第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6 図のように検者が脛骨内縁をこすりおろす検査を実施した。
 該当する病的反射はどれか。

1.Babinski反射
2.Chaddock反射
3.Gonda反射
4.Gordon反射
5.Oppenheim反射

解答

解説
1.× Babinski反射(バビンスキー反射)の刺激部位は、踵部から足底外側であり、陽性で母趾が背屈する。
2.× Chaddock反射(チャドック反射)の刺激部位は、腓骨の外果下部を後方から前方であり、陽性で母趾が背屈する。
3.× Gonda反射(ゴルダ反射)の刺激部位は、母趾以外の4趾(特に第4趾)を他動的に強く背屈させる。
4.× Gordon反射(ゴルドン反射)の刺激部位は、ふくらはぎを指で強くつまむ
5.〇 正しい。Oppenheim反射(オッペンハイム反射)が、該当する病的反射である。Oppenheim反射(オッペンハイム反射)の刺激部位は、脛骨内縁を上方から下方であり、陽性で母趾が背屈する。選択肢2~5はいずれもバビンスキー反射の変法である。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】反射中枢の組み合わせを完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

7 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995年)に従って図のように肩関節の可動域を測定する。
 正しいのはどれか。

1.背臥位で測定する。
2.運動方向は屈曲である。
3.基本軸は上腕骨である。
4.参考可動域は135度である。
5.体幹側屈の代償運動に注意する。

解答

解説

本症例のポイント

設問の図は、肩関節外転である。
参考角度:180度
基本軸:肩峰通る床への垂直線(立位または坐位)
移動軸:上腕骨
測定部位及び注意点:体幹の側屈が起こらないように、90°以上になったら前腕を回外することを原則とする。

1.× 「背臥位」ではなく立位または座位で測定する。
2.× 運動方向は、「屈曲」ではなく外転である。
3.× 基本軸は、「上腕骨」ではなく肩峰通る床への垂直線である。
4.× 参考可動域は、「135度」ではなく180度である。ちなみに、肩関節水平屈曲が135度である。
5.〇 正しい。体幹側屈の代償運動に注意する。測定部位及び注意点として、体幹の側屈が起こらないように、90°以上になったら前腕を回外することを原則とする。

参考にどうぞ↓
【理学療法評価】関節可動域表示ならびに測定法(ROM)の暗記用。

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【PT専門のみ】ROMについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

8 イラストのようにDanielsらの徒手筋力テストを実施した。
 正しいのはどれか。

1.骨盤を後傾させて行う。
2.検査対象は縫工筋である。
3.対象筋の段階2のテストは背臥位で行う。
4.検査者が抵抗を加える部位は大腿遠位部である。
5.股関節外転外旋を伴った際は大腿筋膜張筋の代償を疑う。

解答

解説

本症例のポイント

設問の図は、股関節屈曲(大腰筋および腸骨筋)である。

1.× 骨盤を「後傾させて」ではなく中間位で行う。なぜなら、骨盤の位置が股関節屈筋の働きに影響を及ぼすため。骨盤の前・後傾は、股関節屈筋の長さ‐張力の関係に影響を及ぼす。骨盤による影響をなくすために、骨盤と脊椎が中間位になるように検査する。
2.× 検査対象は「縫工筋」ではなく大腰筋および腸骨筋である。ちなみに、縫工筋は、股関節屈曲・外転・外旋と膝屈曲で検査する。
3.× 対象筋の段階2のテストは「背臥位」ではなく側臥位で行う。テスト側の下肢を上にした側臥位をとり、検査者が検査側の下肢を支え持ち上げ、重力を取り除きながら検査する。患者は可動域を完全に動かすことができたら、段階2である。
4.〇 正しい。検査者が抵抗を加える部位は大腿遠位部である。抵抗は大腿をつかまないように気を付ける必要がある。抵抗は下方、床の方向へ加える。
5.× 股関節外転外旋を伴った際は、「大腿筋膜張筋」ではなく縫工筋の代償を疑う。なぜなら、縫工筋の作用は股関節屈曲、外転、外旋、膝関節屈曲、内旋であるため。一方、大腿筋膜張筋の作用は股関節屈曲、内旋、外転、膝関節伸展である。

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9 50歳の男性。高所から転落し脳挫傷と診断された。入院直後から他者への配慮を欠く言動が多くみられた。家族によると、受傷前は几帳面で温厚な人物であったが、受傷後は著しく自己中心的で粗暴な言動が増え、このままでは同居は難しいとの訴えがあった。
 この患者に用いる検査で最も優先度が高いのはどれか。

