第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 腕神経叢損傷について正しいのはどれか。

1. 上腕骨骨頭の下方偏位が出現する。
2. 分娩麻痺は腕神経叢損傷ではない。
3. 上位型は前腕の回外が可能である。
4. 下位型の麻痺では手指の運動障害はない。
5. 近位引き抜き損傷では交感神経機能障害がある。

解答1

解説

1.〇 正しい。上腕骨骨頭の下方偏位が出現する。なぜなら、腕神経叢損傷により弛緩性麻痺を呈し、上肢の重みによるため。
2.× 分娩麻痺は、腕神経叢損傷(Erb麻痺:C5、C6損傷が多い)である。分娩麻痺とは、分娩時に新生児の肩などが産道で引っ掛かり、頭頸部が強く牽引されることで生じる。
3.× 上位型は、前腕の回外が困難である。なぜなら、上位型はC5~6の麻痺であり、前腕の回外筋(回外筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋)は、C5~C7で支配されるため。
4.× 下位型(C8~T1)の麻痺では、手指の運動障害を認める。なぜなら、手指屈筋・手内筋は、C8~T1で支配されるため。
5.× 近位引き抜き損傷では、交感神経機能障害は生じない。交感神経の節前神経は胸腰髄(T1~L3)の側角から出るため、下位型・全型の節前損傷(引き抜き損傷)ではT1が障害され、Horner徴候(中等度縮瞳、眼瞼下垂、眼球陥凹)などの交感神経症状を呈することもある。ちなみに、引き抜き損傷とは、脊髄から神経根が引き抜かれる節前損傷である。節前損傷の機能回復は期待できないが、節後損傷であればある適度の機能回復が期待できる。

 

 

 

 

 

 

 

37 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)における補装具費支給制度で18歳未満のみが対象となるのはどれか。

1. 座位保持椅子
2. 側弯矯正装具
3. 電動車椅子(リクライニング・ティルト式普通型)
4. 歩行器(六輪型)
5. ロフストランドクラッチ

解答1

解説

補装具費支給制度で18歳未満の障害児に限って支給される補装具 (障害児に係わる補装具)

①座位保持椅子
②起立保持具
③頭部保持具
④排便補助具

ちなみに、座位保持椅子については借受け(貸与)も可能である。補装具費の支給は「購入」が原則である。
ただし、借受け(貸与)も可能である場合は、
①身体の成長に伴い補装具の短期間での交換が必要であると認められる場合 (座位保持装置の構造フレーム、歩行器、座位保持椅子)
②障害の進行により補装具の短期間の利用が想定される場合 (重度障害者用意思伝達装置の本体)
③補装具の購入に先立ち比較検討が必要であると認められる場合 (義肢、装具、座位保持装置の完成用部品)である。

1.〇 正しい。座位保持椅子は、障害者総合支援法における補装具費支給制度で18歳未満のみが対象となる。
2~5.× 側弯矯正装具/電動車椅子(リクライニング・ティルト式普通型)/歩行器(六輪型)/ロフストランドクラッチは、18歳以上の障害者も支給の対象である。

障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、2013年に障害者自立支援法から障害者総合支援法へと改正され、障害者と障害児を対象とした障害保健福祉施策についてまとめられた法律である。これにより障害者の範囲が拡大され、身体障害者、精神障害者、知的障害者、障害児の全てが対象とされている。そして、対象となっている者は、認定調査というものを受け「障害支援区分」という障害の重症度分類によって7区分(非該当、区分1~6)に分けられる。それにより受けられるサービス内容が変わってくる。

①障害者も難病患者も自立できる社会をめざす。
②応能負担(所得に応じて自己負担額が変わること)が原則。
③あらゆる障害(身体・知的・精神+難病)についてこの法律で対応する。
④市区町村が事業の母体である。

 

 

 

 

 

 

