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36.神経因性膀胱のうち低活動性膀胱を呈する疾患はどれか。
1.脳出血
2.胸髄損傷
3.多発性硬化症
4.頸椎後縦靭帯骨化症
5.糖尿病性自律神経障害
解答:5
解説
神経因性膀胱とは、排尿に関与する神経の障害によって膀胱機能に異常が生じた病態である。神経病であるので上位ニューロン障害(過活動膀胱)と下位ニューロン障害(低活動膀胱)に分かれる。
つまり、下位ニューロン障害が起こる選択肢5.糖尿病性自律神経障害が正解となる。ちなみに、他に低活動性膀胱を引き起こす疾患には、下位腰椎疾患や馬尾神経障害(腰椎ヘルニア、脊柱管狭窄症、二分脊椎)、糖尿病などによる末梢神経障害、骨盤内臓器術後(直腸癌、子宮頸がん術後)などがあげられる。
1.× 脳出血は、過活動性膀胱となる。なぜなら、大脳皮質から排尿中枢(脳幹部と脊髄)への抑制が障害されるため。
2.× 胸髄損傷は、過活動性膀胱となる。なぜなら、脊髄排尿中枢より上位の損傷であるため(神経因性膀胱)。
3.× 多発性硬化症は、過活動性膀胱となる。なぜなら、大脳皮質から排尿中枢への抑制が障害されるため。
4.× 頸椎後縦靭帯骨化症は、過活動性膀胱となる。なぜなら、脊髄排尿中枢より上位の損傷であるため(核上型の神経因性膀胱)。
多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。
(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)
37.高齢者の転倒リスクに関連性が低いのはどれか。
1.男性
2.視力障害
3.下肢筋力低下
4.認知機能低下
5.複数回転倒の既往
解答:1
解説
1.× 男性は、2~5に比べると転倒リスクの関連性が低い。女性の方が転倒リスクの関連性が高い。
2~5.〇 視力障害/下肢筋力低下/認知機能低下/複数回転倒の既往は、転倒リスクの関連性が高い。他にも、バランス障害・歩行障害・薬剤・うつ・めまい、起立性低血圧などがある。
38.超音波療法について正しいのはどれか。2つ選べ。
1.周波数は深達度に影響しない。
2.成長期の小児の骨端線への照射は避ける。
3.水中の照射では温熱効果は期待できない。
4.骨セメントを使用している部位は照射を避ける。
5.空気中の照射では皮膚とプローブを約10cm離す。
解答:2,4
解説
1.× 周波数は深達度に影響する。3MHzより1MHzの方が深く伝わる。皮膚表面から2cmは3MHzを使用し、2~5cmには1MHzを使用する。
2.〇 正しい。成長期の小児の骨端線への照射は避ける(禁忌である)。
3.× 水中の照射でも、温熱効果は期待できる。超音波の水中法は、凹凸のある部位への照射に適する。水中での空気を媒介しないように、水は脱気する必要がある。
4.〇 正しい。骨セメントを使用している部位は照射を避ける。合成樹脂や関節セメントが留置されている場所の超音波療法は禁忌である。なぜなら、骨セメントはアクリル樹脂を含んでおり、超音波照射によって加熱・溶融の恐れがあるため。
5.× 空気中の照射では皮膚とプローブを、「約10cm」ではなく0.5cm~1cm程度(水中法)離す。空気中の照射は離さない。
39.機器を使用しなければ実施できないのはどれか。
1.等尺性運動
2.漸増抵抗運動
3.等運動性運動
4.遠心性等張性運動
5.求心性等張性運動
解答:3
解説
1.× 等尺性運動は、機械を用いなくても実施できる。等尺性運動は、筋を収縮して聴力が増しても筋全長に変化なく、筋の起始・停止が一定の距離をキープしている状態である。
2.× 漸増抵抗運動とは、軽度の負荷から最終的に最大負荷を与える方法である。機械を用いなくても徒手抵抗で行える。
3.〇 正しい。等運動性運動(等速性運動)は、機械を使用しなければ実施できない。等運動性運動(等速性運動)は、関節運動時の加速度が等しくなるように調整された運動で、等速性筋力評価装置を必要とする。
4~5.× 遠心性等張性運動/求心性等張性運動は、機械がなくても行える。遠心性等張性運動とは、筋の張力は変化せずに筋が収縮しながら筋長は伸びる状態である。求心性等張性運動とは、筋の張力は変化せずに筋の短縮が起こる状態である。
40.脳卒中後の左片麻痺の患者が車椅子からベッドへの移乗動作を行う際の介助方法として適切なのはどれか。
1.装具は外して行う。
2.車椅子の後方から介助する。
3.車椅子上で殿部を前方に移動させておく。
4.ベッドに対して車椅子を平行に設置する。
5.ベッドの高さは車椅子の座面よりも高くしておく。
解答:3
解説
1.× 装具は外して行う必要はない。最小介助で行うため、できるだけ自力で移乗してもらう。そのために、装具はつけておく。
2.× 車椅子の「後方から」ではなく前方から介助する。なぜなら、立ち上がりの際、前方に重心移動するため、前方に倒れやすいため。移乗時は前方介助で行う。
3.〇 正しい。車椅子上で殿部を前方に移動させておく。殿部を前方に出しておくことで、足部がしっかり床につき、足を引いて立ち上がりが楽になる。
4.× ベッドに対して車椅子を、「平行」ではなく30°角度をつけて設置する。
5.× ベッドの高さは車椅子の座面よりも、「高く」ではなく同じ高さにしておく。