第58回(R5)理学療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26.筋収縮で正しいのはどれか。

1.骨格筋の最大収縮時には筋細胞の長さが約10%短くなる。
2.アクチンフィラメントはミオシンフィラメントより太い。
3.筋小胞体からのK+放出により筋収縮が開始される。
4.ATPを分解する酵素はアクチンに存在する。
5.筋収縮時にH帯は短くなる。

解答

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1.× 骨格筋の最大収縮時には筋細胞の長さは、「約10%」ではなく約40%短くなる。このとき、すべての筋節の長さは一様に減少する。
2.× アクチンフィラメントは、ミオシンフィラメントより「太い」のではなく細い。アクチンフィラメントの直径は約7nm、ミオシンフィラメントの直径は約12~15nmである。
3.× 筋小胞体からの「K+」ではなくCa2+放出により筋収縮が開始される。その後、カルシウムイオンはトロポニンと結合し、その立体構造を変えてトロポミオシンをアクチンのミオシン結合部位から引き離す。ちなみに、カリウムイオン(K+)は、細胞内液で最も多い陽イオンである。
4.× ATPを分解する酵素は、「アクチン」ではなくミオシン(頭部)に存在する。ミオシン頭部は、こぶしをつくって腕を曲げたような形でアクチンと結合している。ATPがやってくると、ATPはミオシン頭部のATP分解酵素部位と結合する。ちなみに、ATPを分解する酵素(ATPアーゼ)は、ATPを加水分解してエネルギーを放出し、筋収縮に必要な力を生成する。
5.〇 正しい。筋収縮時にH帯は短くなる。H帯はA帯中央の明るい部分(ミオシンのみからなる部分)である。H帯とI帯はほとんど消失する。これは収縮に伴って細いフィラメントがA帯中に滑り込むことを意味する。

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27.感覚神経のみの脳神経はどれか。2つ選べ。

1.第Ⅱ脳神経
2.第Ⅳ脳神経
3.第Ⅵ脳神経
4.第Ⅷ脳神経
5.第Ⅹ脳神経

解答1・4

解説

感覚神経のみの脳神経

・第Ⅰ脳神経(嗅神経)
・第Ⅱ脳神経(視神経)
・第Ⅷ脳神経(内耳神経)

1.〇 正しい。第Ⅱ脳神経(視神経)は、感覚神経のみの脳神経である。視神経は視覚に関与する神経である。ものを見るとき光は、①角膜→②前房→③房水→④瞳孔→⑤水晶体→⑥硝子体→⑦網膜→⑧視神経→⑨視交叉→⑩視索→⑪外側膝状体→⑪視放線→⑫後頭葉視覚領域へと伝わる。硝子体は、眼球内の大部分を占める透明なゼリー状の組織で、眼球の形態を保ち、角膜や水晶体で屈折された光を網膜まで透過させる働きがある。水晶体は、凸レンズの形をしており、外から入ってくる光を屈折させることで、網膜にピントの合った像を映すという役割をもつ。
2.× 第Ⅳ脳神経(滑車神経)は、運動神経のみの脳神経である。滑車神経は、上斜筋を支配する。
3.× 第Ⅵ脳神経(外転神経)は、運動神経のみの脳神経である。外転神経は、外側直筋を支配する。ちなみに、眼球の運動は、動眼神経(内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋)、滑車神経(上斜筋)、外転神経(外側直筋)の機能である。
4.〇 正しい。第Ⅷ脳神経(内耳神経)は、感覚神経のみの脳神経である。内耳神経は、聴覚と平衡感覚を伝える。ちなみに、聴覚伝導路は、(内耳神経→蝸牛神経核(橋)→中脳下丘→視床→側頭葉)である。
5.× 第Ⅹ脳神経(迷走神経)は、運動・感覚・自律神経を含む脳神経である。嚥下運動や声帯の運動、耳介後方の感覚などに作用する。内臓(胃、小腸、大腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。刺激すると徐脈、咳、嘔吐などを生じる。強い痛みや精神的ショックなどが原因で、迷走神経が過剰に反応すると、心拍数や血圧の低下、失神などを引き起こす(迷走神経反射)。

運動神経のみの脳神経

・第Ⅳ脳神経(滑車神経)
・第Ⅵ脳神経(副神経)
・第Ⅺ脳神経(副神経)
・第Ⅻ脳神経(舌下神経)

 

 

 

 

 

28.関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で測定する運動方向と移動軸の組合せで正しいのはどれか。

