第56回(R3) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題96~100】

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96 我が国の65歳以上の高齢者における軽度認知障害〈MCI〉の有病率として適切なのはどれか。

1.5%
2.15%
3.35%
4.50%
5.70%

解答

解説

 厚生労働省HPによると、2012年の日本の65歳以上の高齢者における、認知症有病率推定値は15%で、認知症有病者数は約462万人と推計されている。軽度認知障害(MCI)の有病率は、13%と推定され、約400万人の軽度認知症の方がいると推計されている。ちなみに、軽度認知障害(MCI)とは、認知症と正常な状態の中間と定義され、時間経過とともにアルツハイマー型認知症を発症すると言われている。軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー型認知症の違いは、日常生活を独立して行えるかどうかとされているが、その境界線は曖昧である。したがって、選択肢2.15%が軽度認知障害〈MCI〉の有病率として適切である。

軽度認知障害〈MCI〉の診断基準

①本人や家族から認知機能低下の訴えがある。
②認知機能は正常とはいえないが認知症の基準を満たさない。
③基本的な日常生活は正常(複雑な日常生活動作に最低限の障害あり)

また、認知症の有病率は、85歳以上で50%以上、90歳以上で80%である。

 

 

 

 

 

 

97 知的障害がみられうる疾患の中で、皮膚色素沈着(カフェオレ斑)が特徴的なのはどれか。

1.結節性硬化症
2.神経線維腫症
3.ネコ鳴き症候群
4.Williams症候群
5.Prader-Willi症候群

解答

解説

1.× 結節性硬化症は、大脳皮質などに結節性病変が多発する常染色体優性遺伝疾患である。皮膚病変には、顔面の血管線維腫や葉状白斑がみられ、脳、腎臓、肺、心臓など様々な身体の部位に腫瘍ができる疾患である。てんかん発作や知的障害、自閉症、頭痛、腹痛、血尿、高血圧など実に多彩な症状が現れるが、これらの症状の有無や程度は個人差がかなり大きいとされている。精子や卵子の遺伝子が突然変異することによって発病することが多く、完治は難しい。
2.〇 正しい。神経線維腫症(レックリングハウゼン病)の主な症状は、カフェオレ斑(皮膚色素沈着)である。カフェオレ斑は楕円形のものが多く、子供では5mm以上、大人では15mm以上もある。重症合併症を有する割合は少ないが、健常人と比べて悪性腫瘍を合併する割合がやや高いと言われている。原因は17番染色体であり遺伝子疾患であるが、患者の半数以上は無症状の両親から生まれている。他の症状としては、脊柱側弯や長管骨の狭細化・弯曲・偽関節である。ちなみに、知的障害がなくカフェオレ斑が見られる疾患を、McCune-Albright症候群(マッキューン・オルブライト症候群)という。
3.× ネコ鳴き症候群(クリ・デュ・チャット症候群)は、5番染色体の異常によって生じる遺伝子疾患である。甲高い子猫のような泣き声が特徴的であり、中等度〜重度の精神運動遅滞を認める。そのほか身体的特徴として、小頭症、小顎、心臓欠陥、脊柱側弯症、鼠径ヘルニアなどがある。てんかんや心疾患の程度により予後が左右される。
4.× Williams症候群(ウィリアムス症候群)は、7番染色体のわずかな欠損による遺伝子疾患である。知的障害のほか、大動脈弁狭窄症、高カルシウム血症、視空間認知の障害があげられる。根本治療はなく、合併症に対しては対症療法を行なっていく。
5.× Prader-Willi症候群(プラダー・ウィリ症候群)は、15番染色体長腕に位置する父性発現遺伝子の働きが欠損したことで発症する。乳児期は筋緊張低下、低体重、幼児期〜学童期には過食肥満、思春期には性格障害、異常行動、成人期には肥満、糖尿病などの症状が問題となる。治療法は食事療法、運動療法、ホルモン療法などがある。

 

 

 

 

 

98 曝露反応妨害法が有効なのはどれか。

1.強迫性障害
2.身体化障害
3.神経性過食症
4.全般性不安障害
5.PTSD〈外傷後ストレス障害〉

解答

解説

曝露反応妨害法とは?

曝露反応妨害法は、強迫性障害の治療法の一つで認知行動療法に分類される。ある強迫観念に曝された時に、それに対する強迫行為を我慢(反応妨害)させることで徐々に不安や恐怖に慣れさせるものである。不安の弱い曝露反応から順番に繰り返していくことで効果を発揮していく。

