第56回(R3) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題76~80】

 

76 急性炎症と比較した場合の慢性炎症の特徴はどれか。

1.局所の浮腫
2.白血球の集積
3.フィブリン析出
4.毛細血管の退縮
5.血管透過性の亢進

解答

解説

急性炎症(数分~3週間まで)の5大徴候:①腫脹、②発赤、③熱感、④疼痛、⑤機能障害。
急性炎症が長引いたものを慢性炎症という。慢性炎症(4週間以上経過後)の特徴として、血管形成や線維化・瘢痕形成などが挙げられる。

1.× 局所の浮腫は、急性炎症で生じる。急性炎症が起こると通常より透過性が高くなり、組織内のタンパク質濃度が高くなる。その結果、炎症が引き起こす血管からのリンパ生成の過剰(組織への蛋白拡散と液性滲出)によって浮腫が生じる。
2.× 白血球の集積は、急性炎症で生じる。好中球が放出した酵素の作用により、白血球の集積・疼痛を引き起こす。局所の血液量が増加し、血漿および白血球が血管外へと移動し、組織に浸潤する。
3.× フィブリン析出は、急性炎症で生じる。フィブリン析出は、創傷治癒の急性期に欠損部位を修復するために生じるものである。フィブリン(繊維素)が血球等と凝血塊を形成することで創部を止血し、瘢痕組織を形成していく。出血を伴うこともあり、破壊性の強い炎症である。
4.〇 正しい。毛細血管の退縮は、慢性炎症の特徴である。急性炎症では、毛細血管が拡張し血流が増加するが、急性期を脱して慢性炎症へと移行する頃には血管の退縮が生じる。血管の退縮とは、器官が縮小あるいは通常の容積に戻ることである。肉芽組織の毛細血管網は退縮し、瘢痕組織(膠原線維性組織)へと置き換わる。
5.× 血管透過性の亢進は、急性炎症で生じる。血管の透過性亢進によってタンパク質に富んだ液体が血管外に染み出すことで局所の浮腫が起こる。

慢性炎症の特徴

慢性炎症の背景は、自己免疫、急性炎症からの移行、微生物の細胞内持続感染がある。
【特徴】
①大食細胞やリンパ球および形質細胞などの浸潤
②炎症細胞の浸潤による組織破壊
③新生血管の増生を含む修復と線維化・瘢痕形成
線維化とは、実際には線維芽細胞の増殖と過剰な細胞外基質の貯蓄のことである。
線維化は、多くの慢性炎症性疾患に共通する所見であり、臓器の機能障害の重要な原因である。

 

 

 

 

 

 

77 痙縮の治療に用いられるボツリヌス毒素の作用部位はどれか。

1.筋小胞体
2.脊髄前角
3.脊髄前根
4.運動神経終末
5.脊髄後根神経節

解答

解説

ボツリヌス毒素は、神経筋接合部における運動神経終末内でアセチルコリンの放出を抑えることで、神経-筋間の伝達を阻害し、筋弛緩作用を発現する。ボツリヌスによって抑えられた神経は、新たな神経枝を伸ばすことが可能なため、筋弛緩作用は数ヶ月で消失する。したがって、選択肢4.運動神経終末が正しい。運動神経終末は、アセチルコリンの受け渡しによって筋収縮を司る。

1.× 筋小胞体は、筋肉内に存在する膜系の構造物である。活動電位が細胞内に伝わってきた際に、カルシウムイオンを含んだ筋がイオンを放出することで筋を収縮させる。
2.× 脊髄前角には、運動ニューロンの神経細胞体が集合している。上位運動ニューロンから下位運動ニューロンへの乗り換えが起こる。
3.× 脊髄前根は、脊髄神経根のうち遠心性の運動神経根のことである。つまり、下位運動ニューロンの通り道となる。
5.× 脊髄後根神経節は、脊髄神経後根にある神経節で、末梢から中枢への感覚情報伝達の中継点の役割を持つ。つまり、求心性線維で構成され、一次感覚ニューロンの通り道である。

痙縮とは?

痙縮は、錐体路の上位運動ニューロン障害による損傷高位以下の脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)の活動性が亢進し、麻痺筋の筋紡錘からの求心性刺激が増強することによって生じる。その結果、意思とは関係なく筋肉の緊張が高まり、手や足が勝手につっぱったり曲がってしまったりしてしまう状態となる。このため、前角細胞以下の障害では痙縮は出現しない。脳卒中の後遺症として起こる痙縮の治療にはボツリヌス毒素が用いられる。ボツリヌス毒素が神経終末の受容体に結合することで、アセチルコリンの放出を阻害し、アセチルコリンを介した筋収縮および発汗が阻害される。

 

 

 

 

 

 

78 抗コリン薬の作用で生じにくいのはどれか。

1.尿閉
2.便秘
3.流涎
4.せん妄
5.めまい

解答

解説

抗コリン薬とは?

