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6 50歳の男性。糖尿病。1か月前からインスリンによる治療が開始されている。空腹時血糖150mg/dL、HbA1cは7.5%であった。これまでに低血糖症状は認めていない。
血糖コントロールの改善に向けた運動療法、生活指導で誤っているのはどれか。
1.歩数計を活用する。
2.運動は食後1時間後に行う。
3.階段を使用するように助言する。
4.低強度でのレジスタンス運動を行う。
5.1週間で合計60分の有酸素運動を行う。
解答5
解説
1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。
①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。
【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)
【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。
(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)
1.〇 正しい。歩数計を活用する。なぜなら、歩数は運動量を視覚化しやすく、男性は歩数計の数字が増えることに対し達成感を抱きやすいため。また、「20分で○歩」と目標の一つとしても活用しやすく、歩行スピードの維持(ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』)にもつながる。
2.〇 正しい。運動は食後1時間後に行う。本症例は、「これまでに低血糖症状は認めていない」が、糖尿病患者に対する運動療法は、食後1〜2時間後に行うべきである。
3.〇 正しい。階段を使用するように助言する。なぜなら、階段を使用することで運動量の確保につながるため。
4.〇 正しい。低強度でのレジスタンス運動を行う。レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動のことをいう。対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便である。
5.× 「1週間で合計60分」ではなく「1回の運動時間は20〜30分(週3回以上)」の有酸素運動を行う。なぜなら、1週間で合計60分では「1回60分でも60回1分の運動を」やればいいだけになるため。運動は、①頻度、②強度、③量は決める必要がある。
空腹時の血糖値は、80〜90mg/dLが一般的である。110mg/dL以上から高値となる。ちなみに、糖尿病患者の場合、250mg/dL以上は運動療法が禁忌である。また、HbA1cは4.6〜6.2%が一般的である。
7 65歳の女性。Parkinson病。Hoehn & Yahrの重症度分類ステージⅢ。屋内歩行は伝い歩きをしている。薬物コントロールができ次第、退院予定である。
運動機能維持を目的とした作業療法で優先順位が低いのはどれか。
解答5
解説
パーキンソン病は、黒質線条体系のドパミン不足による慢性の進行性の錐体外路疾患である。四大徴候として①安静時振戦、②筋固縮、③無動、④姿勢保持反射障害が挙げられる。患者への対応としては、安静時振戦や無動などの症状から運動範囲の狭い机上作業などよりも、身体を大きく使うような粗大運動が適切である。
・65歳の女性。
・Parkinson病。
・Hoehn & Yahrの重症度分類ステージⅢ(日常生活は何とか自立しているが、小刻み歩行、すくみ足、姿勢保持反射障害などがみられ、日常生活に支障が生じる。しかし、介助は要さない。職種によっては仕事を続けることができるレベル)
・屋内歩行は伝い歩き可能。
・薬物コントロールができ次第、退院予定である。
・運動機能維持を目的とした作業療法を選択する。
1.〇 立位でのボール入れは、運動機能維持を目的とした作業療法となる。Hoehn & Yahrの重症度分類ステージⅢは、軽~中等度パーキンソニズム・姿勢反射障害がみられる時期である。立位でのボール入れは、体幹伸展を促し、前傾姿勢の進行予防ができる。また、両上肢屈曲を促し固縮・無動の進行予防ができる。最後に、立位をとることで、姿勢反射障害に対するバランス運動も担っていると考えられる。
2.〇 階段昇降は、運動機能維持を目的とした作業療法となる。Parkinson病には、矛盾性運動(逆説的運動)が特徴である。矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えてもらうと、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。
3.〇 座位でのコーン入れ/座位でのキャッチボール?(ゴムボール)は、運動機能維持を目的とした作業療法となる。上肢屈曲を促し固縮・無動の進行予防ができる。また、座位保持にてリーチ動作を促すため、座位バランス訓練につながる。
5.× 陶芸は、運動機能維持を目的として、選択肢の中で最も優先順位が低い。なぜなら、運動範囲が狭いため。また、前傾姿勢をさらに強める可能性が高い。ちなみに、陶芸のメリットとして、①創造性の向上、②気分転換、③ストレス解消、④満足感や達成感などがあげられ、主な疾患としては認知症やうつ病に対して行うことが多い。
