第59回(R6) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題66~70】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

66 免疫グロブリンで正しいのはどれか。

1.IgGは胎盤を透過する。
2.IgMは唾液に含まれる。
3.IgDは肥満細胞を活性化する。
4.IgAは血漿中に占める割合が最も多い。
5.T細胞が抗原の刺激を受けて産生する。

解答

解説

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

1.〇 正しい。IgGは胎盤を透過する。なぜなら、分子量が最も小さい抗体であるため。IgGは、IgMが生成された後に生成され始め、血中で最も多く存在する抗体である。一般的に抗体検査というとこのIgGを調べることが多い。比較的長期間持続されるとされており、その期間は数ヶ月〜数年とウイルスによって異なる。
2.× 「IgM」ではなくIgAは唾液に含まれる。IgAとは、体内では2番目に多い免疫グロブリンで、鼻汁、涙腺、唾液、消化管、膣など、全身の粘膜に存在している。IgAは、粘膜の表面で病原体やウイルスと結合し、病原体やウイルスが持っている毒素を無効化して感染しないように阻止する働きがある。ちなみに、IgMとは、新生児由来であり、児に感染が起きたときに産生される免疫グロブリンである。しかし、感染防御力は低い。出生直後の新生児の血中IgMが高値の場合は、胎内または分娩時の感染が示唆される。感染の初期に発現し、生体防御の初段階を担うのはこのIgMに属するいずれかの抗体で、それらは症状が進むと再び発現するようになる。
3.× 「IgD」ではなくIgEは肥満細胞を活性化する。IgEとは、肥満細胞や好塩基球の細胞表面に存在している。ヒスタミン遊離によりアレルギー疾患を引き起こす。生後6か月以降の乳幼児では、しばしばアトピー性アレルギー疾患の進行に伴って血清中のIgE抗体が上昇する。したがって、I型反応(即時型、アナフィラキシー型)のアレルギー反応に関与する。ちなみに、IgDとは、扁桃腺および上気道にある抗体を産生する形質細胞から放出され、呼吸器系の免疫に作用していると考えられている。 IgAやIgGと比較しても微量しか存在していない免疫グロブリンである。
4.× 「IgA」ではなくIgGは血漿中に占める割合が最も多い。生後3~6か月には母体由来のIgGは減少・消失し、児のIgG自己産生能も未熟であるため、濃度は最低レベルとなる。5~6歳で成人並みとなる。
5.× 「T細胞」ではなくB細胞(形質細胞)が抗原の刺激を受けて産生する。形質細胞は、B細胞が抗原認識によって分化した抗体産生細胞である。形質細胞とは、B細胞が成熟したもので、抗体を作って自然免疫の働きを助ける。つまり、体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つ蛋白質(抗体)を産生する。ちなみに、T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種である。胸腺(thymus)でつくられるため、頭文字を取ってT細胞と名付けられた。T細胞は膠原特異的な免疫応答である獲得免疫に関与する。免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類される。

類似問題です↓
【共通のみ】 アレルギー(IgAなど)についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

67 肝臓の機能で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.血球の産生
2.胆汁の貯蔵
3.尿素の生成
4.薬物の代謝
5.グルカゴンの分泌

解答3・4

解説
1.× 血球の産生は、骨髄の機能である。骨髄とは、骨の中心部にあり、血液細胞(白血球、赤血球、血小板)をつくる組織のことである。骨髄には、造血幹細胞と呼ばれる、すべての血液細胞に成長でき、かつ自分自身も複製することができる「血液の種」のような細胞が存在している。骨髄は、①赤色髄と②黄色髄に分類される。①赤色髄:血液の造血が盛ん。②黄色髄:造血組織が少なくなり脂肪組織に置き換わっている。乳幼児期の骨髄は、ほとんど赤色髄であるが、成人になるにつれ、一部の骨髄は黄色髄になる。成人でも赤色髄のままであるのは、身体の中心に近い部分の骨や肩平骨(寛骨)、短骨である。
2.× 胆汁の「貯蔵」は、胆嚢の機能である。ちなみに、胆汁の「産生」は、肝臓の機能である。胆汁は、腸内での消化吸収の促進や毒素の排除などに重要な役割を果たす。
3~4.〇 正しい。尿素の生成/薬物の代謝は、肝臓の機能である。肝臓の機能の主な働きは、①胆汁の生成とビリルビンの代謝、②血漿蛋白質と尿素の合成、③脂質代謝、④糖の貯蔵と放出、⑤ビタミンDの代謝、⑥ホルモンの代謝、⑦解毒・薬物の代謝である。
5.× グルカゴンの分泌は、膵臓の機能である。膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるγ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

