第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

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6 30歳の男性。右前腕部の悪性腫瘍に対し前腕切断術が施行された。断端の長さは標準断端であった。創治癒後、義手を製作することになった。
 義手装着訓練において正しいのはどれか。

1.屈曲手継手を選択する。
2.義手訓練は幻肢の軽減に有効である。
3.義手の手部先端は健側の中指先端と合わせる。
4.術後の断端管理として、弾性包帯を中枢部から末梢部に向けて巻く。
5.装着しての手先具単体の最大開き幅が50%以上であるかを判定する。

解答

解説

本症例のポイント

・30歳の男性。
・右前腕部の悪性腫瘍に対し前腕切断術が施行。
・断端の長さ:標準断端

1.× 屈曲手継手を選択する優先度が低い。なぜなら、本症例は創治癒後、義手を製作する段階であるため。「義手装着訓練において」優先度が高いものは他にある。屈曲手継手とは、殻構造用の義手パーツで、ボタン操作で、掌・背屈、回旋、手先具の取外しを簡単に行うことができる継手のこと。したがって複雑な要素に対応できる応用操作、さらなる操作スキルの向上、ADL・IADL・仕事に活用できるレベルまでの操作能力の獲得後に検討するのが望ましい。
2.〇 正しい。義手訓練は幻肢の軽減に有効である。切断後は、あたかも切断した指があるように感じる幻肢というものを感じる場合がある。原因としては、末梢から脳へ送られる情報パターンが、切断したことでそのパターンが崩れ、正しい情報を送ることができず、幻肢や幻肢痛などを起こす。そこで義手を装着することで、腕があるように脳へ錯覚させ、幻肢・幻肢痛を軽減させることができる。
3.× 義手の手部先端は、健側の中指先端と合わせるといった明確な規定はない。義手は中指先端に限らず、健側に近い形でそれぞれの指の長さで作成されることが多い。(※明確な決まりがあれば教えて下さい。)
4.× 逆である。術後の断端管理として、弾性包帯を「末梢部」から「中枢部」に向けて巻く。なぜなら、末梢部から巻くことで浮腫の予防・断端の成熟に寄与するため。ただし、デメリットとして、①外れやすい、②時間がかかる、③技術取得に訓練が必要、④患者1人で巻くのが難しいなどがあげられる。
5.× 装着しての手先具単体の最大開き幅が「50%以上」ではなく「70%以上(前腕義手の場合)」であるかを判定する。開き幅が不十分な場合、ケーブルが長すぎたりたるみがあると考えられる。ちなみに、開き幅が50%以上なのは上腕義手の場合である。

幻肢・幻肢痛とは?

幻肢・幻肢痛とは、腕や足の切断後、失ったはずの感覚があり、かつそこに痛みを感じる状態である。切断をした人の約7割で生じるが、強い痛みは5~10%とまれである。幻肢痛のメカニズム(発生の機序)は解明されていない。下肢より上肢、近位部より遠位部に多く、電撃痛や、捻られるような痛み、ズキズキするような痛みなど様々である。一般的に、切断の手術後1週間以内に発症し、6か月~2年で消失することが多いが、それ以上長引くこともある。幻肢の大きさは健肢とほぼ同様で、幻肢痛が発生するのは、失った手や指、足などが多い。一方、肘や膝に感じることはまれで、4~6歳以下の小児切断例では出現しないことが多い。幻肢痛への一般的な治療方法として、薬物療法と非薬物療法に分けられる。幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右されるため、薬物療法は、鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン)、三環系抗うつ薬抗痙攣薬、プレガバリン(リリカ)などの抗てんかん薬が、神経痛の治療に使われる。非薬物療法としては、ミラーセラピーである。幻肢は断端の運動につれて移動し、断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。

※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動族法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。ちなみに、ラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

(※参考:「幻肢痛」慢性通治療の専門医による痛みと身体のQ&A様HPより)

 

 

 

 

 

