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次の文により15、16の問いに答えよ。
45歳の女性。3日前、自宅で荷物を持ち上げた際に、腰部と左下腿の後面から足背外側部にかけての強い痛みがあった。安静にしていたが、疼痛が軽快しないため受診し、腰椎椎間板ヘルニアと診断された。
16 発症から2か月が経過し、足背外側部の疼痛と安静時の腰痛は改善したが、労作時に軽度の腰痛が続いているため再度受診した。
理学療法として適切でないのはどれか。
1.TENS
2.ホットパック
3.Williams型装具の装着
4.体幹筋群の筋力トレーニング
5.ハムストリングスのストレッチング
解答3
解説
1.〇 TENS(経皮的末梢神経電気刺激法)は、電気刺激により疼痛軽減の効果(ゲートコントロール理論)が期待できる。
2.〇 ホットパックは、腰部の血流循環改善(温熱効果)により疼痛軽減の効果が期待できる。
3.× 誤っている。なぜなら、Williams型装具(ウィリアムス型)の装着は、腰仙椎の過度な後屈および側屈を制限する目的で使用するため。腰椎ヘルニアの場合は、前傾を制限し、髄核が後方へ突出しないようにする必要がある。
4.〇 体幹筋群の筋力トレーニングは、椎間板ヘルニアの症例に適応である。なぜなら、体幹筋群の筋力トレーニングは腹圧を高められ、さらに体幹を安定させる効果があるため。
5.〇 ハムストリングスのストレッチングは、ハムストリングスの伸張により、骨盤後傾(腰仙椎の後弯)の改善ができるため適切である。
Williams体操の目的は、腰痛症に対して腰部の負担を軽減すること。方法として、腹筋・大殿筋・ハムストリングス・背筋群のストレッチングを行う。
17 52歳の女性。起床時の頭痛と嘔気を主訴に脳神経外科を受診した。頭部造影MRI T1強調像を下図に示す。
頭蓋内腫瘍摘出術が予定されており、術前より理学療法が依頼された。
神経症候として認める可能性が最も低いのはどれか。
1.失語
2.拮抗失行
3.情緒障害
4.注意障害
5.遂行機能障害
解答2
解説
本症例の障害部位は、左(優位半球)前頭葉に腫瘍を認められる。
【優位半球障害の主症状】
・失語
・失読
・ゲルストマン症候群(失算、失書、手指失認、左右失認)
・失行
【前頭葉障害の主症状】
・遂行機能障害
・易疲労性
・意欲・発動性の低下
・脱抑制・易怒性
・注意障害
・非流暢性失語
1.〇 失語は優位半球障害時に出現する。主に、運動性失語(ブローカ失語)がみられる。
2.× 拮抗失行は、脳梁損傷や頭頂葉の萎縮により生じる。拮抗失行とは、右手または両手の意図的な動作に対して、左手が目的と反対の動作や無関係な動作を行なってしまう現象である。
3~5.〇 情緒障害/注意障害/遂行機能障害は、前頭葉障害の主な症状の一つであるため当てはまる。
18 45歳の女性。遠位型ミオパチー。下肢筋力低下が徐々に進行し両側の下垂足を認める。最近つまずいて転倒することや捻挫することが多くなり装具を検討し歩行の改善を目指すことになった。下肢筋力を表に示す。
最も適切な装具はどれか。
1.PTB短下肢装具
2.足関節軟性装具
3.スウェーデン式膝装具
4.金属支柱付き長下肢装具
5.プラスチック短下肢装具
解答5
解説
ミオパチーとは、筋肉の疾患を総称した言葉である。遺伝的な原因で起こるものとして、2種類あり、①先天性ミオパチー(筋肉の病理像に特徴的がある)、②代謝性ミオパチー(なんらかの代謝の障害によって起こる)がある。 甲状腺や副腎などの内分泌の疾患によって発症するミオパチーも存在する。
本症例の特徴として、筋力低下による下垂足がある。それによる捻挫を繰り返しているということから、下垂足を改善するための装具を選ぶ必要があると考える。
1.× PTB短下肢装具は、膝蓋靭帯部で体重を支持する免荷装具である。下腿・足部の骨折術後など免荷が必要な時に使用する。
2.× 足関節軟性装具は、ゴム紐を用いて足関節を背屈位に保つものであるが、補助程度の効果しか得られない。本症例は、足関節の筋力MMT1であるため優先度は低い。
3.× スウェーデン式膝装具は、反張膝を矯正する膝装具である。本症例の下垂足の改善には効果が低い。
4.× 金属支柱付き長下肢装具は、様々な種類があるが主に股・膝関節のコントロール不良な重度麻痺患者に用いられる。本症例の下垂足の改善に対しては、短下肢装具での対応が望ましい。
5.〇 正しい。プラスチック短下肢装具は、下垂足に適応がある。また、下肢全体の筋力低下を呈していても軽量であるため使用できる。
足関節軟性装具は、足関節の内外反を制御する軟性装具である。短下肢装具よりも支持性は低い。軟性の生地にプラスチックや金属の補強が付いたものもあり、一般的に足関節装具に分類される。
19 呼吸機能検査、血液ガス検査の結果を示す。
この結果の解釈として正しいのはどれか。2つ選べ。
1.気道狭窄
2.肺胞低換気
3.呼吸性アルカローシス
4.拡散障害による高二酸化炭素血症
5.肺コンプライアンスの低下による拘束性換気障害
解答3・5
解説
【呼吸機能検査】
・%VC(%肺活量):基準値80%以上
・FEV1%(1秒率):基準値70%以上
