第57回(R4) 作業療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

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※解答の引用:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について(厚生労働省HPより)

 

1 Danielsらの徒手筋力テスト(段階5及び4)で、検査者が抵抗を与える位置が正しいのはどれか。2つ選べ。

1.前腕回内
2.対立運動
3.肘関節屈曲
4.肩関節水平外転
5.肩甲骨内転と下方回旋

解答4・5

解説

1.× 前腕回内の抵抗の位置は、「前腕遠位部(手関節のところ)」である。設問の図の抵抗位置は、手背になっている。
2.× 対立運動の抵抗の位置は、「母指と小指の中手指節関節(MCP関節)」である。設問の図の抵抗位置は、母指と小指のDIP関節(遠位指節骨間関節)になっている。
3.× 肘関節屈曲の抵抗の位置は、「前腕遠位部(手関節のところ)」である。設問の図の抵抗位置は、手掌になっている。
4.〇 正しい。肩関節水平外転の抵抗の位置は、「上腕遠位部(肘のすぐ上で、腕後方にあてがう)」である。
5.〇 正しい。肩甲骨内転と下方回旋の抵抗の位置は、「上腕遠位部(肘の直上で上腕骨に置く)」である。

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2 背臥位のまま右手でスマートフォンを持ち電子書籍を閲覧していた。図のように、この時の肩関節は屈曲40度、肘関節は屈曲90度であった。
 文字が見づらいためゆっくり肘を曲げて画面を顔に近づける際に活動する筋と収縮様式の組合せで正しいのはどれか。

1.上腕二頭筋:遠心性収縮
2.上腕二頭筋:等張性収縮
3.上腕三頭筋:遠心性収縮
4.上腕三頭筋:求心性収縮
5.上腕三頭筋:等張性収縮

解答

解説

それぞれの筋の作用

上腕二頭筋:肘関節屈曲、回外(長頭:肩関節外転、短頭:肩関節内転)
上腕三頭筋:肘関節伸展、肩関節伸展

肘関節屈曲運動は、上腕二頭筋の求心性収縮により生じるが、拮抗筋である上腕三頭筋の遠心性収縮により、肘関節屈曲スピードを調整している。

1~2.× 上腕二頭筋は、遠心性収縮/等張性収縮ではなく求心性収縮である。ちなみに、遠心性収縮とは、筋は収縮しても筋長は伸びている収縮様式である。これは最大張力の場合だけでなく、種々の筋張力レベルで起こる。日常の運動動作は、重力方向との関係で身体の種々の部分で遠心性収縮が起きている。遠心性収縮は、筋力増強効果が大きいとされるが、筋の損傷も大きい。筋力増強効果は、遠心性→等尺性→求心性の順に大きい。また、等張性収縮とは、筋張力が変化せずに収縮する状態である。筋自身は収縮あるいは伸長のいずれの状態でも起こりうる。求心性収縮と混同されやすいが、求心性収縮では短縮時に張力が変化することもある。等張性運動は心肺機能の維持・改善に適する筋の収縮・弛緩の反復によるポンプ効果で、血液循環がよくなる。
3.〇 正しい。上腕三頭筋は、遠心性収縮が起こっている。
4~5.× 上腕三頭筋は、求心性収縮/等張性収縮ではなく遠心性収縮である。ちなみに、求心性収縮とは、筋は負荷に打ち勝つだけの張力を発生して、筋の短縮が起こっている状態である。骨格はてこ・関節は支点として働く。

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3 50歳の女性。末梢神経麻痺により、円回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、長母指屈筋、方形回内筋、短母指外転筋、短母指屈筋(浅頭)、母指対立筋、第1・2虫様筋が麻痺している。
 適応する装具で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.短対立装具(Bennett型)
2.長対立装具(Rancho型)
3.手関節駆動型把持装具(RIC型)
4.Thomas型装具
5.ナックルベンダー

解答2・3

解説

本症例のポイント

50歳の女性。末梢神経麻痺。円回内筋、長掌筋、橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋(示指・中指)、長母指屈筋、方形回内筋、短母指外転筋、短母指屈筋(浅頭)、母指対立筋、第1・2虫様筋が麻痺していることから「正中神経麻痺(高位型)」、「C6機能残存レベル」である。

