第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

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36 熱傷部位の皮膚で正しいのはどれか。

1.壊死組織は赤色を呈する。
2.Ⅲ度熱傷は汗腺まで達しない。
3.Ⅰ度熱傷部位は植皮術を要する。
4.感染を伴うと植皮の生着が阻害される。
5.植皮後は知覚が回復してから運動を開始する。

解答

解説

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

(※図引用:「筋膜の構造」illustAC様より)

1.× 赤色を呈するのは、「壊死組織」ではなくⅡ度の浅達性(真皮浅層:水泡底)である。ちなみに、壊死組織は、Ⅲ度熱傷で白くなったあと黒色を呈する。
2.× Ⅲ度熱傷は汗腺まで達する。なぜなら、汗腺は主に真皮に位置するため。Ⅲ度熱傷の深さは皮下組織に達する。
3.× 植皮術を要するのは、「Ⅰ度熱傷部位」ではなくⅢ度熱傷部位である。Ⅲ度熱傷の特徴として、【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要である。植皮術とは、皮膚を削り、その上に別の部分から採取した皮膚を移植する治療法で、損傷した皮膚を再建し、外界からの感染を防ぐことで生体を保護する効果がある。
4.〇 正しい。感染を伴うと植皮の生着が阻害される。なぜなら、感染により、正常な機能・回復を阻害するだけでなく炎症症状を呈するため。植皮術の合併症には、血腫や感染などがある。感染は皮膚の生着に支障をきたし、最悪の場合生着しない可能性がある。したがって、感染兆候や血腫の有無を観察することが重要である。ちなみに、生着とは、移植した細胞や組織、臓器が正常に機能している状態のことである。
5.× 植皮後は、「知覚が回復して」ではなく、生着(植皮部位の安定性確保されて)から運動を開始する。皮膚の生着が見込める1週間程度までは、積極的なリハビリテーションの開始は困難である。ちなみに、植皮の知覚回復は、移植床や皮弁の辺縁からの知覚神経軸索伸長によって起こると考えられている。知覚回復には、部位によってさまざまであるが、指で平均的に1~2か月かかるといわれている。

熱傷の理学療法

①変形拘縮の予防
②瘢痕形成予防
③浮腫の軽減
④筋力維持改善
⑤全身体力の維持など。

参考にどうぞ↓

【PT/OT/共通】熱傷についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

37 気管切開患者に対する痰の吸引で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.ファインクラックル〈fine crackles・捻髪音〉を聴取したので吸引する。
2.無菌的な操作を行う。
3.成人の吸引圧は80mmHg程度が推奨される。
4.吸引カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない深さにとどめる。
5.吸引カテーテルを気道内でピストン運動させる。

解答2・4

解説
1.× 「ファインクラックル〈fine crackles・捻髪音〉」ではなく「コースクラックル〈coarse crackles・水泡音〉」を聴取したので吸引する。なぜなら、吸引の主な目的は、痰の除去であるため。粗い断続性副雑音(水泡音)は、気道内に溜まった分泌物が呼吸にともなう空気の移動で震えて破裂することで生じる音で肺炎など気道内に痰や分泌物がたまる状況(細菌性肺炎の症状)で聴取される。一方、細かい断続性ラ音(捻髪音)は、高くて細かい断続音のことで、肺線維症・間質性肺炎・喘息・過敏性肺炎などで見られる。
2.〇 正しい。無菌的な操作を行う。なぜなら、創部周囲からの感染や肺炎を防止するため。一方、鼻腔や口腔は、無菌ではないため、無菌操作は必要ない。
3.× 成人の吸引圧は「80mmHg」ではなく-20kPa(150mmHg)程度が推奨される。吸引圧が弱すぎると十分吸引が行えず、強すぎると気管を傷つけてしまうことがある。
4.〇 正しい。吸引カテーテルの先端が気管分岐部に当たらない深さにとどめる。気管チューブは、気管分岐部から3~5cm上に先端が来るように留置されている。深く挿入すると無気肺や出血、肉芽形成を合併する恐れがある。
5.× 吸引カテーテルを気道内でピストン運動させる必要はない。挿入中は吸引を止めゆっくり挿入する。陰圧をかけながら吸引カテーテルをゆっくり引き戻すように動かす。分泌物がある場所ではカテーテルを引き戻す操作を少しの間止める。なぜなら、吸引カテーテルで口腔など傷つけないため。

口腔内・鼻腔内吸引の注意事項

「気管吸引とは、人工気道を含む気道からカテーテルを用いて機械的に分泌物を除去するための準備、手技の実施、 実施後の観察、アセスメントと感染管理を含む一連の流れのこと」と定義されている。(※引用:気管吸引ガイドライン2013)

