第58回(R5) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題61~65】

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61.骨格筋で正しいのはどれか。

1.健常成人では体重の約10%を占める。
2.赤筋線維はミトコンドリア量が少ない。
3.筋疲労の化学的原因は乳酸の蓄積である。
4.神経筋接合部での興奮の伝達は両方向性である。
5.低負荷の運動強度では白筋線維が活性化しやすい。

解答

解説
1.× 健常成人では体重の「約10%」ではなく、約30%を占める。オムロンヘルスケアによれば、標準の男性:32.9〜35.7%、女性:25.9%~27.9%である。これは、骨格筋が全身の筋肉組織の大部分を構成し、動きや姿勢維持に関与しているためである。
2.× 赤筋線維はミトコンドリア量が「少ない」のではなく多い。赤筋線維の特徴は、持久力に優れた筋線維で、ミトコンドリアの量が多く、酸素利用能力が高い特徴がある。一方、白筋線維の特徴は、短時間で高い力(瞬発的な力)を発揮する筋線維で、ミトコンドリアの量が少ない。ちなみに、ミトコンドリアは、ATPの合成を行う。
3.〇 正しい。筋疲労の化学的原因は乳酸の蓄積である。乳酸とは、カラダを動かすエネルギーを作るため糖を分解している際にできる生成物で、その名の通り酸性である。したがって、筋疲労時には乳酸が蓄積し、筋形質中のpHは低下する。
4.× 神経筋接合部での興奮の伝達は、「両方向性」ではなく一方向性である。一方、神経線維の一部を刺激すると、興奮は両方向に伝導する。これを両方向(両側)性伝導という。
5.× 低負荷の運動強度では、「白筋線維」ではなく赤筋線維が活性化しやすい。赤筋線維の特徴は、持久力に優れた筋線維で、ミトコンドリアの量が多く、酸素利用能力が高い特徴がある。一方、白筋線維の特徴は、短時間で高い力(瞬発的な力)を発揮する筋線維で、ミトコンドリアの量が少ない。ちなみに、ミトコンドリアは、ATPの合成を行う。

神経線維の興奮伝導

①絶縁性(隔絶)伝導…1本の神経線維の興奮は、隣接するほかの神経線維を興奮させない。

②不滅衰伝導…興奮は減衰せずに伝わる。

③両方向(両側)性伝導…神経線維の一部を刺激すると、興奮は両方向に伝導する。ただし、シナプスからの出力は原則一方向性である。

④等速伝導…1本の軸索上の興奮は一定の速度で伝導していく。ただし、有髄線維では跳躍伝導が起こる。

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62.下垂体前葉から分泌されるホルモンはどれか。

1.メラトニン
2.オキシトシン
3.バソプレシン
4.プロラクチン
5.アルドステロン

解答

解説

下垂体前葉から分泌されるホルモン

①成長ホルモン(欠損すると小人病)
②甲状腺刺激ホルモン
③副腎皮質刺激ホルモン(欠損するとアジソン病)
④性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)
⑤プロラクチン(催乳ホルモン)

1.× メラトニンとは、夜間に脳の松果体から分泌されるホルモンで、体内時計による夜間の身体の休息を促す働きを持つ。メラトニン分泌量が低下するため睡眠障害が起こりやすくなる。
2.× オキシトシンとは、下垂体後葉から分泌されるホルモンで、乳汁排出や分娩時の子宮収縮作用がある。
3.× バソプレシン(ADH:抗利尿ホルモン )とは、下垂体後葉から分泌され、水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起きる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。
4.〇 正しい。プロラクチン(催乳ホルモン)は、下垂体前葉から分泌される。作用は、乳腺の発育、乳汁の産生・分泌をもつ。したがって、出産後に多く分泌されるホルモンである。
5.× アルドステロン(鉱質コルチコイド)は、副腎皮質から分泌されるホルモンである。腎臓に作用してナトリウムの再吸収、水の再吸収を促進、血圧を上昇させる。ちなみに、副腎皮質は、①コルチゾール、②アルドステロン、③性ホルモンを分泌する。

 

 

 

 

 

63.視覚で正しいのはどれか。

1.明順応には20分程度かかる。
2.視神経乳頭は視覚受容器を欠く。
3.ビタミンC欠乏で夜盲症となる。
4.近視では網膜の後方に焦点を結ぶ。
5.毛様体筋は遠くを見るときに収縮する。

