第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午後問題11~15】

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11 68歳の女性。外出中、前方に転倒して受傷し、骨折に対して手術療法が行われた。術後のエックス線写真を下に示す。
 手術後の理学療法で正しいのはどれか。

1.骨癒合が得られてから荷重を開始する。
2.術直後から膝関節可動域練習を開始する。
3.ズボンを履く際は患側下肢から行うよう指導する。
4.両松葉杖で階段を降りる際は健側下肢から降ろす。
5.大腿四頭筋の筋力増強練習は等張性運動から開始する。

解答

解説

本症例のポイント

・68歳の女性。
・外出中、前方に転倒して受傷し、骨折に対して手術療法が行われた。
・術後のエックス線:膝蓋骨に針金で固定している。
→本症例は、膝蓋骨骨折による手術後と考えられる。術後は、骨癒合前に膝蓋骨に付着する筋肉(大腿直筋)が大きく働くことで、骨癒合を阻害する力へと働いてしまうため注意が必要である。

(※表一部引用:「膝蓋骨骨折患者のクリティカルパス」佐世保市総合医療センターHPより)

1.× (部分)荷重を開始するのは、「骨癒合が得られてから」ではなく術後3日目からである。1/3部分荷重から開始するが、必ず主治医に許可や指示をもらうように心がける。
2.× 膝関節可動域練習を開始するのは、「術直後から」ではなく術後3日目である。なぜなら、大腿四頭筋が伸長されることにより、膝蓋骨骨折の骨癒合を阻害してしまうため。部分荷重と同様に、膝関節可動域練習を導入する際は、何度まで行ってよいか?、必ず主治医に許可や指示をもらうように心がける。
3.〇 正しい。ズボンを履く際は患側下肢から行うよう指導する。なぜなら、患側下肢から行うことで、患側に負担がかからず履くことができるため。片麻痺も同様の日常生活指導を実施する。ちなみに、ズボンを脱ぐ際は、健側下肢から行うよう指導する。
4.× 両松葉杖で階段を降りる際は、「健側」ではなく患側下肢から降ろす。なぜなら、階段を降りる際には、後方の後から動かす足に重心が大きく乗るため。ちなみに、階段を上る際には、体を持ち上げるため、先に健側を乗せる必要がある。
5.× 大腿四頭筋の筋力増強練習は、「等張性」ではなく等尺性運動から開始する。なぜなら、術後は、骨癒合前に膝蓋骨に付着する筋肉(大腿直筋)が大きく働くことで、骨癒合を阻害する力へと働いてしまうため。ちなみに、等尺性運動は、関節運動を伴わない筋収縮である。ちなみに、関節運動を伴う運動は等張性運動である。

膝蓋骨骨折とは?

膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。

 

 

 

 

 

12 58歳の男性。半年前から両手の筋萎縮に気付き、最近しゃべりにくさを自覚するようになった。体重は半年で70kgから60kgに減少。MMTは両上肢の近位筋が2、遠位筋が4、両下肢が4。四肢の腱反射は亢進。舌の萎縮が認められるが明らかな嚥下障害はない。肺機能検査で%肺活量は95%。動脈血ガス分析はPaO2:90Torr、PaCO2:40Torrであった。
 現時点で最も適切な対応はどれか。

1.BFOの導入
2.胃瘻造設術の施行
3.気管切開術の施行
4.電動車椅子の導入
5.在宅酸素療法の導入

解答

解説

本症例のポイント

・58歳の男性。
・半年前:両手の筋萎縮に気付く。
・最近:しゃべりにくさを自覚。
・体重:半年で70kgから60kgに減少
・MMT:両上肢の近位筋が2、遠位筋が4、両下肢が4。
・四肢の腱反射:亢進。
・舌の萎縮が認められるが、明らかな嚥下障害はない。
・肺機能検査:%肺活量95%。
・動脈血ガス分析:PaO2:90Torr、PaCO2:40Torr。
→本症例は、筋萎縮性側索硬化症が疑われる。本症例の体重は、半年で70kgから60kgに減少していることから、なんらかの対応が必要と思われる。