 

 

 

 

68 同一の臓器から分泌されるホルモンの組合せで正しいのはどれか。

1.アルドステロン:エリスロポエチン
2.グルカゴン:ガストリン
3.バソプレシン:オキシトシン
4.パラトルモン:カルシトニン
5.レニン:コルチゾール

解答

解説

副甲状腺ホルモン(パラトルモン)の働き

破骨細胞を活性化して骨吸収を促進し、骨からCa2+を遊離させる。
骨からCa2+とともに血中に遊離したP、HCO3-の腎臓(近位尿細管)からの排泄を促進する。
腎臓(遠位尿細管)でのCa2+の再吸収を促進する。
腎臓(近位尿細管)での活性化ビタミンDの産生を促進する。

1.× アルドステロンは副腎皮質、エリスロポエチンは腎臓から分泌される。アルドステロンとは、副腎皮質から分泌され、腎臓の尿細管に作用してナトリウムの再吸収を促進する。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。ちなみに、エリスロポエチンとは、主に腎臓から分泌される糖蛋白性の造血促進ホルモンである。
2.× グルカゴンは膵臓、ガストリンはから分泌される。グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌され、①血糖上昇、②脂肪分解の作用があるホルモンである。ちなみに、ガストリンとは、胃幽門前庭部と十二指腸上部のG細胞から分泌され、胃酸・ペプシノーゲンの分泌促進や胃運動促進の作用がある。
3.〇 正しい。バソプレシンとオキシトシンは、下垂体後葉から分泌される。下垂体後葉から分泌されるホルモンは、オキシトシンとバソプレシンである。オキシトシンは、【産生場所】視床下部の視策上核と室傍核、【分泌場所】下垂体後葉で、【作用】射乳の促し、分娩の促進である。一方、バソプレシンは、【産生場所】背側視床下部、【分泌場所】下垂体後葉、【作用】水の再吸収を促進である。
4.× パラトルモンは副甲状腺、カルシトニンは甲状腺から分泌される。カルシトニンとは、甲状腺から分泌され、骨吸収を抑制する働きを持つ。つまり、血中カルシウム濃度を低下させる働きをもつ。
5.× レニンは腎臓、コルチゾールは副腎皮質から分泌される。レニンとは、腎臓から分泌されるホルモンである。レニンは、腎血流量の減少により作動し、血圧上昇させる働きがある。ちなみに、コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

下垂体前葉から分泌されるホルモン

①成長ホルモン(欠損すると小人病)
②甲状腺刺激ホルモン
③副腎皮質刺激ホルモン(欠損するとアジソン病)
④性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)
⑤プロラクチン(催乳ホルモン)

類似問題です↓
【共通のみ】ホルモンについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

69 エネルギー代謝で正しいのはどれか。

1.基礎代謝量は安静時代謝量より大きい。
2.安静時代謝量は体重減少により低下する。
3.呼吸商は糖質の燃焼が多くなると低下する。
4.代謝当量〈METs〉は基礎代謝量を基準にしている。
5.エネルギー代謝率〈RMR〉は安静時代謝量を基準にしている。

解答

解説

基礎代謝量とは?

