第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午後問題41~45】

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41.IADLに含まれるのはどれか。2つ選べ。

1.階段の昇降をする。
2.髪を洗う。
3.掃除をする。
4.電話をかける。
5.髭を刺る。

解答:3,4

解説

IADLとは?

IADL(手段的日常生活動作)とは、日常生活を送るために必要な動作の中でも基本的なADLよりも複雑で高度な動作をいう。項目として、①電話を使用する能力、②買い物、③食事の準備、④家事、⑤洗濯、⑥移送の形式、⑦自分の服薬管理、⑧財産取り扱い能力である。

1.× 階段の昇降(階段昇降)をするのは、ADLの項目である。
2.× 髪を洗う(整容)は、ADLの項目である。
3~4.〇 掃除をする/電話をかけるのは、IADLである。
5.× 髭を刺る(整容)は、ADLの項目である。

 

 

 

 

 

 

 

42.関節リウマチの開張足を矯正する装具で最も適切なのはどれか。

1.外側ウェッジ
2.外側Tストラップ
3.踵補高
4.逆Thomasヒール
5.メタタルサルアーチサポート

解答:5

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

  • 扁平足は、縦アーチが平らに変形したもの。
  • 開張足は、横アーチが平らに変形したもの。

1.× 外側ウェッジは、内反尖足・内反膝に対して適応である。
2.× 外側Tストラップは、内反足に適応である。
3.× 踵補高は、脚長差(尖足など)に対して適応である。
4.× 逆Thomasヒールは、内反尖足に対して適応である。
5.〇 正しい。メタタルサルアーチサポートは、関節リウマチの開張足を矯正する装具である。メタタルサルアーチサポートは、横アーチをサポートするよう第2中足骨骨幹部を中心にした500円玉程度の大きさの丘状のパットである。これを使用することで中足骨頭に負荷がかかりにくくなる。

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43.義足におけるシリコンライナー使用の利点はどれか。

1.ソケットトリムラインの上昇
2.ピストン運動減少
3.装着の簡便性
4.皮膚への刺激
5.発汗促進

解答:2

解説

シリコンソケットは、断端全表面で荷重を行い、断端にかかる圧の分散や安全性向上、歩行中のピストン運動の減少、自己懸垂能力が図られている。

1.× ソケットトリムラインは、「上昇」ではなく下げることができる。なぜなら、シリコンライナーの使用で密着性が高くなるため。ソケットトリムラインとは、義足ソケットの縁の形状のことを指す。
2.〇 正しい。ピストン運動減少は、シリコンの特徴である。なぜなら、シリコンライナーの使用で密着性が高くなるため。
3.× 装着の簡便性は、乏しい。なぜなら、シリコンライナーをいったん裏返し、ライナーの底を断端先端に密着させて、ライナーを履く動作が必要なため(単純に手順が多い)。
4.× 皮膚への刺激の利点は、他のソケットに比べあるとは言いにくい。なぜなら、クッション性はあるものの、皮膚への密着性とシリコンの素材アレルギーから皮膚症状をきたすこともあるため。
5.× 発汗促進は、乏しい。なぜなら、シリコンは空室性が低いため。

 

 

 

 

 

 

 

 

44.脳血管障害の患者に対する治療で適切でないのはどれか。

1.片麻痺に対するCI療法
2.抑うつ状態に対する認知行動療法
3.弛緩性麻痺に対するボツリヌス毒素療法
4.歩行障害に対するトレッドミル歩行練習
5.半側空間無視に対するプリズム適応療法

解答:3

解説

1.〇:正しい。CI療法は、脳卒中による片麻痺患者に対して、非麻痺側の動きを制限することで麻痺側の運動を誘導する治療法である。
2.〇:正しい。認知行動療法とは、自然に頭に浮かんだ考えを記録して、個人の信念や思考様式をもとに施行のプロセスを把握し、より合理的な考え方ができるように導く方法である。抑うつ状態に適応となる。
3.×:ボツリヌス毒素療法は、ボツリヌス菌が作り出すタンパク質が、筋肉に分布している神経の働きをブロックすることを利用して筋肉の過度の緊張・痙縮を和らげる治療法である。弛緩性麻痺に対して行わず、適応は痙性の強い麻痺(痙縮)眼瞼痙攣などに対してである。
4.〇:正しい。麻痺患者の歩行障害でも行える(体重懸垂装置付き)トレッドミル機器がある。また、トレッドミル法練習では、体重懸垂装置を使用し、歩行速度を調整し、セラピストが麻痺側下肢を介助しながら行う。
5.〇:正しい。プリズム適応療法とは、プリズム眼鏡により視野を右にずらした状態を作り出し訓練を行う。半側空間無視に適応となる。

 

 

 

 

 

 

45.Duchenne型筋ジストロフィーのステージ5 (厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)に対する理学療法で優先度が高いのはどれか。

1.座位保持練習
2.体幹装具の使用
3.徒手での咳嗽介助
4.下肢の漸増抵抗運動
5.椅子からの立ち上がり練習

解答:2

解説

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

1.× 座位保持練習はステージ6で行う。なぜなら、ステージ7まで座位保持は可能であるため。
2.〇 正しい。体幹装具の使用は、ステージ5で最も優先度が高い。なぜなら、Duchenne型筋ジストロフィーの患者は、歩行不能となるころから側弯症が進行することが多く、車椅子乗車時間が長くなることも体幹の変形をさらに進行させる原因となるため。ステージ5は、脊柱彎曲予防のための体幹装具(軟性コルセットなど)を使用していく。
3.× 徒手での咳嗽介助は、ステージ7~8で行う。なぜなら、ステージ5では体幹可動域訓練が主となるため。
4.× 下肢の漸増抵抗運動は行わない。なぜなら、筋損傷を招く危険(負担が大きすぎる)があるため。
5.× 椅子からの立ち上がり練習は実施自体困難である。なぜなら、座位から起立ができるのはステージⅢまでであるため。

筋ジストロフィー患者への装具療法

体幹装具は、脊柱変形が顕在化する前に導入することが望ましく、歩行不可能となった時が 1 つの判断時期となる。脊柱変形が強くなった後に導入すると、突出した骨が装具に圧迫し痛みを生じやすく、また胸郭の拘束によって呼吸困難感を引き起こすために長時間の装着が難しくなる。したがって、呼吸理学療法を同時に行うことが必要である(※引用:「筋ジストロフィー患者への装具療法」著:山本洋史)

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6 COMMENTS

匿名

第53回理学療法士子国家試験の、43の開設のところで、「事故懸垂能力」と記載されているのですが、「自己」の間違いでしょうか。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
匿名

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ分類について、
53回の午後45には(体幹装具の使用は、ステージ5で最も優先度が高い。)とありますが、

49回午前10には、(体幹装具の使用はステージ6以降)と記載されています。

4年の間に変更があったのでしょうか?

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
大変失礼ですが、
49回午前10には、(体幹装具の使用はステージ6以降)と記載されています。
というのは、どこに記載されておられる情報でしょうか?
当ブログの解説にはそのような記載はありませんので、再度ご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
匿名

このブログの、PT 第49回 午前10の解説からそのままコピペしたものです。

再度確認お願いいたします。

返信する
大川 純一

ご返信・ご教授ありがとうございます。
再度チェックしたところ、間違いに気づくことができました。
大変失礼いたしました。
解説を修正させていただきましたのでご確認お願いください。
体幹装具の使用は、歩行が不可能となる「ステージ5以降」が有力でした。
今後ともよろしくお願いいたします。

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