第58回(R5) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午前問題71~75】

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71.右下肢の筋を伸張している様子を図に示す。
 最も伸張される筋はどれか。

1.薄筋
2.中間広筋
3.半膜様筋
4.大腿方形筋
5.大腿筋膜張筋

解答

解説


1.× 薄筋の作用の作用は、股関節内転、膝関節屈曲と内旋である。ちなみに、【起始】恥骨結合の外側、【停止】脛骨の内側面、停止腱は鵞足に加わる。伸張したい場合は、膝関節伸展と外旋位のまま、股関節外転することが多い。
2.× 中間広筋の作用は、膝関節伸展である。ちなみに、【起始】大腿骨の前面と両側面、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面である。伸張したい場合は、膝関節屈曲を取ることが多い。
3.× 半膜様筋の作用は、股関節伸展、内転、内旋、膝関節屈曲である。ちなみに、【起始】坐骨結節、【停止】脛骨粗面、脛骨内側顆の後部、斜膝窩靭帯、膝窩筋筋膜である。伸張したい場合は、SLR(膝関節伸展位のまま股関節屈曲、外転、外旋)することが多い。
4.× 大腿方形筋の作用は、股関節外旋、内転である。ちなみに、【起始】坐骨結節の外面の前部、【停止】大転子の下部、転子間稜である。伸張したい場合は、股関節内旋、外転する。
5.〇 正しい。(右)大腿筋膜張筋が、最も伸張される。大腿筋膜張筋の作用は、股関節屈曲内旋外転膝関節伸展である。ちなみに、【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面である。

 

 

 

 

 

72.手指の筋と作用の組合せで正しいのはどれか。

1.掌側骨間筋:MP関節伸展
2.浅指屈筋:DIP関節屈曲
3.短母指伸筋:IP関節伸展
4.虫様筋:MP関節屈曲
5.背側骨間筋:PIP関節屈曲

解答

解説
1.× 掌側骨間筋の作用は、「MP関節伸展」ではなく第2,4,5指の内転、背側骨間筋と共同して、おのおの基節骨の屈曲、中節・末節骨(DIP)の伸展である。ちなみに、【起始】3個ある。第2中手骨の尺側。第4,5中手骨の橈側、【停止】基節骨底、指背腱膜、中節骨底、末節骨底である。
2.× 浅指屈筋の作用は、「DIP関節屈曲」ではなく第2~5指の中手指節関節と近位指節間関節の屈曲である。ちなみに、【起始】上腕尺骨頭:上腕骨内側上顆、尺骨粗面の内側、橈骨頭:橈骨の上部前面、【停止】第2~5中節骨底の掌面である。
3.× 短母指伸筋の作用は、「IP関節伸展」ではなく母指の基節骨の伸展、母指の外転である。ちなみに、【起始】橈骨中部背面、前腕骨間膜の背面、【停止】母指基節骨底背外側部、一部は指背腱膜に加わる。。
4.〇 正しい。虫様筋の作用は、MP関節屈曲である。ちなみに、【起始】4個ある。それぞれ深指屈筋腱から起こる(第1,2指:第2,3指に至る腱の橈側、第3,4指:第3~5指に至る腱の相対する側)である。【停止】指背腱膜である。
5.× 背側骨間筋の作用は、「PIP関節屈曲」ではなく、第2,4指の外転、第3指の橈・尺側外転。母指の内転。掌側骨間筋と共同しておのおのの基節骨の屈曲、中節・末節骨(DIP)の伸展である。ちなみに、【起始】4個ある。それぞれ2頭もつ。第1~5中手骨の相対する面、【停止】基節骨、指背腱膜、中節骨底、末節骨底である。

 

 

 

 

 

73.鉄棒に肩関節屈曲90°、肘関節屈曲90°の肢位で懸垂している状態からゆっくりと体を下降させているとき、遠心性収縮をする筋はどれか。

1.棘上筋
2.広背筋
3.烏口腕筋
4.三角筋前部
5.大胸筋鎖骨部

解答

解説

本症例のポイント

【開始肢位】肩関節屈曲90°、肘関節屈曲90°
【終了肢位】肩関節屈曲180°、肘関節0°
→求心性:肩関節屈曲筋、肘関節伸展筋
→遠心性:肩関節伸展筋肘関節屈曲筋

遠心性収縮とは、筋が収縮しているにも関わらず筋の全長が伸びる状態である。加えられた負荷が筋張力よりも大きければ、筋は収縮しても伸びる。これは最大張力の場合だけでなく、種々の筋張力レベルで起こる。日常の運動動作は、重力方向との関係で身体の種々の部分で遠心性収縮が起きている。遠心性収縮は、筋力増強効果が大きいとされるが、筋の損傷も大きい。筋力増強効果は、遠心性→等尺性→求心性の順に大きい。

