第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 変形性股関節症でみられるのはどれか。

1.Tinel徴候
2.Froment徴候
3.Romberg徴候
4.Lhermitte徴候
5.Trendelenburg徴候

解答

解説
1.× Tinel徴候(ティネル徴候)とは、障害部位を叩打すると、神経支配領域に放散痛が生じる現象である。主に手根管症候群にみられる。手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。
2.× Froment徴候(フローマン徴候)とは、尺骨神経麻痺のときに母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
3.× Romberg徴候「陽性」とは、①開眼時立位保持可能で②閉眼時に身体の動揺性が著明になることをいう。「閉眼時に倒れる」ことのみでは、Romberg徴候陽性の要件を満たさない。Romberg徴候陽性となるのは、脊髄後索障害末梢神経障害前庭神経障害などである。
4.× Lhermitte徴候(レルミット徴候)とは、頚部屈曲時に感電したような痛みや刺すような痛みが、背中から両脚、片方の腕、体の片側へ走ることをいう。多発性硬化症に特徴的な症状であるが、他にも頚髄症、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍なども出現する。
5.〇 正しい。Trendelenburg徴候は、変形性股関節症でみられる。なぜなら、股関節が変形することにより、中殿筋が機能不全をきたすため。Trendelenburg徴候(トレンデレンブルグ徴候)とは、中殿筋が麻痺や筋力低下などの機能不全が生じているときに、患側での立脚期において健側の骨盤が下がる現象である。

変形性股関節症とは?

二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。

 

 

 

 

 

32 股関節の屈曲拘縮を調べるテストはどれか。

1.Adsonテスト
2.Jacksonテスト
3.Lachmanテスト
4.Neerテスト
5.Thomasテスト

解答

解説
1.× Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。
2.× Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。頭部を後屈させ、さらに前額部に両手で下方にストレスをかける検査法である。患側の首や肩、腕に放散痛を訴えた場合に陽性となる。
3.× Lachmanテスト(ラックマンテスト:前方引き出しテスト)は、前十字靭帯損傷のテストである。背臥位で大腿骨を固定して、脛骨を前方に引き出す。
4.× Neerテスト(ニアテスト)は、肩関節インピンジメント症候群の検査の一つである。患者の後側方に立ち、一方の手で肩甲骨を保持し、もう一方の手で上肢(回内位)を最大挙上させ、大結節を肩峰前縁に圧迫させる。挙上90°~120°で疼痛が誘発されれば陽性である。
5.〇 正しい。Thomasテスト(トーマステスト)は、股関節の屈曲拘縮を調べるテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。

 

 

 

 

33 SIASに含まれるのはどれか。

1.意識障害
2.異常知覚
3.嚥下機能
4.測定障害
5.視空間認知

解答

解説

SIASとは?

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)は、脳卒中の機能障害を定量化するための評価である。運動機能だけでなく感覚障害、高次脳機能障害まで幅広く評価する事ができる。項目は、9種の機能障害に分類される22項目からなる。各項目とも3あるいは5点満点で評価される。

1~4.× 意識障害/異常知覚/嚥下機能/測定障害はSIASに含まれない
※解説を省略しますが、ほかの問題でも解説してもらいたいものあったらお気軽にコメントください。

5.〇 正しい。視空間認知は、SIASに含まれる。SIASの高次脳機能障害として、①視空間認知、②言語を評価する。①視空間認知は、50cmのテープを眼前約50cmに提示し、中央を健側指で示させる。2回行い、中央よりのずれの大きい値を採用する。
0:15cm以上。
1:5cm以上。
2:3cm以上。
3:3cm未満。

