第53回(H30) 作業療法士国家試験 解説【午前問題11~15】

 

11 72歳の女性。関節リウマチ。SteinbrockerのステージⅢ、クラス3。訪問リハビリテーションを行なっている。最近、新たに後頸部痛と歩きにくさを訴えている。
 この患者への対応として適切でないのはどれか。

1.転倒予防の指導を行う。
2.頸部の可動域運動を行う。
3.調理の際に椅子の使用を勧める。
4.高い枕を用いないよう指導する。
5.柔らかいマットレスを避けるよう指導する。

解答2

解説

 Steinbrocker のステージⅢ、クラス3とは、ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態で、クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態のことをいう。

1.〇 転倒予防の指導を行う。本症例は、歩きにくさを訴えており、転倒により骨折や環軸椎亜脱臼による頸髄圧迫を引き起こす可能性は大いに考えられる。そのような事態を防ぐため、転倒予防の指導を行うのは適切である。
2.× 適切ではない。頸部の可動域運動を行うのは、頸髄圧迫症状を引き起こすため禁忌である。
3.〇 調理の際に椅子の使用を勧める。立位では、下を向いての作業が多く、頸部の屈曲を強める。さらに転倒や疲労の観点からも、椅子に座っての調理が適している。
4.〇 高い枕を用いないよう指導する。高めの枕を使用すると頸部前屈位となり、環軸椎亜脱臼が誘発されやすい。よって高い枕を用いないように指導する。
5.〇 柔らかいマットレスを避けるよう指導する。体幹の沈み込みにより頸部は屈曲し負担がかかるため、避けるように指導する。

 

 

 

 

 

 

12 80歳の男性。要介護2。妻と2人暮らし。上肢機能は保たれているが、下肢の支持性の低下がある。認知機能は保たれている。尿意はあり、日中は洋式トイレでズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。便失禁はないが、夜間の居室での排尿方法を検討している。「妻を起こさずに自分で排尿したい」との希望がある。排泄用具の写真(下図)を示す。
 選択する排泄用具として適切なのはどれか。

解答4

解説

本症例は、①上肢機能は保たれているが、下肢の支持性の低下がある。②日中はズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。③便失禁はない(尿意あり)。といった特徴があげられる。

1.× 間欠的バルーンカテーテルは、尿意がない場合などに用いる。本症例では適切でない。
2.× 差し込み式便器は、腰上げや体動が困難な場合にベッド上で排泄するために用いる。本症例では適切でない.
3.× 自動排泄処理装置(おむつ型)は、便失禁がある場合などに用いる。本症例では適切でない。
4.〇 正しい。自動吸引式集尿器(手持ち型)が、①上肢機能は保たれているが、下肢の支持性の低下がある。②日中はズボンの上げ下ろしの介助を受けて排尿している。③便失禁はない(尿意あり)。といった状態に最も適切といえる。
5.× ポータブルトイレは、使用の際、ズボンの上げ下ろしが必要となる。そのため本症例では適切でない。

 

 

 

 

 

 

13 55歳の男性。2年前に筋萎縮性側索硬化症と診断された。2ヶ月前に誤嚥性肺炎を指し起こして入院した。肺炎改善後、胃瘻が造設された。構音障害が重度で、発音は母音のみ可能、発声持続時間は8秒。湿性嗄声はない。唾液の空嚥下は可能である。上肢の筋力はMMTで4レベルであるが、体幹及び下肢の筋力は3。歩行のFIMは1、移乗のFIMは6及びトイレ動作のFIMは6であった。自宅退院を計画している。
 この患者に対する対応で正しいのはどれか。

1.食事を常食で再開する。
2.エアマットの使用を勧める。
3.透明文字盤の使用を勧める。
4.ポータブルトイレの使用を勧める。
5.チンコントロール電動車椅子を導入する。