抗コリン薬は、アセチルコリンの働きを抑えて副交感神経を抑制し、交感神経を優位にする働きを持つ。なぜなら、ムスカリン受容体を遮断するため。ちなみに、前立腺肥大症に、抗コリン薬を使用は禁忌である。なぜなら、交感神経系が緊張状態となり、尿閉を悪化させるため。適応疾患として、過敏性腸症候群、胃十二指腸潰瘍、気管支喘息、肺気腫パーキンソン病などに用いられる。

1.〇 尿閉は、交感神経亢進による作用である。ちなみに、前立腺肥大症に、抗コリン薬を使用は禁忌である。なぜなら、交感神経系が緊張状態となり、尿閉を悪化させるため。
2.〇 便秘は、消化管の蠕動運動が抑えること(交感神経亢進)によって生じる。さらなる便秘を助長することになる。
3.× 生じにくい。流涎(りゅうぜん:よだれのこと)は、唾液分泌過多(副交感神経優位)や閉口障害、嚥下障害で生じやすい。反対に、口渇が抗コリン薬を使用すると生じやすい。
4.〇 せん妄は、中枢性の抗コリン作用の影響で生じる。せん妄とは、高齢者に多く発症する一種の意識精神障害であり、症状として「突然暴れだす、攻撃的になる(交感神経亢進)」などである。高齢者の場合、眠気に加え、精神状態(認知機能障害やせん妄など)が生じやすい。そのほかのせん妄を起こす原因として、抗精神病薬の多剤併用やアルコール依存症などがある。
5.〇 めまいや頭痛が精神症状系の副作用の1つとして現れることがある。中枢神経系のムスカリン受容体を遮断するため、中枢神経系が抑制されるためめまいが生じやすい。

 

 

 

 

 

 

79 障害受容に至る5つの過程において、一般的に2番目に現れるのはどれか。

1.混乱期
2.受容期
3.否認期
4.ショック期
5.解決への努力期

解答

解説

障害受容の過程とは?

障害受容の過程は、「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期(再起)→受容期」の順に現れる。5段階のプロセスは順序通りに進むわけはなく、また障害受容に至らない障害者も存在する。

①ショック期:感情が鈍磨した状態
②否認期:現実に起こった障害を否認する
③混乱期:攻撃的あるいは自責的な時期
④解決への努力期(再起):自己の努力を始める時期
⑤受容期:新しい価値観や生きがいを感じる時期

1.× 混乱期は、「あの時違う行動をとっていれば良かった」など、後悔や自責的な発言がみられる。
2.× 受容期は、「障害を認めてこれからも生きていこう」と前向きな感情が湧いてくる時期である。
3.〇 正しい。否認期は、障害受容に至る5つの過程において、一般的に2番目に現れる。否認期は、「障害を負ったことを認めたくない」という時期である。
4.× ショック期は、急な病気や障害に対して感情が鈍麻し、思考が鈍る時期である。
5.× 解決への努力期(再起)は、今後の生活を考え、自己の努力を始める時期である。

 

 

 

 

 

 

80 防衛機制として誤っているのはどれか。

1.転移
2.抑圧
3.合理化
4.反動形成
5.スプリッティング

解答

解説

防衛機制とは?

防衛機制とは、自分自身が不安や苦痛を感じないように、それらを生じさせるような情動や欲望を無意識の領域に押し込めて精神の安定化を図るような心の働きをいう。

1.× 誤っている。「転移」は、精神分析療法に関する概念である。転移とは、患者のこれまでの人生の中の重要人物に対する感情を治療者に向けることをいう。好ましい感情を抱くことを陽性転移、ネガティブな感情を抱くことを陰性転移という。
2.〇 「抑圧」は、認めたくない自己の欲求を無意識のうちに抑えつけてしまう防衛機制である。
3.〇 「合理化」は、欲求が満たされないときに無理矢理にでも理由をつけてその事象に対処しようとする防衛機制である。
4.〇 「反動形成」は、満たされない欲求を対照的な欲動によって打ち消す防衛機制である。
5.〇 「スプリッティング(分裂)」は、満たされない欲求と出会ったときに、自分の願いを満たしてくれる相手や状況のみを善、自分の願いに反するものを悪として、多角的に物事を判断しようとせずに単純化することで対処しようとする防衛機制である。

スプリッティング(分裂)とは?

 スプリッティング(分裂)とは、自己や対象(相手)の悪い面が良い面を滅ぼしてしまうという非現実的な恐れから、良い面と悪い面を別のものとして分けて考えることである。さらに、自己の悪い面を対象のものとして投げてしまうことを「投影(投射)」という。投射の例として、「父が嫌っている」という自分の感情を抑えて、「父が自分を嫌っている」と思い込むことである。

 

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