0度:パーキンソニズムなし
Ⅰ度:一側性パーキンソニズム。日常生活(労働を含む)に介助を要しない。
Ⅱ度:両側性パーキンソニズム。日常生活(労働を含む)がやや不便であるが制限はされない。
Ⅲ度:軽~中等度パーキンソニズム。姿勢反射障害あり。日常生活(労働を含む)に一部介助(制限)が必要になるが自力での生活可能。
Ⅳ度:高度障害を示すが、歩行は介助なしにどうにか可能
Ⅴ度:介助なしにはベッド又は車椅子生活
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【OT専門のみ】パーキンソン病についての問題「まとめ・解説」
8 25歳の女性。交通事故による外傷性脳損傷(右前頭葉)。職場復帰を希望している。WAIS-Ⅲでは言語性IQが76、動作性IQが106、全検査IQが89。RBMTが19点、TMT-Aが81秒、TMT-Bが90秒、BADSが104点、FIMが120点。対人交流は良好である。
2か月後の事務職への職場復帰を目的とした練習として適切なのはどれか。
1.電話の受付
2.企画書の作成
3.書類の片付け
4.会議の要約報告
5.金銭の会計処理
解答3
解説
WAIS-Ⅲ:言語性IQが76、動作性IQが106、全検査IQが89(※79~70以上「境界域」、69以下「知的障害」。)
RBMT(リバーミード行動記憶検査):19点(※17点以上:計画的な買い物が可能)
TMT-A:81秒、TMT-B:90秒(標準値はA30秒以下、B64秒以下である。)
BADS:104点(※88点以上で車の運転可能)
FIM:120点(※運動機能が58点以上で在宅復帰可能)
WAIS-Ⅲにおいて、言語性IQが76で境界域とされる。境界域とは、明らかな知的障害とはいえず、環境を選べば、自立しての社会適応が可能と考えられるが、状況によっては理解と支援が必要なレベルである。ちなみに、「言語性IQ」とは、主に言語を使った思考力や表現力の知能指数のことである。 言語性IQのテストでは単語を提示されてその意味を答える語彙の問題など、出題者の問に対して言葉を使って考え、回答する内容が中心となっているほか、記憶力が試されるような内容も出題される。
以上、これらの評価結果から生活上は支障ないレベルであるが、①言語性IQが境界域であること、②注意力の低下を念頭に入れ、2か月後の事務職への職場復帰を目的とした練習を行っていく必要がある。
①書類の作成や処理
②ファイリングや整理
③データ入力や電話応対・来客応対など
1.× 電話の受付は優先度が低い。なぜなら、本症例は言語性IQが境界域で、注意力の低下のほうが大きいため。優先度が高いものが他の選択肢にある。境界領域は、明らかな知的障害とはいえず、環境を選べば、自立して社会生活ができると考えられるが、状況によっては理解と支援が必要なレベルである。電話の受付は、ある程度決められた応対マニュアルがある。ただし、応用的に質問が来た時など臨機応変に対応しなければならないため、電話の受付も練習する必要はある。
2.× 企画書の作成は優先度が低い。なぜなら、職場にもよるが事務職において企画書を作成すること自体稀であるため。そもそも企画書とは、「新しいアイデアや提案をまとめた資料」のことである。主に、事務職ではなく企画部が担当となる。ちなみに、企画書の作成は、会社全体の不足部分を客観的に見れ、その企画の構成を考え、わかりやすくまとめ、パソコンを使用して打ち込み、書類を作成するという能力が必要となる。
3.〇 正しい。書類の片付けは、2か月後の事務職への職場復帰を目的とした練習である。なぜなら、書類を仕分けは、特に注意の持続性と転換(導)性が必要になるため。また書類を仕分けは、多くの会社の事務職として就職して早々に任されたり手伝ったりする項目である。カテゴリーごとに手元の書類を覚えて、その位置振り分ける必要がある。
4.× 会議の要約報告は優先度が低い。なぜなら、職場にもよるが事務職において会議の要約報告をすること自体稀であるため。会議の要約報告は、その場で理解し端的に分かりやすく言語をまとめないとならない。本症例は、言語性IQが境界域であるため負担が大きいため、職場の理解が必要である。
5.× 金銭の会計処理は優先度が低い。なぜなら、中小企業でも金銭の会計処理は経理担当者が行うため。仮に事務職(本症例)が行う場合でも、一つのミス(桁を一つ間違えるなど)で会社に大きな損害を被る重要な業務であるため、任されること自体低いと考えられる。本症例のTMT-A:81秒、TMT-B:90秒(標準値はA30秒以下、B64秒以下である。)であるため、間違いやすい可能性が考えられ、復職への自信喪失にもつながりやすい。
WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence Scale:ウェクスラー成人知能検査)とは、成人用のウェクスラー知能検査WAISの改訂第3版のことである。質問やイラスト、積み木などの検査キットを用いて、「言語性IQ」「動作性IQ」に加え、「言語理解」「知覚統合」「作動記憶」「処理速度」の4つの指標が得られる。
IQとは、「同世代の集団において、どの程度の知的発達の水準にあるか」を表した数値である。平均値は100であり、点数が平均より高ければIQは100以上になり、点数が平均より低ければIQは100以下となる。79~70以上は「境界域」といい、69以下は「知的障害」と分類される。