基礎代謝量とは、生体が正常に生命を維持するために必要な代謝量のことである。基礎代謝量は、体表面積/性別/年齢/体格/体温/ホルモンなどの影響を受けるものである。

1.× 基礎代謝量は、安静時代謝量より「大きい」ではなく小さい。安静時代謝量とは、快適な室温の部屋で、座って安静にしている状態で消費されるエネルギー量のことである。通常、基礎代謝量の約1.2倍(早朝空腹時では約1.1倍)とされている。ちなみに、基礎代謝とは、体温維持、心臓や呼吸など、人が生きていくために最低限必要なエネルギーのことである。基礎代謝量は、体重・体表面積・性と年齢などの要因に依存する。安静・空腹時のエネルギー消費量で、一般に女性より男性の方が高い。
2.〇 正しい。安静時代謝量は体重減少により低下する。なぜなら、骨格筋にも依存するため。安静時基礎代謝は、骨格筋22%・脂肪組織4%・肝臓21%・脳20%・心臓9%・腎臓8%・その他16%で規定されている。したがって、安静時基礎代謝を増やすために筋肉量を増やすことを目標にすることが多い(※参考:「安静時基礎代謝量の計算方法について」Uクリニック様HPより)。
3.× 呼吸商は、糖質の燃焼が多くなると「低下」ではなく増加する。呼吸商とは、酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の比である。呼吸商は栄養素によって異なり、ブドウ糖が1.0、タンパク質は約0.8、脂質が0.7である。したがって、脂肪をよく燃焼している場合の呼吸商は0.8程度、脂肪を燃焼していない場合は1.0になる。
4.× 代謝当量〈METs〉は、「基礎代謝量」ではなく安静時代謝基準にしている。代謝当量とは、安静座位での酸素消費量を1として、その何倍の酸素消費量に当たるかを示したものである。各個人の安静坐位時の酸素摂取量(3.5ml/kg/min)が1METsである。
5.× エネルギー代謝率〈RMR〉は、「安静時代謝量」ではなく基礎代謝量を基準にしている。エネルギー代謝率(RMR)は、さまざまな身体活動やスポーツの身体活動強度を示すもので、活動に必要としたエネルギー量が基礎代謝量の何倍にあたるかによって活動強度の指標している。何もしないでいるときの状態に対して、活動や運動で何倍くらいのエネルギーが消費されたかを示した比率である。労作代謝量 ÷ 基礎代謝量で、エネルギー代謝率(RMR)が求められる。RMR=(労作時のエネルギー消費量-安静時のエネルギー消費量)÷基礎代謝量である。

類似問題です↓
【共通のみ】代謝(計算式)についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

70 筋と下顎の運動の組合せで正しいのはどれか。

1.咬筋:下制
2.顎二腹筋:挙上
3.外側翼突筋:前突
4.內側翼突筋:後退
5.オトガイ舌筋:側方移動

解答

解説

咀嚼筋の分類

閉口筋:咬筋、側頭筋、外側翼突筋(上頭)、内側翼突筋
開口筋:顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋、外側翼突筋(下頭)

1.× 咬筋は、「下制」ではなく挙上である。咬筋の【起始】浅側:頬骨弓の前2/3の下縁と内面、深側:頬骨弓の後ろ2/3の下縁、【停止】下顎骨の外面。浅側は咬筋粗面の下部、深側はその上方、【作用】下顎骨を上げて、歯をかみ合わせる(閉口)。筋腹は並列につながっている。
2.× 顎二腹筋は、「挙上」ではなく下制である。顎二腹筋の【起始】側頭骨の乳突切痕(後腹)、【停止】(前腹)下顎骨全部後面の二腹筋窩、【作用】下顎骨を固定時は舌骨を引き上げ、舌骨を固定時は下顎骨を引き下げる(開口)。
3.〇 正しい。外側翼突筋は、前突である。外側翼突筋の【起始】上頭・蝶形骨(側頭下稜、蝶形骨大翼の側頭下面)。下頭・上顎骨(翼状突起外側板の外面)、上顎結節、【停止】下顎骨(関節突起)、顎関節の関節包、関節円板、【作用】下顎骨を前方に引く。両側が働けば下顎骨を前方に引き(開口)、片側が働けば、対側に動いてすりつぶし運動を行う。
4.× 內側翼突筋は、「後退」ではなく閉口である。内側翼突筋の【起始】翼状突起後面の翼突窩。これに接する上顎骨の一部と翼状突起外側板の下端、【停止】下顎角内面の翼突起筋粗面、【作用】下顎骨を上げて歯をかみ合わせる(閉口)。ちなみに、後退の作用を持つ筋肉は側頭筋である。側頭筋の【起始】側頭鱗外面と側頭筋膜の深葉の内面、【停止】下顎骨の筋突起、【作用】下顎を上げて、歯をかみ合させる(閉口)ほか、後部は下顎骨を後ろへ引く
5.× オトガイ舌筋は、「側方移動」ではなく舌の動きである。オトガイ舌筋は、下顎骨の正中付近にあるオトガイ棘に付着し、舌の下部の大部分を形成し、舌本体を前方に引っ張りだす。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)