第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午前問題91~95】

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91 肺塞栓症について誤っているのはどれか。

1.肥満が誘因となる。
2.長期臥床が誘因となる。
3.心電図所見は非特異的である。
4.下肢よりも上肢の手術後に多い。
5.深部静脈血栓症との合併が多い。

解答
解説

MEMO

肺塞栓症とは、肺動脈に血栓が詰まる病気のこと。血栓の9割以上は脚の静脈内にでき、この血栓を「深部静脈血栓症」といい、それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となる。肺塞栓症と深部静脈血栓症は、極めて関係が深い病気で、二つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれる。深部静脈血栓症患者の約50%は潜在性の肺塞栓症を有し、肺塞栓症患者の30%以上は証明可能な深部静脈血栓症患者を有すると報告されている。

1~2.〇 正しい。肥満長期臥床が誘因となる。下記に【肺塞栓症の要因】を挙げたので参考にしてください
3.〇 正しい。心電図所見は非特異的である。特異的とは、あるものだけにみられる質的な特殊さという意味である。したがって、非特異的とは、心電図検査で異常が認められるが、心電図の検査では肺塞栓症であると断定できないという意味である。選択肢「心電図所見は非特異的である」という文章を分かりやすく言い換えると「肺塞栓症の心電図所見は、特殊になりやすいが、病名の断定や診断はできない」ということである。肺塞栓症の心電図では、陰性T波、洞性頻脈などがみられるが、これらは右心負荷所見であり、肺塞栓症に特異的な所見ではない。
4.× 逆である。手術後に多いのは、「下肢よりも上肢」ではなく、上肢よりも下肢である。
5.〇 正しい。深部静脈血栓症との合併が多い。肺塞栓症とは、肺動脈に血栓が詰まる病気のこと。血栓の9割以上は脚の静脈内にでき、この血栓を「深部静脈血栓症」といい、それが血液の流れに乗って右心房、右心室を経由して肺動脈まで運ばれてきて、肺塞栓症の原因となる。したがって、肺塞栓症と深部静脈血栓症は、極めて関係が深い病気で、二つを合わせて「静脈血栓塞栓症」と呼ばれる。

肺塞栓症の要因

①高齢(特に60歳以上)
②血液凝固障害
③がん
④薬剤または栄養を投与するためのカテーテルが太い静脈に挿入されている(静脈内カテーテル留置)
⑤心不全
体を動かせない状態
骨盤、股関節、または脚のけが
⑧ネフローゼ症候群と呼ばれる腎疾患
⑨過去3カ月以内の大きな手術
⑩血液の粘り気を高める骨髄の病気(過粘稠度症候群)
肥満
⑫妊娠中または出産後の一定期間
⑬血栓の既往歴
⑭鎌状赤血球症
⑮喫煙
⑯脳卒中
⑰エストロゲン製剤の使用(例えば、更年期症状の治療として使用したり、避妊のために使用したりする場合で、35歳以上の女性や喫煙習慣のある女性では特にリスクが高くなる)
⑱エストロゲン受容体モジュレータの使用(ラロキシフェンやタモキシフェンなど)
⑲テストステロン補充療法の使用

(引用:「肺塞栓症」MSDマニュアル家庭版様HPより)

 

 

 

92 食道癌で正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.高血圧は危険因子である。
3.好発部位は頚部食道である。
4.組織型は扁平上皮癌が多い。
5.ヘリコバクター・ピロリ菌が発症に関与する。

解答
解説

食道癌とは?

食道癌は食道に発生した上皮性腫瘍のことである。組織学的に約90%が扁平上皮癌である。好発部位は、胸部中部食道、胸部下部食道の順で、胸部中部食道が約50%を占める。アルコール、喫煙、熱い食事、Barrett食道、アカラシアなどが誘因である。

1.× 男性では1年間に10万人あたり31.0人、女性では5.6人と、男性に多い傾向(男女比6:1)がみられる。
2.× 原因は、アルコール、喫煙、熱い食事、Barrett食道、アカラシアなどである。ちなみに、高血圧は動脈硬化を引き起こし、循環器疾患や脳神経系疾患の危険因子となる。ちなみに、Barrett食道(バレット食道)とは、食道下部の粘膜が、胃から連続して同じ円柱上皮に置き換えられている状態をいう。
3.× 好発部位は、「頚部食道」ではなく、中部食道(胸部)、下部(腹部)、上部(頚部)の順に多い。ちなみに、頚部・腹部食道は約5%である。
4.〇 正しい。組織型は扁平上皮癌が多い(90%以上)。欧米に多いとされる腺がんというタイプは5%以下である。
5.× ヘリコバクター・ピロリ菌は、「食道癌」ではなく胃癌の発症に関与する。

