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41 統合失調症の急性期において、治療効果をみるのに最も適切なのはどれか。
1. GHQ(General Health Questionnaire)
2. LSP(Life Skills Profile)
3. PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)
4. QLS(Quality of Life Scale)
5. SFS(Social Functioning Scale)
解答3
解説
1.× GHQ(General Health Questionnaire:精神健康調査票)は、60項目の質問事項からなる神経症の症状把握、評価、発見に有効なスクリーニング検査である。
2.× LSP(Life Skills Profile:生活技能プロフィール)は、地域で生活している統合失調症患者の生活機能や社会生活能力を評価する尺度である。「急性期の治療効果」ではなく、慢性期の治療効果の判定に有用である。
3.〇 正しい。PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale:陽性・陰性症状評価尺度)は、統合失調症の急性期において、治療効果をみるのに最も有効である。統合失調症を対象に、精神状態を全般的に把握することを目的として作成された評価尺度である。30項目について陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度を医師が評定する。
4.× QLS(Quality of Life Scale:QOL尺度)は、地域で生活している統合失調症の陰性症状を主症状とした人の生活の質(QOL)の評価法である。「急性期の治療効果」ではなく、慢性期の評価である。
5.× SFS(Social Functioning Scale:社会機能評価尺度)は、統合失調症における家族介入の効果を測定するため、コミュニティでの生活の維持において重要な機能を評価する尺度である。「急性期の治療効果」ではなく、慢性期の評価である。
42 うつ病患者に行った訓練を表に示す。
あてはまる訓練法はどれか。
1. コラム法
2. 自己教示法
3. 行動活性化法
4. ポジティブ日誌
5. アサーショントレーニング
解答1
解説
1.〇 正しい。設問の表は、コラム法(思考記録表)である。うつ病の精神療法として認知行動療法がある。今回示されているのは「7つのコラム法」とよばれ、 7つの項目を記載・検討することで認知の再構成を図るものである。コラム法は、 嫌な感情が起こったときの状況、 気分、 自動思考などを表(コラム)に記述し、それらを改めるような思考を促すものである。
2.× 自己教示法は、認知行動療法の一つで、遂行機能障害にも適応となる。恐怖やネガティブな感情が湧出した際に、実際に声を出して、あるいは心の中で「リラックスしよう」「心配ない」などの言葉を自分自身にかける。自らの言葉で教示を与え、それが刺激となって自らの行動を変容させる方法である。
3.× 行動活性化法は、行動療法(心理療法)の一つで、抑うつ状態にも適応となる。抗うつ効果のある行動を起こさせることで改善を目的とする。日々の活動の予定を作って、実際の行動を観察したり、これらの行動や活動を変えることがその人の助けになりそうな特定の状況に注目したりする。
4.× ポジティブ日誌は、抑うつ状態にも適応となる。ポジティブなことを毎日思い出して記載する方法である。
5.× アサーショントレーニング(自己表現)は、抑うつ状態・メンタルヘルス不全にも適応となる。自分も相手も大切にした自己表現を身につけていくためのトレーニングである。 自分の気持ち、考え、信念等を正直に、率直にその場にふさわしい方法で表現できるコミュニケーションを目指す。
43 広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)について正しいのはどれか。
1. 聴覚過敏は稀である。
2. クレーン現象がみられる。
3. 注意欠如・多動性障害は合併しない。
4. 視覚情報より聴覚情報への注目の方が優位である。
5. 4〜5歳で「サリーとアン課題」ができるようになることが多い。
解答2
解説
広汎性発達障害とは、相互的な社会関係とコミュニケーションのパターンにおける質的障害、および限局した常同的で反復的な関心と活動の幅によって特徴づけられる一群をいう。現在の分類では「自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害」に含まれている。
広汎性発達障害、およびその下位分類である自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症は、「自閉スペクトラム症」とまとめられた。
【診断基準の要点】
①「社会及び感情の相互性の障害」「社会的相互作用で用いられる非言語的コミュニケーションの障害」「発達レベル相応の関係を築き維持することの障害」の3つがすべて込められること。
②行動、興味活動の、限局的で反復的な様式が認められること。
1.× 聴覚過敏などの感覚過敏がみられる。
2.〇 正しい。クレーン現象がみられる。クレーン現象は、言葉がうまく使えないため、動作で要求を実現させようとする動作である。 例えば、のどが渇いたら、母親の手を取って冷蔵庫の所まで連れて行くといった動作である。言葉で要求を伝えられない小児(自閉スペクトラム症を含む)にみられることが多い。
3.× 注意欠如・多動性障害(ADHD)は合併する。ほかにも、知的障害、発達性協調運動症、学習障害などの合併がみられる。
4.× 逆である。聴覚情報より視覚情報への注目の方が優位である。聴覚(言葉で話す)よりも視覚(絵など)で訴えた方が指示は伝わりやすい。限局性学習症といい、知的障害などはないが、聞く・話す・読む・計算する・推論するなど、特定の能力の習得と実行に著しい困難を示す。
5.× 4〜5歳で「サリーとアン課題」ができるようになることが多いのは、定型発達の場合である。「サリーとアン課題」は他者の心を推測する能力を測る課題である。同年齢の広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)児では不正解になることが多い。
① サリーとアンの二人が部屋の中で遊んでいます。
② サリーは自分の人形をカゴの中に入れて部屋を出ます。
③ サリーが出ていった後に、アンはカゴの中の人形を自分の箱の中に隠します。
④ 部屋に戻ってきたサリーは、もう一度人形で遊ぶためにどこを探すでしょう?
