第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 標準予防策で正しいのはどれか。

1.患者間の感染防止が主目的である。
2.防護具として滅菌手袋が必須である。
3.患者の汗は感染性があるものとして扱う。
4.使用後の防護具はマスクを最初に除去する。
5.患者周囲の物品に触れた後に手指衛生を行う。

解答

解説

標準予防策(スタンダードプリコーション)とは?

スタンダード・プリコーションとは、感染症の疑いや診断の有無にかかわらず、すべての患者に共通して実施される感染対策で、汗を除くすべての湿性生体物質(血液・体液・分泌物・排泄物・損傷した皮膚・粘膜)を感染源と見なし、対処する予防策である。

【手指衛生の5つのタイミング】
①患者に触れる前( 手指を介して伝播する病原微生物から患者を守るため)
②清潔/無菌操作の前( 患者の体内に微生物が侵入することを防ぐため)
③体液に曝露された可能性のある場合(患者の病原微生物から医療従事者を守るため)
④患者に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
患者周辺の環境や物品に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)

(※引用:「WHO手指衛生ガイドライン」矢野邦夫より)

1.× 「患者間」ではなく患者と医療従事者間の感染防止が主目的である。患者から医療従事者へ、医療従事者から患者へ、患者から患者への、血液をはじめとする湿性生態物質を介する病原体の伝播を防ぐことを目的である。
2.× 防護具として滅菌手袋が必須「である」とはいえない。滅菌手袋は、外科的処置や中心静脈カテーテルの挿入など無菌操作を行う。
・滅菌手袋:主に手術用(無菌操作)に用いられる。
・非滅菌手袋:検査・検診用や多用途に用いられる。
3.× 患者の汗は感染性があるものとして「扱わない」。なぜなら、汗からの感染率が低いため(多くの病原体の感染がないため)。スタンダード・プリコーションとは、感染症の疑いや診断の有無にかかわらず、すべての患者に共通して実施される感染対策で、汗を除くすべての湿性生体物質(血液・体液・分泌物・排泄物・損傷した皮膚・粘膜)を感染源と見なし、対処する予防策である。
4.× 使用後の防護具は、「マスク」ではなく手袋を最初に除去する。①手袋→②ゴーグル・フェイスシールド→③ガウン・エプロン→④マスクの順で行う。したがって、マスクは最後である。
5.〇 正しい。患者周囲の物品に触れた後に手指衛生を行う。なぜなら、患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため。手指衛生の5つのタイミングとして、⑤患者周辺の環境や物品に触れた後に該当する。

 

(※図引用:「個人用防護具(PPE)の着脱の手順」職業感染症制御研究会)

 

 

 

 

 

27 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準1995年)に基づく下肢の関節可動域の測定法の原則で正しいのはどれか。

1.足指では底側に角度計を当てる。
2.足部の外がえしは膝関節伸展位で行う。
3.足関節では足底への動きが伸展である。
4.足部の回内・外転・背屈の複合した動きは内がえしである。
5.外反・内反という用語は足部の変形を意味するので使用しない。

解答

解説
1.× 足指では「底側」ではなく背側に角度計を当てる。【測定部位及び注意点】第1趾、母趾、趾の運動は、原則として趾の背側に角度計をあてる。
2.× 足部の外がえしは、膝関節「伸展位」ではなく屈曲位で行う。なぜなら、二関節筋の影響を与えないため。【基本軸】前額面における下腿軸への垂直線、【移動軸】足底面、【測定部位及び注意点】膝関節を屈曲位で行う。
3.× 足関節では足底への動きが「伸展」ではなく屈曲(底屈)である。ただし、混乱の見られる伸展・屈曲は削除することとし、背屈/底屈と定義している。過去の論文を読むときに困らないよう出題したのだろう。
4.× 足部の回内・外転・背屈の複合した動きは、「内がえし」ではなく外がえしである。外がえしとは、足部の回内・外転・背屈の複合運動である。一方、内がえしとは、回外・内転・底屈の複合運動である。
5.〇 正しい。外反・内反という用語は足部の変形を意味するので使用しない。内反足(内反尖足)は、足と足首の形や位置がねじれる先天異常である。

参考にどうぞ↓
【理学療法評価】関節可動域表示ならびに測定法(ROM)の暗記用。

類似問題です↓
【PT専門のみ】ROMについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

28 認知症の周辺症状はどれか。

1.今日の日付が分からない。
2.携帯電話を使えなくなる。
3.夜になると家の中を歩き回る。
4.朝食で食べたものを思い出せない。
5.目の前にある物品の名称を言えない。

解答

解説

認知症の主な症状

①中核症状:神経細胞の障害で起こる症状
(例:記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、失語・失行など)