 

 

 

93 尿毒症で正しいのはどれか。

1.腎不全の初期にみられる。
2.代謝性アシドーシスを示す。
3.低カリウム血症を生じやすい。
4.透析患者の死亡原因で最も多い。
5.血清クレアチニン濃度は低下する。

解答
解説

 尿毒症とは、腎臓の働きが極度に低下して起こる全身の変化をいい、急性あるいは慢性の腎臓障害が進行した状態(正常の10分の1程度まで著しく低下している末期腎不全の状態)である。多様な症状を呈し、放置すると数日で死に至る。

1.× 腎不全の「初期」ではなく末期の状態である。
2.〇 正しい。代謝性アシドーシスを示す。人間の体は、弱アルカリ性である。体は酸性の物質を多く作っているが、肺は呼吸により炭酸ガスとして排泄し、腎臓は尿を酸性にすることにより排泄している。したがって、腎臓の働きが低下すると、体は酸性に傾く
3.× 「低カリウム血症」ではなく高カリウム血症を生じやすい。
4.× 透析患者の死亡原因で最も多いのは、心不全である。
5.× 血清クレアチニン濃度は、「低下」ではなく高値となる。ほかにも、BUN尿酸が高値となる。

慢性腎不全の合併症

①尿濃縮力障害
②高窒素血症
③水・電解質異常(体液過剰、高カリウム血症)
④代謝性アシドーシス
⑤腎性貧血
⑥二次性副甲状腺機能亢進症

 

 

 

94 早期の前頭側頭型認知症でみられないのはどれか。

1.幻視
2.常同行動
3.病識低下
4.自発性低下
5.社会的対人行動の障害

解答
解説

 前頭側頭型認知症は、前頭葉・側頭葉に限局した萎縮性病変を認める症候群をいう。代表的な疾患にPick病がある。発症は初老期(40~60歳代)にみられる。初期は、自発性の低下自発語の減少偏食・過食、脱抑制などの人格変化行動異常で潜行性に発症する。

1.× 幻視の特徴的な認知症は、レビー小体型認知症(後頭葉の血流低下のため)であり、前頭側頭型認知症では起こりにくい。
2~5.〇 常同行動・病識低下・自発性低下・社会的対人行動の障害は、症状してみられる。

 

 

 

95 介護保険制度で正しいのはどれか。

1.COPDは特定疾患ではない。
2.加入は45歳以上に義務づけられる。
3.都道府県の介護保険係に介護認定を申請する。
4.要介護認定の区分別支給限度額は同じである。
5.要介護度の認定は介護認定審査会で判定される。

解答
解説

 介護保険制度における被保険者は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40~64歳までの「第2号被保険者」とに大別される。第2号被保険者が、介護保険でサービスを利用できるのは、「特定疾病」が原因の場合である。

1.× COPDは特定疾患である。下に特定疾病をあげたので参考にしてください。
2.× 加入は、「45歳以上」ではなく40歳以上(第2号被保険者)に義務づけられる。
3.× 「都道府県の介護保険係」ではなく、市町村の介護保険担当課に介護認定を申請する。
4.× 要介護認定の区分別支給限度額は、「同じ」ではなくそれぞれ別額である。介護度の重い方は、様々なサービスを組み立ててサポートが必要であるため限度額は高額である。
5.〇 正しい。要介護度の認定は、介護認定審査会で判定される。以下に一連の手順を説明したので参考にしてください。

特定疾病(16種)

がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
関節リウマチ
筋萎縮性側索硬化症
後縦靭帯骨化症
骨折を伴う骨粗しょう症
初老期における認知症
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
脊髄小脳変性症
脊柱管狭窄症
早老症
多系統萎縮症
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
脳血管疾患
閉塞性動脈硬化症
慢性閉塞性肺疾患
両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

要介護認定の手順

①被保険者が市区町村に要介護認定申請書を提出する。
②市区町村は、認定調査員を本人(被保険者)宅に派遣して訪問調査を行い、主治医に意見書の作成を依頼する。
③認定調査の結果がコンピュータに入力されて1次判定が行われる
④介護認定審査会において、1次判定の結果及び認定調査票の特記事項、主治医意見書を用いて2次判定が行われ、介護認定が判定される
介護認定審査会から市区町村に判定結果が通知される。
⑥市区町村から判定結果が本人(被保険者)に郵送で通知される。

 

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