第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

31 熱傷部位と背臥位時の肢位の組合せで正しいのはどれか。

1. 前頸部:頸部屈曲
2. 腋窩部:肩外転90°
3. 会陰部:両股関節外旋
4. 膝窩部:膝90°屈曲
5. 足背部:底屈位

解答2

解説

1.× 前頸部は、「頸部屈曲」ではなく頸部伸展で保持する。なぜなら、頸部伸展制限をきたしやすいため。
2.〇 正しい。腋窩部は、肩外転90°で保持する。なぜなら、肩関節外転制限をきたしやすいため。
3.× 会陰部は、「両股関節外旋」ではなく両股関節外転位で保持する。なぜなら、股関節外転制限をきたしやすいため。
4.× 膝窩部は、「膝90°屈曲」ではなく膝関節伸展位で保持する。なぜなら、膝関節伸展制限をきたしやすいため。
5.× 足背部は、「底屈位」ではなく足関節背屈もしくは底背屈0°で保持する。なぜなら、背臥位では足関節背屈制限をきたしやすいため。

 

詳しく勉強したい方はこちら↓

【PT/OT/共通】熱傷についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

 

32 高齢者の身体機能評価結果で転倒リスクが最も高いのはどれか。

1. 膝関節90°屈曲位等尺性伸展筋力:20 kgf
2. Timed Up and Go Test<TUG> :20秒
3. Berg Balance Scale<BBS> :23点
4. 片脚立位テスト<開眼>:60秒
5. Functional reach test:30 cm

解答2

解説

1.× 膝関節90°屈曲位等尺性伸展筋力の20kgfより他の選択肢に転倒リスクが高いものがある。カットオフ値は1.2Nm/kgである。仮に、体重60kgと単位をkgfとすると、約7.3kgfに換算される。ちなみに、膝関節90°屈曲位等尺性伸展筋力は、Hand Held Dynamomeater (HDD)を用いて測定されることが多い。
2.〇 正しい。Timed Up and Go Test<TUG> の20秒は、選択肢の中から転倒リスクが最も高い。TUGのカットオフ値は13.5秒である。TUGの時間は、延長すればするほど、転倒のリスクが高まる。Timed Up and Go Test (TUG)の方法は、椅子から3mはなれたところにコーンなどを置き、被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って再び椅子に戻るまでの時間を測定する。
3.× Berg Balance Scale<BBS> (=Functional Balance Scale<FBS>)の23点より他の選択肢に転倒リスクが高いものがある。カットオフ値は、①良好なバランス能力(41~56点)、②許容範囲のバランス能力(21~40点)、③バランス障害あり(0~20点)と評価する。Berg Balance Scale<BBS> (=Functional Balance Scale<FBS>は、14項目を0~4点の5段階で評価 (56点満点)し、得点が高いほどバランス機能良好である
4.× 片脚立位テスト<開眼>の60秒より他の選択肢に転倒リスクが高いものがある。カットオフ値は、15秒未満を運動器不安定症の基準としている(日本整形外科学会)。
5.× Functional reach testの30cmより他の選択肢に転倒リスクが高いものがある。Functional reach testは、前方への重心移動域を上肢の移動距離として測定する。カットオフ値は、①脳卒中片麻痺:15cm、②Parkinson病:31cmなど疾患によって異なるが、30cmまでバランスが保てていれば転倒のリスクは低い。

 

 

 

 

 

 

33 仙骨部の褥瘡予防で適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 円座を使用する。
2. 除圧動作を指導する。
3. 長時間車椅子に座る。
4. 保湿クリームを塗布する。
5. フットサポートを通常よりも高くする。

解答2・4

解説

褥瘡の予防

①一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
②30°側臥位では体圧を分散させ身体を支えることができる。
③ベッドのキャッチアップは30°まで。
④予防にマッサージは効果的。ただし、骨突出部・突起部や発赤があるところには(摩擦を加えてしまうため)行わない。
⑤円座は接触部分が逆に圧迫されてしまい褥瘡の誘因となる。

1.× 円座の使用は褥瘡予防とならない。むしろ、円座は、患部周囲を圧迫し、阻血されるため褥瘡リスクが高まる。圧迫の分散のため全面接地が基本となる
2.〇 正しい。除圧動作を指導する。なぜなら、除圧動作は、圧迫を分散でき褥瘡予防となるため。
3.× 長時間の車椅子座位は褥瘡予防とならない。むしろ、長時間の車椅子座位は仙骨部が圧迫されるため褥瘡が発生しやすい。一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
4.〇 正しい。保湿クリームを塗布する。なぜなら、乾燥は褥瘡の要因の一つとされているため。尿・便失禁がある場合の褥瘡予防ケアとして、洗浄剤による洗浄後に、肛門・外陰部から周囲皮膚へ皮膚保護のためのクリーム等の塗布を行ってもよいとしている(褥瘡予防・管理ガイドライン第4版)。
5.× フットサポートを通常よりも高くするのは褥瘡予防とならない。むしろ、フットサポートを高くすることで、より仙骨部が圧迫されるため褥瘡が発生しやすい。