1.× 棘上筋の作用は、肩関節外転である。ちなみに、【起始】肩甲骨の棘上窩、棘上筋膜の内側、【停止】上腕骨大結節の上部である。
2.〇 正しい。広背筋が、遠心性収縮をする。広背筋の作用は、肩関節内転、伸展、多少内旋である。ちなみに、【起始】第6~8胸椎以下の棘突起、腰背腱膜、腸骨稜、第(9)10~12肋骨および肩甲骨下角、【停止】上腕骨の小結節稜である。
3.× 烏口腕筋の作用は、肩関節屈曲、内転である。ちなみに、【起始】烏口突起、【停止】上腕骨の内側面の中部である。
4.× 三角筋の作用は、肩関節外転前部は屈曲、後部は伸展である。ちなみに、【起始】肩甲棘、肩峰、鎖骨の外側部1/3、【停止】上腕骨三角筋粗面である。
5.× 大胸筋の作用は、肩関節内転・内旋鎖骨部:肩甲骨屈曲、腹部:肩関節下制である。ちなみに、【起始】鎖骨部:鎖骨内側1/2~2/3、胸肋部:胸骨前面と上5~7個の肋軟骨、腹部:腹直筋鞘前葉の表面、【停止】上腕骨の大結節稜である。

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74.正常歩行で遠心性収縮をする筋はどれか。2つ選べ。

1.踵接地から足底接地までの前脛骨筋
2.足底接地から立脚中期までの下腿三頭筋
3.立脚中期から踵離地までの大殿筋
4.加速期から遊脚中期までの内側広筋
5.遊脚中期から減速期までの腸腰筋

解答1・2

解説

(図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)

1.〇 正しい。踵接地から足底接地までの前脛骨筋は、正常歩行で遠心性収縮をする。踵接地直後にすぐ足底接地にならないように足関節の底屈するスピードを抑えている。
2.〇 正しい。足底接地から立脚中期までの下腿三頭筋は、正常歩行で遠心性収縮をする。過度な下腿前方傾斜を防ぐため遠心性収縮で前方回転にブレーキをかける働きをする。その後、踵離地期の下腿三頭筋は、踵離地時に足関節底屈により床を蹴り、前方への推進力を生み出すため求心性収縮する。
3.× 立脚中期から踵離地までの大殿筋は、正常歩行で求心性収縮をする。大殿筋は求心性収縮することで股関節伸展が強くなる。ただし、文献によって、立脚中期から踵離地までの大殿筋の収縮はわずかもしくは働かないとされている。
4.× 加速期から遊脚中期までの内側広筋は、正常歩行でほとんど収縮はみられない。立脚相の踵接地期から足底接地期にかけて、膝の衝撃を遠心性収縮で吸収し、ダブルニーアクションの作用の1つとして働く。また、立脚相から遊脚相にかけては下肢の振り子運動を誘導する動きを調整している。
5.× 遊脚中期から減速期までの腸腰筋は、正常歩行でほとんど収縮はみられない。なぜなら、下腿の勢いによって、股関節屈曲方向へのモーメントが生じるため。その後、つま先離地期の腸腰筋は、下肢の振り出しのために股関節を屈曲させるため求心性収縮する。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

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75.退行性病変はどれか。

1.萎縮
2.化生
3.肥大
4.異形成
5.過形成

解答

解説

退行性病変とは?

量的、質的に異常物質の過剰な沈着が細胞内や間質に認められる。 生体内の組織の局所的な死のこと。大きな分類として、①萎縮、②変性、③壊死と死があげられる。

1.〇 正しい。萎縮は、退行性病変である。萎縮は、生理的加齢によって脳の容積が縮小しているときの細胞の状態である。萎縮とは、組織や臓器を構成する細胞の個々の容積が減少する①単純萎縮と、構成細胞の数が減少する②数的萎縮にわけられる。その他の原因としては、血流の低下、機械的圧迫、低栄養老化などがある。
2.× 化生(かせい)とは、いったん形成された生物の器官が、全く異なった形状・機能のものに変わることである。喫煙者の気管支にみられる扁平上皮化生、子宮頸部における扁平上皮化生、胃炎に伴う腸上皮化生などがよく知られている。
3.× 肥大とは、細胞や組織・臓器の大きさが増して容量が増大する事である。病的肥大には、高血圧症や弁膜症に伴う心肥大、前立腺肥 大に伴う膀胱壁の筋肥大などがある。
4.× 異形成とは、良性・悪性の判定不能な病変のことをいう。細胞が「現状ではがんとは言えないががんに進行する確率が高い状態(前がん病変)」や「悪性・良性の境界にある状態(境界悪性)」であることを指す。
5.× 過形成とは、外来の刺激に対する正常細胞の応答として細胞増殖が起こることによって、組織の体積が増加することである。外部からの刺激は生理的なものも異常なものも含む。

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2 COMMENTS

白武拓晃

コメント失礼します。
問72ですが、
3.× 短母指伸筋の作用は、「IP関節伸展」ではなく第2~5指の中手指節関節と近位指節間関節の屈曲である。ちなみに、【起始】上腕尺骨頭:上腕骨内側上顆、尺骨粗面の内側、橈骨頭:橈骨の上部前面、【停止】第2~5中節骨底の掌面である。

となってますが
短母指伸筋の作用は、MCP関節の伸展だと思います。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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