本症例の%VCは低値(54%)であり、%FEV1は基準値内(82%)である。このことから、拘束性換気障害の疑いがある。
【肺コンプライアンス(肺の柔らかさ。膨らみやすさ)】
静的肺コンプライアンスとは、気流が存在しない状態での肺の膨らみやすさを表現する。
動的肺コンプライアンスとは、気流が存在する状態における値で、気道抵抗の状態も含まれる。
本症例は、静的肺コンプライアンスが低値(0.09L/cmH2O)で基準値を下回っており、肺が膨らみにくくなっている。このことからも拘束性換気障害が疑われる。
【血液ガス基準値】
・pH:7.4 ± 0.05
・PaCO2 : 35~45 torr (mmHg)
・PaO2:80~100 torr (mmHg)
・HCO3−:24 ± 2mEq/L
※ PaCO2:肺胞換気量の指標である。高値であれば、肺胞換気量は不十分。低値であれば、過剰換気状態となる。
本症例は
・pH:7.4 ± 0.05 → 7.48(やや高値)アルカローシス状態である。
・PaCO2:35~45 torr (mmHg) →32Torr(やや低値)
・PaO2:90~95 torr (mmHg) →66Torr(低値)I型呼吸不全である。
・HCO3−:24 ± 2mEq/l →23.0mEq/l(正常)→呼吸性アルカローシスと考えられる。
1.× 気道狭窄は、閉塞性換気障害である。
2.× 肺胞低換気は、PaCO2が上昇するのが一般的である。つまり、PaCO2:45 torr (mmHg)以上の高値(Ⅱ型呼吸不全)を示す。
3.〇 正しい。本症例の血液ガス検査を参照すると、呼吸性アルカローシスを呈している。
4.× 拡散障害による高二酸化炭素血症ではない。なぜなら、本症例のPaCO2の値は低値であるため。拡散障害とは、肺に取り込まれたO2が肺胞から血液へ移動し、赤血球のヘモグロビンに結合する経路で病変や異常が生じることである。つまり、O2の拡散が障害され、低酸素血症を示す。
5.〇 正しい。呼吸機能検査を参照すると、肺コンプライアンスの低下による拘束性換気障害が疑われる。
肺に取り込まれたO2は、拡散によって「肺胞上皮→基底膜→間質→毛細血管内皮→血漿→赤血球膜」を通過し、ヘモグロビンと結合する。このときの拡散のしやすさを拡散能力 (DL)という。
拡散経路のうちどこかに異常があると O2 は拡散しにくくなることを「拡散障害」という。結果、低酸素血症が生じる。
ちなみに、通常CO2の拡散障害は生じない。なぜならCO2は、O2よりも約20倍の速さで拡散するため。
(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)
混合性換気障害:肺気腫など
拘束性換気障害:肺結核、肺線維症など
閉塞性換気障害:気管支喘息、気管支拡張症など
20 68歳の男性。2型糖尿病、脂質異常症。身長160cm、体重85.0kg、体脂肪率38%。血液検査は、HbA1c8.2%、空腹時血糖145mg/dL。仕事は管理職、デスクワーク中心で一日の歩数は3,550歩(同年代歩数7,157歩)。筋力低下、感覚障害、関節可動域制限は認めない。
運動療法で誤っているのはどれか。
1.食事の1時間後に実施する。
2.筋力増強運動は週2~3回行う。
3.身体活動量増加のための生活指導を行う。
4.有酸素運動は1回10分、週に合計40分程度行う。
5.有酸素運動の運動強度は最大酸素摂取量の50%程度とする。
解答4
解説
1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。
①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。
【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)
【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。
(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)
1.〇 正しい。食事の1〜2時間後に実施する。なぜなら、血糖値の上昇は食後1~2時間後にピークとなり、血糖値の急激な降下を防ぐことができるため。
2.〇 正しい。筋力増強運動は週2~4回の運動で効果が得られる。有酸素運動と並行して行っていくことが勧められる。
3.〇 正しい。身体活動量増加のための生活指導を行う。なぜなら、本症例はデスクワークが中心の仕事であり、同年代の運動量に比べ少ないため。継続できる運動の指導が必要であることが考えられる。
4.× 誤っている。有酸素運動は、「1回10分、週に合計40分程度」ではなく、1回20〜30分以上(週に合計1時間~2時間)が望ましい。また、厚生労働省の「標準的な運動プログラム」では、2型糖尿病の場合、中等度(50~70%最高心拍数)の運動を1回20~60分、週3~5回実施することを推奨している。
5.〇 正しい。有酸素運動の運動強度は、最大酸素摂取量の40~60%程度とする。なぜなら、その運動強度が、無酸素性代謝閾値(AT)前後にあたるため。軽い運動から運動の強さが徐々に増していくとき、有酸素運動から無酸素運動に切り替わる転換点となる運動強度のレベルのことである。