げや体動が困難な場合にベッド上で排泄するために用いる。本症例は、「日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している」。
3.× 自動排泄処理装置(おむつ型)は、便失禁がある場合などに用いる。本症例は、「便失禁はないが、夜間の居室での排尿方法を検討している」。
4.〇 正しい。自動吸引式集尿器(手持ち型)が選択する排泄用具として適切である。自動吸引式集尿器(手持ち型)は、対象者が寝ているベッドサイドに本体を置き、対象者の手の届く範囲に置いたレシーバーに排尿すれば尿が自動的に吸引されていく仕組みのものである。尿意があってもトイレまで歩くことが難しい場合や、トイレまで行くのに時間がかかり間に合わない場合に本人や介護者の介助によってレシーバーをあてて使用する。
5.× ポータブルトイレは、使用の際、ズボンの上げ下ろしが必要となる。本症例は、日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿しており、「妻を起こさずに自分で排尿したい」という希望である。
13 55歳の男性。2年前に筋萎縮性側索硬化症と診断された。2ヶ月前に誤嚥性肺炎を指し起こして入院した。肺炎改善後、胃瘻が造設された。構音障害が重度で、発音は母音のみ可能、発声持続時間は8秒。湿性嗄声はない。唾液の空嚥下は可能である。上肢の筋力はMMTで4レベルであるが、体幹及び下肢の筋力は3。歩行のFIMは1、移乗のFIMは6及びトイレ動作のFIMは6であった。自宅退院を計画している。
この患者に対する対応で正しいのはどれか。
1.食事を常食で再開する。
2.エアマットの使用を勧める。
3.透明文字盤の使用を勧める。
4.ポータブルトイレの使用を勧める。
5.チンコントロール電動車椅子を導入する。
解答4
解説
・55歳の男性(2年前:筋萎縮性側索硬化症)
・2ヶ月前:誤嚥性肺炎で入院。
・肺炎改善後、胃瘻が造設。
・構音障害重度、発音は母音のみ可能、発声持続時間8秒。湿性嗄声ない。
・唾液の空嚥下は可能。
・【MMT】上肢4、体幹・下肢3。
・【FIM】歩行1、移乗6、トイレ動作6。
・自宅退院を計画している。
1.× 食事を常食で再開する優先度は低い。なぜなら、本症例は「肺炎改善後、胃瘻が造設」しているため。胃瘻造設前からも「誤嚥性肺炎で入院」しており、進行性の特徴を持つ筋萎縮性側索硬化症(ALS)を考えると食事を常食で再開するのは困難と考えられる。
2.× エアマットの使用を勧める優先度は低い。なぜなら、エアマットは褥瘡予防などの際に用いるため。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の4大陰性徴候として、①眼球運動、②膀胱直腸障害、③感覚障害、④褥瘡がみられにくい。つまり、褥瘡は、末期までが現れにくいため、現段階でエアマットの使用を勧める優先度は低い。
3.× 透明文字盤の使用を勧めるのは時期尚早である。透明文字盤は上肢が動かせず、眼球運動かできないとき、伝えたい文字を相手との視線の中心に来るように動かして使うものである。本症例では「上肢筋力MMT4レベル」であるため通常の文字盤を使用できると考えられる。また、筆談、ジェスチャーも可能である。
4.〇 正しい。ポータブルトイレの使用を勧める。なぜなら、移乗・トイレ動作のFIMは6点(修正自立)であるため。6点は「補助具の使用、通常以上の時間、安全性の配慮が必要」なレベルである。
5.× チンコントロール電動車椅子を導入するのは時期尚早である。なぜなら、本症例では「上肢筋力MMT4レベル」であるため。チンコントロール電動車椅子の適応は、C4残存機能レベルである。チンコントロール電動車椅子は、上肢が使えない人のために、あごを使ったジョイスティック・レバーの操作や、頭の動きや呼気による主電源や速度切換えスイッチ、リクライニング用のスイッチ操作を可能にしたものである。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)
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【OT/共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」
14 23歳の男性。高校卒業後、公務員として働いていた21歳時に統合失調症を発症したため退職し、入院した。退院後は家業を手伝っていたが、命令的内容の幻聴によって三日間放浪したため、2度目の入院となった。1ヵ月後に退院し、実家からデイケアに通い始めた。
この時点で把握すべき情報として最も重要なのはどれか。
1.認知機能
2.対人関係
3.余暇の過ごし方
4.就労に対する希望
5.精神症状の生活への影響
解答5
解説
