第57回(R4) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題86~90】

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86 高齢者の大腿骨近位部骨折について正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.骨転位は稀である。
3.骨頭壊死は生じない。
4.認知症は危険因子である。
5.発生原因は交通事故が最も多い。

解答

解説

大腿骨近位部骨折とは?

大腿骨近位部骨折は頸部骨折・転子部骨折、転子下骨折を含む総称である。高齢者など骨粗鬆症に多い骨折である。閉経後女性ホルモンなどの関係もあり女性に多くみられる。

1.× 男性ではなく「女性」に多い。男女比は1:4との報告がある。
2.× 骨転位は、稀ではなく「多々」ある。骨転位とは、骨折などで骨片が本来の位置からずれた状態にあることをいう。なぜなら、大腿骨近位部骨折は、股関節の回りの大きな筋肉が同時に収縮するため、その力が転位を起こしやすいため。
3.× 骨頭壊死は生じないと一概にいえない。むしろ、大腿骨近位部骨折の頸部骨折は骨頭壊死が生じやすい。なぜなら、大腿骨頭の部分を栄養する血管は主に頚部の表面にあるため。頸部骨折で骨転位の程度が大きいと、血管が破壊されて血液の流れが途切れ骨頭壊死が生じやすい。
4.〇 正しい。認知症は危険因子である。他にも、女性・高齢・低骨密度・既存骨折・低体重あるいは低BMI、飲酒・喫煙・骨折家族歴・ステロイド使用・転倒に関連した因子が危険因子である。
5.× 発生原因は、交通事故ではなく「転倒」が最も多い。高齢者の転倒による骨折として、①大腿骨近位部骨折、②脊椎圧迫骨折、③上腕骨近位部骨折、④橈骨遠位端骨折があげられる。

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87 腰部脊柱管狭窄症で正しいのはどれか。

1.先天発症が多い。
2.内反尖足を生じる。
3.間欠性跛行を生じる。
4.腰椎前屈で症状が増強する。
5.下肢の深部腱反射は亢進する。

解答

解説

腰部脊柱管狭窄症とは?

腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。

1.× 先天発症ではなく「後天発症」が多い。先天発症とは、生まれつき脊柱管が狭いといった生まれつきで発症することである。後天発症とは、椎間板や椎間関節の変性により発症するなどである。加齢も原因と言われ、50・60歳代~70歳代までで多く発症する傾向にある。
2.× 内反尖足ではなく「下垂足」を生じる。しびれや疼痛、脱力などが症状としてあげられる。
3.〇 正しい。間欠性跛行を生じる。間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。閉塞性動脈硬化症などでも見られる。血管が閉塞するため、筋に酸素の供給が困難となる。
4.× 腰椎前屈ではなく「腰椎後屈」症状が増強する。なぜなら、腰椎後屈で脊柱管が狭くなるため。したがって、腰椎前屈では症状が軽減するのが特徴である。
5.× 下肢の深部腱反射は、亢進ではなく「低下」する。一方で、運動・知覚障害は認めないことも多い。神経根障害では圧迫を受けている神経根の支配領域の神経学的欠落症状を認めることが多く、根性疼痛と呼ばれる強い下肢痛を伴うことが多い。

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

88 二分脊椎で正しいのはどれか。

1.髄膜瘤は神経障害を伴う。
2.脊髄係留症候群の好発年齢は2~3歳である。
3.脊髄係留症候群は上肢の感覚障害を伴う。
4.脊髄髄膜瘤ではChiari奇形の合併は稀である。
5.脊髄髄膜瘤では水頭症を合併する。

解答

解説

二分脊椎とは?

二分脊椎とは、神経管閉鎖障害のうち腰仙部の脊髄・脊椎・皮膚などにみられる先天奇形であり、特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。二分脊椎症には①開放性(表面からはっきりわかるもの)と②潜在性(わかりにくいもの)がある。前者には脊髄披裂あるいは脊髄髄膜瘤などが含まれる。

1.× 髄膜瘤は神経障害を伴うとは一概にいえない。脊髄披裂あるいは脊髄髄膜瘤児は、生下時より両下肢の運動・知覚障害、膀胱直腸機能障害などの脊髄・脊髄神経の機能障害を認めることが多いが、これらの症状の重症度は病巣の位置する脊髄レベルとその病理学的変化の程度に依存する。したがって、S2以下に病巣が位置すれば、運動神経や足関節の変形は見られない。
2.× 脊髄係留症候群の好発年齢は、「2~3歳」ではなく学童期や思春期である。転びやすくなる、尿を漏らすようになるなどの症状が出てくることで気が付く。脊髄脂肪腫などの潜在性二分脊椎症に脊髄係留症候群が起こる。生下時には神経機能障害のないことも少なくないが、加齢とともにみられる。ちなみに、脊髄係留症候群とは、脊髄がある場所に係留(引きとどまる)して神経が引き伸ばされることで神経に何らかの障害をきたした状態をいう。
3.× 脊髄係留症候群は、上肢ではなく下肢の感覚障害を伴う。症状としては、排便障害(約70%)、下肢運動障害(約80%)、痛みなどの感覚障害(約80%)がみられる。両下肢の運動障害として、足が動かない(麻痺)、足の変形、左右の足が非対称、足が細いなどがみられる。
4.× 脊髄髄膜瘤ではChiari奇形の合併は、稀ではなく「大いに」ある。特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。
5.〇 正しい。脊髄髄膜瘤では水頭症を合併する。水頭症の3大徴候として、①歩行障害、②尿失禁、③認知症がある。