【目的】口腔内・鼻腔内吸引は気道内の貯留物や異物を取り除くこと。

①人工呼吸器関連肺炎などの感染リスクを回避する。(ディスポーザブル手袋を着用、管吸引前には口腔及びカフ上部の吸引を行う)
②吸引中は無呼吸となるため必ずモニター等でSpO2の確認しながら、カフ圧は-20kPa(150mmHg)以内に保ち、1回の吸引時間は10秒以内とする。
③カテーテル挿入時は陰圧をかけず、自発呼吸がある場合は、患者さんの吸気に合わせて吸引を行う。
④終了後は気道内の分泌物がきちんと吸引できたか、呼吸音等で確認する。

(※参考:「吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コツ」ナース専科様HPより)

類似問題です↓
【PT/OT】口腔内・鼻腔内吸引についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

38 大腿切断術後の切断肢で股関節の屈曲拘縮予防が図れる肢位はどれか。

1.腹臥位
2.長時間の車椅子座位
3.大腿下に枕を入れた背臥位
4.股関節・膝関節屈曲位の側臥位
5.両大腿部内側に枕を入れた背臥位

解答

解説
1.〇 正しい。腹臥位は、大腿切断術後の切断肢で股関節の屈曲拘縮予防が図れる肢位である。なぜなら、股関節屈曲・伸展中間位で保つことができるため。長時間の股関節屈曲位で保つと屈曲拘縮に陥りやすい。
2~4.× 長時間の車椅子座位/大腿下に枕を入れた背臥位/股関節・膝関節屈曲位の側臥位は、股関節の屈曲拘縮を助長させる肢位である。なぜなら、股関節屈曲位を保つような姿勢であるため。
5.× 両大腿部内側に枕を入れた背臥位は、股関節の「屈曲」ではなく内転拘縮予防が図れる肢位である。大腿部内側への枕は、前額面に対する介入であるため、矢状面(股関節屈曲・伸展)の介入とは関連性が低い。

 

 

 

 

 

39 下肢の異常と金属支柱付き短下肢装具の足継手設定との組合せで正しいのはどれか。

1.尖足:前方制動
2.反張膝:前方制動
3.立脚期の膝折れ:前方制動
4.下腿三頭筋の痙縮:遊動
5.前脛骨筋の弛緩性麻痺:遊動

解答

解説

反張膝に対する理学療法

【反張膝の原因】
①膝関節伸展筋の筋力低下
②固有感覚障害による代償
③足関節底屈筋の痙性
④足関節底屈拘縮

装具療法:①足関節底屈制動、②膝の安定化、③患側の補高など。
運動療法:①筋力増強、②持続伸張、③立位体重支持運動など。

1~2.× 尖足/反張膝に対し「前方」ではなく後方制動で対応する。後方制動とは、ダブルクレンザック継手の調節用の後方にあるロッドで後方部分を制御し、背屈の制限はないが、底屈を制限することできる。
3.〇 正しい。立脚期の膝折れに対し前方制動で対応する。前方制動とは、ダブルクレンザック継手の調節用の前方にあるロッドで前方部分を制御し、底屈の制限はないが、背屈を制限することできる。
4.× 下腿三頭筋の痙縮に対し「遊動」ではなく後方制動で対応する。下腿三頭筋は足関節底屈筋であるため、下腿三頭筋の痙縮により内反尖足を呈する。ちなみに、遊動とは、どの方向にも抵抗なしで動く。
5.× 前脛骨筋の弛緩性麻痺に対し「遊動」ではなく後方制動で対応する。前脛骨筋は足関節背屈筋であるため、前脛骨筋の弛緩性麻痺により鶏歩を呈する。したがって、つま先が床に当たらないよう、底屈を制限する必要がある。

継手の種類

①固定とは、どの方向にも動かない。
②遊動とは、どの方向にも抵抗なしで動く。
③制限とは、ある角度から動かない。
④制動とは、ある方向にブレーキを受けながら動く。
⑤補助とは、一度たるんだものが元に戻るときに、動きと同方向の力を発生する。

 

 

 

 

 

40 成人の心肺停止に対する1分間あたりの胸骨圧迫の回数で適切なのはどれか。

1.20回
2.50回
3.70回
4.100回
5.130回

解答

解説

胸骨圧迫とは?

胸骨圧迫とは、心停止した傷病者の心臓付近を圧迫することにより脳や心臓に血液の循環を促す心肺蘇生を目的とした一次救命処置である。成人と幼児で適する力の入れ具合や胸骨の沈み具合が異なる。成人では胸骨が、5cmほど沈むように胸骨圧迫をする。一方で、幼児では年齢に応じた体格の差があるため、成人のような絶対値を当てはめることができない。そのため、幼児においては個別の体格を判断したうえで、胸の厚さの1/3程度が沈む強さで胸骨圧迫を行うことが推奨されている。年齢にかかわらず100~120回を目安に行う。

1~3,5.× 20回/50回/70回/は少なすぎる。胸骨圧迫の回数が少ないと心拍再開率が低下するという報告がある。
4.〇 正しい。100回が、成人の心肺停止に対する1分間あたりの胸骨圧迫の回数である。年齢にかかわらず100~120回を目安に行う。
5.× 130回は多すぎる。120回を超える速さでは、圧迫が浅くなったり、圧迫解除が不十分になったりと、血流量が不足しやすくなる。

 

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