第57回(R4) 理学療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 患者への治療に対するインフォームドコンセントとして適切なのはどれか。

1.専門用語で説明する。
2.説明用の文書を用意する。
3.治療のデメリットは伝えない。
4.心理状態に関わらず患者の決定が優先される。
5.患者は正当な理由があっても同意を撤回できない。

解答

解説

インフォームド・コンセントとは?

インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味する。医療者側から診断結果を伝え、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指す。診断結果の伝達には「癌の告知」という重要な問題も含まれる。

1.× 治療者はなるべく専門用語を使用せず、患者が自ら治療方針を選択できるよう分かりやすい言葉で説明する。なぜなら、インフォームド・コンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」を意味するため。患者自身が病状や治療について、十分理解できる用語を用いる。
2.〇 正しい。説明用の文書を用意する。なぜなら、文章で内容を明示することで、患者側の理解も得やすく確認できるようになるため。したがって、患者の同意内容は文書で保存する必要もある。
3.× 治療のデメリットも伝える。具体的に、治療法の選択肢を提示し、予想される予後などについて説明したうえで、患者自らが治療方針を選択し、同意のもとで医療を行うことを指している。
4.× 心理状態に関わらず患者の決定が優先されることはない。同意能力が欠如している場合、インフォームドコンセントの例外である。なぜなら、インフォームドコンセントは、「十分な説明を受けたうえでの同意・承諾」であるため。心理状態が不安定な場合、同意能力・合意の判断力の欠如が考えられる。
5.× 患者は正当な理由がなくても、同意を撤回できる。患者は一度同意しても、無条件でいつでも同意を撤回できる。

 

 

 

 

 

22 歩行導入初期における運動学習の方法として適切なのはどれか。2つ選べ。

1.ハンドリングを行う。
2.休憩を入れずに練習する。
3.踵接地の練習を繰り返し行う。
4.後ろ歩きや横歩きの練習を取り入れる。
5.フィードバックを与える頻度は少なくする。

解答1・3

解説

1.〇 正しい。ハンドリング(handling)を行うことは、歩行導入初期における運動学習の方法として適切である。ハンドリング(handling)とは、操作・手で扱うことである。運動学習をする上での導入として、①正しい運動で、②難易度が低い内容から始める必要がある。歩行導入初期の場合であれば、ハンドリング(handling)=歩行介助は、歩容の改善、歩行の難易度を下げるということに繋がる。
2.× 休憩を入れずに練習する必要はない。なぜなら、休憩を入れずに練習を行うことは疲労による運動パフォーマンス低下が考えられ、正しい運動を行うことから逸脱するため。
3.〇 正しい。踵接地の練習を繰り返し行うことは、歩行導入初期における運動学習の方法として適切である。なぜなら、踵接地の練習を繰り返すことは正常歩行、つまり正しい運動を反復して行うことにつながるため。
4.× 後ろ歩きや横歩きの練習を取り入れるのは時期尚早である。なぜなら、後ろ歩きや横歩きの練習は応用歩行であり、通常歩行より難易度が高い内容であるため。主に、運動技能学習の③最終相(自動相)で行う。
5.× フィードバックを与える頻度は少なくするのは時期尚早である。なぜなら、フィードバックを与える頻度を少なくすることは、正しい運動から逸脱した時に修正する機会を減らすため。つまり、正しい運動から逸脱しやすい環境といえる。主に、運動技能学習の②中間相(連合相)で行う。

運動技能学習

①初期相(認知相)
何を行うかを理解し、技能獲得のための戦略を立てる時期。

②中間相(連合相)
個々の運動が滑らかな協調運動へと融合して系列動作へと移行する。初期の理解の誤りが見出され、修正され余剰の運動は省かれる。

③最終相(自動相)
運動は空間的・時間的に統合され、無駄がなく、速く滑らかになる。手続きは自動化され、運動に対する注意は減少していく。運動技能は完成に近づくが、さらに高度な技能を身につけたい場合には過剰学習によって下位技能を身につけなければならない。

類似問題です↓
【PT/OT/共通】運動学習ついての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

23 運動に関する中枢神経について正しいのはどれか。

1.一次運動野においては他の部位と比較して手と顔面の運動領域が小さい。
2.中脳黒質に由来するドパミン作動性ニューロンは線条体に至る。
3.皮質脊髄路のうち約30%の線維が延髄錐体で対側に交叉する。
4.Betzの巨大錐体細胞は運動野大脳皮質の第Ⅲ層に存在する。
5.Purkinje細胞の軸索は小脳への求心性線維となる。

