第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午前問題46~50】

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46 注意欠如・多動性障害について正しいのはどれか。

1. 女性に多い。
2. 低出生体重児の多くで発症する。
3. 感情における衝動性の高さは改善しやすい。
4. 約9割の患者は成人期早期までに寛解する。
5. 青年期以降は運動性多動の症状は目立たなくなる。

解答5

解説

注意欠如・多動性障害(ADHD)とは?

注意欠如・多動性障害(ADHD)の特徴として、①注意欠如、②多動性、③衝動性である。対人関係面で周囲との軋轢を生じやすく、大人からの叱責や子どもからのいじめにあうことがある。このため、二次障害として、自信喪失、自己嫌悪、自己評価の低下がみられることがある。そのため、患児の行動特徴を周囲が理解し、適切に支援をしていくことが重要である。 サポートが良ければ、成長とともに過半数は改善していく。放置すると、思春期に感情障害、行為障害、精神病様状態に陥りやすい。

1.× 「女性」ではなく男性に多い。男女比は、1.5~2.5:1である。ただし、各報告につきばらつきが多い。
2.× 低出生体重児の多くで発症することはないが、健常者と比較すると低出生体重児の方が発症率は高い
3.× 感情における衝動性の高さは、成人となっても持続することが多い
4.× 大人になってからも、5割以上は症状が残っていることが研究によって明らかになっている。症状のすべての寛解は起こりにくいが、多動性は成人までに改善することが多い。ちなみに、衝動性や不注意は持統することが多い。
5.〇 正しい。青年期以降は、運動性多動の症状は目立たなくなる。多動性は成人までに改善することが多い。ちなみに、衝動性や不注意は持統することが多い。

 

 

 

 

 

 

 

47 入院患者のせん妄発症を予防するための取り組みとして適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 処方内容を確認する。
2. 家族との面会は謝絶する。
3. 病室移動の頻度を増やす。
4. 多職種で関わるのを避ける。
5. 本人が見える位置に時計を置く。

解答1・5

解説

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

1.〇 正しい。処方内容を確認する。なぜなら、せん妄の原因として、薬剤(薬物)があるため。
2.× 家族との面会は謝絶する必要はない。むしろ、身近な人(家族や友人など)との面会は、心理的因子の安定にもつながりせん妄の発症予防に有効である。
3.× 病室移動の頻度は、「増やす」のではなく減らす。なぜなら、せん妄の原因として、環境の変化(手術、入院、ICU入室、明るさ、騒音など)があるため。
4.× 多職種で関わるのを避ける必要はない。むしろ、多職種での関わりは、せん妄の発症予防早期発見による円滑な治療を進めるうえで重要である。
5.〇 正しい。本人が見える位置に時計を置く。いつでも時間が確認でいることで、患者自身でも睡眠や覚醒のリズムの調整が行えるため。

 

 

 

 

 

 

48 ACT(Assertive Community Treatment)の特徴として正しいのはどれか。

1. 日中に限定した支援を行う。
2. 医療機関内でのみ援助を行う。
3. 利用者の入院治療を推奨する。
4. 精神障害が軽度な患者が対象である。
5. チームでのケアマネジメントを行う。

解答5

解説

ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは?

 ACT (assertive community treatment:包括的地域生活支援プログラム)とは、重い精神障害をもった人(入退院を繰り返すなど)であっても、地域社会の中で自分らしい生活を実現・維持できるよう包括的な訪問型支援を中心に提供するケアマネジメントモデルのひとつである。地域社会でうまく生活を継続することができるように多職種が365日・24時間体制で多職種によって構成されたチームにより関わる仕組みである。サービス提供は原則的に無期限である。

1.× サービスは、「日中に限定した支援を行う」のではなく、365日24時間提供される。
2.× 援助・相談・支援は、「医療機関内のみ」ではなく、実際の生活の場(自宅や職場など)である。積極的に訪問が行われる。
3.× 「利用者の入院治療を推奨するもの」ではなく、地域社会での生活を支援する活動である。
4.× 対象は、「精神障害が軽度な患者」ではなく、比較的重度な患者である。なぜなら、重度の精神障害の患者は、既存の地域精神保健サービスでは十分な恩恵を得ることが難しいため。
5.〇 正しい。チームでのケアマネジメントを行う。多職種によって構成されたチームによりサービスを提供する。

 

 

 

 

 

 

 

49 特別支援教育について正しいのはどれか。

1. 軽度知的障害は対象とならない。
2. 特別支援学級は10名以上で編成する。
3. 一人一人の障害レベルによらず標準的な指導を行う。
4. 注意欠如・多動性障害は通級による指導の対象である。
5. 広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)は知的障害を伴う場合のみ対象となる。

解答4

解説

特別支援教育とは?