1.× 短対立装具(Bennett型)は、正中神経麻痺(低位型)やC7頸髄損傷などで適応となる。母指を対立位に保持し、手関節を保持する。
2.〇 正しい。長対立装具(Rancho型)は、手関節駆動式把持スプリントともいい、正中神経麻痺(高位型)C6レベルまで残存している脊髄損傷に対して用いる。
3.〇 正しい。手関節駆動型把持装具(RIC型)は、C6の機能残存に適応で、手関節背屈運動により対立つまみを可能にする。屈筋腱固定術の原理を利用して、手関節背屈によって示指・中指のMP関節を他動的に屈曲させ、対立位にある母指との間で把持を行わせるものである。
4.× Thomas型装具は、橈骨神経麻痺(下垂手)に対する上肢装具である。
5.× ナックルベンダーは、尺骨神経麻痺(鷲手)に対する上肢装具である。

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4 9歳の男児。痙直型四肢麻痺の脳性麻痺。頭部保持は可能で、座位保持は両手の支持が必要である。立位は介助があればわずかにできる。
 この児が机上で道具の操作を練習する際に両手を使用するための姿勢として最も難しいのはどれか。

1.車椅子で体幹ベルトを用いた座位
2.床上で両肘を机上に置いた長座位
3.床上で両肘を机上に置いた割り座
4.座位保持装置を使用した座位
5.立位台を使用した立位

解答

解説

本症例のポイント

・9歳の男児
・痙直型四肢麻痺の脳性麻痺
・頭部保持:可能、座位保持:両手の支持、立位:介助があればわずかに可。
→この児が机上で道具の操作を練習する際に両手を使用するための姿勢として最も難しいのはどれか?

支持基底面の広さが広いほど安定するが、重心の位置が支持基底面の外側に近いほど逸脱しやすくなり不安定となる。痙直型四肢麻痺は大脳の広範囲の障害によって主動筋と拮抗筋が同時に作用し続ける。主動筋、拮抗筋の相反性抑制が起き、筋の機能不全がみられる。下肢に関しては両麻痺と同様の変形(両側股関節内転・内旋、尖足)をきたすことが多い。臨床では、緊張性迷路反射の影響を除いて上肢機能改善をはかるためには、頚部・体幹を垂直(抗重力位)かやや前傾を保持する。

1.× 車椅子で体幹ベルトを用いた座位より、選択肢の中で難しい姿勢がある。本症例の座位保持は、「両手支持で可能」であり、車椅子座位は股・膝関節屈曲位できる。さらに体幹ベルトを用いれば、比較的安定性を得られると考える。
2.〇 正しい。床上で両肘を机上に置いた長座位は、姿勢として最も難しい。長座位とは、上半身が起こしたまま両足を伸ばした状態(股関節屈曲位、膝関節伸展位)の座位を指す。下肢の後面と臀部を基底面にしているが、座位と比べると、重心が後方へ逸脱しやすく、上半身が不安定になりやすい。また、持続した姿勢でいると疲労しやすいのが特徴である。この姿勢を保つには、身体が後方に倒れないよう、股関節の屈曲に関わる大腿部の後側などの筋力が必要になる。つまり、そもそも長座位は、重心が後方に片寄りやすく、難易度が高い。本症例に、机上で道具の操作を練習する際に両手を使用するための姿勢に長坐位を選択することは難しいと考える。
3.× 床上で両肘を机上に置いた割り座より、選択肢の中で難しい姿勢がある。なぜなら、割り座は、膝関節屈曲位で支持基底面内の中央に重心が落ちやすく安定しやすいため。ちなみに、割り座とはいわゆる”お姉さん座り”や”トンビ座り”である。ただし、割り座は股関節内転・内旋を助長するため、痙直型両麻痺児に推奨するべき肢位ではない。
4.× 座位保持装置を使用した座位より、選択肢の中で難しい姿勢がある。厚生労働省の告知資料では、座位保持装置とは『機能障害の状況により、座位に類した姿勢を保持する機能を有する装置を含むもの』とされている。つまり、座る姿勢を保持する機能がついた「椅子」である。体幹ベルトがそもそもついているものが多く、比較的安定性を得られると考える。
5.× 立位台を使用した立位より、選択肢の中で難しい姿勢がある。立位のみであれば支持基底面が小さく不安定であるが、立位台(写真参照)を用いることで、前方に寄り掛かることができ安定(支持基底面の拡大)する。また、角度も調整することができるため、本症例の立位レベルに応じて、机上で道具の操作を練習するが行える。