1.ASIA
2.FAB
3.MMSE
4.Rey複雑図形検査
5.SLTA

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(高所から転落し脳挫傷
・入院直後:他者への配慮を欠く言動が多くみられた。
・受傷前:几帳面で温厚な人物。
・受傷後:著しく自己中心的で粗暴な言動が増えた。
→本症例は、脳挫傷により前頭葉の機能障害が疑われる。したがって、前頭葉の検査が最も優先度が高い。ちなみに、脳挫傷とは、頭部に外力が加わることによって、脳の実質に損傷が生じることをいい、頭部のどの部分に外力を加わったかによって、脳挫傷の症状は異なる。前頭葉が損傷されると①知能低下、②記憶・計算の障害、③ワーキングメモリーの低下、④見当識障害、⑤注意障害、⑥遂行機能障害、⑦人格変化、⑧感情障害などが症状としてみられる。

1.× ASIA(American Spinal Injury Association:米国脊髄損傷協会)は、脊損の検査である(※下参照)。
2.〇 正しい。FABが、この患者に用いる検査で最も優先度が高い。なぜなら、本症例は、脳挫傷により前頭葉の機能障害が疑われるため。前頭葉機能簡易検査(Frontal Assessment Battery:FAB)は、類似課題(概念化)、言語流暢課題、Fist-edge-palm test(運動のプログラミング)、干渉課題、Go-No-Go課題、把握課題(被影響性)の下位6項目で構成されている(※参考:「前頭葉機能検査 Frontal Assessment Battery 」愛宕病院HPより)。
3.× MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知症の知的・認知機能評価である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。
4.× Rey複雑図形検査(Rey-Osterrieth複雑図形検査:Rey-Osterrieth Complex Figure Test:レイ・オステオリートの複雑図形課題:ROCF)は、視覚性の記憶検査である。複雑な図形を模写することを求め、次に図形を取り去った直後、および20分後に思い出して描くように求める検査である。
5.× SLTA(Standard Language Test of Aphasia:標準失語症検査)は、失語症の検査である。26項目の下位検査での構成で、「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」について6段階で評価する。

ASIAとは?

ASIA(American Spinal Injury Association:米国脊髄損傷協会)の脊髄損傷の神経学的・機能的国際評価法は、運動機能スコアと知覚機能スコアの得点結果から、①神経損傷高位、②機能障害スケール、③臨床症状分類を判断できるように構成されている。

【ASIAの機能障害尺度の運動障害】
A(完全麻痺):S4~5の知覚・運動ともに完全麻痺。
B(不全麻痺):S4~5を含む神経学的レベルより下位に知覚機能のみ残存。
C(不全麻痺):神経学的レベルより下位に運動機能は残存しているが、主要筋群の半分以上が筋力3未満。
D(不全麻痺):神経学的レベルより下位に運動機能は残存しており、主要筋群の少なくとも半分以上が筋力3以上。
E(正常):運動、知覚ともに正常。

 

 

 

 

 

10 70歳の女性。両側変形性膝関節症。外来通院中である。自宅におけるADLは、FIMによる評価で、2項目(歩行・車椅子および階段)はT字杖を使用しての自立であったが、それ以外は補助具を使用せずに自立していた。コミュニケーション(理解、表出)や社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)は問題ない。
 FIMの点数はどれか。

1.118
2.120
3.122
4.124
5.126

解答

解説

本症例のポイント

・70歳の女性(両側変形性膝関節症、外来通院中)。である。
【FIMによる評価】
2項目(歩行・車椅子および階段)T字杖を使用しての自立
・それ以外:補助具を使用せずに自立。
・コミュニケーション(理解、表出)や社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)は問題ない。
→減点項目は、2項目:①歩行・車椅子、②階段である。T字杖を使用しての自立の場合、2項目とも6点となる。126点満点で、2点減点となるため124点となる。

【歩行・車椅子】
7点:介助者なしで自立。
6点:杖などの歩行補助具を使用していれば50mの移動が自立、通常以上の時間がかかる、安全面の配慮が必要など。

【階段】
7点:介助者なしで自立。
6点:杖や手すり、装具などの補助具を使用していれば12〜14段の昇降自立、通常以上の時間がかかる、安全面の配慮が必要など。

FIM126点満点で、本症例は2点減点となるため124点となる。

したがって、選択肢4.124点が本症例のFIMの点数といえる。

FIMとは?

FIMとは、日常生活動作(ADL)を評価する尺度で、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。

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