特別支援教育とは、障害のある子どもがその能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するために必要な力を培うための教育である。 障害の状態に応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導が行われている。

1.× 軽度知的障害も対象である。対象障害種は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱などに及ぶ。それぞれのニーズに合わせた支援が提供されている。
2.× 特別支援学級(公立小・中学校)は、「10名以上」ではなく上限8人・平均3人(1学級当たり)で編成する。
3.× 一人一人の障害レベルに応じて、「標準的な指導」ではなく障害に配慮した指導を行う。
4.〇 正しい。注意欠如・多動性障害(ADHD)は、通級による指導の対象である。通級による指導とは、日本の義務教育における特別支援教育の制度の一つで、通常の学級に在籍していながら個別的な特別支援教育を受けることの出来る制度である。発達障害である注意欠如・多動性障害(ADHD)や学習障害(LD) のある児童生徒は対象である。
5.× 広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)は、知的障害の有無にかかわらず対象で特別支援教育を受けることができる。

 

 

 

 

 

 

 

50 就労定着支援事業について正しいのはどれか。

1. 利用期間は1年である。
2. 他の職場への斡旋を行う。
3. 目的は職業上の適性を確認することである。
4. 一般就労を6か月継続している者が対象である。
5. 日常生活や社会生活上の相談・指導は行わない。

解答4

解説

就労定着支援とは?

就労定着支援とは、就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。

障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする。就労に伴う環境変化などの課題解決(①生活リズム、②家計や体調の管理など)に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。

1.× 利用期間は、「1年」ではなく3年が限度である。
2.× 他の職場への斡旋を行うのは、「就労定着支援」ではなく公共職業安定所(ハローワーク)である。就労定着支援は、障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートする。
3.× 目的が職業上の適性を確認することであるのは、「就労定着支援」ではなく就労移行支援である。ちなみに、就労移行支援事業とは、就業が可能と思われる65歳未満の障害者に対して、就業のために必要な知識や技能を身に付けてもらうものである。2年(特例で3年)が限度である。
4.〇 正しい。一般就労を6か月継続している者が対象である。就労移行支援、就労継続支援などの利用を経て、通常の事業所に新たに雇用され6か月を経過したもので3年が限度である。
5.× 日常生活や社会生活上の相談・指導は行う。就労定着支援は、障害者の就労や、就労に伴って生じている生活面での課題を解決し、長く働き続けられるようにサポートするものである。具体的には、生活リズム、家計や体調の管理など、就労に伴う環境変化などの課題解決に向けて、必要な連絡調整や指導・助言などの支援を実施する。

障害者総合支援法に基づく障害者の就労支援事業

①就労移行支援事業:利用期間2年
【対象者】一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者(65歳未満の者)①企業等への就労を希望する者
【サービス内容】一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適性に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援等を実施。通所によるサービスを原則としつつ、個別支援計画の進捗状況に応じ、職場訪問等によるサービスを組み合わせ。③利用者ごとに、標準期間(24ヶ月)内で利用期間を設定する。

②就労継続支援A型(雇用型):利用期限制限なし
【対象者】就労機会の提供を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上を図ることにより、雇用契約に基づく就労が可能な障害者。(利用開始時、65歳未満の者)
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係がない者
【サービス内容】通所により、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者について、一般就労への移行に向けて支援。一定の範囲内で障害者以外の雇用が可能。多様な事業形態により、多くの就労機会を確保できるよう、障害者の利用定員10人からの事業実施が可能。

③就労継続支援B型(非雇用型):利用制限なし
【対象者】就労移行支援事業等を利用したが一般企業等の雇用に結びつかない者や、一定年齢に達している者などであって、就労の機会等を通じ、生産活動にかかる知識及び能力の向上や維持が期待される障害者
① 企業等や就労継続支援事業(A型)での就労経験がある者であって、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用したが、企業等又は就労継続事業(A型)の雇用に結びつかなかった者
③ ①、②に該当しない者であって、50歳に達している者、又は試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援事業や就労継続支援事業(A型)
の利用が困難と判断された者
【サービス内容】
通所により、就労や生産活動の機会を提供(雇用契約は結ばない)するとともに、一般就労に必要な知識、能力が高まった者は、一般就労等への移行に向けて支援。平均工賃が工賃控除程度の水準(月額3,000円程度)を上回ることを事業者指定の要件とする。事業者は、平均工賃の目標水準を設定し、実績と併せて都道府県知事へ報告、公表。

(引用:「就労移行支援について」厚生労働省様HPより)

 

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