第56回(R3) 理学療法士/作業療法士 共通問題解説【午後問題66~70】

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66 体温について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.高齢者は小児よりも高い。
2.直腸温は腋窩温よりも低い。
3.体温調節中枢は小脳にある。
4.午前よりも午後にかけて高くなる。
5.基礎体温は早朝覚醒安静時の体温である。

解答4・5

解説
1.× 高齢者は小児よりも低い。なぜなら、小児は体温調整機構が未熟で外気温に左右されやすく、新陳代謝が活発であるため。10歳ころより、体温調整機構は成人とほぼ同じになる。一方、高齢者は、温度刺激に対する中枢の反応閾値が高く、皮膚温の変化に対する感受性も低くなっている。
2.× 直腸温は、腋窩温よりも高い。なぜなら、直腸は体の中心部に近いため。「直腸温>口腔温>腋窩温」の順に高い。
3.× 体温調節中枢は、「小脳」ではなく視床下部(間脳)にある。視床下部は、行動・本能の中枢でもあり、体温調整、下垂体ホルモンの調整、摂食行動、飲水行動、性行動、睡眠などを司る。
4.〇 正しい。体温は、午前よりも午後にかけて高くなる日内変動がみられる。
5.〇 正しい。基礎体温は、早朝覚醒安静時の体温である。基礎体温とは、朝の覚醒状態の安静状態で、口腔内舌下にて測った体温のことをいう。

 

 

 

 

 

 

67 卵巣について正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.重量は成人で約50gである。
2.実質は皮質と髄質に分けられる。
3.卵胞が成熟すると卵巣腔をもつ。
4.原始卵胞は新生児期に約1万個存在する。
5.排卵後の黄体からエストロゲンが産生される。

解答2・5(複数の選択肢を正解として採点する。)
理由:複数の正解があるため。

解説
1.× 重量は成人で、「約50g」ではなく約14g(一つ当たり)である。卵巣は子宮の左右に一つずつあり、大きさは約2〜3cmほどであり、扁平な母指頭大の楕円体である。子宮のやや後方に位置しており、卵子を貯蔵する役割を持つ。
2.〇 正しい。卵巣の実質は、皮質(外側にある白色)と髄質(灰白色の髄質:血管帯)に分けられる。
3.× 卵胞が成熟すると、「卵巣腔」ではなく卵胞腔を持つ(二次卵胞〜成熟卵胞)。卵胞腔の中は卵胞液で満たされており、卵胞液の増加に伴って成熟卵胞は卵巣表面に膨隆する。ちなみに、卵巣腔ができると、卵巣嚢胞(卵巣腫瘍)という婦人科腫瘍の一つであり、子宮筋腫と同じく最も発生頻度が高い腫瘍である。
4.× 原始卵胞は新生児期には、「約1万個」ではなく約200万個存在する。ちなみに、胎生期には600万個存在する。原始卵胞は、胎生期につくられると出生後新たに産生されることはなく、排卵や閉鎖卵胞になることによって減少していく。したがって、月経が始まるまでに約180万個が消失し、思春期・生殖年齢に達すると約20〜30万個まで減少する。
5.〇 正しい。排卵後の黄体からエストロゲンが産生される。排卵後の卵胞は黄体となり、プロゲステロンとエストロゲンを産生・分泌する。プロゲステロンは厚くなった子宮内膜を、さらに受精卵が着床しやすい状態にする。

 

 

 

 

 

68 水溶性ホルモンはどれか。2つ選べ。

1.エストロゲン
2.グルカゴン
3.コルチゾール
4.サイロキシン
5.バゾプレッシン

解答2・5

解説

水溶性ホルモンとは?

ホルモンには、脂溶性と水溶性がある。脂性ホルモンは、①副腎皮質ホルモン、②性ホルモン、③甲状腺ホルモンである。それ以外は水溶性ホルモンと覚えるとよい。

【水溶性ホルモンの特徴】
水溶性ホルモンの多くは視床下部、脳下垂体、膵臓、副甲状腺から分泌される。
水溶性ホルモンは細胞膜を通過できないため、その受容体は細胞の外側、細胞膜表面に存在する。
視床下部から、①成長ホルモン放出ホルモン、②甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、③ゴナドトロピン放出ホルモンなど。
脳下垂体から、①成長ホルモン、②甲状腺刺激ホルモン、③プロラクチン、④副腎皮質刺激ホルモン、⑤黄体形成ホルモン、⑥卵胞刺激ホルモン、⑦バソプレシン、⑧オキシトシン。
膵臓から、①インスリン、②グルカゴン
副甲状腺から、副甲状腺ホルモン(パラソルモン)である。

