第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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1 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肩甲帯屈曲
2.肩外旋
3.手屈曲
4.股外転
5.足底屈

解答3・4

解説

1.× 肩甲帯屈曲の【基本軸】両側の肩峰を結ぶ線、【移動軸】頭頂と肩峰を結ぶ線である。設問の図の基本軸が、背面となっている。
2.× 肩外旋の【基本軸】肘を通る前額面への垂直線、【移動軸】尺骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①上腕を体幹に接して、肘関節を前方90°に屈曲した肢位で行う、②前腕は中間位とする。設問の図は、前腕回内位となっている。
3.〇 正しい。手屈曲(掌屈)の【基本軸】橈骨、【移動軸】第二中手骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、前腕は中間位とする。
4.〇 正しい。股外転の【基本軸】両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線、【移動軸】大腿中央線(膝蓋骨中心を結ぶ線)である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①背臥位で骨盤を固定する、②下肢は外旋しないようにする内転の場合は、反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させる。
5.× 足底屈の【基本軸】矢状面における腓骨長軸への垂直線、【移動軸】足底面である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、膝関節を屈曲位で行う。設問の図は、膝関節伸展位となっている。(2022年改定)

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2 62歳の女性。くも膜下出血。回復期リハビリテーション病棟に入院している。CAT〈Clinical Assessment for Attention〉の結果を下に示す。
 結果の解釈として適切なのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:採点除外)

1.短期記憶障害
2.半側空間無視
3.持続性注意の障害
4.選択性注意の障害
5.ワーキングメモリーの障害

解答4・5?(採点対象から除外する)
理由:選択肢に誤りがあり、正解が得られないため。

解説

CAT〈Clinical Assessment for Attention〉とは?

CAT〈Clinical Assessment for Attention〉とは、標準注意検査で注意機能全般を評価する検査である。7つの下位検査から成り立っている。

① Span
 1)Digit Span(数唱):聴覚性の短期記憶
 2)Tapping Span(視覚性スパン):視覚性の短期記憶
② Cancellation and Detection Test(抹消検出課題):選択性の注意機能を評価する
 1)Visual Cancellation Task(視覚性抹消検査)
 2)Auditory Detection Task(聴覚性検出課題)
③ Symbol Digit Modalities Test(SDMT):分配性注意機能を評価する
④ Memory Updating Test(記憶更新検査):作動記憶(ワーキングメモリー)を評価する
⑤ Paced Auditory Serial Addition Test(PASAT):分配性注意機能を評価する
⑥ Position Stroop Test(上中下検査):転換性注意機能を評価する
⑦ Continuous Performance Test (CPT):持続性注意、選択性注意機能を評価する

1.× 短期記憶障害とはいえない。なぜなら、短期記憶((1)Digit Span:数唱、(2)Tapping Span視覚性スパン)は、平均の範囲内であるため。
2.× 半側空間無視とはいえない。なぜなら、②Cancellation and Detection Test(抹消検出課題:選択性の注意機能)の正答率(上から3~4番目の項目)は、平均の範囲内であるため。ちなみに、半側空間無視を判断する評価として他にも、BIT(行動性無視検査)、線分末梢試験がある。
3.× 持続性注意の障害とはいえない。なぜなら、⑦ Continuous Performance Test (CPT:持続性注意)は、平均の範囲内であるため。
4.〇 正しい。選択性注意の障害を認める。なぜなら、Visual Cancellation(選択性の注意機能を評価)の所要時間が平均範囲よりも超過しているため。2つ目の赤丸を参考にしてほしい。
5.〇 正しい。ワーキングメモリーの障害を認める。なぜなら、Memory Updating(作動記憶:ワーキングメモリーを評価)は、3・4スパンともに平均範囲を下回り、4スパンはカットオフ値より低値であるため。ちなみに、カットオフ値は、▼で示している。

 

 

 

 

3 60歳の男性。脳血管障害による右片麻痺。ベッドから車椅子への移乗は1人で何とか可能である。
 ベッドから車椅子への移乗場面の初回評価において、ベッド、車椅子および作業療法士の相対的な位置関係で適切なのはどれか。

解答

解説

脳卒中片麻痺患者の安全な移乗方法・手順について

①健康状態の確認。
②車椅子を準備し点検する。
③車椅子に移乗することを説明する。
④車椅子を適切な位置に配置する。(車椅子はベッドと20°~45°の角度になるように、非麻痺側に配置する)。
⑤非麻痺側の手を車椅子のアームレストに置く。
⑥非麻痺手のアームレストに置いた状態で左側の足を軸に立ちあがる。
⑦腰を回転させゆっくり座る。