解答

解説
1.× 明順応には20分程度かかるのは、「明順応(明るい環境への適応)」ではなく暗順応(暗い環境への適応)である。ちなみに、明順応(明るい環境への適応)は、比較的短時間で、おおよそ5分程度で完了する。生理学的機序として、明順応では杆体細胞のロドプシンが分解され、暗順応では合成される。ロドプシンは合成の方が分解に比べて長い時間を要する。
2.〇 正しい。視神経乳頭は視覚受容器を欠く。視神経乳頭とは、視神経が網膜を貫通する部分である。ここには視覚受容器(錐体細胞と桿体細胞)が存在しない。したがって、視神経乳頭は盲点と呼ばれることがある。
3.× 夜盲症となるのは、「ビタミンC欠乏」ではなくビタミンA欠乏である。夜盲症とは、暗いところではたらく網膜の細胞に異常があり暗順応が障害されて、暗いところや夜に見えにくくなる病気である。ちなみに、ビタミンC欠乏は、主に壊血病を引き起こす。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。
4.× 近視では網膜の「後方」ではなく前方に焦点を結ぶ。近視とは、網膜の前方に焦点が結ばれるため、遠くのものがぼやけて見えることをいう。一方、遠視とは、網膜の後方に焦点が結ばれるため、近くのものがぼやけて見えることをいう。
5.× 毛様体筋は、「遠く」ではなく近くを見るときに収縮する。毛様体筋は、眼の遠近調節を行う筋である。毛様体筋は近くを見るときに収縮し、水晶体が平坦にする。一方、近くを見るとき、毛様体小帯(毛様体筋)が弛緩し、水晶体が厚くなる。

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64.長期間の有酸素運動の効果として正しいのはどれか。2つ選べ。

1.安静時血圧の上昇
2.安静時心拍数の上昇
3.最大心拍出量の増加
4.骨格筋の毛細血管網の発達
5.安静時の交感神経の緊張亢進

解答3・4

解説

持続力運動の目的

①心肺機能の改善
②骨量減少の予防
③軽症高血圧の改善
④脂質代謝改善
⑤糖代謝改善など

1~2.× 安静時血圧/安静時心拍数は、「上昇」ではなく低下する。なぜなら、有酸素運動を続けることで心臓のポンプ機能が向上し、心拍数/血圧が低下しても十分な血流を維持できるようになるため。また、有酸素運動中は、血管が拡張し血流が増加したりと血管に刺激が与えられる。したがって、有酸素運動は血管の柔軟性維持・向上につながる。ほかにも、体重減少やストレスの軽減、ホルモンの改善などが関与していると考えられる。
3.〇 正しい。最大心拍出量の増加は、長期間の有酸素運動の効果である。なぜなら、有酸素運動を続けることで心臓のポンプ機能が向上するため。これにより、運動時の酸素供給能力が向上する。ちなみに、最大心拍出量とは、最大運動における分時拍出量を最大心拍出量のことをさす。
4.〇 正しい。骨格筋の毛細血管網の発達は、長期間の有酸素運動の効果である。骨格筋の毛細血管網を発達することにより、筋肉への酸素や栄養素の供給が向上し、運動時の持久力が増加する。ちなみに、毛細血管網とは、血管のなかでは最小の構造をもっている血管のことである。小動脈と小静脈とを連結する血管で、互いに連結して網目状になっており、組織や器官内部で形成している。
5.× 安静時の交感神経の緊張は、「亢進」ではなく低下する。なぜなら、ストレスの軽減につながるため。副交感神経の働きを向上させ、リラックス状態を保ちやすくなる。

 

 

 

 

 

65.副交感神経の作用で抑制されるのはどれか。

1.膵液分泌
2.気管支筋収縮
3.房室伝導速度
4.直腸平滑筋収縮
5.グリコーゲン合成

解答

解説
1.× 膵液分泌は、副交感神経の作用で促進される。膵液とは、膵臓から十二指腸に分泌される消化液である。糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼなどの消化酵素、核酸の分解酵素を含んでいる。
2,× 気管支筋収縮は、副交感神経の作用で促進される。気管支平滑筋は、内腔を取り囲むように存在しているため、収縮すると内腔が狭くなる。これにより、空気の通り道が狭くなり、呼吸が困難になることがある。一方、交感神経は気管支筋の弛緩を促し、空気の通り道を拡大させる。
3.〇 正しい。房室伝導速度は、副交感神経の作用で抑制される。副交感神経(迷走神経)は、①洞結節の刺激発生頻度を低下、②房室結節の伝導速度を下げる(不応期を長くして、房室間の通りを悪くする)ことで、心拍数が低下し、心臓による血流量が減少する。
4.× 直腸平滑筋収縮は、副交感神経の作用で促進される。これにより、排便が促される。ちなみに、直腸平滑筋とは、内肛門括約筋は腸の筋肉の一部で、平滑筋という自律神経がコントロールする筋肉である。
5.× グリコーゲン合成は、副交感神経の作用で促進される。肝臓は副交感神経優位で、グリコーゲンを合成・蓄積し、エネルギーの蓄積(血糖低下)に傾く。一方、交感神経優位となると、グリコーゲン分解(血糖上昇)に傾く。

 

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