第58回(R5)理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41.Barthel Indexで自立の場合、5点となる項目はどれか。2つ選べ。

1.更衣
2.食事
3.整容
4.入浴
5.排尿コントロール

解答3・4

解説
1~2.5.× 更衣/食事/排尿コントロールの自立は、10点である。
3~4.〇 正しい。整容/入浴の自立は、5点である。

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42.腰椎椎間板ヘルニアで正しいのはどれか。

1.急性期から間欠牽引を行う。
2.急性期から硬性コルセットを使用する。
3.急性期の疼痛に対して体操療法を行う。
4.進行性の筋力低下があれば手術療法を考慮する。
5.腰への負担を減らすために数か月間のベッド上安静とする。

解答

解説

腰椎椎間板ヘルニアの急性期

腰椎椎間板ヘルニアの急性期は、歩行も困難なほどの腰痛・下肢痛が現れる。したがって、前屈が困難となり、咳をしただけでも下肢への痛みが出現する。まずは、痛みの緩和が最優先となる。痛みを軽減するためには、①安静療法:適切な姿勢や体勢を保つ(セミファーラー位)、②寒冷療法、③薬物療法(神経ブロック)、④持続的牽引療法など対症療法が有効である。

1.× 急性期から、「間欠牽引」ではなく持続的牽引療法を行う。 慢性や亜急性期の患者には無効であり、発症後6週以内の急性期の患者に適応があり、牽引の力は小さいほうが効果的であると述べている(腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインより)。ちなみに、間欠牽引とは、一定の時間一定の力で、数秒単位の牽引と休止を交互に行なうことである。
2.× 急性期から硬性コルセットを使用する優先度は低い。硬性コルセットは、脊柱の全方向の固定を目的として使用されるため、胸腰椎の圧迫骨折(病的骨折含む)、胸腰椎の炎症(化膿性脊椎炎)、胸腰椎の腫瘍、術後の固定などに適応となる。また、腰椎椎間板ヘルニアに対して、痛みが落ち着いてから装具療法(軟性コルセットやウィリアムス装具)を実施する。
3.× 急性期の疼痛に対して体操療法を行う優先度は低い。なぜなら、腰椎椎間板ヘルニアの約80%は自然に軽快するとされているため。痛みを軽減するためには、①安静療法:適切な姿勢や体勢を保つ(セミファーラー位)、②寒冷療法、③薬物療法(神経ブロック)など対症療法が有効である。痛みが軽減したら、腰痛体操であるWilliams体操(ウィリアムス体操)を実施することもある。目的は、腰痛症に対して腰部の負担を軽減することである。方法として、腹筋・大殿筋・ハムストリングス・背筋群のストレッチングを行う。
4.〇 正しい。進行性の筋力低下があれば手術療法を考慮する。保存療法にて、①症状が長く続く場合(3か月以上)、②症状が出てからさらに悪化した場合などに手術を検討する。絶対的手術の適応として、急性の重篤な膀胱直腸障害や神経根の脱落症状を呈した場合である。ただし、腰椎椎間板ヘルニアの約80%は自然に軽快するとされているため、発症当初に著しい疼痛が認められても、保存的治療だけで支障なく生活できるようになることも多い。
5.× 腰への負担を減らすために数か月間のベッド上安静とする必要はない。痛みがある場合は安静する必要があるが、コルセットを着用するなどして、腰に負担を与えないようリハビリを行う。また、廃用症候群の予防のためにもトイレや食堂への行き来なども可能な限り行って早期離床を目指す。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

43.運動機能低下がある軽症の変形性膝関節症で、理学療法診療ガイドライン(日本理学療法士協会)で日常生活活動が改善する可能性があると示されている理学療法はどれか。2つ選べ(※不適切問題:解なし)。

1.干渉波療法
2.筋力増強運動
3.振動刺激療法
4.足底挿板療法
5.バランス練習

解答 解なし(※採点対象外)
理由:設問が不明確で正解が得られないため。

解説

推奨グレード分類

【理学療法評価(指標)の推奨グレード分類】
A:信頼性,妥当性のあるもの。
B:信頼性,妥当性が一部あるもの。
C:信頼性,妥当性は不明確であるが,一般的に使用されているもの。
(ただし,「一般的」には学会,委員会等で推奨されているものも含む)