解答

解説

1.× 一次運動野においては他の部位と比較して手と顔面の運動領域が「小さい」のではなく「大きい」。ベンフィールド・ホムンクルスの脳地図を参考にするとよく分かる。
2.〇 正しい。中脳黒質に由来するドパミン作動性ニューロンは線条体に至る。ドパミンは、中脳黒質から線条体に投射している中枢神経系に存在する神経伝達物質である。大脳基底核は、①線条体(被殻 + 尾状核)、②淡蒼球、③黒質、④視床下核である。
3.× 皮質脊髄路のうち「約30%」ではなく「約90%」の線維が延髄錐体で対側に交叉する。皮質脊髄路(錐体路)は、大脳皮質から脊髄へ下行する神経経路を指し、脳幹では最も腹側を通り、延髄尾側端で約90%の線維が正中線を交叉(錐体交叉)する。錐体路は、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。
4.× Betzの巨大錐体細胞は、運動野大脳皮質の「第Ⅲ層」ではなく「第Ⅴ層」に存在する。Betzの巨大錐体細胞から出た神経線維が下降して随意運動を司る錐体路となる。上位運動ニューロンは、一次運動野のBetz細胞から始まる。ちなみに、補足運動野は自発的に一連の運動をプログラムする。
5.× Purkinje細胞の軸索は、「小脳への求心性線維」ではなく「小脳からの遠心性線維」となる。Purkinje細胞の軸索は小脳皮質における唯一の出力神経細胞である。ちなみに、プルキンエ細胞は、小脳皮質にあるγ-アミノ酪酸(GABA)作動性の抑制性ニューロンである。 

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

神経伝導路を1から分かりやすく解説します。
【PT/OT/共通】運動に関する部位ついての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

24 加齢により増加するのはどれか。2つ選べ。

1.血管抵抗
2.除脂肪体重
3.唾液分泌量
4.予備呼気量
5.炎症性サイトカイン

解答1・5

解説

1.〇 正しい。血管抵抗は、加齢により増加する。なぜなら、血管の弾性力は低下するため。
2.× 除脂肪体重は、加齢により減少する。なぜなら、筋肉量・骨密度が低下するため。ちなみに、除脂肪体重とは、体重において体脂肪以外の筋肉や骨、内蔵などの総重量のことをいう。
3.× 唾液分泌量は、加齢により減少する。なぜなら、唾液分泌機能を有する唾液腺の機能が低下するため。
4.× 予備呼気量は、加齢により減少する。なぜなら、肺機能や呼吸筋の筋力が低下するため。残気量が上昇し、肺活量は低下する。ちなみに、予備呼気量とは、安静時呼息位から強制呼息によって呼出できる量のことをいう。
5.〇 正しい。炎症性サイトカインは、加齢により増加する。炎症性サイトカインとは、炎症反応を促進する働きを持つサイトカインのことである。免疫に関与し、細菌やウイルスが体に侵入した際に、それらを撃退して体を守る重要な働きをする。老化による免疫機能は、個体・細胞レベルで低下し、血中レベルでは炎症性サイトカインが増加する。なぜなら、加齢に伴い、動脈硬化・肥満・糖尿病などの生活習慣病やがんなどの疾患の背景に慢性炎症が存在するためである。

 

 

 

 

25 閉塞性動脈硬化症の運動療法を行う場合、収集すべき医学情報として最も重要なのはどれか。

1.胸部CT
2.脊椎MRI
3.筋電図検査
4.足関節上腕血圧比
5.股関節を含む両下肢単純エックス線

解答

解説

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

1.× 胸部CTは、主に肺がんや胸部大動脈瘤など、胸部病変の検査に用いられる。
2.× 脊椎MRIは、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、脊柱病変の検査に用いられる。
3.× 筋電図検査は、筋肉の収縮や神経伝達信号を記録する検査であり、神経や筋肉病変の検査に用いられる。
4.〇 正しい。足関節上腕血圧比は、閉塞性動脈硬化症の運動療法を行う場合、収集すべき医学情報として最も重要である。足関節上腕血圧比(ABI)(Ankle-Brachial-Index)とは、四肢すべての動脈閉塞および開口部の最高の圧力を判別するための方法である。足関節上腕血圧比は両腕と両足首の血圧を測定し比率を計算する検査であり、下肢にできやすい閉塞性動脈硬化症の評価検査となる。足関節上腕血圧比=足首最高血圧/上腕最高血圧で求められ、これが、0.9未満で閉塞性動脈硬化症が疑われる。正常:1~1.29、境界線:0.91~0.99、軽度:0.71~0.90、中程度:0.41~0.7、重度:0.4以下となる。
5.× 股関節を含む両下肢単純エックス線は、骨であれば骨折や脱臼、腫瘍の有無などを診ることができる。また、胸部であれば炎症や外傷、腫瘍などの異常を診ることができる。

 

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