1.〇 正しい。強迫性障害は、曝露反応妨害法が有効である。強迫性障害は、とある強迫観念にとらわれすぎて、それを解消するための強迫行為を繰り返し行わないと気が済まなくなってしまう疾患である。強迫行為に多くの時間を費やすことで社会生活へも影響を及ぼす。(例:自分では不合理だとわかっていても1時間以上手洗いをしてしまう。)他にも、強迫性障害の治療として、行動療法や森田療法、指示的精神療法(カウンセリング)が挙げられる。
2.× 身体化障害は、身体的な病変がないにも関わらず、様々な身体症状を慢性的に訴える疾患である。患者の状況として、多くの医療機関を受診し、先生には「身体的症状を説明する原因はない」と説明を受けても、受診を続け、周囲との人間関係が悪いことが多い。効果的な治療法として、指示的精神療法(カウンセリング)認知行動療法が挙げられる。抗不安薬などの薬物療法は依存を招く可能性がある。
3.× 神経性過食症は、常識外れた大量の食べ物を摂取した後に、それを埋め合わせるための行為(嘔吐、下剤の乱用、過度な運動、絶食など)を行う摂食障害である。治療法として指示的精神療法(カウンセリング)、認知行動療法、対人関係療法、家族療法などがあげられる。
4.× 全般性不安障害は、日常生活において漠然とした不安を慢性的に感じてしまう病気である。特定の状況に苦手意識を感じる社交不安障害とは異なり、不安を感じる事象が非常に幅広い(漠然とした将来の不安など)ことが特徴である。治療法として認知行動療法(セルフコントロール)、薬物療法があげられる。
5.× PTSD〈外傷後ストレス障害〉は、ショッキングな出来事や強烈な精神的ストレスが心的ダメージとなり、その出来事から時間が経ってからもその経験に対して強い恐怖心フラッシュバックを生じるものである。治療法として、認知行動療法やグループ療法、持続的エクスポージャー(PE)、薬物療法があげられる。ちなみに、持続的エクスポージャー(PE)は、環境でトラウマの記憶を繰り返し想起させ、それに向き合うことで、誤った恐怖感や過度の無力感などの情動の修正を図る。

 

 

 

 

 

 

99 ナルコレプシーに認められない症状はどれか。

1.睡眠発作
2.睡眠麻痺
3.入眠時幻覚
4.けいれん発作
5.情動脱力発作

解答

解説

ナルコレプシーとは?

ナルコレプシーは、日中の過度の眠気や、通常起きている時間帯に自分では制御できない眠気が繰り返し起こったり、突然の筋力低下(情動脱力発作)も伴う睡眠障害である。入眠時はレム睡眠となるため、入眠時の金縛り、中途覚醒、リアルな悪夢によってうなされることが多い。覚醒状態の維持やその他の症状(入眠時の幻覚、睡眠麻痺)をコントロールするために薬物療法を行う。

1.〇 日中の過度な眠気やコントロールできない急激な眠気(睡眠発作)の症状がある。
2.〇 入眠前後や覚醒直後に身体が思うように動かせなくなる睡眠麻痺(金縛り)の症状がある。
3.〇 入眠時に非常に鮮明な幻覚や幻聴を伴うことがある。なぜなら、入眠時はレム睡眠となるため。
4.× 誤っている。けいれん発作は起こらない
5.〇 笑う、怒る、喜ぶ、驚くなどの感情が刺激となって、急激な筋力低下が生じる(情動脱力発作)ことがある。

 

 

 

 

 

 

100 てんかんについて正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.単純部分発作は意識障害を伴わない。
3.高齢になるとてんかんの発症率は低下する。
4.熱性けいれんの半数以上はてんかんに移行する。
5.症候性てんかんは特発性てんかんに比べ予後が良い。

解答

解説
1.× 女性に多いとは一概に言えない。なぜなら、ミオクロニー欠神てんかんに至っては、男児に多い傾向があるため。全体的な転換の比率は、男女1:1である。
2.〇 正しい。単純部分発作は、意識障害を伴わない。ちなみに、意識障害を伴うものは、複雑部分発作である。
3.× てんかんは、どの年齢にも起こりえるが、高齢者と小児で発病率が高い傾向にある。
4.× 熱性けいれんから、てんかんへ移行しない。なぜなら、熱性けいれん(数分間のけいれん発作)は、神経学的な異常を全く残さないため。
5.× 症候性てんかんは、特発性てんかんに比べ予後が、「良い」のではなく悪い。なぜなら、症候性てんかん(器質的な脳の病変に起因するてんかん発作)は、抗てんかん薬で発作を抑えられる割合は50%前後であるため。一方、特発性てんかん(明らかな脳の病変が認められず、生まれ持った脳の性質に起因するてんかん)は、ある年齢に達すると自然と発作がなくなるため予後は良好である。20歳以後の発症は、症候性が多く、特に高齢者の場合は、脳血管障害や変性疾患を基盤とするものが多い。

熱性けいれんとは?

 熱性けいれんとは、発熱時に痙攣発作すること。熱性けいれんは、数分間の痙攣発作であるが、神経学的な異常を全く残さない点が特徴である。つまり、てんかんには移行しない。

幼児が、熱性けいれんを起こしやすいが、次の3条件を満たす場合は、通常7歳以上になると痙攣発作はみられなくなる。
①年齢が6か月~6歳まで
②発熱が38℃以上
③痙攣が20分以内に治まる。

しかし、この3条件を満たさない場合は、てんかんの疑いがあるため、脳波などの検査を受けることが望ましい。

 

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