7 60歳の女性。関節リウマチ。SteinbrockerのステージⅡ、クラス2。この患者の日常生活場面を下に示す。
 関節保護の指導をすべき動作はどれか。

1.①鍋を持つ
2.②お茶を注ぐ
3.③荷物を持つ
4.④材料をかき混ぜる
5.⑤椅子から立ち上がる

解答

解説

本症例のポイント

①ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
②クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
③関節リウマチは、関節保護の原則を用い、手指など小さな関節に負荷をかけない、関節にかかる力を分散させる、変形の進みやすい向きでの荷重をかけない、などのように関節を保護した日常生活活動を送るように指導する。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.〇 ①鍋を持つ際は、写真のように両手鍋(両手)を使用する。片手でフライパンを持つことは、手指や手関節に負担がかかるため控えたほうが良い。 
2.〇 ②お茶を注ぐ際は、写真のように両手を使用する。片手で急須の蓋を押さえながら注ぐことは、手指や手関節に負担がかかるため控えたほうが良い。 
3.〇 ③荷物を持つ際は、写真のように前腕にかける。手指を握って行うことは、手指や手関節に負担がかかるため控えたほうが良い。 
4.〇 ④材料をかき混ぜる際は、写真のように電動ミキサーを使用する。手動は、手指や手関節に負担がかかるため控えたほうが良い。 
5.× 関節保護の指導をすべき動作である。写真の⑤椅子から立ち上がる動作(プッシュアップ動作)は、手指や手関節に負担がかかるため控えたほうが良い。 椅子から立ち上がる際は、座面を高くするため補高マットを敷く。

Steinbrockerの病気分類

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

 

 

 

 

8 28歳の女性。頸髄損傷(第6髄節まで機能残存)。車椅子とベッド間の移乗は前・後方移動で自立し、ADLは自助具や環境整備で自立の見込みを得た。住宅改修を図に示す。
 正しいのはどれか。2つ選べ。

1.①の廊下幅は歩行者とのすれ違いのために140cmにした。
2.②のポーチの幅は車椅子を回転させるために100cmにした。
3.③の廊下と居室の開口部通過の幅は90cmにした。
4.④のシャワーフックの位置の高さは150cmにした。
5.⑤の屋外スロープの勾配は1/4にした。

解答1・3

解説

本症例のポイント

・28歳の女性。
・頸髄損傷(第6髄節まで機能残存)
・車椅子とベッド間の移乗は前・後方移動で自立。
・ADLは自助具や環境整備で自立の見込み。

1.〇 正しい。①の廊下幅は、歩行者とのすれ違いのために140cmにした。高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)の第17条には、「廊下などは、幅120cm以上、50mごとに車いすの転回が可能なスペースを設けること」が規定されている。
2.× ②のポーチの幅は車椅子を回転させるために、100cmではなく「150cm」の幅が必要である。②のポーチで、玄関の鍵をかけたり、⑤屋外スロープへの方向転換が必要であるため広いほうが良い。
3.〇 正しい。③の廊下と居室の開口部通過の幅は90cmにした。車椅子の90°の方向転換に「85〜90cm」必要である。
4.× ④のシャワーフックの位置の高さは、「150cm」と固定ではなく、高さを調整できる方(垂直に取り付けられたバーに沿ってスライドし高さを調整できるもの)が良い。浴室用車いすやシャワーチェア等に座った状態で手が届くようにする。固定の場合は、高い位置(立位用:150〜170cm)と低い位置(座位用:60〜80cm)に2つつけるのが望ましい。ただし、本症例の場合、頸髄損傷(第6髄節まで機能残存)であるため、固定式の場合は低い位置(座位用:60〜80cm)に設定すべきである。ちなみに、シャワーホースの長さは150cmが望ましい。
5.× ⑤の屋外スロープの勾配は、1/4ではなく「1/12以下」にする。1/15~1/20が推奨されている。

車椅子の通行幅

数値:【建築物移動等円滑化基準】(建築物移動等円滑化誘導基準)
玄関出入口の幅:【80cm】(120cm)
居室などの出入口:【80cm】(90cm)
廊下幅:【120cm】(180cm)※車椅子同士のすれちがいには180cm
スロープ幅:【120cm】(150cm)
スロープ勾配:【1/12以下】(1/12以下、屋外は1/15)
通路の幅:【120cm】(180cm)
出入口の幅:【80cm】(90cm)
かごの奥行:【135cm】(135cm)
かごの幅(一定の建物の場合):【140cm】(160cm)
乗降ロビー:【150cm】(180cm)