1.〇 正しい。BFOの導入が現時点で最も適切な対応である。なぜなら、BFOの導入することで食事をより容易になると考えられるため。本症例のMMTは、両上肢の近位筋が2、遠位筋が4であり、そのことが原因で、食事がとれず半年で70kgから60kgに減少と考えられる。BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)は、患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。
2.× 胃瘻造設術の施行の優先度は低い。なぜなら、本症例は、舌の萎縮が認められるが、明らかな嚥下障害はないため。明らかな嚥下障害はないため。胃瘻(いろう)とは、お腹に開けた穴にチューブを通して、直接胃に食べ物を流し込む方法である。口から食事をとることが難しい場合に適応となる。
3.× 気管切開術の施行の優先度は低い。なぜなら、肺機能検査の%肺活量は95%で、基準値範囲内であるため。気管切開術の適応は、①上気道狭窄や閉塞、②遷延性意識障害患者の気道確保と誤嚥の予防、③長期間の人工呼吸管理などである。
4.× 電動車椅子の導入の優先度は低い。なぜなら、設問文に歩行能力が記載されていないことや、本症例のMMT両下肢が4であることから、移動手段の変更の優先度は低いと考えられるため。本症例の体重は、半年で70kgから60kgに減少していることから、優先度が高い項目がほかにあると考えられる。
5.× 在宅酸素療法の導入の優先度は低い。なぜなら、肺機能検査の%肺活量は95%で、基準値範囲内であるため。在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。在宅でも安心して酸素療法を受けられるよう、生活指導などの看護支援が必要で、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となる。ちなみに、慢性閉塞性肺疾患の定義として、%VC(%肺活量) 80%以上、FEV1.0%(1秒率) 70%以下である。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

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13 20歳の男性。脊髄損傷。プッシュアップ動作を図に示す。
 この動作が獲得可能な最も高位の機能残存レベルはどれか。

1.C4
2.C5
3.C6
4.C7
5.C8

解答

解説

本症例のプッシュアップ動作は、肩関節外旋位(肘関節ロック:骨性ロック)した状態で行っている。したがって、選択肢3.C6が獲得可能な最も高位の機能残存レベルである。

1.× C4の機能残存レベルは、四肢を動かすことはできない。
2.× C5の機能残存レベルは、三角筋と上腕二頭筋が残存しており、肩関節運動、肘関節屈伸・回外が可能である。プッシュアップ動作はできないため、平地では車椅子や電動車椅子を使用する。
3.〇 正しい。C6の機能残存レベルは、【主な動作筋】大胸筋、橈側手根屈筋、【運動機能】肩関節内転、手関節背屈、【移動】車椅子駆動(実用レベル)、【自立度】中等度介助(寝返り、上肢装具などを使って書字可能、更衣は一部介助)である。したがって、C6機能残存レベルのプッシュアップは、肩関節外旋位・肘関節伸展位・手指屈曲位にて骨性ロックを使用し、不完全なレベルであることが多い。
4.× C7/C8の機能残存レベルは、骨性ロックを使用しなくてもプッシュアップ動作が可能である。なぜなら、上腕三頭筋の筋力が十分であるため。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

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14 42歳の男性。2週前に感冒症状が出現。3日前から両下肢のしびれと脱力を自覚し、症状が進行したため精査入院。握力は両側5kg未満。MMTは上肢3、下肢2。四肢の深部腱反射は消失し病的反射は認めない。表在感覚は両側下腿以下で重度に低下し異常感覚を伴う。神経伝導検査で両側正中神経および両側腓骨神経の活動電位の振幅の著明な減少を認める。
 最も考えられるのはどれか。