 

(※画像引用:アビリティーズ・ケアネット株式会社様HPより)

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5 13歳の男子。1か月前から膝の疼痛が生じ、近医を受診。精査が必要となり大学病院へ紹介された。左大腿骨遠位に境界不明瞭な腫瘤を触れる。単純エックス線写真を下に示す。化学療法が始まり、リハビリテーション治療が処方された。
 リハビリテーション治療について正しいのはどれか。

1.易感染性に注意する。
2.積極的に患部のマッサージを行う。
3.患側の運動負荷は健側と同様でよい。
4.骨端線に近い病巣なので温熱療法が効果的である。
5.健側のリハビリテーション治療は化学療法後から行う。

解答

解説

本症例のポイント

・13歳の男子。
・1か月前から膝の疼痛。
・左大腿骨遠位に境界不明瞭な腫瘤。
・化学療法が始まり、リハビリテーション治療が処方。

腫瘤とは、医学的には、原因が炎症性か腫瘍性かはっきりしない、限局性の腫脹に用いる用語である。問診や診療に加えて、X線(レントゲン)写真で骨が隆起していたり、ぬけて見えたりするときに疑う。本症例の場合、10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する骨肉腫が最も有力であると考えられる。悪性腫瘍は、上皮性のものを「癌(癌腫)」、非上皮性のものを「肉腫」と呼ぶ。骨肉腫には、他の臓器に発生したがんが骨に転移する「転移性骨腫瘍」と、骨自体からがんが発生する「原発性骨悪性腫瘍」の2種類があり、後者は主に肉腫と呼ばれる腫瘍がほとんどである。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。

1.〇 正しい。易感染性に注意する。なぜなら、本症例は化学療法を行っているため。化学療法とは、抗がん剤を用いて癌を治療することをいう。抗がん剤には、癌細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果がある。また、骨肉腫(悪性腫瘍)の場合、好中球やマクロファージによる貪食細胞機能やオプソニン効果の低下や液性・細胞性免疫、抗原提示能が障害されており、通常健常人には感染をおこさない病原性の弱い病原菌による感染(日和見感染)を生じやすいため。他にも、糖尿病・肝硬変・腎不全・低栄養・無ガンマグロブリン血症などの基礎疾患をもつ患者や、重症外傷・広範囲熱傷患者、ステロイド・抗癌剤・免疫抑制剤の投与、放射線治療を受けた患者などは注意が必要である。
2.× 積極的に患部のマッサージを行うことへの優先度は低い。なぜなら、マッサージは主に、リンパ性の浮腫や精神的疼痛の緩和などに対し行うため。
3.× 患側の運動負荷は健側と「同様」ではなく、「減らすべき」である。なぜなら、骨肉腫は進行すると骨が弱くなり、軽いけがでも骨折することがあるため。 そのため、骨折による受診をきっかけに骨肉腫が発見されることもある。
4.× 骨端線に近い場合、病巣の有無に関わらず、温熱療法(超音波療法)は「効果的」ではなく「禁忌」である。ちなみに、超音波療法の禁忌として、①眼への照射(眼に超音波を照射すると組織の空洞化を起こす)、②成長時の骨端、③心臓、生殖器官、内分泌器官、④良性または悪性腫瘍、麻痺部、⑤ペースメーカーの入っている部位(ペースメーカーを損傷する可能性)、⑥脊髄疾患(多発性硬化症、脊髄灰白質炎、脊髄空洞症)があげられる。また、悪性腫瘍の場合は腫瘍の助長を促す温熱療法は、緩和ケアなどを除いて禁忌である。
5.× 健側のリハビリテーション治療は、化学療法後ではなく「」から行う。化学療法とは、抗がん剤を用いて癌を治療することをいう。抗がん剤には、癌細胞の増殖を抑えたり、再発や転移を防いだりする効果がある。化学療法後、副作用としてアレルギー反応、だるさ、吐き気、下痢などが起こる。したがって、健側は化学療法前に可能な限りの機能向上を図る。

 

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