第60回(R7) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題61~65】

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61.ATP産生に関わる細胞小器官はどれか。

1.中心小体
2.Golgi装置
3.滑面小胞体
4.リボソーム
5.ミトコンドリア

解答

解説
1.× 中心小体とは、細胞分裂の開始に関わる。細胞分裂を開始する前に中心小体が分裂し、紡錘体を形成するなどの役割を持つ。

2.× Golgi装置とは、蛋白質を修飾する。リボソームで生成され送り込まれてきた蛋白質に糖鎖を付け加える、濃縮するなどの修飾をする機能を持つ。

3.× 滑面小胞体とは、リボソームが付着していない小胞体の総称である。小胞体とは、①粗面小胞体と②滑面小胞体に分類される。
①粗面小胞体は、表面にリボソームが付着し蛋白質を合成する。
②滑面小胞体は、リボソームが付着していない小胞体の総称のことで、コレステロールの合成や分解、脂質代謝、薬物の解毒、カルシウムの貯蔵などの機能を担っている。

4.× リボソームとは、RNAと特殊なたんぱく質を含む直径15~20nmのダルマ型の顆粒で、遺伝情報をもとにタンパク質を合成する場所である。粗面小胞体の表面に存在する。

5.〇 正しい。ミトコンドリアは、ATP産生に関わる細胞小器官である。ミトコンドリアとは、細胞内に存在する細胞内小器官で、 ATPの生成やアポトーシス(細胞死)において重要な働きを担っている。

 

 

 

 

 

62 タイプⅡ筋線維と比較した場合のタイプⅠ筋線維の特徴はどれか。

1.発生張力が弱い。
2.筋線維の径が太い。
3.酸化酵素活性が低い。
4.ミオグロビン量が少ない。
5.ミトコンドリア密度が低い。

解答

解説

タイプⅠとタイプⅡ

タイプⅡb線維は速筋線維。ミトコンドリアは少ないが、ピルビン酸による瞬発的な収縮が可能である。
タイプⅠ線維は遅筋線維である。タイプⅠ線維(遅筋線維)の特徴は、ミトコンドリアやミオグロビンが多く、有酸素的エネルギー産生酵素も多いので持久力がある。

1.〇 正しい。発生張力が弱い。なぜなら、タイプⅠ筋線維は「遅筋」とも呼ばれ、持久力に優れる反面、瞬発的な大きな力を発揮する設計ではないため。

2.× 筋線維の径が「太い」ではなく細い。なぜなら、タイプⅠ筋線維は、持久力向上を目的とした構造で、エネルギー効率や酸素利用を最優先しているため。したがって、力発揮に必要な大きな断面積を持たない。

3.× 酸化酵素活性が「低い」ではなく高い。なぜなら、タイプⅠは有酸素運動に適応しており、エネルギー生成のために酸化系の酵素が豊富に存在するため。ATPを供給の方法は、タイプⅠ筋線維は酸化的リン酸化、 タイプⅡ筋線維は解糖系である。ちなみに、酸化的リン酸化とは、細胞内で起こる呼吸に関連した現象で、高エネルギー化合物のATPを産生する回路の一つである。

4.× ミオグロビン量が「少ない」ではなく多い。ちなみに、ミオグロビンとは、赤色筋肉(持久力に関わる筋肉)に存在し、酸素が不足した場合に対応できるように酸素を蓄える働きをするものである。

5.× ミトコンドリア密度が「低い」ではなく高い。なぜなら、有酸素代謝に優れるタイプⅠは、エネルギー産生のために多数のミトコンドリアを持っているため。

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63 自律神経で正しいのはどれか。

1.節後線維は有髄線維である。
2.随意的に内臓の機能を調節する。
3.断続的に臓器ヘインパルスを発する。
4.汗腺は交感神経と副交感神経の二重支配である。
5.節前線維の末端からアセチルコリンが放出される。

解答

解説


1.× 節後線維(C線維)は、「有髄線維」ではなく無髄線維である。

2.× 「随意的」ではなく不随意的に内臓の機能を調節する。心拍数や消化活動は、自律神経によって自動的に調整され、意識的に操作することは通常できない。これを不随意的という。一方、随意的とは、思いのままに、自由に行うさまを意味する言葉である。

3.× 「断続的」ではなく連続的に臓器ヘインパルス(活動電位)を発する。なぜなら、自律神経系は、血圧、呼吸、消化などの機能を常にモニタリングし、常に状況に応じた調整信号を送るため。例えば、心臓は自らリズムを刻むポンプ(自動能)であり、自律神経はその流れを微調整する役割である。つまり、信号は一瞬ごとの点滅ではなく、絶え間なく変化し続ける調整として働いている。

4.× 汗腺は、「交感神経と副交感神経の二重支配」ではなく交感神経支配である。汗腺(発汗)は、交感神経優位で分泌活動が増加する。

5.〇 正しい。節前線維の末端からアセチルコリンが放出される。アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

”二重支配一覧”

