第57回(R4) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題81~85】

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81 障害受容に至る5つの過程において3番目に現れるのはどれか。

1.解決への努力期
2.ショック期
3.混乱期
4.受容期
5.否認期

解答

解説

障害受容の過程とは?

障害受容の過程は、「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期(再起)→受容期」の順に現れる。5段階のプロセスは順序通りに進むわけはなく、また障害受容に至らない障害者も存在する。

①ショック期:感情が鈍磨した状態
②否認期:現実に起こった障害を否認する
③混乱期:攻撃的あるいは自責的な時期
④解決への努力期(再起):自己の努力を始める時期
⑤受容期:新しい価値観や生きがいを感じる時期

1.× 解決への努力期は、4番目に現れる。自己の努力を始める時期である。
2.× ショック期は、1番目に現れる。感情が鈍磨した状態である。
3.〇 正しい。混乱期は、3番目に現れる。攻撃的あるいは自責的な時期である。
4.× 受容期は、5番目に現れる。新しい価値観や生きがいを感じる時期である。
5.× 否認期は、2番目に現れる。現実に起こった障害を否認する。

 

 

 

 

 

82 リハビリテーション室で訓練中に意識を失った患者への対応としてまず行うのはどれか。

1.主治医に報告する。
2.ベッドに移動させる。
3.心臓マッサージを行う。
4.バイタルサインを確認する。
5.自動体外式除細動器〈AED〉を準備する。

解答

解説

1.× 主治医に報告するのは、バイタルサインを確認後に行う。なぜなら、主治医に「リハビリテーション室で訓練中に意識を失った」と報告されても情報量が少ないため。情報量が少ない分、主治医による対応や処理も遅れる可能性がある。
2.× あえてベッドに移動させる必要はない。むしろベッドに移動することにより、患者に負担がかかるためできればその場で安全確保のうえ、安楽肢位(気道確保)を行う。
3.× 心臓マッサージを行うのは、呼吸状態を確認後に行う。30回の心臓マッサージと2回の人工呼吸のサイクル(30:2)を繰り返す。
4.〇 正しい。リハビリテーション室で訓練中に意識を失った患者への対応として、バイタルサインを確認することが最優先事項である。今回、リハビリテーション室での想定であるため、安全確保が保証されているものと考える。
5.× 自動体外式除細動器〈AED〉を準備するのは、協力者に求めることが多い。

 

 

 

 

83 脊髄損傷の自律神経過反射でみられるのはどれか。2つ選べ。

1.発汗
2.頻脈
3.高血圧
4.低血糖
5.四肢の疼痛

解答1・3

解説

自律神経過反射とは?

 自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。内臓神経の抑制が解除されるため、主に骨盤内臓器が緊張する促通刺激が原因となり誘発される。原因は①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。生命の危険を伴い合併症を伴う。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。

1,3.〇 正しい。発汗/高血圧は、脊髄損傷の自律神経過反射でみられる。
2.× 頻脈ではなく「徐脈」がみられる。血圧が上昇する結果、脈拍60以下の徐脈になることが多い。
4.× 低血糖は、糖尿病にみられやすい。低血糖症状すべてが脊髄損傷の自律神経過反射で見られるとは言えない。特に頻脈など。
5.× 疼痛は四肢ではなく「」に起こる。

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

 

84 多発性筋炎にみられる所見はどれか。

1.蝶形紅斑
2.深部腱反射亢進
3.手袋靴下型感覚障害
4.筋電図での高振幅電位波形
5.血清クレアチンキナーゼ上昇

解答

解説

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

1.× 蝶形紅斑は、頬の両側に蝶が羽を開いたような赤い発疹が出ている状態である。全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)でみられる。
2.× 深部腱反射の亢進がみられる病気としては、痙直型四肢麻痺などにみられやすい。深部腱反射は、骨格筋につながる腱をハンマーなどでたたいた時、筋が不随意に収縮する反射である。筋紡錘が腱の伸びを筋の伸びとして感知したことにより、筋の収縮(緊張)を生み出すことが原因である。単収縮は単一の刺激によって引き起こされる筋収縮である。
3.× 手袋靴下型感覚障害は、糖尿病にみられやすい。糖尿病性神経障害の症状のひとつである。
4.× 筋電図での高振幅電位波形は、Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)である。ちなみに、筋萎縮性側索硬化症でみられるのは、針筋電図にて随意収縮時に高振幅電位、安静時に線維束性収縮電位、筋生検にて筋線維の群集萎縮がみられる。
5.〇 正しい。血清クレアチンキナーゼ(血清CK値)上昇は、多発性筋炎にみられる所見である。なぜなら、多発性筋炎は、膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患であるため。ちなみに、血清クレアチンキナーゼ(血清CK)は、筋肉に多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たしている。したがって、筋肉に障害があると、血液中のクレアチンキナーゼは高値になる。 他にも、急性心筋梗塞や進行性筋ジストロフィーで高い値になる。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

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【PT/OT/共通】多発性筋炎(皮膚筋炎)についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

85 発達評価はどれか。

1.DDSTⅡ
2.K-ABCⅡ
3.WAIS-Ⅲ
4.WISC-Ⅲ
5.WPPISI-Ⅲ(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence-Ⅲ)

解答

解説

1.〇 正しい。DDSTⅡは発達評価である。改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査は、1967年に標準化した「デンバー式発達スクリーニング検査」(略称、DDST)の日本版である。発達検査は時代に即応した改訂が必要であり、1992年にDDSTが改訂されDDSTⅡとなった。それに伴い、日本小児保健学会によってDDSTⅡの標準化が進められ、現在は『改訂日本版デンバー式発達スクリーニング検査』(略称、JDDST-R )が用いられる。
2.× K-ABCⅡ(Kaufman Assessment Battery for ChildrenⅡ:心理・教育アセスメントバッテリー)は、子どもの知的能力を、認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価するものである。K-ABCとの違いは、①継次処理能力、同時処理能力、計画能力、学習能力、流動性推理や結晶性能力など幅広い能力を測定できる。②K-ABCは12歳が上限であったが、K-ABCⅡでは上限が18歳まで延長されている。
3.× WAIS-Ⅲ(Wechsler Adult Intelligence ScaleⅢ:ウェクスラー成人知能検査・改訂版)は、記憶の包括的検査であり、知能の個人内差の診断が可能な成人用個別式検査である。高次脳機能障害の評価として用いられる神経心理学的検査において、①動作性検査(絵画完成、符号、積木模様、行列推理、絵画配列、記号探し、組み合わせ)と②言語性検査(単語、類似、算数、数唱、知識、理解、語音整列)の14項目で構成される検査である。適応年齢16歳0ヶ月~89歳 11か月の偏差IQ(知能指数)を求めることができる。
4.× WISC-Ⅲ(Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition:児童用ウェクスラー式知能検査第3版)は、児童~思春期(5歳以上16歳11か月以下)に用いられる知能検査である。学習障害の評価にも用いられる。
5.× WPPISI-Ⅲ(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence-Ⅲ:読み方ウィプシ・スリー)は、適用範囲が2歳6か月~7歳3か月に用いられる知能検査である。

 

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