第53回(H30) 作業療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

 

16 67歳の女性。認知症。2年前ごろから身だしなみに気を遣わずに出かけるようになった。次第に同じ食事メニューを繰り返し作る、日常生活で会話の言葉をオウム返しにする、買い物をしても代金を払わず、とがめられても気にしないといったことが多くなったため、家族に付き添われて精神科を受診し入院した。作業療法が開始された。
 この患者に見られる特徴はどれか

1.転倒しやすい。
2.情動失禁がみられる。
3.手続き記憶が損なわれる。
4.時刻表的生活パターンが見られる。
5.「部屋にヘビがいる」といった言動がある。

解答4

解説

1.× 転倒しやすいのは、Lewy小体型認知症である。筋肉のこわばりや歩行困難などのパーキンソニズムがみられ転倒しやすい。
2.× 情動失禁は、脳血管性認知症で特徴的である.
3.× 手続き記憶が損なわれるのは、Alzheimer型認知症などで特徴的である。前頭側頭型認知症では、初期では記憶や日常生活動作の障害は目立たない。
4.〇 正しい。時刻表的生活パターンが見られるのは、常同行動の一つであり、前頭側頭型認知症の特徴である。
である.
5.× 「部屋にヘビがいる」といった言動がある(幻視)は、Lewy小体型認知症で特徴的である。

 

 

 

 

 

 

17 28歳の女性。産後うつ病。育児休暇中である。元来、何事にも手を抜けない性格。出産から4ヶ月経過した頃から、子供の成長が気になり始め、夫に不安をぶつけようになった。次第に「母親失格」と言ってはふさぎ込むようになったため、夫に連れられて精神科を受診し入院となった。1ヵ月半後、個別的作業療法が開始となったが、手芸中に「わたしは怠け者」とつぶやく様子がみられた。
 この患者に対する作業療法士の対応として適切なのはどれか。

1.日記を取り入れる。
2.育児の振り返りを行う。
3.患者の不安な気持ちに寄り添う。
4.家族の育児への協力方法について話し合う。
5.性格による自己否定的考えについて話し合う。

解答3

解説

 産後うつ病とは、産褥婦の約3%にみられ、産褥1か月以内に発症することが多い。強い抑うつ症状を呈し、育児にも障害が出る。産後うつ病の患者への適切な対応が大拙である。抑うつ状態の患者に対し、まずは患者の不安に寄り添い共感的態度をとることが基本である。

1~2.4~5.× 日記を取り入れる。育児の振り返りを行う。家族の育児への協力方法について話し合う。性格による自己否定的考えについて話し合う。ことは、今後は必要になるとは考えられるが、現時点の優先度としては低い。
3.〇 正しい。患者の不安な気持ちに寄り添うことが現時点で適切である。

 

 

 

 

 

 

18 29歳の女性。歩行困難を主訴に整形外科外来を受診したが器質的問題が認められなかったため、紹介によって精神科外来を受診し入院することとなった。手足が震え、軽い麻痺のような脱力があり、自立歩行ができないため車椅子を使用している。立位保持や移乗に介助を必要とし、ADLはほぼ全介助である。
 この時点の患者に対する作業療法で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.自己洞察を促す。
2.自己表現の機会を増やす。
3.集団活動で役割を担わせる。
4.自己中心的な依存は受け入れない。
5.身体機能に対する治療的な介入を行う。

解答2/5

解説

 本症例は、器質的問題は認められず、手足が震えてい麻痺のような脱力がある。ストレスに関するエピソードの記載はないが、転換性障害が考えられる。転換性障害では、随意運動障害、または感覚機能障害に先立って、心理的葛藤やストレス要因が見出され、症状形成にこれら心理的要因が関連している。まずは身体的対応を行うが、徐々に自分の感情を症状で表すのではなく、言語化できるように促していく。