1.〇 正しい。本症例は、ベッドから車椅子への移乗は1人で何とか可能であるが、ベッドから車椅子への移乗場面の初回評価である。したがって、転倒のリスク管理は常に必要であり、もしものことがあってもすぐに支えられるポジショニングが求められる。患者が起き上がった際に、療法士は麻痺側となり患者を支えられる位置にいる。また、非麻痺側に車椅子を設置することができており、角度も20°~45°程度である。また、患者と車椅子の間に作業療法士が立つことで、①介助を手助けや、②バランスを崩した際などに対応できる位置である。
2.× 車椅子の位置が足側になっているため、起き上がる際に車椅子を跨ぐ必要がある。また、移乗の際は、麻痺側下肢が軸足となるため不安定になりやすい。
3.× 療法士の位置が、車椅子の後方であるため、なにかあった際にはすぐに対応できない恐れがある。本症例は、ベッドから車椅子への移乗は1人で何とか可能であるが、ベッドから車椅子への移乗場面の初回評価である。したがって、転倒のリスク管理は常に必要であり、もしものことがあってもすぐに支えられるポジショニングが求められる。
4.× 車椅子の位置が麻痺側に配置しているため、患者は麻痺側へ起き上がる必要がある。起き上がれても移乗の際は、麻痺側下肢が軸足となるため不安定になりやすい。
5.× 車椅子の位置が麻痺側に配置しているため、患者は麻痺側へ起き上がる必要がある。起き上がれても移乗の際は、麻痺側下肢が軸足となるため不安定になりやすい。療法士の位置も、車椅子の後方であるため、なにかあった際にはすぐに対応できない恐れがある。

 

 

 

 

 

4 40歳の男性。脳梗塞による左片麻痺。「手を腰の後ろに回してください」、「肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げてください」の指示に左上肢はそれぞれ図のようになった。
 左上肢の状態として適切なのはどれか。

1.基本的共同運動の最初の要素が出現している。
2.痙縮の発現期である。
3.痙縮が最も強い時期である。
4.基本的共同運動から逸脱した運動が出現している。
5.分離運動が自由に可能である。

解答

解説

本症例のポイント

・手を腰の後ろに回すことは可能である(BrsⅣ相当)。
・肘を曲げずに腕を前から水平位まで上げると肘屈曲し困難(BrsⅤ相当)。
→本症例は、BrsⅣ相当と考えられ、痙性減弱期(共同パターンが弱まり、徐々に分離運動が出現していた状態)である。

1.× 基本的共同運動の最初の要素が出現している状態は、BrsⅠ~Ⅱへの移行期である。弛緩期から痙性が出現してきた時期である。
2.× 痙縮の発現期である状態は、BrsⅡである。
3.× 痙縮が最も強い時期である状態は、BrsⅢである。
4.〇 正しい。基本的共同運動から逸脱した運動が出現している状態は、BrsⅣである。逸脱した運動(分離運動)が少し出現してきている時期である。症例の左上肢の状態を指している。
5.× 分離運動が自由に可能である状態は、BrsⅥである。

ブルンストローム・ステージ

Ⅰ:弛緩期→反射的にも随意的にも運動、筋収縮を得ることができない状態。
Ⅱ:痙性発現期→わずかな痙性と共同パターンが出現し、連合反応あるいは随意的に起こる筋収縮がいられてくる状態。
Ⅲ:痙性極期→共同パターンが最も強くなる時期で、随意的に共同運動またはその一部の要素による運動を起こすことができる状態。
Ⅳ:痙性減弱期→共同パターンが弱まり、徐々に分離運動が出現していた状態。
Ⅴ:痙性減少期→共同パターンがさらに弱まり、かなりの分離運動が可能な状態。
Ⅵ:痙性最小期→単関節を自由に動かせ、ほぼ正常な動作ができる状態。

 

 

 

 

5 内部単純エックス線写真を下に示す。
 所見として正しいのはどれか。

1.心拡大
2.胸水貯留
3.肺の過膨張
4.すりガラス陰影
5.肋間腔の狭小化

解答

解説

本症例のポイント

本症例は、慢性閉塞性肺疾患の典型的な画像である。

①肺の過膨張(ビヤ樽のように肺が外側に膨張している)
②横隔膜の平坦化(肺の過膨張が長軸方向に及ぶため)
③心臓の滴状(肺による心臓の圧迫)
④両側肺野の透過性亢進(肺に空気が入り込んでいるため)

1.× 心拡大ではなく、滴状心となる。過膨張した肺により、心臓が圧迫されるため起こる。ちなみに、心拡大は心不全などで生じる。
2.× 胸水貯留は認められない。胸水貯留は、①CPangle(肋骨横隔膜角)が、90°よりも大きい(鈍い)場合や消失していたりする所見で疑われる。ちなみに、胸水貯留は心不全などで生じる。
3.〇 正しい。肺の過膨張を認める。肺胞障害により、肺のコンプライランスが上昇するため、肺の過膨張が生じる。肺コンプライアンスとは、簡単に言うと肺や胸郭系などの伸びやすさを表す。
4.× すりガラス陰影は、間質性肺炎で見られる所見である。気管支や肺胞などの空気が入る空間を間質といい、間質で炎症が起きると淡いすりガラスのような影が見える。
5.× 肋間腔は、狭小化ではなく「拡大」する。なぜなら、肺の過膨張が起こるため。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の検査所見

増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

 

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