1.股屈曲・伸展:大腿骨
2.股外転・内転:下腿中央線
3.膝屈曲・伸展:脛骨
4.足背屈・底屈:第1中足骨
5.足部外転・内転:第2.3中足骨の間の中央線

解答

解説
1.〇 正しい。股屈曲・伸展の移動軸は、大腿骨(大転子と大腿骨外果の中心を結ぶ線)である。ちなみに、【基本軸】体幹と平行な線、【測定部位及び注意点】①骨盤と脊柱を十分に固定すること、②屈曲は背臥位(膝屈曲位で行う)、③伸展は腹臥位(膝伸展位で行う)である。
2.× 股外転・内転の移動軸は、「下腿中央線」ではなく大腿中央線(膝蓋骨中心を結ぶ線)である。ちなみに、【基本軸】両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線、【測定部位及び注意点】①背臥位で骨盤を固定すること、②下肢は外旋しないようにする内転の場合は、反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させることである。
3.× 膝屈曲・伸展の移動軸は、「脛骨」ではなく腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)である。ちなみに、【基本軸】大腿骨、【測定部位及び注意点】屈曲は股関節を屈曲位で行うことである。
4.× 足背屈・底屈の移動軸は、「第1中足骨」ではなく足底面である。ちなみに、【基本軸】矢状面における腓骨長軸への垂直線、【測定部位及び注意点】膝関節を屈曲位で行うことである。
5.× 足部外転・内転の移動軸は、「第2.3中足骨の間の中央線」ではなく第2中足骨長軸である。ちなみに、【基本軸】第2中足骨長軸(移動軸と同じ)、【測定部位及び注意点】膝関節を屈曲位, 足関節を0度で行なうことである。

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29.錐体路徴候はどれか。

1.膝蓋腱反射低下
2.深部感覚鈍麻
3.腹壁反射消失
4.筋緊張低下
5.ジストニア

解答

解説

錐体路とは

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

1.3.× 膝蓋腱反射/筋緊張低下は、「低下」ではなく亢進する。腱反射は、通常の状態では上位運動系(大脳~脊髄)によって、過剰に反応しないように制御されているが、上位運動系に障害が発生すると、抑制が効かなくなるため、深部腱反射が亢進(過剰に反応)する。
2.× 深部感覚は、「鈍麻」ではなく正常である。なぜなら、錐体路と深部感覚の伝導路は関与しないため。深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路は、後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野となる。
3.〇 正しい。腹壁反射消失は、錐体路徴候である。腹壁反射(腹皮反射)とは、表在反射のひとつである。表在反射とは、皮膚や粘膜を刺激することでみられる反射のことで、消失により錐体路障害を示す徴候である。腹壁反射とは、検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を上②、中③、下④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこすり、刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。陽性の場合、錐体外路系の障害により消失する。【判定】刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。
5.× ジストニアは、錐体外路症状の1つである。錐体外路は、錐体路以外の全ての中枢神経系の経路のことで姿勢・運動に対する基本的かつ無意識的な運動をコントロールし、運動が円滑に行うことができるように筋緊張などを調節している。自分の意思とは関係なく症状が出現し、不随意運動による症状と筋緊張の異常を認め、明らかな運動麻痺が無いことが特徴である。ちなみに、ジストニアとは、筋の不随意収縮による呈舌(舌を出すこと)や四肢・体幹の捻転運動をいう。他にも眼球上転、発生に障害が生じる。抗精神病薬内服開始後、数日以内に起こる副作用である。

 

 

 

 

 

30.足関節内反捻挫後に筋力増強運動を行う下肢の筋で再発予防に最も有効なのはどれか。

1.下腿三頭筋
2.後脛骨筋
3.前脛骨筋
4.長指屈筋
5.長腓骨筋

解答

解説

足関節内反捻挫とは?

足関節内反捻挫とは、足を内側に捻って捻挫したものをさす。スポーツ(着地をした瞬間や切り返し動作などで足をついた瞬間)、歩行時や走行時で足をついた瞬間などに起こしやすい。足関節内反捻挫の場合は、外側の前距腓靭帯や前脛腓靭帯が損傷しやすい。したがって、外返しの作用を持つ筋肉を鍛えることが予防につながる。ちなみに、内がえし(内反)とは、内転・回外・底屈が組み合わされている運動のことである。

1.× 下腿三頭筋は、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。腓腹筋の作用は、膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上である。ヒラメ筋の作用は、膝関節底屈、踵の挙上である。
2.× 後脛骨筋の作用は、足関節底屈、内返しである。
3.× 前脛骨筋の作用は、足関節背屈、内返しである。
4.× 長指屈筋の作用は、足関節底屈、足趾屈曲である。
5.〇 正しい。長腓骨筋は、足関節内反捻挫後に筋力増強運動を行う下肢の筋で再発予防に最も有効である。なぜなら、長腓骨筋の作用は、足関節底屈、外返しであるため。

 

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