1.× 自己洞察を促すのは適切ではない。自己洞察とは、”自分自身の体調、心の状態をどれだけ分かるか”で自分の性格や思考、感情傾向、など、自分についての洞察(自分の心、体の状態を把握する)を得ることをいう。洞察ではなく言語的な自己表現を促す。
2.〇 正しい。自己表現の機会を増やす。自分の気持ちや直面している困難を意識化し、言語的に表現できるように促す。
3.× 集団活動で役割を担わせるのは、現時点では困難である。まずは個別に対応する必要がある.
4.× 転換性障害の性格傾向に、依存性が強い、自己中心的、社会性が未熟である傾向が多い。これらの性格傾向から、周囲の関心を引くような誇張的・演技的態度をとることもある。ただ、思者の訴えに対しては真剣に耳を傾け、大げさであっても”受け入れない”といった態度ではなく、普通に対応することが大切である。
5.〇 正しい。身体機能に対する治療的な介入を行う。まずは身体的対応を行うが、徐々に自分の感情を症状で表すのではなく、言語化できるように促していく。

 

 

 

 

一休みに・・・。

 

 

 

 

19 26歳の女性。衝動的な浪費や奔放な異性交遊のあとに抑うつ状態となり、リストカットを繰り返していた。常に感情が不安定で、空虚感や見捨てられることへの不安を訴える。職場での対人関係の悪化をきっかけに自殺企図が認められたため入院となった。
 この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。

1.患者の申し出に応じて面接を行う。
2.初回面接で自殺企図について話し合う。
3.攻撃性がみられた場合には治療者を替える。
4.患者の希望にあわせてプログラムを変更する。
5.治療目標や治療上の契約を繰り返し確認する。

解答5

解説

 本症例は、衝動的な浪費、奔放な異性関係、自傷行為、見捨てられ不安などがみられる。このことから、境界性パーソナリティ障害であると考えられる。境界性パーソナリティ障害の患者は、情緒が不安定で衝動性が亢進し、対人関係を良好に維持することが困難である。

1.4.× 患者の申し出に応じて面接を行う。患者の希望にあわせてプログラムを変更する。といったことは行わない。枠組みを明確にしてそれを超える要求に対しては応じないことが必要である。
2.× 初回面接で自殺企図について話し合うのは適切ではない。治療者との信頼関係ができてから話し合うのが適切である。初回面接で話し合うことは適切とはいえない。
3.× 攻撃性がみられた場合でも治療者を替える必要はない。治療者に対して、理想化とこき下ろしの極端な態度をとることが多いので、治療者は関係の恒常性を維持するようにする。担当を変更すると、見捨てられ不安を助長する恐れもあるので、変更しないことが好ましい。
5.〇 正しい。治療目標や治療上の契約を繰り返し確認する。治療の枠組みを作り、遵守を促すことが重要であり、治療目標や治療上の契約は繰り返し確認する必要がある。

 

 

 

 

 

 

20 52歳の男性。統合失調症で精神科入院歴があるが、この9年間は治療中断しており、時々幻聴に影響された言動がみられる。医師の往診のあと、なんとか本人の同意を得て訪問支援開始となった。初回訪問時、居間で20分ほど落ち着いて話ができる状況である。
 初期の訪問において、作業療法士が最も留意すべきなのはどれか。

1.服薬勧奨を積極的に行う。
2.1日に複数回の訪問を行う。
3.身の回りの整理整頓を促す。
4.毎回違うスタッフが訪問する。
5.本人の興味や関心事を把握する。

解答5

解説

 本症例は、”9年間治療を中断”したため、症状が再燃した現在、急性期の統合失調症患者である。しかし、初回訪問時は”居間で20分ほど落ち着いて話ができる状況である”状態であるため、今すぐ入院が必要な状況にはないと考えられる。まず治療関係を形成して継続的な医療につなげるようにする。

1.× 服薬勧奨を積極的に行うのは、治療関係ができてからである。
2.× 1日に複数回の訪問は強い刺激となり、症状の悪化をもたらすおそれがある。幻聴はあるが比較的落ち着いており、頻回の訪問は必要ない。
3.× 身の回りの整理整頓を促すのは、急性期を脱してから回復期に促すのがよい、現時点ではまだ早い。
4.× 毎回同じスタッフが訪問する方が良い。対人刺激は最小限に設定すべきであるため。
5.〇 正しい。本人の興味や関心事を把握する。まずは、本人の興味や関心事を把握し、それらをきっかけに治療関係を築くことから始める。

 

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