・血管(交:収縮、副:弛緩)
・涙腺(交:涙出ない、副:涙する)
・瞳孔(交:拡大、副:縮小)
・唾液腺(交:濃い、副:薄い)
・肺、気管(交:拡張、副:縮小)
・心臓(交:増加、副:減少)
・肝臓(交:分解、副:合成)
・膵臓(交:分泌減少、副:分泌増加)
・胃(交:消化抑制、副:消化促進)
・大腸~直腸(交:蠕動抑制、副:蠕動促進)
・膀胱(交:蓄尿、副:放尿)

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64 呼吸の調節機構で正しいのはどれか

1.呼吸中枢は視床下部にある。
2.末梢の化学受容器は椎骨動脈にある。
3.横隔膜や肋間筋は随意的に収縮できない。
4.末梢の化学受容器は酸素分圧の上昇により興奮する。
5.肺の伸展受容器の興奮は迷走神経を介して呼吸中枢に伝わる。

解答

解説
1.× 呼吸中枢は、「視床下部」ではなく脳幹(橋から延髄にかけての部分)にある。呼吸中枢とは、呼吸運動の調節に働く中枢である。ヒトでは、脳幹の橋から延髄にかけての部分にある。呼気と吸気の交代とリズムの調節に関わるいくつかの機能を併せ持った複合的な中枢と考えられる。
ちなみに、視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。 ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%、4g程度の小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温調節やストレス応答、摂食行動や睡眠覚醒など多様な生理機能を協調して管理している。つまり、視床下部は自律神経の最高中枢である。

2.× 末梢の化学受容器は、「椎骨動脈」ではなく頸動脈小体と大動脈体にある。

3.× 横隔膜や肋間筋は、随意的に「収縮できる」。なぜなら、随意的に息を止めると、横隔膜や肋間筋の収縮はみられないため。横隔膜や肋間筋は、努力呼気としても機能する。
【呼吸運動について】
①安静吸気:横隔膜・外肋間筋。
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋腹横筋・腹直筋が関与。

4.× 末梢の化学受容器は、酸素分圧の「上昇」ではなく低下により興奮する。末梢化学受容器(頸動脈小体と大動脈小体)は、動脈血二酸化炭素分圧よりも動脈血酸素分圧の変化(特に低下)のセンサーとして機能しているため。これに対して、延髄ある中枢化学受容器は、主に動脈血二酸化炭素分圧の上昇に反応する。

5.〇 正しい。肺の伸展受容器の興奮は、迷走神経を介して呼吸中枢に伝わる(ヘーリング・ブロイエル反射)。ヘーリング・ブロイエル反射とは、肺の伸展・縮小により肺伸展受容器が刺激された場合に、その刺激が迷走神経を介して延髄に伝達され、呼吸が抑制されることである。 吸気を抑制する肺膨張反射、呼気を抑制する肺縮小反射に分類される。遠心路は運動神経である。

頸動脈洞反射とは?

頸動脈洞反射(ツェルマーク・へーリング反射)とは、頸動脈を刺激することにより生じる迷走神経反射のことである。脈拍を抑えることを目的として利用されることがある(頸動脈洞マッサージ)。つまり、副交感神経優位になる。
求心路:舌咽神経
遠心路:迷走神経

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65 心臓の刺激伝導系で正しいのはどれか。

1.洞房結節は左心房にある。
2.心筋細胞はK+の流入によって脱分極する。
3.心電図のP波は心室の興奮に対応している。
4.副交感神経が興奮すると心拍数は増加する。
5.房室結節の興奮はHis束を経て心室に伝わる。

解答

解説

(※看護roo!様「看護師イラスト集」より)

1.× 洞房結節は、「左心房」ではなく右心房にある。洞房結節とは、心臓の興奮のペースメーカーの働きをする部位である。

2.× 心筋細胞は、「K+」ではなくNa+の流入によって脱分極する。
【心筋の再分極の流れ】
①隣接する細胞が興奮すると、静止膜電位がプラスに向かい、Na+チャンネルが開き、大量のNaが細胞内に流入する。
Na+が大量に流れ込むため、膜電位は急峻に上昇する。分極していた細胞内外が極性を失うので脱分極という。
③活動電位となった細胞内にはNa+に引き続きCa2+チャンネルが開いて、Ca2+が入ってくる。Ca2+は心筋収縮の引き金の役割とともに、プラスイオンの性質から活動電位の持続にも貢献する。
④活動電位から静止電位に戻るために、K+チャンネルが開いて、細胞内に多いK+が、細胞外に出ていく。結果的にプラスイオンを減らした細胞内は静止電位まで下がる。再び分極するので、再分極という。

3.× 心電図のP波は、「心室」ではなく心房の興奮に対応している。ちなみに、QRS波が心室の興奮に該当する(※上図参照)。

4.× 副交感神経が興奮すると心拍数は、「増加」ではなく低下する。安静時に副交感神経は優位となり、運動時は交感神経が優位となって心拍数が上昇する。

5.〇 正しい。房室結節の興奮は、His束を経て心室に伝わる。心臓の刺激伝導系は、「洞結節(洞房結節)→右房→左房→房室結節→His束(房室束)→左脚・右脚→プルキンエ線維(Purkinje線維)→心室」となる。刺激伝導系を構成する細胞は特殊心筋と呼ばれ、心房・心室の壁を構成する一般の心筋細胞である固有心筋とは区別する。

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