参考にどうぞ↓

SIASとは?評価方法や評価項目は?【分かりやすく解説します】

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34 Parkinson病で正しいのはどれか。

1.感覚障害が出現する。
2.安静時振戦が出現する。
3.深部腱反射が亢進する。
4.症状の日内変動は少ない。
5.発症初期には症状が左右対称に出現する。

解答

解説

Parkinson病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.× 感覚障害が出現「しない」。なぜなら、感覚の伝導路は関与しないため。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。ちなみに、外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、「感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野」である。
2.〇 正しい。安静時振戦が出現する。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。
3.× 深部腱反射は、「亢進」ではなく正常である。しかし、錐体外路性の反射であるMyerson徴候Westphal現象が陽性となりやすい。Myerson徴候(マイヤーソン徴候)は、眉間を指やハンマーで叩き続けた場合、その刺激に慣れることなく瞬きし続ける(眉間叩打反射)。Westphal現象(ウエストファル現象)とは、筋を受動的に短縮させた時に、短縮させた筋に持続的な筋収縮が誘発される現象である。前脛骨筋に最も出やすい。ちなみに、腱反射の亢進は、反射中枢における興奮性上昇、または脳内出血など反射中枢に障害が生じることが原因で、反射中枢への抑制が減少または促進的影響が増大した結果生じる。深部腱反射とは、骨格筋につながる腱をハンマーなどでたたいた時、筋が不随意に収縮する反射である。筋紡錘が腱の伸びを筋の伸びとして感知したことにより、筋の収縮(緊張)を生み出すことが原因である。単収縮は単一の刺激によって引き起こされる筋収縮である。
4.× 症状の日内変動は、「少ない」とはいいにくい。むしろ症状の日内変動が特徴的で大きいといえる。なぜなら、パーキンソン病の薬効の関連性は強いため。on-off現象とは、服用時間に関係なく症状が急変することをいう。対策としては、服用回数を増やすことがあげられる。
5.× 発症初期には症状が、「左右対称」ではなく左右片側に出現する。なぜ片側出現なのか、その理由はわかっていない(※分かる方いらしたらコメントにて教えてください)。N字型(もしくは逆N字型)で進行する。Hoehn&Yahr の重症度分類ステージのステージⅠ:片側のみの症状がみられるのが特徴である。

Hoehn&Yahr の重症度分類ステージ

ステージⅠ:片側のみの症状がみられる。軽症で機能障害はない。
ステージⅡ:両側の症状がみられるが、バランス障害はない。また日常生活・通院にほとんど介助を要さない。
ステージⅢ:歩行障害、姿勢保持反射障害が出現し、ADLの一部に介助が必要になる。
ステージⅣ:日常生活・通院に介助を必要とする。立位・歩行はどうにか可能。
ステージⅤ:寝たきりあるいは車いすで、全面的に介助を要する。歩行・起立は不能。

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35 筋萎縮性側索硬化症で正しいのはどれか。

1.深部感覚が障害されやすい。
2.認知機能が障害されやすい。
3.筋萎縮は四肢の遠位に著しい。
4.眼球運動が早期に障害されやすい。
5.動脈血二酸化炭素分圧が低下しやすい。

解答

解説

深部感覚の伝導路

【深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路】
後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

1.× 深部感覚が障害され「にくい」。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロンの障害であるため。
・上位運動ニューロンとは、大脳皮質から内包、脳幹、脊髄を経て脊髄前角細胞に至る経路のことである。
・下位運動ニューロンとは、脊髄前角細胞から末梢部で筋に至るまでの経路のことである。
2.× 認知機能が障害されやすいとはいえない。なぜなら、認知機能障害が併発するのは5~10%といわれているため。教科書的には、筋萎縮性側索硬化症は末期まで認知症などの高次脳機能障害は伴わないとされていたが、筋萎縮性側索硬化症に合併した認知症については以前から多数報告され、筋萎縮性側索硬化症患者の5〜10%が前頭側頭型認知症を呈するともいわれている(参考文献:「筋萎縮性側索硬化症と認知機能障害」著:立石 貴久ら)。
3.〇 正しい。筋萎縮は四肢の遠位に著しい。典型例(普通型)は上肢型で、発症は、箸がうまく使えなくなる、ピアノがうまく弾けなくなるなどの巧緻作業で気が付くことが多い。
4.× 眼球運動が早期に障害され「にくい」。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。
5.× 動脈血二酸化炭素分圧が「低下」ではなく上昇しやすい。なぜなら、拘束性換気障害がおこるため。一方、頻呼吸が起こると、二酸化炭素が体から速く排出されるため。動脈血二酸化炭素分圧は基準値よりも低くなる。ちなみに、動脈血二酸化炭素分圧とは、動脈血液中に取り込まれている炭酸ガスの圧力のことで、呼吸不全に対する呼吸状態の評価をする動脈血液ガス分析の検査項目のひとつである。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

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