【理学療法介入の推奨グレード分類】
A:行うように勧められる強い科学的根拠がある
B:行うように勧められる科学的根拠がある
C1:行うように勧められる科学的根拠がない
C2:行わないように勧められる科学的根拠がない
D:無効性や害を示す科学的根拠がある

1.× 干渉波療法は、推奨グレードB、エビデンスレベルⅡである。
2.△ 筋力増強運動は、変形性膝関節症に対する推奨グレードが最も高い理学療法である。筋力増強運動は、推奨グレードA、エビデンスレベルⅠである。
3.× 振動刺激療法は、推奨グレードB、エビデンスレベルⅡである。
4.× 足底挿板療法は、推奨グレードB、エビデンスレベルⅠである。
5.△ バランス練習(協調性運動)は、変形性膝関節症に対する推奨グレードが最も高い理学療法である。バランス練習(協調性運動)は、推奨グレードA、エビデンスレベルⅡである。

(※参考:「変形性膝関節症 理学療法診療ガイドライン」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

44.脊髄小脳変性症患者の四つ這いでのバランス練習で最も難易度が高いのはどれか。

1.一側下肢挙上
2.一側上肢挙上
3.対側上下肢挙上
4.同側上下肢挙上
5.四つ這い位保持

解答

解説

ボディメカニクス

ボディメカニクスとは、「body=身体」と「mechanics=機械学」の造語で、人間が動作するときに骨や筋肉、関節が相互にどのように作用するかといった力学的関係を活用したものである。介護を行うときには、介護者の負担の軽減のためにも身につけておきたい。

①重心の高さは、低い方が安定する。
支持基底面の広さは、広い方が安定する
③摩擦抵抗の有無は、有った方が踏ん張りが効き安定する。
④支持基底面と重心の距離は、短い方が足腰への負担は少ない。

1~2.× 一側下肢挙上/一側上肢挙上より難易度が高いものが他にある。なぜなら、選択肢は3点保持となり、支持基底面は上・下肢を挙上するより広範囲に保たれるため。脊髄小脳変性症の主症状として、運動失調があり、支持基底面が狭いほど重心は逸脱しやすく難易度が高くなる。
3.× 対側上下肢挙上より難易度が高いものが他にある。対側上下肢挙上の支持基底面は、①手部、②膝から足部にかけての範囲である。同側上下肢挙上と比べ、対側の手部であると、膝から下腿、足部の分、支持基底面が広く使える。
4.〇 正しい。同側上下肢挙上が選択肢の中で最も難易度が高い。なぜなら、同側上下肢の挙上となると、一直線上の支持基底面となり、選択肢の中で最も支持基底面が狭いため。対側上下肢挙上と比較すると、下腿から足部の支持基底面分が少ない。
5.× 四つ這い位保持の難易度は、選択肢の中で最も容易である。なぜなら、支持基底面が選択肢の中で最も広いため。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

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【PT】脊髄小脳変性症についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

45.SF-36の下位尺度はどれか。

1.体の痛み
2.環境因子
3.筋力
4.睡眠の質
5.認知機能

解答

解説

SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)とは?

SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)は質問紙法により、対象者の健康関連QOLを包括的に評価する尺度である。
8つの健康概念を測定する。【測定項目】①身体機能、②日常生活役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦日常生活役割機能(精神)、⑧心の健康である。下位尺度は100点満点でスコア化され、スコアが高いほどQOLが高い。

1.〇 正しい。体の痛みは、SF-36の下位尺度である。痛みの程度・痛みによる生活の制限を6および5段階で評価する。
2~5.× 環境因子/筋力/睡眠の質/認知機能は、SF-36の下位尺度に含まれない

QOLとは?

QOL(Quality of life)とは、個人を主体としたその人自身の生命と生活の質のことである。人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているか「生活の質」を評価する概念である。

 

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