②周辺症状:中核症状+(環境要因や身体要因や心理要因)などの相互作用で起こる様々な症状
(例:徘徊、幻覚、異食、せん妄、妄想、不安など)

1.× 今日の日付が分からないのは、中核症状(見当識障害)である。見当識障害とは、時間や場所がわからなくなる状態である。たとえば、自分の周囲の状況や、 自分が置かれている状況(人や時間、 場所)が正しく理解できなくなる。
2.× 携帯電話を使えなくなるのは、中核症状(観念失行)である。観念失行とは、複合的な運動の障害であり、日常使用する物品が正当に使用できない失行のことである。優位半球頭頂葉を中心とする広範囲な障害で生じる。例えば、タバコに火をつける、お茶を入れる、歯磨きをするなどの手順が困難になる。
3.〇 正しい。夜になると家の中を歩き回るのは、周辺症状(徘徊)である。徘徊とは、家から外に出て、あてもなくうろうろと歩き回る行動のことを指す。夜中の徘徊の原因として、記憶障害や見当識障害によるものとされている。
4.× 朝食で食べたものを思い出せないのは、中核症状(記憶障害)である。
5.× 目の前にある物品の名称を言えないのは、中核症状(物体失認)である。物体失認とは、日常生活に身近な物品であっても視覚による認識あるいは呼称ができない状態である。

 

 

 

 

 

29 ICFで正しいのはどれか。

1.障害のある人を対象とした分類である。
2.ICIDHとは相互補完的な分類である。
3.健康状態は構成要素のひとつである。
4.社会モデルに依拠している。
5.倫理的ガイドラインがある。

解答

解説

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。ICFは、生活機能と障害(①心身機能・身体構造、②活動、③参加)と、背景因子(①環境因子、②個人因子)の2部門で構成されている。

第1レベル:心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子という4つのカテゴリーに分かれている。
第2レベル:その中でさらに細かく分類されたものである。

(図引用:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)

1.× 「障害のある人」を全ての人を対象とした分類である。ちなみに、障害のある人を対象としたものは、ICIDHである。すべての人を対象に健康状態や健康に関連する状況を評価することができる。
2.× 「ICIDH」ではなく、ICFとは相互補完的な分類である。構成要素は、肯定的・否定的の両方の用語で表現できる。それらの相互関係と、健康状態や背景因子との間の相互作用もみる。一方で、ICIDH(国際障害分類)は、マイナス面のみを評価するものである。
3.× 健康状態は構成要素のひとつ「とはいえない」。ICF は、「生活機能(心身機能・身体構造、活動、参加)」の分類と、それに影響する「背景因子(環境因子、 個人因子)」の分類で構成される(上の図1参照)。
4.× 「社会モデル」ではなく医学モデルに依拠している。「医学モデル」と「社会モデル」の統合に基づいている。医学モデルとは、障害という現象を個人の問題としてとらえ、病気・外傷やその他の健康状態から直接的に生じるものである。したがって、専門職による個別的な治療というかたちでの医療を必要とするものとみる。障害への対処は、治癒あるいは個人のよりよい適応と行動変容を目標になされる。主な課題は医療であり、政治的なレベルでは、保健ケア政策の修正や改革が主要な対応となる(※参考:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)。
5.〇 正しい。倫理的ガイドラインがある。ICFの使用については、倫理的ガイドラインとして、「常に個人の固有の価値と自律性(自己決定権)を尊重して用いられるべき」などの 1 項目が示されています。アセスメントにあたっては、常に利用者の視点に立ち、ICF を活用することが大切である(※参考:「自立について考える」東京福祉局より)。また、倫理の項目はICFの「付録6」に「ICFの使用に関する倫理的ガイドライン」としてまとめられている。

(※図引用:「自立について考える」東京福祉局より)

 

 

 

 

 

30 関節リウマチの槌指による中足骨頭部の疼痛に対する装具で最も適切なのはどれか。

1.踵補高
2.外側フレアヒール
3.内側フレアヒール
4.逆Thomasヒール
5.メタタルザルパッド

解答

解説

槌指とは?

槌指は、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。

1.× 踵補高は、脚長差(尖足など)に対して適応である。
2.× 外側フレアヒールは、内反足に対して適応である。
3.× 内側フレアヒールは、外反足に対して適応である。
4.× 逆Thomasヒールは、内反尖足に対して適応である。
5.〇 正しい。メタタルザルパッドは、関節リウマチの槌指による中足骨頭部の疼痛に適応となる。メタタルザルパッドは、横アーチをサポートするよう第2中足骨骨幹部を中心にした500円玉程度の大きさの丘状のパットである。これを使用することで中足骨頭に負荷がかかりにくくなる。したがって、関節リウマチの開張足を矯正する場合でも用いられる。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

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