解答4

解説

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害が同時にみられ、進行する原因不明の疾患であり、全身に筋萎縮・運動麻痺が進行する。眼球運動障害、感覚障害、膀胱直腸障害、褥瘡は末期まで現れにくい(四大陰性徴候)。

1.× 食事を常食で再開は困難であろう。誤嚥性肺炎後、胃度を造設していることより、常食で開始するのは適切ではない。
2.× エアマットの使用を勧めるのは適切ではない。エアマットは褥瘡予防などの際に用いる。褥瘡は、末期までが現れにくいため、現段階でエアマットの使用を勧める必要はない。
3.× 透明文字盤の使用を勧めるのは適切ではない。透明文字盤は上肢が動かせず、眼球運動かできないとき、伝えたい文字を相手との視線の中心に来るように動かして使うものである。本症例では上肢筋力はMMTの4レベルであるため通常の文字盤でよい。
4.〇 正しい。ポータブルトイレの使用を勧める。トイレ動作のFIM は6点の修正自立であり、ポータブルトイレの使用は自立できると考えられるためである。
5.× チンコントロール電動車椅子を導入するのは適切ではない。 チンコントロール電動車椅子は、上肢が使えない人のために、あごを使ったジョイスティック・レバーの操作や、頭の動きや呼気による主電源や速度切換えスイッチ、リクライニング用のスイッチ操作を可能にしたものである。本症例では上肢筋力はMMTの4レベルであるため導入する必要はない。

 

 

 

 

 

 

 

14 23歳の男性。高校卒業後、公務員として働いていた21歳時に統合失調症を発症したため退職し、入院した。退院後は家業を手伝っていたが、命令的内容の幻聴によって三日間放浪したため、2度目の入院となった。1ヵ月後に退院し、実家からデイケアに通い始めた。
 この時点で把握すべき情報として最も重要なのはどれか。

1.認知機能
2.対人関係
3.余暇の過ごし方
4.就労に対する希望
5.精神症状の生活への影響

解答5

解説

 退院後にデイケアへ通い始めており、統合失調症の維持期初期の患者であると考えられる。維持期は、デイケア通所から就業まで、様々なレベルで社会復帰をしている患者の生活の質の維持や向上を図る時期である。初期にはまず精神状態が安定しているかどうかをチェックする.

1.× 認知機能は、就労や日常生活をよりよく送る上で重要な機能である。就労支援を受けるなど次のステップに進むときに評価するのが適切であり、維持期である。
2.4× 対人関係・就労に対する希望の評価は、安定してデイケアに通所できるようになったとき、就労支援を受けるなど次のステップに進むために評価するのが適切であり、維持期である。
3.× 余暇の過ごし方は維持期の重要な評価項目ではあるが、当面は安定してデイケアに通えることが目標なので、維持期である。
5.〇 正しい。精神症状の生活への影響に通い始めるという環境の変化があることからも、精神症状の生活への影響を把握するのは適切である。

 

 

 

 

 

 

15 23歳の男性。2ヶ月前から職場の業務がシフト勤務になり夜勤が入るようになった。1ヶ月前から日中の眠気を取るために、カフェイン入りの栄養ドリンクを1日4本以上飲むようになった。妄想や抑圧感などは特に訴えていないが、不眠と苛立ちを主訴に精神科を受診した。
 この患者に対して初期にすべき介入はどれか。

1.精神分析療法
2,認知行動療法
3.グループワーク
4.抗精神病薬の投与
5.栄養ドリンクの減量

解答5

解説

 本症例は、”カフェイン入りの栄養ドリンクを1日4本以上飲んでいる”ことから、カフェインの中枢神経興奮刺激によって不眠といらだちが生じていると考えられる。まずは栄養ドリンクの摂取量の減量を行う必要がある。

1~4.× 精神分析療法・認知行動療法・グループワーク・抗精神病薬の投与は、ほとんど効果がないであろう。
5.〇 正しい。栄養ドリンクの減量をまず行うべきである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)