38 疾患または症候と異常歩行の組合せで正しいのはどれか。

1. 運動失調:酩酊歩行
2. フレイル:すくみ足歩行
3. Parkinson病:はさみ脚歩行
4. 脳卒中片麻痺:踵足歩行
5. 総腓骨神経麻痺:分回し歩行

解答1

解説
1.〇 正しい。酩酊歩行(失調性歩行、ワイドベース、よろめき歩行)は、運動失調(小脳障害・前庭障害)によりみられる。
2.× すくみ足歩行は、「フレイル」ではなくパーキンソン病でみられる。パーキンソン病は他にも小刻み歩行や突進現象がみられる。ちなみに、フレイルとは、「虚弱」「脆弱」という意味であり、加齢するにつれて体力や活力が弱まっている状態のことを指す。
3.× はさみ脚歩行は、「Parkinson病」ではなく痙性対麻痺などでみられる。はさみ脚歩行とは、両足をはさみのように組み合わせて歩き、痙性対麻痺歩行ともいう。
4.× 踵足歩行(らくだ歩行)は、「脳卒中片麻痺」ではなく脛骨神経麻痺二分脊椎ポリオなどでみられる。ちなみに、踵足歩行(らくだ歩行)とは、足のつま先が宙に浮いた状態で、踵だけが接地した歩行のことである。
5.× 分回し歩行は、「総腓骨神経麻痺」ではなく脳卒中片麻痺でみられる。ちなみに、総腓骨神経麻痺は、下垂足となり、鶏歩がみられる。

 

 

 

 

 

 

 

39 エビデンスレベルが最も高いのはどれか。

1. 症例報告
2. コホート研究
3. 症例対照研究
4. ランダム化比較試験
5. 非ランダム化比較試験

解答4

解説

(※図引用:Minds診療ガイドライン作成の手引き2014に記載されている「エビデンスのレベル分類」)

 

1.× 症例報告(記述研究)は、エビデンスレベルⅤである。
2.× コホート研究(分析疫学研究)は、エビデンスレベルⅣaである。
3.× 症例対照研究(分析疫学研究)は、エビデンスレベルⅣaである。
4.〇 正しい。ランダム化比較試験は、エビデンスレベルⅡである。エビデンスレベルはⅠ(小さい数字)に行くにつれエビデンスが高いとされている。
5.× 非ランダム化比較試験は、エビデンスレベルⅢである。

 

 

 

 

 

 

 

40 ワーキング・メモリを測定する検査が含まれているのはどれか。

1. BACS(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia)
2. LASMI(Life Assessment Scale for the Mentally Ill)
3. SCSQ(Social Cognition Screening Questionnaire)
4. SMSF(Inventory Scale for Mood and Sense of Fatigue)
5. WHO-DAS 2.0(WHO disability assessment schedule 2.0)

解答1

解説
1.〇 正しい。BACS(The Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia:統合失調症認知機能簡易評価尺度)は、ワーキング・メモリを測定する検査が含まれている。6つの認知機能(①言語性記憶と学習、②ワーキング・メモリ(作動記憶)、③運動機能、④注意と情報処理速度、⑤言語流暢性、⑥遂行機能)を評価する。ただし、言語流暢性のみ2つの検査があるので、7つの検査で構成されている。
2.× LASMI(Life Assessment Scale for the Mentally Ill:精神障害者社会生活評価尺度)は、精神障害のある人の生活を包括的に評価するための尺度である。5つの大項目(①日常生活、②対人関係、③労働または課題遂行能力、④持続性・安定性、⑤自己認識)からなる。
3.× SCSQ(Social Cognition Screening Questionnaire:心の状態推論質問紙)は、統合失調症で障害される社会認知に関する質問紙である。5項目(①言語記憶、②文脈からの推論、③心の理論、④メタ認知、⑤敵意バイアス)によって構成される。
4.× SMSF(Inventory Scale for Mood and Sense of Fatigue:気分と疲労のチェックリスト)は、統合失調症患者の気分と疲労感に関する13項目からなる自記式尺度である。各尺度について被検者は、「感じない」と「強く感じる」を両端とする線分上のどのあたりに今の状態が当てはまるかをチェックする。
5.× WHO-DAS 2.0(WHO disability assessment schedule 2.0:WHO障害者評価面接基準2.0)は、質問紙に対する患者の反応から障害の性質を評価する。6領域(①認知、②可動性、③セルフケア、④他者との交流、⑤日常活動、⑥社会への参加)を調査する。

 

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