(※参考:「バリアフリー法」国土交通省HPより)
(※参考:「主要寸法の基本的な考え方」国土交通省様HPより)

 

 

 

 

 

9 13歳の男子。現在、Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による。)。
 学校生活を送る上で優先的に行う支援はどれか。

1.歩行器の導入
2.給食の食形態変更
3.長下肢装具の導入
4.電動車椅子の導入
5.トイレの手すり設置

解答

解説

本症例のポイント

・13歳の男子。
・Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6
(四つ這いは不可能だが、いざりは可能」なレベル)

1.× 歩行器の導入は優先度が低い。なぜなら、本症例はステージ6で歩行困難であるため。歩行器の導入を検討するのはステージ4以前に検討する。
2.× 給食の食形態変更は時期尚早である。なぜなら、本症例は13歳の男子、Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6であり、大きな嚥下機能の障害は生じていない可能性が高いため。Duchenne型筋ジストロフィーは、10歳後半より咬合障害や巨舌などによる準備期・口腔期の異常が出現し、さらに20歳頃より咽頭残留などの咽頭期障害が出現する。口腔・咽頭の通過障害は固形物の方が強く、咽頭残留は液体の方が多い。対策として、咬合訓練による咬合力の改善や口腔周囲筋のストレッチによる可動域の拡大、食道入口開大不全に対するバルン法の有効性について報告がある。摂食による疲労を考慮した食事介助やポジショニング対策も重要である。
3.× 長下肢装具の導入は優先度が低い。長下肢装具の適応は、Brunnstrom法ステージⅡ以下の弛緩性麻痺患者の立位練習や歩行練習などに使用されることが多い。また、本症例はステージ6で歩行困難である。Duchenne型筋ジストロフィーに対して、長下肢装具を用いることもあるが、立位保持や進行の予防の視点が強く、学校生活を送る上で優先的に行う支援とはいえない。
4.〇 正しい。電動車椅子の導入は学校生活を送る上で優先的に行う支援である。なぜなら、本症例はステージ6で歩行困難であるため。他の移動手段を検討した場合、座位の保持が可能であるため電動車椅子の導入が当てはまる。
5.× トイレの手すり設置は優先度が低い。なぜなら、ステージ4でイスからの立ち上がりは不能となるため。本症例(ステージ6)は、手すりを使用しても立ち上がり動作が困難である。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

 

 

10 70歳の男性。慢性心不全。NYHA分類Ⅱ度。安静時心拍数70/分、Karvonen法による運動時の1分間の目標心拍数はどれか。
 ただし、係数は0.5とする。

1.90
2.100
3.110
4.120
5.130

解答

解説

公式

Karvonen法(カルボーネン法)は、年齢や安静時心拍数から運動強度を算出するときに使用される。

Karvonen法(カルボーネン法)は「目標心拍数=(220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度%(k:係数)+安静時心拍数」で求めることができる。
※予測最大心拍数=(220-年齢)
※kは年齢や傷病の状態に応じて0.3~0.7程度で設定する。

①Karvonen法による運動時の1分間の目標心拍数を出す計算式に当てはめる。

目標心拍数=〔(220-年齢)-安静時心拍数〕×運動強度%(k:係数)+安静時心拍数

目標心拍数=〔(220-70)-70〕×0.5(50%)+70

     =110

したがって選択肢3.110がKarvonen法による運動時の1分間の目標心拍数として正しい。

係数とは?

係数は、多項式の各項を構成する因子において、ある変数に着目した際の他の部分.3β+2においてβに着目した際、係数は3である。

Karvonenの式の係数kについては、健常者はk=0.6、心不全などによりk=0.2~0.6に設定するとされており、心不全やβ遮断薬投与例での検討が報告されているが、適切な値の決定には確立された方法はない。循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011 年度合同研究班報告)よると、Karvonen係数 (k値)は、①低強度負荷:0.3〜0.4未満、②中強度負荷:0.4〜0.6未満、③高強度負荷:0.6〜0.7ともある。ちなみに、本問題の場合、「係数は0.5」と記載されている。

 

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