・23歳の男性(21歳に統合失調症)。
・過去:命令的内容の幻聴によって三日間放浪した。
・2度の入院歴がある。
・現在:退院し、実家からデイケアに通い始めている(回復期から維持期の移行期間)。
→本症例は、実家からデイケアに通い始めているため「回復期から維持期の移行期間」と考えられる。回復期の観点を重視しつつ維持期に移れるよう関わる必要がある。したがって、まずは「安定してデイケアに通所できるようになる」ことが目標になると考える。統合失調症の維持期は、①再発防止、②様々なレベルで社会復帰をしている患者の生活の質の維持や向上を図る、③体力作り時期である。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。
1~4.× 認知機能/対人関係/余暇の過ごし方/就労に対する希望は時期尚早である。なぜなら、これらは統合失調症の維持期に入り状態が安定したと判断できた場合に行うものであるため。本症例は、実家からデイケアに通い始めているため「回復期から維持期の移行期間」と考えられる。回復期の観点を重視しつつ維持期に移れるよう関わる必要がある。したがって、まずは「安定してデイケアに通所できるようになる」ことが目標になると考える。統合失調症の維持期は、①再発防止、②様々なレベルで社会復帰をしている患者の生活の質の維持や向上を図る、③体力作り時期である。精神科デイケアとは、精神科に通院している患者を対象に、①居場所を提供したり、②疾患の再発予防、③日常生活技能の改善、④社会復帰のための援助を目的とした施設である。病院内に設置されていることが多い。目標に向けて提供するリハビリテーションは変わるが、おもにレクリエーションや社会生活技能訓練(SST)などを行う。
5.〇 正しい。精神症状の生活への影響は把握すべき情報として最も重要である。なぜなら、本症例は回復期で確立した生活リズムも再度くれずれる可能性も考えられる「回復期から維持期の移行期間」であるため。本症例は、過去に命令的内容の幻聴によって三日間放浪し再入院を経験している。また、現在は実家からデイケアに通い始めたて(環境の変化)で精神症状が不安定になる恐れも考えられる。
統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。
(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)
15 23歳の男性。2ヶ月前から職場の業務がシフト勤務になり夜勤が入るようになった。1ヶ月前から日中の眠気を取るために、カフェイン入りの栄養ドリンクを1日4本以上飲むようになった。妄想や抑圧感などは特に訴えていないが、不眠と苛立ちを主訴に精神科を受診した。
この患者に対して初期にすべき介入はどれか。
1.精神分析療法
2.認知行動療法
3.グループワーク
4.抗精神病薬の投与
5.栄養ドリンクの減量
解答5
解説
・23歳の男性。
・2ヶ月前:夜勤が入る。
・1ヶ月前:カフェイン入りの栄養ドリンクを1日4本以上飲む。
・現在:精神科受診(妄想や抑圧感ないが不眠と苛立ちあり)
→本症例の「不眠と苛立ち」の症状の原因は、「不規則な生活(夜勤)」と「1日4本以上飲むカフェイン入りの栄養ドリンク」が疑える。カフェインを取りすぎた場合の症状として、交感神経興奮(めまいや心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気など)が起こる。
1.× 精神分析療法(精神分析)とは、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせる手法である。フロイトにより開発されたもので、成人の神経症性障害に適応となる。精神療法の代表的なものである。
2.× 認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。
3.× グループワーク(集団援助技術)とは、援助者が自然発生的あるいは意図的に形成されたグループの利用者の相互作用を活用し、その治療教育的力によってさまざまな目標の達成を目指す。
4.× 抗精神病薬の投与は、統合失調症の急性期治療で行われる。
5.〇 正しい。栄養ドリンクの減量は、患者に対して初期にすべき介入である。本症例の「不眠と苛立ち」の症状の原因は、「不規則な生活(夜勤)」と「1日4本以上飲むカフェイン入りの栄養ドリンク」が疑える。カフェインを取りすぎた場合の症状として、交感神経興奮(めまいや心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気など)が起こる。
初めまして。OT53回午前15問目解説の部分の正当が全てバツになっています。
コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。