1.× エストロゲン(性ホルモン)は、卵巣から分泌される。卵胞の発育、排卵を起こさせる作用がある。
2.〇 正しい。グルカゴンは、膵臓から分泌される水溶性ホルモンである。血糖を上昇させる作用がある。
3.× コルチゾールは、副腎皮質から分泌される。血圧調節、免疫抑制、糖新生促進作用がある。
4.× サイロキシンは、甲状腺から分泌される。代謝亢進作用がある。
5.〇 正しい。バゾプレッシンは、下垂体後葉から分泌される水溶性ホルモンである。抗利尿作用がある。

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69 身体活動のエネルギー代謝で誤っているのはどれか。

1.20分以上の有酸素運動では脂質より糖質が利用される。
2.筋収縮エネルギーとしてATPが利用される。
3.無酸素性閾値は心肺負荷試験で算出できる。
4.最大酸素摂取量は運動持久力を反映する。
5.グリコーゲンの解糖により乳酸を生じる。

解答

解説

無酸素性閾値(AT)とは?

無酸素性閾値(AT)とは、連続的に酸素摂取量と二酸化炭素排出量の変化を見たとき、酸素摂取量増加量に比べて二酸化炭素摂取量の増加度が急激になり始める点のことである

1.× 逆である。20分以上の有酸素運動では、糖質に代わって脂質の消費率が高まる。長時間の運動では、有酸素系によりエネルギーが供給される。筋収縮のATPの供給方法は、①クレアチンリン酸、②嫌気的解糖、③酸化的リン酸化である。
2.〇 筋収縮エネルギーとして、ATPが利用される。ATPを分解した際のエネルギーを利用して骨格筋の筋収縮が行われる。有酸素系エネルギー代謝によって大量のATPが産生される。
3.〇 無酸素性閾値は、心肺負荷試験で算出できる。無酸素性閾値(AT)は、運動強度の増加によって酸素の供給が追いつかず、解糖系のエネルギー産生へと転換する地点を表す。運動強度の限界点としても捉えられるため、運動耐容能を示す指標にもなる。心配運動負荷試験は、至適運動強度の設定や無酸素性閾値(AT)を求めることに用いられる。
4.〇 最大酸素摂取量は、運動持久力を反映する。なぜなら、体内に取り込める酸素量が多い(最大酸素摂取量の増加)ほど、エネルギー産生量も多くなり、より長く運動を続けることができるため。ちなみに、最大酸素摂取量とは、1分間に体重1㎏当たりに取り込むことができる酸素量である。
5.〇 グリコーゲンの解糖により、乳酸を生じる。解糖系のエネルギー酸性では、筋肉に蓄えられたグリコーゲンが「ピルビン酸→乳酸」へと変換される。これは、嫌気的条件下(酸素不要)で行われるため、嫌気的代謝(嫌気的解糖)とよばれる。

 

 

 

 

 

 

70 肩関節外転150°の時の肩甲上腕関節外転角度で正しいのはどれか。

1.40°
2.60°
3.80°
4.100°
5.120°

解答

解説

肩関節を外転させていく際の肩甲上腕リズムの比率は「肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1」である。
150°外転の場合は、150 × 2/3(2:1)= 100となるため、肩甲上腕関節が100°、肩甲胸郭関節が50°となる。

したがって、選択肢4.100°が正しい。

肩甲上腕リズムとは?

肩甲上腕リズムは、1944年にInmanらが初めて提唱し、以来様々な研究で検証され、現在においても上腕骨と肩甲骨の運動における基準である。肩関節外転は、肩甲上腕関節のみでは外転90~120°までしかできない。これは肩峰と鳥口肩峰靭帯によって阻害されるためである。さらなる外転位をとるには、肩甲骨・鎖骨を動かすことにより可能となる。上腕骨の外転と肩甲骨の動きを合わせて肩甲上腕リズムという。肩関節を外転させていく際の肩甲上腕リズムの比率は「肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1」である。

 

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