 

 

 

 

 

89 痛みとして灼熱感を生じるのはどれか。

1.Lhermitte徴候
2.Morleyテスト
3.緊張型頭痛
4.Tinel徴候
5.視床痛

解答

解説

1.× Lhermitte徴候(レルミット徴候)は、頚部屈曲時に感電したような痛み刺すような痛みが、背中から両脚、片方の腕、体の片側へ走ることをいう。多発性硬化症に特徴的な症状であるが、他にも頚髄症、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍なども出現する。
2.× Morleyテスト(モーレイテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛みしびれだるさなどが出現すれば陽性である。
3.× 緊張型頭痛とは、頭の周囲が締め付けられるように痛くなるタイプの頭痛である。一般的な頭痛といえる。
4.× Tinel徴候(チネル徴候)は、手根部や肘部の神経圧迫部位を叩打すると支配領域に放散痛(チクチク感や蟻走感)が生じる現象をいう。これにより神経の損傷部位が特定でき、また、神経の回復状況も把握できる。
5.〇 正しい。視床痛は、痛みとして灼熱感を生じる。視床痛とは、脳血管障害の後遺症であり障害側の上下肢に不快な痛みを伴うような症状の代表例である。この病気は、慢性的であるため患者は抑うつ的な気分になりやすく、リハビリがうまくいかないことが多い。 また、有効な治療法が見つかっていないため、痛みを和らげる治療を続ける。肩手症候群にも起こりやすい。

肩手症候群とは?

肩手症候群は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)の1つと考えられており、脳卒中後片麻痺に合併することが多い。他にも骨折や心臓発作などが誘因となる。症状は、肩の灼熱性疼痛と運動制限、腫脹などを来す。それら症状は、自律神経障害によるものであると考えられている。

第1期:症状が強い時期。
第2期:痛みや腫脹が消失し、皮膚や手の萎縮が著明になる時期。
第3期:手指の拘縮と骨粗懸症が著明になる時期の経過をとる。

治療目的は、①疼痛緩和、②拘縮予防・軽減である。
治療は、①星状神経節ブロック、②ステロイド治療、③アームスリング装着を行う。
リハビリは、①温熱療法、②マッサージ、③関節可動域訓練(自動他動運動)、④巧級動作練習を行う。
『脳卒中治療ガイドライン2009』では、「麻痺の疼痛・可動域制限に対し、可動域訓練は推奨される(グレードB:行うよう勧められる)」としている。

 

 

 

 

90 悪性腫瘍はどれか。

1.下垂体腺腫
2.頭蓋咽頭腫
3.神経鞘腫
4.膠芽腫
5.髄膜腫

解答

解説

1.× 下垂体腺腫は、下垂体前葉由来の良性腫瘍である。トルコ鞍近傍で好発する。下垂体腺腫では、視交叉が圧迫されると視神経の一部が障害され両耳側半盲となる。視力・視野障害の他にも、下垂体前葉機能障害(成長ホルモン低下症状や卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの低下症状など)や視床下部障害(尿崩症)が起こる。
2.× 頭蓋咽頭腫は、良性腫瘍である。トルコ鞍近傍で好発する。頭蓋咽頭腫は、視交叉圧迫による視力障害、下垂体機能低下、視床下部障害などを特徴とする。
3.× 神経鞘腫は、小脳橋角部に最も多い脳腫瘍である。内耳神経に生じる聴神経鞘腫が多く、ほとんど良性腫瘍である。女性にやや多く、初期症状は難聴・耳鳴であり、腫瘍の増大により症状が進行すると、運動失調や歩行障害などの小脳症状や、水頭症による頭蓋内圧亢進症状を呈する。
4.〇 正しい。膠芽腫(グリオブラストーマ)は、悪性腫瘍であり予後が最も悪い。神経膠腫(グリオーマ)の中で成人に最も多く認められる。
5.× 髄膜腫は、最も多い原発性脳腫瘍で全脳腫瘍の27%を占める。皮膜をもつ良性の充実性腫瘍である。ちなみに、充実性腫瘍とは、充実成分(固形成分)でできた腫瘍のことである。液体がたまった「のう胞性腫瘍」が、触るとぶよぶよした感じであるのに対し、「充実性腫瘍」はしこりのような硬さがある。

 

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