RBMT(Rivermead behavioral memory test:リバーミード行動記憶検査)は、記憶障害の患者が日常的に遭遇する状況を想定して行う記憶障害検査である。1.氏名、2.持ち物、3.約束、4.絵、5.物語(直後・遅延)、6.顔写真、7.道順(直後・遅延)、8.用件、9.見当識で9つの項目を評価する。特に展望記憶の検査項目が含まれているのが特徴である。
7点以上:病棟内の自室やトイレ、訓練室への道順を正しく覚えているレベル。
「9点以下」:日常生活上の行動に指示や見守りが必要。
15点以上:一人で通院が可能。
17点以上:計画的な買い物が可能。
BADS(Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome:遂行機能障害症候群の行動評価)は、カードや道具を用いた6種類の下位検査と1つの質問紙で構成されている。質問紙には合計20の質問があり、①感情・人格、②動機付け、③行動、④認知の4カテゴリーが5段階で評価される。検査項目は、【6種類の下位検査】①規則変換カード検査、②行為計画検査、③鍵探し検査、④時間判断検査、⑤動物園地図検査、⑥修正6要素検査である。下位検査は0~4点の5段階で点数化し24点満点で評価する。合計点数が88点以上で車の運転が可能となる。
9 41歳の男性。右手で腕相撲中に骨折した。直後の単純エックス線写真を下図に示す。
最も合併しやすいのはどれか。
1.猿手
2.書痙
3.鷲手
4.下垂手
5.肩手症候群
解答4
解説
①橈骨神経麻痺:開放創や挫傷、上腕骨骨折や上腕骨顆上骨折などの骨折、圧迫などで伴いやすい。上腕骨を螺旋状に橈骨神経が走行している。
②偽関節:骨折した部分で骨がつかないこと。
1.× 猿手は、正中神経低位麻痺で起こる。短母指外転筋、母指対立筋、短母指屈筋浅頭が麻痺し母指球が萎縮する。
2.× 書痙は、局所ジストニア(手のジストニア)の一つであり、字を書く際に筋が過緊張し、手が震えたり、前腕に痛みが発生するなどで書字が困難となる書字障害である。原因としては、書字をすることが多い方(事務職や作家などの職業)に生じやすく、書字動作を繰り返することで前腕筋が過緊張し、末梢神経障害を引き起こす。
3.× 鷲手は、尺骨神経低位麻痺で起こる。手内筋の萎縮を認め、骨間筋が麻痺するため、手指伸展位での内外転運動が困難となる。環指はMP関節が過伸展、PIP、DIP関節が屈曲する。
4.〇 正しい。下垂手は最も合併しやすい。下垂手は、橈骨神経高位麻痺で起こる。上腕骨骨折で出現することが多い。下垂手は、手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となるため生じる。
5.× 肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。脳卒中後の肩手症候群が起こる割合でも20%といわれている。本症例の上腕骨骨幹部骨折でも発症することも考えられるが、設問から「最も合併しやすい」ものを問われているため選択肢から除外できる。
10 19歳の男性。バイク事故で受傷。脊髄損傷完全麻痺(第10胸髄節まで機能残存)。ADLは自立し、今後は車椅子マラソンを行うことを目標に作業療法に取り組んでいる。車椅子を下に示す。
マラソン用車椅子はどれか。
1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤
解答2
解説
・19歳の男性。
・脊髄損傷完全麻痺(第10胸髄節まで機能残存)
・今後は車椅子マラソンを行う。
1.× ①はバスケットボール用の車椅子である。タイヤをハの字にすることで、ターンがしやすくなることと横方向の安定性を高める効果がある。14~20°程角度がついている。また、車椅子の前方にバンパーを取り付けることで接触時に競技者の足を保護し、かつ車体の強度を上げている。接触の多い競技のため後方にはリアキャスターが取り付けられており、後方への転倒を防止する。
2.〇 正しい。②はマラソン用車椅子である。一般の車椅子と異なり、3輪式になっている。前輪は20インチ程度で、後輪は競技者の体格に応じて26~27インチのものが使用されている。車体にはカーボンなどの軽量な素材が使用されており、競技者の負担を軽減している。
3.× ③はラグビー用の車椅子である。車椅子ラグビーの車椅子には、攻撃型と守備型があり、写真は攻撃型である。激しいぶつかり合いに耐えられるよう装甲者のようになっている。機敏な動きができる用タイヤはハの字となっている。タイヤにはタックルからの保護や引っ掛かり部分を減らす目的で、スポークカバーが装着されている。
4.× ④はテニス用の車椅子である素早く向きを変えてボールを打ち返す位置につくことができるように軽量で回転性能や敏捷性が得られるよう作られている。
5.× ⑤は卓球やバドミントンなどの衝撃が加わらないスポーツ用の車椅子である。素早いターンや方向転換を可能にするため、適度なキャンパー角を設定できる。キャンパー角をつけることにより、軽い力で移動したい方向に旋回することができる。
類似問題です↓
【OT/共通】脊髄損傷についての問題「まとめ・解説」