 

 

 

 

 

 

 

34 病態と治療法の組合せで正しいのはどれか。

1. 半側空間無視:遮断除去法
2. 遂行機能障害:自己教示法
3. 注意障害:間隔伸張法
4. 記憶障害:視覚走査法
5. 失語症:PQRST法

解答2

解説

1.× 遮断除去法は、「半側空間無視」ではなく失語症である。遮断除去法は、Weiglによって提唱されたもので、ブロックされたものを解除するという考え方の治療法である。失語症者は、それぞれの言語モダリティ(言語理解・呼称・復唱・音読・書字など)で成績が異なることがよくある。良好なモダリティで反応させた後はそれまで正答できなかった言語モダリティで正答することがあり、これを「ディブロッキング(遮断除去)現象」とよびこれを利用している。例えば、音読は比較的良好にできるが聴理解が悪い場合に、前刺激としてカードに書かれた文字を提示し音読したあとに聴理解の刺激を与えると反応に改善がみられるといったものである。
2.〇 正しい。自己教示法は、遂行機能障害に適応である。自己教示法は、認知行動療法の一つである。恐怖やネガティブな感情が湧出した際に、実際に声を出して、あるいは心の中で「リラックスしよう」「心配ない」などの言葉を自分自身にかける。自らの言葉で自分自身に教示を与えることで、それが刺激となって自分の行動を変容させる方法である。遂行機能障害に対しても適応であり、解決方法や計画の立て方を一緒に考える。
3.× 間隔伸張(長)法は、「注意障害」ではなく認知症である。記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして、記憶を保持する期間を伸ばしていくことを目的とする手法である。
4.× 視覚走査法は、「記憶障害」ではなく半側空間無視である。視覚探索練習にて用いられる方法で右側から左側へ注意を誘導しながら、対象を認知できるようにしていく方法である。
5.× PQRST法は、「失語症」ではなく記憶障害である。5段階を経て覚えていくそれぞれ頭文字をとっており、①Preview:提示された文章全体からキーワードを抜き出す 、 ②Question:そのキーワードが答えとなる質問をつくる、 ③Read:質問に答えるために熟読する 、①Self-Recitation:読み終えた情報を能動的に覚える 、 ⑤Test:文章の内容(記憶)をテストする。※Sは、「States (要約)」と示している場合がある。

 

 

 

 

 

 

 

35 生活行為向上マネジメントで正しいのはどれか。

1. アメリカで開発された評価法である。
2. 作業療法士の臨床思考過程を分析して開発された。
3. 心身機能の回復に関するプログラムは含まれない。
4. 作業療法士が重要と判断した作業に焦点を当てアセスメントする。
5. アセスメント項目に心身機能・身体構造に関する予後予測は含まれない。

解答2

解説

生活行為向上マネジメントとは?

MTDLP(Management Tool for Daily Life Performance:生活行為向上マネジメント)は、患者が本来もっている能力を引き出し、患者にとって意味のある在宅生活(生活行為)でその能力を生かせるように支援するためのツールである。

1.× 「アメリカ」ではなく、日本作業療法士協会で開発された評価法である。
2.〇 正しい。作業療法士の臨床思考過程を分析して開発された。患者が本来もっている能力を引き出し、患者にとって意味のある在宅生活(生活行為)でその能力を生かせるように支援するためのツールである。
3.× 心身機能の回復に関するプログラムも含まれる。生活行為とは日常生活に関わるすべての行為をいい、心身機能は日常生活を送るうえで重要な因子である。
4.× 「作業療法士」ではなく、本人が重要と判断した作業に焦点を当てアセスメントする。また本人だけでなく、家族・支援者の連携が重要である。
5.× アセスメント項目に心身機能・身体構造に関する予後予測も含まれる。8つのシートで構成される。3つのメインシート(生活行為聞き取りシート、生活行為向上マネジメントシート、生活行為申し送り表)と生活行為向上マネジメントシートを構成する2つのサブシート(生活行為アセスメント演習シート、生活行為向上プラン演習シート)の他に3つのシート(興味・関心チェックシート、生活行為課題分析シート、医療への申し送り表)がある。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)