3歳児(平均3歳6か月):過半数以上が「箱の中を探す」と、自分の見たままで答える。
4歳児(平均4歳6か月):過半数が「カゴの中を探す」と答える。
6歳:95%以上の子が正答できる。
44 アルコール依存症の作業療法を行うにあたって、適切でないのはどれか。
1. 酒害教育と並行して行う。
2. 退薬症候群が遷延しているか把握する。
3. 家族が健康になるよう支援する視点をもつ。
4. 本人の飲酒問題の否認について初期から積極的に介入する。
5. 回復初期には過剰な言動に振り回されない対応が必要である。
解答4
解説
アルコール依存症の集団精神療法では、自己の飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上極めて有効である。自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていく。断酒継続のための自助グループ(当事者グループ)としてよく知られているものに、断酒会とAA(Alcoholics Anonymous:アルコール依存症者匿名の会)がある。断酒会は日本独自のもので、参加者は実名を名乗り、家族の参加も可能である。AAはアメリカで始まり、世界各地にある。匿名で参加し、家族は原則として同席しない。
1.〇 正しい。酒害教育と並行して行う。酒害教育とは、飲酒が引き起こす諸問題やアルコール依存症という病気について学ぶことをいう。酒害に対する正しい知識を身につけること(酒害教育)は、アルコール依存症からの回復につながる。
2.〇 正しい。退薬症候群が遷延(せんえん:物事や病状が長引くこと)しているか把握する。退薬症候群 (離脱症候群)とは、身体的依存を形成しやすい薬物を長期服用していて、急に服用を中止したり、減量した時に起こる症状である。 不安、不眠、焦燥、振戦(ふるえ)、発汗、稀にせん妄やけいれんなどの症状が一過性に現れる。ベンゾジアゼピン系睡眠薬では作用時間の短いものほど早期に強く現れ、多量に服用するほど出やすい。
3.〇 正しい。家族が健康になるよう支援する視点をもつ。なぜなら、患者の家族は精神的に疲弊し健康を害することが多いため。家族への心のケアも必要である。
4.× 本人の飲酒問題の否認について、初期から積極的に介入する必要はない。なぜなら、アルコール依存症患者の初期治療では、「身体的治療・離脱症状の管理と治療」が行われるため。
5.〇 正しい。回復初期には過剰な言動に振り回されない対応が必要である。回復初期のアルコール依存症の特有の心理として、「名誉挽回のために過剰に頑張る」というものもある。この過剰な言動に治療者や家族が真に受けすぎて対応すると、それが続かなくなった場合、患者は無力感が出現し、再飲酒の可能性を高める。正常な部分と病気による部分を区別して、対応を見極めることが必要である。
45 境界性パーソナリティ障害患者の作業療法について正しいのはどれか。
1. 退行を許容する。
2. 逸脱行動は静観する。
3. 自力で達成できるような作業を行わせる。
4. 作業より面談などの言語的な関わりを中心とする。
5. 取り決め事項の変更について患者の要求のまま応じる。
解答3
解説
境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つ。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他者との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。
【関わり方】
患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。
1.× 退行を許容する必要はない。なぜなら、退行を許容することにより、さらなる症状(依存・欲求不満・衝動行為など)は悪化する可能性が高いため。ちなみに、退行とは、ある程度の発達を遂げた者が、危機に際してより低い発達段階に「子どもがえり」して、未熟な行動により当面の困難を回避しようとするものである。例として、弟や妹が生まれたとき、両親の愛情が自分から弟妹に移ってしまうことをおそれて、おねしょをして両親の手を煩わせるなどである。
2.× 逸脱行動は静観する必要はない。なぜなら、静観するとさらに、自分を傷つけたり他害のおそれがあるため。ちなみに、逸脱行動とは、リストカット、自殺企図、過食・嘔吐、大量服薬、暴力、喧嘩などがあげられる。
3.〇 正しい。自力で達成できるような作業を行わせる。なぜなら、自己効力感を高めることにつながるため。衝動的にイライラ感や不安感が出現する一方で、慢性的な空虚感も持ち合わせており、抑うつ状態を呈する場合もある。
4.× どちらかというと逆である。面談より作業活動を中心とする。なぜなら、枠を設定しにくい面談を中心にすると治療者への依存を助長させる可能性があるため。また、自力で達成できるような作業活動は、自己効力感を高め、適度な依存欲求を満たすことができる。
5.× 取り決め事項の変更について患者の要求のまま応じる必要はない。むしろ、取り決め事項の枠組みをしっかりと構築し、枠組みを超えた患者の要求には応じないことが必要である。なぜなら、患者の要求に対応していると、患者の依存を増長させる可能性が高いため。患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。