1.髄膜炎
2.多発性筋炎
3.多発性硬化症
4.筋萎縮性側索硬化症
5.Guillain-Barré症候群

解答

解説

本症例のポイント

・42歳の男性。
・2週前:感冒症状が出現。
・3日前:両下肢のしびれと脱力を自覚、症状が進行。
・握力:両側5kg未満。
・MMT:上肢3、下肢2。
・四肢の深部腱反射:消失、病的反射:認めない。
・表在感覚:両側下腿以下で重度に低下し、異常感覚を伴う。
・神経伝導検査:両側正中神経および両側腓骨神経の活動電位の振幅の著明な減少を認める。
→本症例は、Guillain-Barré症候群が疑われる。Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 髄膜炎より考えられるものがほかにある。髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱頭痛項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。
2.× 多発性筋炎より考えられるものがほかにある。多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)。
3.× 多発性硬化症より考えられるものがほかにある。多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
4.× 筋萎縮性側索硬化症より考えられるものがほかにある。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)。
5.〇 正しい。Guillain-Barré症候群が最も考えられる。Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

15 5歳の女児。脳性麻痺による痙直型両麻痺。屋内での主な移動は車椅子で、監視下でPCW〈postural control walker〉を用いた歩行練習をしている。
 この児に対する動作指導で最も適切なのはどれか。

1.割座保持
2.補助具なしでの歩行
3.立位保持装置での立位
4.バニーホッピングでの移動
5.膝立ち位でのキャッチボール

解答

解説

本症例のポイント

・5歳の女児。
・脳性麻痺:痙直型両麻痺
・屋内での主な移動は車椅子監視下でPCWを用いた歩行練習。
→本症例は、痙直型脳性麻痺である。痙直型脳性麻痺の場合、股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のことである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。

1.× 割座保持は、正常発達で促すものではない。なぜなら、痙直型四肢麻痺児にとって、割り座(股関節屈曲・内転・内旋をとる)は、さらなる股関節内転、内旋を助長するため。ちなみに、割り座とは、いわゆる「お姉さん座り」や「トンビ座り」である。
2.× 補助具なしでの歩行は、難易度が高い。なぜなら、本症例の屋内での主な移動は車椅子で、監視下でPCWを用いた歩行練習をしているところであるため。安全かつ効果的な歩行の獲得、過剰な筋緊張の亢進を予防するためには、何かしらの歩行補助具が必要と考えるのが一般的である。
3.× 立位保持装置での立位は、難易度が優しすぎる。なぜなら、本症例は、監視下でPCWを用いた歩行練習をしているため。とはいえ、現在の本症例の屋内での主な移動は車椅子で、立位の時間が不足していると考えられる。立位保持装置ではなく、スタビライザー(起立安定板付き長下肢装具)を用いて行うことが多い。痙直型両麻痺の子どもにとって、立位は正常に近い筋緊張を促進し、体幹の安定性を向上させるなど多くの利点がある。また、立位不能な痙直型脳性麻痺に対し、立位保持獲得の目的でスタビライザー(起立安定板付き長下肢装具)を用いることが多い。ちなみに、立位保持装置とは、立位で身体を保持することで、大腿骨や骨盤に垂直方向へ荷重をかけることや、体幹、股関 節、下肢を伸ばすことができると共に、膝、骨盤、体幹のパッドによるサポートで立位姿勢が安定し手の活動を促すことができる器具である。
4.× バニーホッピングでの移動は、正常発達で促すものではない。割り座からバニーホッピングする移行することが多い。バニーホッピングとは、上下肢の交互運動は少なく、両下肢を屈曲位のまま前進する移動方法のことである。いわゆる両手が床についている「うさぎ跳び」である。(バニーホッピングのイメージとしては、うさぎ跳びのように飛び跳ねるものではなく、交互性の少ないほふく前進である。)
5.〇 正しい。膝立ち位でのキャッチボールが、この児に対する動作指導である。キャッチボールの難易度であるが、上肢を机に支持しながら、机からボールを転がすようなキャッチボールなど、キャッチボールにも難易度調整は可能である。とはいえ、積み木動作などで遊んでもらう程度の難易度が望ましい。そうすることで、抗重力筋の促通、巧緻性向上、下肢伸展パターンの抑制に寄与できる。類似問題もあるので参考にしてほしい(参考:「第53回午後16問目」)。

苦手な方向けにまとめました。

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